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僕の世界の侵略者

作者: 黒犬 銀狼

電車の発車ベルがイヤホン越しに聞こえる。

喧騒と雑音の溢れた世界から遠ざけてくれるのが音楽の良いところだ。

ふとドアを見ると駆け込んで来る女子高生が居た。

そんなに急ぐことでもないだろ。

駆け込み乗車はおやめくださいっていつも言われてんだから、

そろそろみんなやめれば良いのに。

そう思いながら、駅に着くまで目を閉じる。

いつもと変わらないルーチンワーク。

それでも、音楽を聞いていられる電車は僕を世界と切り離す立派な乗り物だ。


今日の車内は比較的空いている。

だから、喋り声も赤ん坊の泣き声も聞こえてこない平和な日だ。

しかし、それ以外の音が聞こえてくる。人間が息を切らせている音だ。

目を開くとそこには先程の女子高生がいた。

さっき見たので知ってはいたが、同じ高校の生徒だ。

よく見るとそいつは同じクラスの女子。えーっと名前は…。

「あ、葵くんじゃん!」

目が合うと声を掛けてくるクラスメイト。名前が思い出せない。

ほとんど話したことがない人間の名前など覚えないのは普通じゃないだろうか。

思考の途中で空いていた左の席に、そいつがドスッと勢いよく座ってくる。

僕は音楽を聞いているのを口実に軽く会釈を済ませて、再び目を閉じる。

「ねーねー、なに聞いてんの?」

話す気がないオーラを出しているのに、どうして話しかけてくるんだ…。

彼女は僕の世界に遠慮なく入ってきた侵略者だ。

「別に、普通の。知らないと思うけど」

「ふーん、まあいいや。スマホの充電切れちゃって暇だからさ、

私にも聞かせてよ」

そう言うと、彼女は強引に左耳のイヤホンを外して自分の耳に入れる。

「あれ、上手く入んないな?あっ逆か!」

そりゃそうだ。左耳から外したイヤホンを右耳に入れたらそうなる。

っていうかこの展開が突然すぎて付いていけない…。

彼女は僕から奪い取った世界の半分を自分の右耳に付けた。

狭い!この場合、普通は逆だろ…。右耳から取って右耳に付ける。

そうすれば、イヤホンのコードに余裕ができて…こんなにくっつかずに済むのに。

左半分の世界に違和感が生じる。普段感じない柔らかさに少し動揺してしまう。

訂正…。今日、僕の世界は壊れている。イヤホンを忘れた日と同じだ。

彼女はイヤホンがしっかりと入ったのか、

もぞもぞした動きを止めてゆっくりと目を閉じた。

それを見届けると窮屈さを実感しながらも、僕も一緒に目を閉じる。

目を閉じると余計に左の温もりを感じて、音楽に集中できない。

できない筈なのに…なんだかとても心地良かった。


「葵くん、ありがとね!」

彼女の声で目を覚ます。

いつの間にか寝てしまっていたようだ。

目を擦ってから、しっかりと開くと彼女がドアから出て行くところだった。

寝起きの状態で惚けていると、閉まったドアの向こう側から

彼女が自分のスマホを指差してから僕の方を指差す。

どうやら、スマホを見て欲しいと言っているようだった。

電車が動き出す。彼女の口がまたねと動いてこちらに手を振る。

反射的に手を振り返してしまう。

電車が駅から離れた後、僕はぼーっと自分の手のひらを見つめていた。

そういえば、スマホを見ろって言ってたな。

スマホを指紋認証で解除して中を開くと、

SNSが表示されていて見知らぬ人と友達になっていることが分かる。

そこには、僕からその人へメッセージが送られていた。

「葵くんって失恋の曲ばっかり聞いてるんだね。恋もしてないのに。

それってさ、失敗するのが怖くて諦めてるみたい。

何事もやってみなくちゃ分からないんじゃない?」

寝ている間に僕の指を勝手に拝借したんだろうな…。

なんて行動力と発想。少し尊敬する。

「大きなお世話だ」

キーボードをフリック入力して送信する。

すると、すぐに返信があった。

「私はやったよ?」

意味不明な文章が返ってくる。けれど、僕はすぐにその言葉の意味を理解した。

あらすじで大層なことを言っています(正確にはあらすじではないのです)が、

こんなことがあったら良いなと思ったことを肩慣らしのつもりで書いています。

少しでも共感してもらえたら、大成功。文章が下手くそで面白くないと思った方はすみません。次は頑張ります。

以上。宜しくお願い致します。(最後は定型文)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 思春期の少年らしさを感じられて、読んでいて何故か自分が少し恥ずかしくなってしまうような内容でした。 日常的に誰もが1度は思う、駆け込み乗車やめればとか、電車の中で1人になった気分になれる音…
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