211 人様の肉には、手を出すな!
ギルドで登録が終わって……
「破滅の森に関して、洗いざらい話せぇぇぇ!」
「さあ、何の事でしょうか?」
「ネタは上がっているんだぞ!」
「黙秘します」
ギルドマスターが、鬼の首を取ったかのような表情で俺に迫ってくる。妹の超無責任発言で言質を取られた俺は、ある意味防戦一方に追い込まれていた。だが、この場に颯爽と救いの大魔王が降臨してくれる。ありがたや、ありがたや!
「確証はないけど、あの森は何らかの力によって人間世界の接近を拒んでいるわ。無理に入ろうとしない方がいいでしょう。人の力では手に負えない場所が、どこの世界にも存在するのよ」
「その話しぶりでは、君たちは人の力を越えた存在のように聞こえてくるぞ」
「余計な詮索をしない方が、長生きが出来るのよ。明日の朝、門の外にあなたの死体が転がっているのは、とても不幸な出来事だと思うわ」
物騒な発言をしながら、ちょっとだけ大魔王の威厳を放っている。美鈴から発せられる無言の威圧感は、ギルドマスターの口をつぐませるには、十分な効果を発揮している。というよりも、すでに気を失って口から泡を吹いて、だらしない姿でソファーにもたれ掛っている。
この勇壮なお姿こそが、大魔王様の本分だと納得できるな。美鈴自身も、日本を離れて、ちょっとだけ羽を伸ばしているようだ。
しかも、ルシファーの魂が覚醒したおかげで、威厳のレベルが格段にパワーアップしている。これは相当ヤバいぞ! 俺の目から見ても、恐ろしいの一言だ!
哀れな姿のギルドマスターには、別の方向から救いの天使が現れる。こうなったら神でも天使でも、なんでもござれだ!
「聡史様、よかったら記憶の改竄をいたしましょうか?」
「カレン、よろしく頼む」
カレンの手の平から白い光が放たれると、ギルドマスターはハッとした表情で目を覚ます。
「お、俺は、今、何をしていたんだ?」
「居眠りでもしていたんじゃないですか?」
「お、おう…… そうなのか…… 年は取りたくないな」
ギルドマスターは、なおも盛んに頭を振って何かを思い出そうとするが、直前の記憶はカレンによって消されている事実に気づくはずもなかった。その時、ドアをノックする音が響く。
「ギルドマスター、査定の結果が出ました」
先の女性職員が、数字が書き付けてある紙を手にして登場する。ギルドマスターは、その書き付けを受け取ると、メガネを掛け直して目を通す。どうやら、内容を慎重に吟味しているようだ。
「うむ、これでいいだろう。ブルーウルフの変異種52頭で通常は金貨260枚だが、最も価値が高い毛皮に傷が見当たらなく、大変質がいいので20枚上乗せだ! 〆て金貨280枚でどうだ?」
1頭当たり、金貨5枚少々か…… まあいいだろう。今の俺たちには、金よりももっと必要なものがあるんだ。
「金貨250枚でいいです。その代り、この大陸の主な国の領土が記載された地図を見せてください」
「地図だって? そんな物を一介の冒険者に開示できるか!」
「それじゃあ、金貨230枚でいいですよ」
この街が最北の地だということは、わかっている。この街から南方面がどうなっているのか、大雑把でいいから情報が欲しいんだ。地図は重要な戦略情報だから、通常ならば簡単に見せてもらえない。さて、金貨50枚という対価は、ギルドマスターの目にどう映っているのかな?
「うーむ…… 背に腹は代えられぬか。いいだろう、絶対に口外しないという条件だ。今からこちらのテーブルに広げるぞ」
鍵付きの書類棚から細長い箱を取り出すと、慎重な手付きで蓋を開ける。中からは、大判の羊皮紙をグルグル巻きにしてある地図が出てきた。羊皮紙を巻いて止めてあるヒモには、蜜蝋で施された封印が施してある。それだけ重要な情報という証だ。
「四隅を押さえてくれよ。ほれ、ここがヘンネルの街だ」
うーん…… まるで大航海時代の思いっ切り細部を端折った手書きの地図だな。縮尺などまったく考慮されていないだろうから、距離を測ろうにもアテにはならないであろう。それでも、無いよリはマシだと考えを切り替えて、中身を見ていく。
さて、どうやらこのキアーズ大陸というのは、南アメリカ大陸をもっと横に引き伸ばしたような、ひし形に近い形をしているようだ。その北部を占めるのはナウル王国で、そこそこ広い領土を領有している。
大陸中央には東部、中部、西部にそれぞれ横並びに3つの国がある。国名も描かれているが、あいにく字が読めないな。相当古い時代の装飾を施した文字なので、かろうじてこの世界の文字が読める程度の読解力では、お手上げ状態だ。
そして、大陸の南部には、最も広大な領土を誇る国があるようだ。この辺まで行くかどうかはわからないので、現時点では大まかに理解しておけば、ひとまずは問題ないだろう。
「南に向かったら、ナウル王国の王都があるんですね」
「そうだが、あまりお勧めは出来ないぞ。国王の跡継ぎ争いで、周辺の貴族を巻き込んで戦乱の真っただ中だ」
「でも、南に行きたいので」
「絶対に命を落とすぞ!」
「大丈夫ですよ。俺たちは、戦争のプロです!」
最後の一言をちょっと語気を強めたら、再びギルドマスターが白目を剥いて意識を失った。もう用はないので、ここいらでお暇しよう。
意識を失ったままのギルドマスターを放置して、飲食コーナーで満足した表情の妹と明日香ちゃんを回収すると、カウンターに立ち寄ってオオカミの素材の代金を受け取る。これだけ金貨があれば、当分は困らないであろう。
こうして俺たちは、ヘンネルの街で一泊して、野菜や小麦粉などの食料やこの世界の服を手に入れてから、足早に出発する。
3日後に次の街に到着すると、ここでは屋根付きの馬車を調達できた。歩いて旅するのと比べると、旅の行程がグッと捗るな。
その後、無事に2週間ほどが経過して、王都の隣町までやってくる。
その間、親父と明日香ちゃんのレベルは、30近くまで上昇している。レベル25を超えたところで、親父には初めてゴブリンの討伐をやらせてみたんだ。妹から手渡されたミスリルの剣を一閃すると、ゴブリンの首がコロリと落ちていたな。あまりの切れ味に、剣を振るった親父自身がドン引きしていた。
それとともに、目の前で命が失われていくこの状況、しかも直接手を下したのは自分という、冒険者の本質を理解してもらえただろうか? この命を奪う行為の残酷さを精神的に乗り越えてこそ、はじめて冒険者と名乗れるのだ。今後、親父はどうなるだろうな?
さて、すでに街の門は、目と鼻の先だ。
「兄ちゃん! 街の門の警戒が厳重だね!」
御者席で手綱を取る妹が、車内に振り返って報告する。窓を開けて様子を確認すると、重装歩兵が弓や槍を構えて、物々しい警備体制を敷いているようだ。やはり戦争があるという話は、現実らしいな。
「さくら、ゆっくりと馬車を進めてくれ! むやみに抵抗するんじゃないぞ!」
「兄ちゃん! わかったよ!」
妹は、馬車をゆっくりと門に向けて進めていく。俺たちの馬車が接近する様子を目にした門を固める兵士は、当然のように馬車の前に立ちはだかる。
「止まれ! お前たちは、何者だ?!」
「旅の冒険者です。この街でギルドに立ち寄って、食料の調達をしようと思っています」
馬車に乗っている全員が降り立って、各自の冒険者登録カードを提示する。こうしてギルドが身分を保証する冒険者は、どこの街でも往来が自由となるのだ。このために、ステータスを偽造してまで、わざわざ登録したんだからな。
「いいだろう。不審な行動があれば、即座に処罰されるから、街の中では大人しくしておくんだ」
「ご忠告、ありがとうございます。ところで、警戒が厳重な様子ですが、何か事件でも発生したんですか?」
俺は隊長と思しき人物に近づくと、そっとその手に金貨を握らせる。チラリと手の中にある物を確認した警備隊長は、急に愛想がよくなってくれた。
「この街の領主様であるナルビス公爵閣下が、ついに君側の奸を除く決意を固められたのだ! 王都に跳梁跋扈する陛下のご遺志をないがしろにする逆臣たちに、天罰の鉄槌を下すのだ!」
「そうなんですか! 俺たちはヘンネルから来たので、どうもその辺の情勢に疎いようです。しばらくは、王都方面に近づかないほうがいいですか?」
「そうだな、大きな戦が始まるやもしれぬ。近辺の魔物でも討伐しながら、大人しくしていろよ!」
「そうですか。ありがとうございました」
丁重に頭を下げてから、馬車に戻る。すでに全員乗り込んでおり、妹が手綱をしゃくると、馬車はゆっくりと門をくぐっていく。
ひとまずは宿屋を見つけて馬と馬車を預けると、差し当たっての食料調達へと向かう。買い物をしながら、この街の様子などを一通り観察するのが、主な目的だ。
「兄ちゃん! 肉が少なくなっているんだよ! 道中で討伐したワイルドバッファローをギルドで解体してもらおうよ! 肉汁が滴るステーキが食べたいからね!」
「そうか! それじゃあ、全員でギルドに行こうか?」
「さくらちゃん一人で、大丈夫なんだよ! 屋台の食べ歩きもしたいから、その辺をブラブラするついでに行ってくるよ!」
「わかった。晩飯までには宿屋に戻るんだぞ」
「さくらちゃんが、晩ご飯を見逃すはずないでしょう! 兄ちゃんは、いつも一言余計なんだよ!」
こうして俺たちは、妹の別行動を認めるのだった。どこの街でも、一通り屋台を巡らないと満足しない妹なので、いわば恒例行事のようなものだ。こうして、俺たちは右に曲がる通りに姿を消していく妹の姿を見送るのだった。
一人で街を歩くさくらは……
さてさて、これからが、さくらちゃんのお楽しみの時間なんだよ! 色々な街の美味しい名物を発見するのは、娯楽が少ない異世界では大きな楽しみだからね。とはいえ、魔物の討伐を思いっきりやっているさくらちゃんにとっては、毎日が娯楽だらけなんだけどね!
本当に異世界というのは、楽しい所だよ! 一生ここにいても、いいかもしれないね…… ああ、そうだったよ! 日本にはポチタマや親衛隊が待っているんだったね。しょうがないから、ほどほどに遊んだら戻ってあげるんだよ!
通りにある小さなお店と屋台で、串焼きの肉と野菜を炒めた具がたっぷりと包んであるクレープを買って、両手に美味しそうな香りを立てながら、ギルドを目指して歩いていくんだよ。ふむふむ、何の肉かよくわからないけど、串焼きは中々イケるよ! 日本のご飯は美味しいけど、こういう野趣溢れた味というのも、悪くないね。クレープも、独特のハーブの香りでいい感じなんだよ!
全部食べ終わる頃には、ちょうどギルドの建物が見えてくるね。兄ちゃんたちは、八百屋や雑貨屋が並んでいる下町のほうに向かったんだけど、さくらちゃんは広場がある中心街に来ているんだよ。さて、建物の中に入っていこうかな。
「ようこそ、ナルビスの冒険者ギルドへ!」
「討伐した獲物の解体と、素材の買取りを頼みたいんだよ!」
「では、お隣の買取りカウンターへどうぞ!」
「もっと広くないと、出せないよ!」
「それでは、奥の解体所にお願いします」
ワイルドバッファローは、小型のマイクロバスくらいの大きさだからね。もちろん、さくらちゃんが一撃で仕留めたんだよ! 巨体で突進してくるところに、カウンターのパンチを合わせたら、吹っ飛んでいったね。まあ、この程度の魔物で本気なんか出していないけどね。
ズシーン!
楽に3トン以上ありそうなワイルドバッファローをアイテムボックスから取り出すと、係員のお姉さんが目を丸くしているよ。
「解体してもらって、肉は全部こっちでもらうんだよ! 他の素材は、全部買取でいいよ!」
「承知いたしました。解体に少々時間がかかりますが」
「飲食コーナーで待っているから、終わったら声を掛けてもらえるかな?」
「はい、わかりました」
さくらちゃんが毎日大量にお腹に収めているから、肉はどれだけ量があっても問題ないんだよ。アイテムボックスに入れておけば、腐らないしね。さて飲食コーナーで、何かお腹にたまるものを注文しようかな。
「ご注文は?」
「メニューに載っている定食のセットを、全部持ってきてもらえるかな」
「ぜ、全部ですか?」
「いいから、全部持ってくるんだよ!」
どこのギルドでも、6、7種類の定食を用意しているからね。全部頼むと、ちょうどいい感じでさくらちゃんのお腹が満たされるんだよ。魔物の素材を売り払った代金で、さくらちゃんの懐はとっても潤っているからね! 値段なんか気にしないで、食べたいだけ注文しちゃうんだよぉぉぉ!
ふう、お昼時でグーグー鳴っていたお腹が、いい感じにいっぱいになったよ。パンがボソボソしていたけど、スープに浸すとちょうどいい感じになるんだ。出されたどの料理も、結構美味しかったよ! イギリスの人は、ちょっと見習ってもらいたいくらいだよ!
おや? 飲食コーナーの手前にある通路を、鎧を着込んだ集団が足音を響かせて、奥に向かっていくよ。一体何の用事があるんだろうね?
その時、受付をしてくれたギルドのお姉さんが、私の前にやってきたよ。
「その…… 大変申し上げにくいのですが、領主様の騎士団が、ワイルドバッファローの肉を戦の糧秣として接収すると言っているので、了承していただけますでしょうか?」
「うん? さくらちゃんのお肉を、どうするって?」
「騎士団が、取り上げると言っています」
「人~様~の~肉~を~な~ん~だっ~てぇぇぇぇぇ!」
あまりの怒りで、温厚なさくらちゃんの体が、ブルブル震えているんだよ! 騎士団ごときが、このさくらちゃん大事なお肉に手を出すだってぇぇぇ! こんな無法が、許されるとでも思っているのかぁぁぁぁ!
さくらちゃんの目が黒いうちは、絶対に許さないんだよぉぉぉぉぉぉぉ!
ガタッと席を立つと、さくらちゃんは怒りに手を握り締めながら、解体所に向かうよ。台の上には、ブロックごとに切り分けられて、丁寧に木の皮に包まれたさくらちゃんのお肉が、何十と載せられているんだよ! 騎士たちは、お肉の塊を抱えて、いまにも外に運び出そうとしているんだよ! 本当に頭にくるんだよ!
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁ! 誰に断って、その肉を持ち出そうとしているのかな?」
「なんだ、このガキは? おい、こいつは誰なんだ?」
「ワイルドバッファローを持ち込んで、解体を依頼した冒険者の方です」
ギルドのお姉さんが答えているね。それにしてもこの騎士は、横柄な態度だよ。態度だけでも、さくらちゃんの頭に血が上ってくるよ。その上さらに、人様の肉に手を出そうというんだから、これは極刑に値するよね!
「こんなクソガキの戯言に構っている暇はない! こちらは戦争の準備で忙しいのだ! おい、すぐに運びだ……」
ガキン! グワッシャーン!
人を小バカにしたセリフなんて、最後まで吐かせないんだよ! さくらちゃんの最大の怒りを込めたパンチが男の顔面にヒットして、勢い余った男は、解体所の塀を突き破って通りまで飛び出しているよ。いい気味だね。
「ローム様!」
「貴様! サウル男爵家嫡男のローム様と知っての狼藉か!」
「男爵だろうが、メイクイーンだろうが、知ったこっちゃないんだよ! さくらちゃんのお肉に手を出したら、どうなるか知っているんだろうね!」
ファイティングポーズを取るさくらちゃんの姿を見て、ギルドのお姉さんはアワアワしているよ。怪我をしたくなかったら、横に引っ込んでいるんだよ。
「おい、ローム様の容態を見てこい!」
鎧の男が二人、裏口から出て行って、通りに倒れているロームとかいうヤツを介抱しようとしているね。でも、さくらちゃんは、そんなに甘くはないんだよ!
人様の肉を泥棒する相手に、情けなど掛けないからね!
様子を見に行った男二人が、ロームの体を引き摺りながら戻ってくるね。
「ダメだ! もう息がないぞ!」
「なんだってぇぇぇぇぇ! ロ、ローム様!」
「貴様ぁぁぁ! 覚悟はいいな!」
「冒険者の分際で、貴族に手を挙げるなど、言語道断!」
「この場で斬り捨てろ!」
鎧の男たちは、全部で8人か…… むざむざ目の前で主人の命を取られて、このままでは引っ込みがつかないんだろうね。さくらちゃんは、売られた喧嘩は積極的に買うタイプだからね。主人に付き合って冥土に旅立つ覚悟で、掛かってくるといいよ!
「掛かれ!」
キン! バキッ!
バカじゃないのかな? さくらちゃんを相手にして正面から斬り掛かってくるなんて、無茶もいいところだよ! 上段から振るわれる剣を籠手で軽くいなして、ガラ空きの胸にパンチを叩き込むと、ローム同様に塀を突き破って、外の通りに飛び出していくよ。
今度は同時に二人が斬り掛かってくるけど、さくらちゃんはスッと横に移動して、まだ剣を構えている別の男の正面に立つよ。
「ボケっとしているんじゃないんだよぉぉ!」
真正面から顔面にパンチを食らった男は、またまた塀を突き破って通りに飛び出すね。なんだか、とってもレベルが低いんだよ。親衛隊一人でも、軽く相手出来ちゃうんじゃないかな? まるで弱い者イジメをしているような気分だけど、さくらちゃんのお肉に手を出したケジメは、キッチリと取ってもらうんだよ!
さあ、残るは5人だね。どう料理しようかな……
さくらちゃんは、籠手に包まれている指をポキポキ鳴らして、ゆっくりと男たちに近付いていくのでした。
その頃、聡史たちは……
「美鈴、買い物はもう大丈夫か?」
「ええ、必要な食料は手に入ったわ」
「それじゃあ、俺たちもギルドに向かって、何か情報を仕入れようか」
「それでいいでしょう」
商店が多く集まっている下町界隈から、街の中心に向かって一直線に伸びている通りを、合計7人で連なって歩いていく。通りを歩く人たちはそこそこの人数だけど、間もなく始まるろうとする戦争に駆り出されているのか、若い男性の姿が少ないように感じる。
15分ほど歩いて、広場が近づいてきたその時……
バキバキバキッ! ドサッ!
塀を突き破って、鎧を着込んだ男が通りに飛び出してきた。そのままゴロゴロと通りを転がって、目を剥いて痙攣している。一体何事だ? 周囲を見回すと、すでに息を引き取ったであろう鎧姿の男たちが、何体か転がっている。
「すいません、この建物は、一体何をやっている場所ですか?」
野次馬で集まってきた中の一人の男に尋ねてみたところ、想像もしなかった答えが返ってくる。
「ああ、ここは冒険者ギルドの建物だけど、なんで騎士が転がり出てくるんだろうな?」
ぼ、冒険者ギルドだとぉぉぉぉぉ! た、確か、妹が一人でギルドに向かったよな…… 頭の中に最悪のシナリオが浮かんでくるぞ。
「まさかとは思うが、さくらじゃないよな?」
「むしろ、その可能性が高いんじゃないのかしら」
美鈴は冷静だな。それよりも、ギルドの中がどうなっているのか、確認するのが先決だ!
「ギルドの中に急ぐぞ!」
俺たちは、慌てて建物に入っていく。そして、建物の裏側にある解体所には……
「あれ? 兄ちゃんたち! 買い物は終わったのかな?」
「やっぱりお前の仕業かぁぁぁぁぁ!」
そこにあったのは、倒れている3体の鎧姿の男と、口から泡を吹いているギルドの女性職員と、ホコリを払うように手をポンポン叩いている、俺の妹の姿であった。
さっそくやらかしたさくら、このまま無事に事が収まるはずもなく…… この続きは、週末に投稿いたします。どうぞお楽しみに!
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