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146 親衛隊の本音?

核攻撃が再び・・・・・・

 海南島では・・・・・・


 俺たちは香港攻略戦に先立つ陽動作戦の結果について司令からレクチャーを受けている最中だ。



「済州島から発射された米軍のトマホークミサイルは約4割が中華大陸連合の迎撃網を潜り抜けて、天津、青島、南通の郊外にある敵基地に着弾した。被害状況は正確にはわからないが、少なくとも基地の半分は吹き飛んでいると考えていいだろう。陽動作戦の第1段階としては上々の出来と言える」


 さすがは米軍だね。数に物を言わせたミサイルの乱れ撃ちで、3都市の陸軍基地に相当な被害を齎したようだ。いきなり攻撃を受けた中華大陸連合は泡を食っているだろうな。黄海沿岸部に中華大陸連合の注意を引き付けるという当初の目的は十分に果たしている。



「黄海沿岸部のミサイル基地と航空基地から済州島に向けた攻撃があったそうだが、これらは無事に撃退して当方に被害はない」


 これは双方の武器の性能差から言っても当然の結果だな。日米の兵器性能は、10年前から足踏みをしている中華大陸連合を遥かに上回っている。殊に予算の関係で物量に頼れない日本国防軍は、航空機やミサイルの高性能化に真剣に取り組んできたから、戦争が本格化してきた現在その努力が実を結んでいる結果が明らかとなっている。中華大陸連合から見れば、それは悪夢が現実の形となったかのような状況かも知れないけど。


 ここまで話を進めた司令だが、ちょうどこの時ドアをノックする音が響いて、部屋に緊張した表情で書類を手にした通信担当の国防海軍将校が入室してくる。彼がA4用紙3枚程度にまとめられた何らかの報告書を手渡すと、その内容を読んだ司令の表情が見る見る険しくなってくる。



「少々問題が発生した。中華大陸連合は泉州、蘭州両基地から弾道ミサイルの発射を急いでいるという情報が入ってきた。黄海沿岸部を済州島から攻撃された報復と考えていいだろう。問題はその数にある。両基地からは弾道ミサイルの在庫を空にするつもりで打ち込んでくるようだ」


 泉州基地とは妹たちがこっそりと展開している福建省にある。対して蘭州基地とはアイシャの故郷であるウイグル自治区だ。ここから発射される弾道ミサイルは距離の関係で迎撃する時間的余裕が多少はある。したがって一番問題となるのは泉州基地だな。沖縄なんてあっという間の距離しかないから、ここが無事だと相当厳しい局面を迎えるだろう。



「司令、具体的な数ははっきりしているんですか?」


「楢崎訓練生、いい質問だ。約100基のミサイルが発射準備を整えているようだ。さすがにこの数は迎撃に手間取りそうだ」


 100基も一度に発射しようというのか! 弾道ミサイルということはその弾頭には通常爆薬が搭載されているとは考え難い。100発もの核ミサイルが飛んでくるという緊急事態がこれから起きようとしているのか。標的は当然日米のどちらか、あるいは両方と見るのが必然だ。以前中華大陸連合が大量のミサイルを日本へ向けて発射したが、あの時は中距離巡航ミサイルが中心で、核を搭載可能な弾道ミサイルは泉州から20基とロシア方面から20基の合計40基だった。


 それが今回は2倍以上の規模で発射されるとなると、さすがにこれは一大事だぞ。もし全てのミサイルが日本へと向かったら、何発かは迎撃網を潜り抜けるかもしれない。魔力砲の2号機が完成したとは言っても、宇宙空間を高速で飛翔する弾道ミサイルが相手だ。殊に泉州基地から発射されるミサイルは迎撃可能な時間はほんの僅かで、時間的な制約の中では魔力砲で撃ち落せるのは30~35基が限界だろう。これが実際にミサイル撃墜オペレーションを担当した俺の実感だ。だが状況は中華大陸連合にだけ有利に働く訳ではない。



「司令、そういえば現在さくらたちは泉州方面を攻撃している最中でしたが、戦況に関する報告は入っていますか?」


「残念ながら隠密行動に徹しているので通信も封鎖している。こちらから連絡を入れて敵に位置を教えるのは不味いからな。だがあいつらならば必ずやってくれると信じている。さくら訓練生が率いる別働隊が発射時間までにミサイル基地を抑え込んだら、日本に到達するミサイルは蘭州基地からの50基のみとなる。全て迎撃する可能性は大幅に上昇するだろう」


「想像を絶する斜め上の結果を出しそうで不安なんですが、今はさくらたちに任せるということでよろしいでしょうか?」


「現状ではそれがベストだ。我々は別働隊の働きを信じて自らに課せられた作戦に集中しよう」


 確かに妹たちの活躍に期待するのが一番かもしれないな。不安を感じない訳ではないが、あいつは食事と暴力に限っては絶対に妥協しないやつだ。必ず時間までにミサイル基地を攻略してくれる筈だ。唯一の懸念はフィオが参加できなかった点だ。行動を監視する人間がいないと、妹がやりたい放題でとんでもない結果を招く可能性がある。


 しかし、今は妹たちに賭けるしかない。もちろん米軍に要請して先制ミサイル攻撃を実施するのが最も安全で簡単な手法だとわかっているのだが、そうすると香港攻略に使用するミサイルを振り向けることとなる。いくら米軍が大量のミサイルを準備していても、艦船に搭載できる量は限りがある。泉州に向けて使用すると、再びミサイルの積み直しで作戦行動が大幅に遅れてしまうのが一つの理由だ。もう一つ理由として挙げられるのは、ミサイル攻撃ではどの程度基地を破壊したのかすぐには確認できないという点だ。僅かでも発射機能を残してしまうと、日本へ向けてミサイルが飛んでくるという事態を容易に招いてしまう。


 その点、陸上から接近している妹たちならば、完膚なきまでに基地を破壊してくれる筈だ。その点に関して、俺は妹に絶対的な信頼を置いている。戦い以外には何一つ信頼が置けない妹であるが、今回ばかりはお前の肩に日本の運命が懸かっている。どうか一刻も早く泉州ミサイル基地を破壊して欲しい。










 中華大陸連合統合軍の福建省司令部では・・・・・・



「泉州市街地に送り込んだ機械化装甲師団の動きはどうなっている?」


「司令、それが急に連絡が取れなくなりました」


「どういうことだ? 一個師団と連絡が取れない状況など簡単には発生しない筈だ」


「状況確認に追われていますが、通信の端々に『敵襲』という発言が度々ありました。強大な力を持つ敵に襲撃されて、通信不能の事態に陥ったものと思われます」


 司令官は頭を抱えている。機械化装甲師団といえば陸上に限れば最強の兵力といっても差し支えない。それが1時間も経たないうちに通信不能の事態に追い込まれるなど、彼の想像力の範疇から大幅に逸脱していた。そこに新たな通信が入ってくる。



「司令、統合軍作戦本部から緊急暗号文です! 内容を解読します」


「うむ、急いでくれ」


「解読結果をお伝えします。泉州ミサイル基地の弾道ミサイルを全基日本へ向けて発射せよ。半数は東京に向けて、残りは西部の地方都市を標的とせよ」


「なんだと! この緊急事態にミサイル発射の指令だと! この忙しい時に何ということだ!」


 司令官は目を剥いて驚きの表情を顕にする。正体不明の襲撃者に手を焼いているところに以ってきて、弾道ミサイルの発射という手間のかかるミッションを与えられたのだから、彼が驚くのも無理はなかった。だがいつまでも驚いてはいられない。彼はすぐに気持ちを立て直して、ミサイル発射の命令を下す。



「弾道ミサイル発射準備に取り掛かれ」


「了解しました。市街地に侵入している襲撃者はいかがいたしますか?」


「この際ミサイル基地の防衛が最優先だ。動かせる残りの戦力を全てミサイル基地の防衛に回せ!」


「了解しました」


 だが司令官の脳裏に一抹の不安が過ぎる。送り込んだ一個師団を1時間で撃破した襲撃者に対して、残った僅かな戦力でミサイル基地を持ち堪えるのが可能かどうか? 答えは当然否である。この際恥も外聞もなく統合軍の中央に支援を求めるしか残された道はない。些か遅きに失した感はあるが、無事に弾道ミサイルを発射するまでは何としてでも持ち堪えるしかないのだ。



「統合軍作戦本部に伝えよ。我々は謎の襲撃者によって陸上戦力が苦境に陥っている。ミサイル基地警護のために増援を願う」


「了解しました。増援要請を伝えます」


「それでよい」


「作戦本部から了承の連絡が入りました。8時間以内に増援を送り込むそうです」


「ずいぶん時間が短いな。それ相応の戦力でないと守りきれないぞ」


「その点に関しては作戦本部の意図は不明です」


「仕方ないな。本部の意図をこの場で考えてもどうにもならないだろう。我々もミサイル基地に移動するぞ。この司令部には連絡員のみを残して全員移動せよ」


「了解しました」


 こうして福建省司令部は陸軍基地から戦略ミサイル基地へと移動を開始する。弾道ミサイルの発射に関しては、省の最高指揮官がボタンを押す取り決めになっているための措置であった。 




 司令部がミサイル基地へと移動してから7時間半後、同基地に一機のヘリが降り立つ。機内から現れたのは軍装ではなくてマントを羽織った奇妙な人物であった。彼は周囲を一瞥すると、そのまま基地内の建物へと姿を消していった。









 一方、市街戦を制したさくらたちは・・・・・・



「いい感じでお腹がいっぱいになったから、空軍基地に向かって進軍するよ! みんな調子は大丈夫かな?」


「主殿、我はキツネうどんを食していないので、もう一つ気持ちが乗りませぬぞ」


「妾は主殿から賜ったプリンなる物を食して満足なのじゃ!」


「ここは戦場なんだから、ポチは富士に帰るまで我慢するんだよ。その分稲荷寿司を多めに渡しているんだからね!」


「御意、しばらくはこれで辛抱いたしまする」


 ポチはやっぱりキツネうどんなんだね。さすがに麺類はアイテムボックスに入れたくなかったから、用意しなかったんだよ。お汁がこぼれたら嫌だからね。この機会にポチも好き嫌いをなくして何でも食べるといいのにね。



「親衛隊と新入りも大丈夫かな?」


「ボス、次の戦いでは無様な姿を見せないようにします!」


「教官殿! 船酔いさえなければこちらのものです!」


 親衛隊は中々自己評価が辛いね。初陣であれだけ動ければ普通は合格点なんだよ。今回の遠征は経験を積んで無事に帰るのが一番の目標だからね。最初からそこまで無理する必要はないよ。その分はこのさくらちゃんが精一杯頑張るからね!



「それじゃあ出発するよ! 装甲車に乗り込め!」


「了解しました!」


 こうして空軍基地に向けて出発したんだよ。私とポチは相変わらず装甲車の屋根から見張りをして、時々やってくるヘリや戦闘機を撃ち落していったよ。慣れると戦闘機の撃墜なんて簡単なものだね。要は飛んでいく先に魔力弾をばら撒いてやれば、自分からそこに突っ込んでいくんだよ。さくらちゃんの野生の勘が確実に墜落へと導いていくから、もうこれは携帯型の地対空ミサイルを大量に抱えているのと一緒だね。相手が空を飛んでいても私のワンサイドゲームだよ! さくらちゃんはこうしてますます無敵に近づいてしまったね!


 2時間くらいすると空軍基地が見えてくるね。ちょっと手前で停車して高いビルの屋上から様子を窺うと、基地の内部には殆ど機影が見当たらないよ。どうやら飛び立てる機体は別の場所に避難したのかもしれないね。



「ボス、攻撃方法はいかがいたしますか?」


「それほど大した目標という訳じゃないね。面倒だからここから格納庫と管制塔を破壊しちゃおうか」


「ボス、地下に重要な機体を隠している可能性も考えられます」


「もちろん攻撃後に敷地に突入するよ。人員諸共きれいに叩き潰すからね」


「我々の活躍場面が再び来るのでありますね! 腕が鳴ってくるであります!」


 親衛隊がまたまた張り切っているよ。何でこんなに好戦的なんだろうね? 私はこんな風に育てた覚えはないよ。ちょっとだけ戦いの方法を指導しただけなのに。本当に困ったもんだね。



「親衛隊の諸君! 君たちはもうちょっと戦闘に関して自重する気持ちを持った方がいいんじゃないかな? 私はそこまでみんなに厳しく指導したつもりはないんだけど」


「ボス、お言葉ですが、あの訓練が厳しくないと言うのだったら、海兵隊のブートキャンプは幼稚園のお遊戯です!」


「ギリシャ時代のスパルタの戦士育成法が母親の子守唄になってしまうであります!」


「レンジャーの訓練が朝食前に終わってしまうレベルですよ!」


「いや、特Sの訓練でさえトイレに行っている時間に終わるだろうな」


「回復水を何回飲んだか覚えていられないんだからな。普通に死ねるよな」


 おかしいね・・・・・・ この子たちは一体誰にここまで追い詰められてんだろうね? ちょっと私にはわからないよ。まだまだ親衛隊の過去を振り返る言動が続くね。



「演習場に普通に衝撃波が飛び交うのが当たり前だからな」


「吹き飛ばされると壁に激突して運が良くて骨折、意識不明の重体に陥るのも1日に1度や2度ではないであります!」


「ボスの直接攻撃が掠っただけでも、三途の川を何度も垣間見たからな」


「お手軽に臨死体験を味わえるのは、特殊能力者部隊ならではだよ」


「こんな不幸を味わうのは出来れば私たちで最後にしてもらいたいものだ」


 なんだか親衛隊たちの本音が次々に口から漏れ出ているよ。おや、ここまで黙っていた新入りが何か言いたそうだね。



「親衛隊の姉さん方、俺は上空100メートルに何度も打ち上げられたんですよ! どうかその恐怖を理解してください!」


「「「「「デスヨネー!」」」」」


 なんだか親衛隊と新入りが奇妙な連帯感で結ばれているよ。最初は仲が悪かったのに、今はこうして打ち解けているんだね。これは思わぬ良い効果だね。おやおや、このやり取りを聞いていた長野中尉が慈悲に満ちた表情をしているね。



「俺たちはただの特殊部隊で本当に良かったと思っているよ」


 何だろうね? さくらちゃんにはどうにも理解不能だよ。何で親衛隊や新入りが特殊部隊の皆さんから同情を集めているんだろうね。どうも空気がおかしいから、ここは簡単にまとめて攻撃を開始しようかな。



「終わったことはどうでもいいんだよ! 私の訓練があったから、こうして無事に生きていられるんだからね!」


「「「「「「そうです! 全てはボスのおかげです!」」」」」」」


 おやおや、急に声が揃ったね。私に感謝しているその気持ちは十分伝わったよ!



「さすがは我が主殿! 一身に尊敬を集めておられるぞ!」


「正にその通りなのじゃ! 妾がここにおるのも全ては主殿のおかげなのじゃ!」


 よしよし、いい感じにポチタマがまとめてくれたよ! 相変わらず特殊部隊の皆さんからは生温かい視線が注がれているけど、この際どうでもいいね。さて、それじゃあここから狙撃を開始しようかな。



「それじゃあ、派手にぶちかますよ!」


 擲弾筒を構えると、最大威力で次々に撃ち出しちゃうよ! それそれ! どんどん飛んでいけぇぇ!


 

「おお、いい感じに火柱が上がっているね」


 ここから見える範囲の格納庫と管制塔の建物が倒壊して赤々と炎が上がっているね。慌てふためいて消化に駆け付けようとする兵士の姿があるけど、お構いなく擲弾筒を放っていくよ。うんうん、いい感じに人も巻き込んで大爆発しているね。



「さくら訓練生、あとは滑走路を破壊すればいいでしょう」


「そうだね、滑走路破壊用の爆弾はアイテムボックスに入っているから、このまま基地に突撃しようかな」


 こうしてさくらちゃん軍団は砲撃を受けて混乱する航空基地に突撃を敢行するのでした。




いよいよ次回はミサイル基地へと突入か、そしてマントを羽織った謎の人物の正体は・・・・・ 投稿は週の中頃の予定です。どうぞお楽しみに!


そういえばこの現在小説の舞台となっている南シナ海で、核爆発の兆候を確認したとの情報がネットの一部を駆け巡っています。未確認情報が多くて、フェイクニュースではという意見もあるようですね。全く正体不明の情報ですが、現実が次第にこの小説に近づいてくるような不気味さを感じます。


暴力や戦争はあくまでも小説の中だけで留まっていて欲しいですね。作者は単なる読み物として書いているだけですから、けっして好戦的な人間だと誤解しないでください。


たくさんのブックマークをいただいてありがとうございました。評価や感想なども是非ともお寄せください!

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