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英雄伝説ー奴隷シリウスの冒険ー  作者: 高橋はるか
南大陸―始まりの街
557/681

二週間五十七

(四十九階層)


・・・・四十九階層の魔物は、砂漠のアイアンゴーレムのマグマ版さね。


簡単に言ってくれるけれども、一体あれをどれだけの時間かけて倒したと思っているんだろうか??

そもそも、オーバーヒートさせて何とか自壊させた、みたいな倒し方だったろうに・・・!!


・・・・だからこそ、楽勝さね。倒し方は、オーバーヒートの真逆。ま、アイアンゴーレムも実は、その倒し方で倒せたんだけどねえ。

あの灼熱の砂漠で、どうやって冷やせと!?

同じくこの極熱の溶岩地帯で、どうやって凍らせろと!?


「来るぞ!!!」

ええい!!!とにかくやるしかない、か!!!

と意気込んでみたものの、僕にできることは無いんだけどね・・・・。


「レグルス!!!」


・・・・・とにかく、体を覆うマグマを消火することさね。それには、一番、土の属性魔法が有効だからねえ。近づいてくる敵に、大量の土砂を、それこそ、全身を包んで埋めてしまうくらいの大量の土砂を、浴びせ続けることだねえ。

アイアンゴーレムよりも一回り小さいとは言え!!

それでも、僕らよりも圧倒的に大きい、頭一つ分以上は抜きんでた魔物に対して、それを簡単に言ってのけてしまうことの異常さよ!!??

横幅も広ければ、上背もあるって言うのに・・・・!!


それでも、一歩、一歩と近づいてくるたびに、ぐんぐんと気温は上昇する・・・・!!

これをそのまま放置したら、僕らの目と鼻の先、手の届く所まで来たときには、一体どうなってしまうって言うんだ!?


それでもその前に。

今、彼我の距離は五十メートルを切っただろうか??

この距離で、レグルスが、大量の土砂を、まるで滝のようにかけ続け始めた。

スバルも、同じように。魔法を紡ぐ。土の魔法で、大量の土砂を。

魔力なんて無くなってもいいとばかりに。

この階層の先へ進む気はない。

今日はここを超えたら、それで十分。だから、ここで全てを出し切っても、問題はないから・・・・!!

どさどさ、どさどさと。

滝のように降り積もり、流砂は、全てを飲み込んでいく。

常人であれば、決して立ち上がれないほどの重量の土砂がその身に降りかかってもなお、それでも、大地を蹴り、ただ、ただ、愚直に進む、進む、進む・・・・・。


全く通じていないじゃないか!?これのどこが楽勝なんだよ!?

そして、これが、本番である火竜の一歩前の階層だと言うんだから、驚きだよ!!

ずんずん、ずんずんと。

頭から、体を流れ、足元を埋め尽くす大量の土砂。

それこそ、姿なんて全く見えなくなるほどの、土のカーテンを、一切ひるむことなく。

これが轟々と流れる水だったとしても、岩を穿つほどの力が生まれるって言うのに。

それよりも数倍以上は重い土を一身に受けて。

どうしてこれだけ進むことができるって言うんだ!?

シャウラも気が気ではないのか、いつでも魔法を放つ準備だけはしている・・・・!!

氷の魔法を、使うために、温存しようと決めていたけれども、それでもこの圧力に、この威圧感に、思わず、手が出そうになってしまう・・・・!!


けれども・・・・。あと二十メートルを切ったその時。


このまま接敵するかと思って覚悟を決めていた僕らの目に、信じられない光景が飛び込んできた・・・・・!!!


ずん、ずん。

ずん、ずんと。

一切の躊躇なく、一切の躊躇いなく走って来ていたマグマゴーレムの足が、一瞬止まった・・・・!?

・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!

一歩、一歩を踏みしめるように。

それでも、その足取りは、さっきまでとはまるで違って、重々しい・・・・。

まるで・・・・。

まるで・・・・そうだ・・・!!泥沼を必死に進んでいるかのように・・・・。

ざばざば、ざばざばと水をかくように、いや、それよりもなお、足取りは重く。

それもそのはず。

ドロドロに溶けた土砂が、足元に纏わりつき、冷えて固まるたびに、どんどん、どんどんとその歩みを妨げる。

足を泥から引っこ抜くように、力任せに、それでも一歩、もう一歩と。必死で突き進んできていたけれども・・・・。


ついにその時はやって来た・・・・!!


上から降り積もる大量の土砂に、ついに体が埋もれて、見えなくなってしまった。

僕らのほんの目と鼻の先。

十メートルよりも手前で、まるで小さな小山のように、固まってしまったマグマゴーレム。

そしてその瞬間は、僕らの目に、これ以上ないほどの好機として映る。


「姉ちゃん!!!」

「分かっているわよ!!!スバルも合わせて頂戴!!」

二人が、ありったけの魔力を注ぎ込んで、魔法を練り上げる。

大地からそそり立つ氷の柱が、何本も、何本も。マグマゴーレムの体を包み込み、四方を包む溶岩の熱と、そして、せめぎ合うように吹き上がる蒸気の中。

ゆっくり、ゆっくりと。

ひび割れていく土砂の山。


・・・・・・・・・・・・・・・ぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!


大地の底から聞こえてくる唸り声のように、地を震わせ、足元を揺らす。

その声は、まさしく、最後の最後、全てを出し切るかのように、刹那的で、そして、切実で・・・・・。


ひび割れ、粉々に砕け散った土砂の中から姿を現したゴーレムは、もはや、灼熱色からほど遠く。血よりも朱に、真っ赤に染まることはなく。ただ、ただ、アイアンゴーレムのように鈍色に冷え固まっているだけ。


・・・・・・・・ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!???????


大地を震わせるような、うめき声。

それをどこから発しているのかはついぞ分からないけれども。


「これ以上時間をかけたら、また灼熱色に戻るかもしれないから、一気呵成に行くわよ・・・・!!!」

ぜえ、ぜえ、と荒い呼気を吐き出しながら。

それでもありったけの魔力をかき集めて、シャウラはさらに、氷の礫を幾重にも、作り上げる。

「・・・・もう!!!・・・・・十分でしょ・・・・・!!そろそろ・・・・・!!!いい加減に死になさいよおおおおおおおお!!!!!!!」

意識を失う狭間のせめぎ合い。

スバルですらも、ふらふら、ふらふらとその足取りはおぼつかないんだから、シャウラなんて、ほとんど地べたに腰を落としているようなもの。

そんな状態でも、決して魔力だけは・・・・、魔法だけは切らさない!!

ぐるぐる、ぐるぐると回転を始めた氷の礫はそのまま、矢よりも速いとんでもない速度で撃ち出される・・・・!!


その全てが、敵の体に直撃し、その勢いに押されて、今の今まで決して後退することなく、ただ、ただ愚直に進んでいたマグマゴーレムが、初めて後退した・・・!!

行ける・・・・!!!

体のあちこちにひびが入ったマグマゴーレム。

それでも、無理をして、一歩、一歩と足を踏み出すたびに、ぼろぼろ、ぼろぼろと崩れていくその体を、一切気にすることすらなく、僕らとの距離を縮めようと、必死に大地を踏みしめる!!!


マグマゴーレムが、僕らをひねりつぶすことができる間合いに入るのが先か・・・・??はたまた、シャウラとスバルの二人が、破壊するのが先か・・・・??


それは、どちらに転んでも決しておかしくはない賭けだった。

それでも、僕も、アイクも。

レグルスは当然のように、腕組みをしたまま微動だにしない。

ただ、ただ、信じていた。

スバルが僕らを信じてくれたように。

この二人ならきっと、必ず、倒し切ってみせると信じていた。


「・・・・届かない!!皆・・・・逃げて・・・・!!!」

それでも・・・・・。

シャウラの悲痛な叫び。

「・・・・・まだだ・・・・!!!まだ・・・・!!!まだ諦めない・・・・!!!」

スバルの呻くような、もがくような呟き。


・・・・ああ。これでも倒し切れないなんて・・・・。本当に化け物なのか・・・・??

・・・・それでも!!!


絶対にあきらめてやらないし!!!二人で駄目だと言うのなら、僕らが!!!必ず倒してやる!!!どれだけ時間がかかろうとも!!!どれだけ苦しかろうとも!!!

ここまで敵をぼろぼろにしてくれたんだ!!

その歩みは、ドロドロに溶け、冷え固まった土砂に阻まれて、遅々として進まず。

体はぼろぼろで、ひび割れ、あちこちに氷塊が突き刺さっている状態。

それでも僕らをひねり潰そうと腕を伸ばすその執念は敵ながら天晴。

だったら、それ以上の執念で!!!

剣が折れようが、拳が砕けようが必ず!!!


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