表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/229

173 商談

情報収集するさくらは……

 さくらちゃんは男たちに囲まれて、どこかへと連れ去られている最中だよ。それにしても、よくもこれだけ人相の悪い男共が集まったと、さすがの私も感心してしまうよ。どうせ散々悪さを繰り返してきたんだろうね。同情する必要がないから、こっちも気が楽だよね。



「なんだ、このガキは? この人数に取り囲まれても、顔色一つ変えないぞ」


 なんにも気が付いていない連中なんだね。さくらちゃんはとっても強いんだよ!


 それにしても、こうも簡単に獲物が引っ掛かって、本当は心の底から笑い声を上げたいんだよ。内心ニヤニヤが止まらないんだけど、顔に出ないように眉間に力をこめてグッと我慢しているんだからね!


 兄ちゃんや美鈴ちゃんが言うには、私は考えていることが表情に出易いらしいんだよ。自分では全く気が付いていなかったんだけど、兄ちゃんは私の考えをすぐに言い当てちゃうから、きっと顔に出てるんだよね。お腹が空いたとか、すぐに悟られるんだよ。


 だから今は、努めて無表情を保っているんだ。声も出さないようにして、素直に男たちに連れて行かれるままにしているよ。



「ガキだからな、これからどんな目に遭うか、全然わかっていないんだろう」


「違いねえな」


 なんだか失礼しちゃうよ! こんなにプリティーなさくらちゃんを掴まえて、さっきから『ガキ』扱いだからね。本当に頭に来ちゃうよ! 軽く殴っちゃおうかな…… いや、ダメダメ! ここはグッと我慢するんだよ。


 さくらちゃんは、温厚で我慢強いともっぱらの評判だからね。この場にいるのが私で、本当に良かったね! もし、私じゃなくって美鈴ちゃんだったら、この男たちは問答無用で、真っ白な灰になるまでこんがりと焼かれているだろうね。


 その点、さくらちゃんはとっても人間が出来ているんだよ! これほどどこにも欠点がない完璧な人は、世界中を探しても、見つけられないだろうね! 自分で言うのもなんだけど、完璧な性格と完璧な容姿を兼ね備えたさくらちゃんは、人類の最高の宝物だと思うよ。至宝とでも言うべきだろうね。



「この建物だ」


 男の一人が顎で指したのは、一階に中国雑貨を扱う店があるちょっと古びたビルだね。エレベーターに乗って、五階まで上がるよ。男たちは全員乗り切れないから、あとから残りの半数が上がってくるようだね。何人いても、さくらちゃんに掛かれば、抵抗なんて出来ないだろうけど…… まあ、どうするかは、追々に考えようかな。相手の出方もあるからね。


 ああ、でも、私を散々『ガキ』と呼んだ男には、キッチリとケジメを取ってもらおうかな。誰が何回言ったかは、しっかりと数えてあるからね。どこまで耐えられるか、とっても楽しみだよ!



「ガキ、そこに座れ!」


 それにしても汚い部屋だね。その辺にゴミやタバコの吸殻が落ちているよ。国防軍では考えられないよね! こんなに汚れていたら、隊員総出の大掃除が始まっちゃうよ。


 服が汚れそうで嫌だったんだけど、しょうがないから指示されたソファーに腰を降ろすよ。あーあバッチいなぁ…… 駐屯地に戻ったら、兄ちゃんに洗濯してもらおう。兄ちゃんは、私専属の洗濯係だからね。服のシワをきれいに伸ばして、アイロンまで掛けてくれるんだよ。持つべきものは兄ちゃんだね! 実に役に立ってくれるよ。



「さあ、吐いてもらうぞ! 何が目的で、リーさんのことを嗅ぎ回っていたんだ?」


 いちいち説明するのは面倒なんだよね。こういう時には、こいつらを黙らせるいい方法があるんだよ。私は背負っているリュックを降ろして、中に手を突っ込むフリをするよ。



 ゴトン!


 リュックから取り出すフリをして、こっそりとアイテムボックスから出した物をテーブルの上に置くと、男たちの目の色が変わるね。



「こ、これは…… 本物か?!」


「当然でしょう! これを買い取ってもらいたいんだよ!」


 さくらちゃんがテーブルに置いたのは、約3キロの金の延べ棒だよ。インゴットって言うんだったかな? ダンジョンの宝箱から出てきた、純度99.99パーセントの一品だよ。美鈴ちゃんとフィオちゃんが二人とも声を揃えて品質を保証したからね。大魔王と大賢者の折り紙付きの純金だね。


 値段を聞いてみたら、大体2千万円くらいらしいね。でもこのインゴットには刻印がないから、この世界では価値の保障がされていないんだよね。どうやら、その分値引きされちゃうそうだよ。


 ほらほら、金の延べ棒を見て、男たちはヨダレが垂れそうな顔になっているね。純金が嫌いな人はいないだろうけど、中でも中華系の人は金が大好きだからね。



「そ、そうだったのか。客だというのなら、早く言ってくれ」


「私への挨拶はそれだけかな? 全然客への態度がなっていないよ!」


「申し訳なかった! 落ち着いて話が出来ないから、事務所に案内する。ここは、言ってみれば溜り場のような場所だから、満足に商談もできないんだ。ボスに連絡して了承を取るから、しばらく待ってくれ」


 ふむふむ、ボスというのがシャーク・リーなのかな? まあ知りたい情報が得られるなら誰でもいいか。よーし、奮発してさらにエサを撒いておこうかな。



「これと同じ物が、あと4本あるからね! シャーク・リーもちゃんと呼び出して話をしないと、商談はまとまらないよ」


「勿論だ。これだけの金額が動く取引となると、ボスがいないと無理だ。車を用意するから、一緒に来てくれ」


「いいよ♪ しっかり案内するんだよ」


 現金なものだよね。相手が金儲けの対象だとわかると、コロッと態度が変わるんだよ。凶悪な人相のクセに精一杯愛想を振りまいて、却って気持ち悪い顔になっているよ。用意された車に乗ると、どうやら横浜駅とは反対の方向に向かっているようだね。道路の表示を見ると、本牧と書いてあるよ。


 そのまま車は、海に突き出ている埠頭に向かうね。辺りは大きな倉庫が立ち並んでいるよ。


 裏社会の取引といえば、やっぱり倉庫街だよね。映画だと、スーツケースに入ったブツとお金を交換して、その後どちらかが裏切って、銃撃戦が始まるんだよ! なんだか、それらしいムードが出てきたよね。いい感じで、今後の展開が楽しみだよ!



「この倉庫の中に事務所がある。ボスも中で待っている」


「なるほどねぇ、それは楽しみにしているよ!」


 案内役の男に続いて、倉庫の内部に入っていくよ。私たちの直後、残りの男たちも別の車でこの倉庫に到着しているね。なるべく大勢まとまってくれたほうが、手間が省けて楽チンだよ!



 倉庫の中には、木箱に入った貨物が所狭しと置かれているね。中に何が入っているのか興味が湧くけど、ひとまずそちらは後回しにしておこうかな。お仕事を片付けてから、ゆっくりと拝見するよ。きっと、色々と訳アリの品物が出てくるはずだよ。


 貨物が並んだ通路を歩いていくと、一番奥の突き当たりに金属製のドアがあるね。どうやらここが、事務所のようだよ。いよいよシャーク・リーとのご対面だね。



「中に入ってくれ」


 ほほう、結構広い部屋になっているね。奥の壁際には、大きな木製のデスクと革張りの椅子が置かれて、そこには恰幅のいい男が座って、私たちを見ているよ。



「シャオミン、そのガキが例の客なのか?」


 なんだかムカッときたよ! ガキ扱いされたこともさることながら、この男が持っている雰囲気が、私の癇に障るんだよ。狡猾と残忍が服を着ている感じと言えばいいのかな? とにかく、側に寄っただけで毒に汚染されそうな、嫌な感じのヤツなんだよ! シャーク・リーの『シャーク』は、きっと人食いザメという意味だね。



「ボス、この娘が金塊を売りたいと言って来たんでさぁ」


「金ならどこでも売れるだろう。なぜわざわざこんな場所に持ってくる必要があるんだ?」


「へい、それが……」


 シャオミンと呼ばれた男が、シャーク・リーに耳打ちしているね。どうやら私が持っている延べ棒に、刻印がない話をしているよ。



「なるほど、そういう理由で、我々にブツを持ち込んだのか。嬢ちゃん、その延べ棒を見せてみな」


 やっと私に話が回ってきたよ。連絡を入れたときに、ちゃんと説明してくれればいいのに。これじゃあ、話が二度手間だよ。面倒だなぁ…… しょうがないけど、話を合わせてやろうかな。これも情報収集のためだからね。さくらちゃんは、とっても我慢強いんだよ。懇切丁寧に、一から全部説明してあげようじゃないかね。だから、よ~~く聞くんだよ。耳の穴をかっぽじってね。



「細かいことはどうでもいいから、買い取るかどうか、さっさと決めるんだよ!」


 ほらね、ちゃんと穏やかに話が出来たよ! そのついでにリュックから取り出すフリをして、シャーク・リーがいるデスクの上に、延べ棒をまとめて5本ドカンと置いちゃうよ! 大量の純金の輝きに、さすがのシャーク・リーも、目を丸くしているね。



「お、おい! 鑑定してみるんだ!」


「承知しました!」


 シャオミンが延べ棒を1本手に取って、機械に掛けているね。これが金の純度を測定する装置なのかな。詳しいことは全然わからないから、どうでもいいけど。



「ボス、純度99.99パーセントの純金です」


「間違いないのか?」


「間違いありません!」


 へぇ~、結構お手軽に鑑定できるんだね。金の鑑定なんて初めて見たよ。でも、その結果は当然だろうね。美鈴ちゃんとフィオちゃんのお墨付きだからね。


 ようやく驚きから立ち直ったシャーク・リーが、私に話し掛けてくるね。まったく、ここまでくるのにどれだけ時間が掛かったか……



「嬢ちゃん、この金塊をどこで手に入れたんだ?」


「それはダンジョ…… じゃなくって、出所は聞かないほうがいいよ! 命がいらないなら教えてもいいけど」


「わかった、出所は聞かない。金額については、ちょっと相談させてもらいたい」


「いいよ」


 シャーク・リーとシャオミンは、入り口のドアから出て行くよ。二人で何の相談をするのかな?


 さくらちゃんは人一倍耳がいいからね。ちょっと聞き耳を立ててみようかな。さくらちゃんの耳には、男たちの声が聞こえてくるよ。



「おい、あのガキをどう思う?」


「変わったガキです。俺たちに取り囲まれても、表情一つ変えませんでしたし」


「それにあれほどの金塊を持っているとは、何者なんだ?」


「まったくわかりません」


「だが、ガキはガキだよな」


「しかもたった一人で、ここまでやってきていますね」


「上手いこといけば、タダであの金塊が手に入るな」


「そのとおりです」


 あーあ、本当にバカな連中だね。欲の皮を突っ張らせると、寿命が縮むって知らないのかな? 取引をして、そのついでに情報を聞き出そうと思ったけど、これはさくらちゃん好みの展開になってきたようだね。さて、続きはどうなっているかな?



「今、手下は何人いるんだ?」


「すでに10人ほど倉庫内に待機しています」


「もう少し集めて、手早く方を付けろ。方法はお前に任せるぞ」


「承知しました。今配下の者を集めます」


 ますます面白くなってきたよ! 鴨がネギを背負って、さらにお友達も集めてくれるみたいだね。どうやら配下の手配を終えて、二人が部屋に入ってくるみたいだね。襲撃の準備が終わったのかな?


 このまま素知らぬフリをして、交渉に入ろうか。



「待たせたな。金額を弾き出すのが難しかったからな」


 なにが金額だか…… さくらちゃんに手を出す相談をしていたくせに。


 仕方がないから、もうちょっと話し合いに付き合ってやろうか。


 すでにさくらちゃんは、商談後を楽しみにしているんだよぉ! でも、まだ知らん振りだからね。



「私が納得する金額だといいね」


「精一杯努力したんだぜ。金塊5本、〆て5千万でどうだ?」


「うーん…… もうちょっと高いと思ったけど、まあいいか! 現金しか受け付けないよ」


「今用意する。しばらく待ってくれ」


 地金としての実際の価値なら1億円近いんだけど、この際半値でもいいかな。どうせダンジョンから持って帰った物だしね。異世界の冒険者ギルドでも、延べ棒1本で金貨1000枚と言われたんだよね。


 異世界の金貨の価値は、1枚が大体1万円だったから、それほど相場から外れてもいないよね。でも、どうやらここから先は、命の取引きになりそうで、さくらちゃん的にはお待ちかねの時間だよ!


 おや、ドアが開いてシャオミンが戻ってくるね。シャーク・リーの指示でお金を取りにいったんだよ。重たそうなカバンを持っているよ。きっと金庫は別の場所にあるんだね。あとから探してみようかな。



「約束の金額だ。5千万あるから確かめてくれ」


「どれどれ」


 おお! 諭吉さんが大量に集合しているよ! これはテンションが上がるね! 札束をいくつか引き抜いてペラペラと中身を確かめるけど、どうやら本物の1万円札の束だね。すかさずアイテムボックスに仕舞っちゃうよ! これはもうさくらちゃんのお金だからね! またどこかの食べ放題に出掛けようかな。



「オーケーだよ! これで取引成立だね。それじゃあ、用事が済んだから、私は帰るよ!」


「また、いい話があったら、いつでも来てくれ」


「そうだね、面白い話があったら、また来るかもしれないよ」


 シャーク・リーに見送られて、そのまま私は事務所を出るよ。薄暗い倉庫の中の気配を探ると、建物のあちこちに手下が隠れているね。念のために両手には篭手を嵌めておくかな。さて、そろそろ始まりそうだから、張り切っちゃうよぉぉぉ!



 ガシャン!


 天井の照明が一斉に点灯すると、一瞬、その眩しさに視覚を奪われるよ…… 普通の人はね。視覚を奪われるのは、致命的な隙だよね。


 でも、さくらちゃんには効果がないんだ。両目ともバッチリ見えているから、まったく問題ないんだよ。



「そこのガキ! 大人しく手を上げろ!」


 キター! お楽しみの始まりだよぉぉぉぉぉ! トカレフを構えたチンピラが3人出てきて、私の目の前に立ちはだかっているね。その他にも、用心深く10人以上を、貨物の陰に伏せているようだし、本当にオイシイ連中だよね。



「バカが揃っているね! 大人しくしていれば、生きていられたのに。さくらちゃんに銃を向けたら、お前たちはお仕舞いだよ! これが最後の警告だからね!」


「たった一人で、銃を相手に何が出来るんだ?! バカなガキだな」


「まあいいよ! すぐにわかるからね。それじゃあ、いくよー!」


 さくらちゃんは、早速動き出すよ。


 もちろん、目の前に立っている男たちには、私の姿なんか捉えられないね。15メートルの距離なんか、あっという間に詰めちゃうんだよ。男たちが気が付いたときには、さくらちゃんは拳を引いて攻撃態勢を固めて…… それっ! 3連発で食らうんだよ!



「わごっ!」


「ぶはっ!」


「げわっ!」


 死なないように力を加減したから、口から泡を吹いて気絶しちゃったね。こいつらは、まだ使い道があるから、今は生かしておくんだよ。



「なんだ! あの化け物は! 撃て! 構わずに撃ちまくれ!」


 パンパンパンパンパンパンパン!


 なんだか四方からいっぱい銃弾が飛んでくるねぇ。ホイホイホイっと! 飛んでくる弾は、いつものように簡単にキャッチしちゃうんだよ! 斜め後ろ! 右! 真後ろ! また右! どんな方向から飛んできても、無駄無駄無駄!


 ついでに何発か投げ返しちゃうよ!



「ギャァァァァ!」


「ウゲェェェェ!」


「痛ぇぇぇぇ!」


 ほらほら、そこら中から悲鳴が上がっているよ。おや、今度は左か! 次は斜め右だ!



「ぐへぇぇぇぇ!」


「ギャァァァァ!」


 また投げ返したら、二人倒れたね。簡単なもんだよ。あっという間に、貨物の陰に潜んでいた男たちは片付いたよ。致命傷は与えていないから、そこら中に呻き声が響いているよ。少しは懲りたかな? でも、本当の恐怖はここからだよ。

 

 さくらちゃんは今出てきたばかりのドアに引き返していくよ。もう猫を被る必要はないからね。いつも元気なさくらちゃんだけど、敢えて低い声を出すよ。



 バタン!


「シャーク・リー、これはどういうつもりなのかな? さくらちゃんを銃弾で歓迎するなんて、中々いい根性をしているね」


「お、お前は…… なんで生きているんだ?!」


 呆然としているシャーク・リーだけど、その横に立っているシャオミンのほうが根性が据わっているね。懐からトカレフを取り出して、私に向けて躊躇なく発砲してくるよ。



 パンパンパンパンパンパンパンパン!


 弾倉が空になるまで撃ち込んできたけど、さくらちゃんの右手は全ての銃弾を握り締めているよ。シャオミンは特に焦った様子もなく、ポケットから予備の弾倉を取り出して、私に向けようとするね。どうやらこいつは、シャーク・リーの懐刀兼ボディーガードだね。たぶん正体は殺し屋だろうと思うよ。



 バラバラバラバラバラバラ!


 さくらちゃんが握っていた拳を開くと、銃弾が床に落ちていくね。銃なんか全然効果がないと、わかってもらえたかな?



 パンパンパンパンパンパンパンパン!


 シャオミンは、性懲りもなくまた撃ってきたよ! 面倒だから、もういいや。それっ!



「グガッ!」


 投げ返した銃弾は、シャオミンの額にめり込んで真っ赤な血を吹き出しているよ。脳まで達しているから、即死しちゃったね。ご愁傷様でした。



「さて、色々と聞きたいことがあるから、こっちに来るんだよ!」


 さくらちゃんは、ガタガタ震えているシャーク・リーの襟首を掴まえて、事務所の外に出て行くよ。そこには怪我をして呻いている男が、大勢倒れているね。



「さて、私が聞きたいのは、16Kを取り仕切るボスの名前だよ! 素直に吐けば命は助けるけど、シラを切ると痛い目にあうからね」


「知らん! 知っていたとしても、お前には言わない!」


 おやおや、これだけ力の差を見せ付けたにも拘らず、ずいぶん強気な態度だね。しょうがないなぁ、さくらちゃんは実に気が進まないけど、しゃべってもらうためには止むを得ないよねぇ。本当にしょうがないなぁ、気が進まないよなぁ。それっ!



 ビシッ!


「ガッ!」


 さくらちゃんのポケットには、さっきシャオミンが撃った銃弾が入っているんだよね。それを1個取り出して、呻いている男に向けて指で弾いちゃったよ。勢い余った銃弾は、男の頭を貫通して倉庫の壁にめり込んでいるね。


 この様子を見ていたシャーク・リーは、ますますガタガタ震えているね。全て正直に吐く気になったかな?



「しゃべってもらえるかな?」


「何も言わない! 絶対に言わない!」


 しょうがないなぁ。それじゃあ、もう一人! ビシッ!



「口が裂けても言えないんだぁぁぁぁ!」


「そうなんだ、私としてもまことに不本意なんだけど、お前がしゃべるまで何人でも犠牲にするよ。手下がいなくなったら、最後はお前自身だからね」



 ビシッ! バタン!


 ほら、また一人、額を貫かれて倒れ込んだよ。一人ずつ消えていって最後は自分の番だというのは、精神的にキツいよね。異世界でもこの方法で、大概の人間は口を割ったよ。銃弾がなかったから、代わりに石ころを使ったんだけどね。



「もう止めてくれ! 話す! なんでも話す!」


「ほうほう、いい心掛けだよ! ボスの名前は?」


「アフロディアだ。本名は知らない。それ以外は何も知らないんだ。本当だから、もう勘弁してくれ!」


 涙を流しながら、跪いて懇願する姿は哀れだね。まあいいか、通称だけでもわかったから、何かの手掛かりになるよね。


 さて、死体が転がっているから、回収をお願いしようかな。副官ちゃんに連絡すれば、保土ヶ谷から一個中隊が出動する手筈だからね。シャーク・リーもこのまま引き渡そうかな。倉庫内にある貨物にもガサ入れを行う必要があるだろうしね。面倒だから、その辺は丸投げしようっと。これ以上欲張ってもしょうがないしね。それよりもさくらちゃんは、早く晩ご飯を食べたい気分なんだよ。


 あっ、そうそう! 金の延べ棒も回収しないとね。お小遣いも手に入ったし、手掛かりも掴めたから、結果オーライにしておこうかな。


 こうして、死者5人、重傷者16人を出したさくらちゃんの情報収集は、終わりを告げるのでした。


 めでたし、めでたし。



無事に(?)目的を果たしたさくら、次回はいよいよ香港に乗り込むのか…… 投稿は今週末を予定しています。どうぞ、お楽しみに!


たくさんのブックマークをお寄せいただきまして、本当にありがとうございました。引き続き皆様の応援を心からお待ちいたします。


広告の下にある『評価する』というアイコンをクリックして、点数を入れていただくと、作者がとても喜びます。テンションマックスで次の話を書き上げると思いますので、どうぞお試しください。


新型肺炎に関する話題は、もしかしたら短編にまとめて投稿するかもしれません。もう少々情報を収集しますので、しばらくお待ちください。皆様、どうか健康には留意してお過ごしください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] きっちり金塊回収するの抜け目がなくてそこらのアホの子との違いがはっきり分かんだね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ