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108 市内突入

敵の海軍基地で暴れ回る主人公たちは三亜市内に突入を企てるようです。果たしてその結果は・・・・・・



 三亜海軍基地で暴れ回っている聡史たちは・・・・・・



「司令、この建物の制圧も完了しました」


「ご苦労だった。施設に被害を出さずに人員だけを排除できたようだな」


「あとは軍港に停泊している艦船だけですが、どうしましょうか?」


「可能な限り無事に確保したいが、抵抗が激しいようならば遠慮なく破壊する」


 施設内の守備隊を殲滅した俺たちは艦船が停泊している港へと向かう。美鈴が結界を基地全体に展開しているから海上と言えども自由に外には出られない筈だ。俺たちが港に向かうと桟橋には合計7隻の艦船が停泊している。海洋警察の白く塗装された巡視船が3隻と海軍の小型ミサイル艇が2隻、あとは輸送艦らしき大型の船体があるな。



「楢崎訓練生、どうやら我々は歓迎されてはいないようだな」


「俺が前に立ちましょうか?」


「そうしてくれ」


 巡視艇やミサイル艇、更には輸送艦の甲板にまで小銃を構えた兵士がずらりと銃口を向けて待ち構えている。全員が水兵だからそれほど銃の扱いなんか訓練していないだろうに、それでも全員が決死の形相でこちらを睨み付けているよ。小銃だけならまだ可愛いが、船の側舷に据え付けられている対空機銃までがこちらを向いている。



「撃てぇぇぇ!」


 甲板に並んでいる兵士たちの小銃と機銃が一斉に火を噴いて俺たちに銃弾の雨を降らせてくる。俺は体を包み込んでいる魔力をちょっとだけ広げて司令も一緒にバリアの内部に入れているから、この程度の攻撃では何の影響もないな。



「楢崎訓練生、これでは埒が明かない。少々惜しいが、一思いに潰してくれ」


「俺がやっていいんですか?」


「任せる」


 しょうがないなぁ・・・・・・ 司令から『やれ』と言われてしまったらやるしかないよな。かといって魔力バズーカでは基地全体が吹き飛んでしまうから通常の魔力で片付けるとするか。魔力の量に注意して最小限で済まさないとな。こんなもんでいいか、俺は自分の拳に魔力を纏わせると一気に一番手前の輸送艦目掛けて突き出す。



 キーーーン! ズドドドーーン!


 拳から放たれた約300万の魔力の塊が命中すると、桟橋に停泊していた輸送船の船体に直径15メートルの抉れた穴が開いている。その部分の剛性が弱まった結果、被弾した直後に船体が真っ二つに折れてしまったな。俺の拳から飛び出た魔力が船体を抉った余波を受けて、その後方に停泊していた同型艦は甲板上の構造物をきれいさっぱり撤去されている。良かったな、これでいずも型の輸送艦と同じ姿に変身したぞ。艦橋までなくなってしまって航行は不可能だけど。


 あっ、そのまま直進した勢いで俺の魔力が美鈴の結界を突き破ってしまった。急に結界が破れて美鈴が慌てているかも知れないな。



「楢崎訓練生、あちらのミサイル艇と巡視艇も片付けてくれ」


「了解しました」


 反対側の桟橋に停泊している巡視艇とミサイル艇も同様の方法で黙らせる。というよりも小型のミサイル艇なんか一撃で骨格だけを残して内部が丸裸になっている。これはもう鉄屑の価値しか残ってはいないな。巡視艇の方はまだ幾分形を残してはいるが、あっという間に船体に開いた穴から水が流れ込んで着底しているな。甲板にいた筈の乗組員は衝撃で全員海に吹き飛ばされている。命があったら自力で泳いで岸壁に辿り着くんだぞ。たぶん即死しているだろうけど・・・・・・



「ご苦労だった。これでもうこの基地は機能が残っていないな。西川訓練生と合流しよう」


「はい」


 俺たちは来た道を引き返して美鈴が待機している場所に向かう。そしてそこには人っ子1人いなくて、美鈴がポツンと立っているだけだった。



「美鈴、誰も逃げてこなかったのか?」


「大勢来たわよ。でも1人残らず灰になったわ」


 そうでしたか・・・・・・ 美鈴がいる所に逃げてきたらそれはそうなるだろうな。大魔王様の暗黒の炎で真っ白な灰になるまで燃やされるんだよな。つくづくご愁傷様でした。南無南無・・・・・・



「西川訓練生、この基地はしばらく結界で封印してくれ。誰も入らないようにして欲しい」


「わかりました。誰かさんの魔力のおかげで結界が破れてしまったので、新たに張り直します」


 やっぱり俺のせいだって承知していたな。美鈴だったら見ていなくても何が起きたかなんてお見通しだよな。それはともかくとして、こうして美鈴によって新たな結界が張られて三亜海軍基地は封印される。俺たちは再びオンボロトラックに乗り込んで、来た道を引き返して三亜市の市街地に向かうのだった。



 軍港に繋がっている一本道を抜けて幹線道路に出ようとすると、市街地に向かって走行する軍用車両の隊列が続いているのが目に飛び込んでくる。おそらく海岸に陣地を築いて俺たちの上陸を阻止しようとしていたんだろう。だがこうして上陸を許してしまった以上はいつまでもその場に留まっているのは無意味だ。慌てて陣地を撤収して市内の防衛に転進するのだろう。



「いいタイミングだ。手土産代わりに潰しておこう。私1人で行ってくるからこの場で待っていろ」


「了解しました」


 俺たちを残して司令は1人で飛び出していく。下手に『気をつけてください』などと声を掛けようものなら『私を誰だと思っているんだ!』とぶっ飛ばされるのは間違いない。俺と美鈴はその辺の司令の性格が嫌という程わかっているから、敢えて何も言わずに送り出した。一本道の両側には鬱蒼と茂った熱帯の樹木の森が広がっていて、オンボロトラックは木の陰に隠れるように停車している。車内で手を振って待っているだけの俺たちを尻目に、指令の姿はあっという間に見えなくなった。


 そしてしばらくすると遠くから連続した爆発音が聞こえてくる。森が邪魔をしているので状況を確認できないが、司令が景気良く魔力銃をぶっ放しているんだろうな。



「聡史君、司令は凄い張り切りようで飛び出していったけど、大丈夫なのかしら?」


「敵の車両はたぶん全滅しているだろうな。あの司令を相手にして通常戦力で対抗する方法を俺は全く思い付かない」


「それは私や聡史君も一緒でしょう! 小規模の敵だったらそろそろ掃討が済む頃よね」


「そうだな」


 そのとき俺たちの耳に通信が入ってくる。これは駐屯地の技術課が開発した魔力通信機による連絡だ。半径10キロ程度だったらクリアな通信が可能な優た機能を有している。



「私だ。敵の車両約20台を殲滅した。なお1台を動ける状態で確保しているからこちらの車両に乗り換えるぞ。至急トラックを捨てて合流せよ」


「了解しました」


 さすがは司令だよな。仕事が早い上に新たな移動手段まで確保しているよ。さすがにこのオンボロトラックには辟易していたので助かったな。腐った魚の臭いともようやくおさらば出来るぞ。



 俺と美鈴が徒歩で現場に向かうと、そこには地獄の光景が広がっていた。完全に破壊された装甲車や兵員輸送車両が炎を上げながら横転して横腹を晒している。車内から放り出された兵士の残骸と思しき物体が道路いっぱいに広がって、肉が焦げる嫌な臭いが周囲に充満しているのだった。



「面倒だから一気に分解してしまいましょう。黒蝕無葬懺!」


 美鈴の手から暗黒と言うのも憚られる深淵なる波動が放たれる。これは御殿場のホテルでバチカンの騎士を葬った魔法だ。万物を蝕み分子単位まで分解する暗黒魔法の極致だ。今回はあの時よりもより広範囲に放っている。俺がいるから美鈴は魔力の大盤振る舞いを繰り広げているな。もしかして目的は魔力補給のための口移しなのか? それは俺としても望むところだぞ! ぜひ魔力をじゃぶじゃぶ使ってくれ!



「片づけを任せてすまなかったな。この車に乗ってくれ」


 司令はすでにハンドルを握って俺たちが乗車するのを待っている。ジープ型の車で後方に20ミリの大型機銃が設置されている車両だな。オープントップで外から車内が丸見えだけど、俺たちは迷彩柄の戦闘服姿だからかえって自然に見えるかもしれないぞ。軍用の車両に兵士が乗り込んでいるのは当たり前だからな。国籍は違うけど・・・・・・




 こうして敵の車両に乗り込んだ俺たちはさして怪しまれることもなく三亜市内に再び入り込んでいく。オンボロトラックで軍港に向かった時は高速道路を通過しただけで街中の景色など見ている暇がなかったけど、こうして改めて観察するとかなり大規模な近代都市が広がっているな。リゾート地として開発の波が押し寄せた結果このような大きな街に発展したんだろうけど、今はそのリゾートに訪れる人もいなくなって閑散とした印象を受ける。平和があってこそ観光業が成り立つんだよな。その平和を自ら破って周辺の各国に侵攻したのは中華大陸連合だから、自業自得とはこのことだろう。



「下からでは街の様子がわからないな。どれ、あそこのビルの屋上に行ってみようか」


「了解しました」


 司令が指差す先には30階建てくらいの高層ビルがある。ざっと見た中では市内にあるビルの中で5本の指に入る高さだろう。車をビルの正面に横付けして降りてみると、どうやら元々はオフィスビルだったが、今は閉鎖されているようだ。経済が順調な頃にはきっと多くの会社が入居していたのだろう。


 閉ざされている正面入り口は諦めて俺たちは建物の裏側に回ると、そこには通用口のような小さな入り口がある。



「よし、ここから入り込むぞ」


 ガシャーン!


 やると思いましたよ。司令はそのドアをあっさりと蹴破っている。その音を聞きつけて警備員が慌てた表情で飛び出してきたけど、戦闘服を着た俺たちの姿を見てすぐに引っ込んでしまった。すでに島内の一般市民にも日米の侵攻が開始されているのが周知されているんだろうな。軍の行動を邪魔するなという命令が出ていると解釈しておこう。俺たちは日本の国防軍だけど、一般市民には自分の所の軍隊とパッと見では区別なんか付かないだろう。


 メインのエレベーターは停止しているので、俺たちは警備員に案内された管理用のエレベーターに乗って屋上に出る。うん、中々いい眺めだな。市内を一望できるぞ!



「北東の方向から市内に向かってくる部隊があるな」


 双眼鏡を覗いている司令が指差す方向には大規模な陸上部隊が移動してくる様子が映っているらしい。俺も双眼鏡を取り出してその方向を見ると、旅団規模の部隊が市内目掛けて車両を連ねて移動してくる様子が飛び込んでくる。



「司令、どのように対処しますか?」


「しばらくは様子見だな。どこに拠点を設置するかで戦術が変わってくる」


 なるほど、大変勉強になります! このまま観察を続けながら拠点となる箇所を見極めるんですね。本当に頼りになる司令官で良かったよ! 危険な行動も多々あるけど、こうした戦術眼は相当なものだと感服いたします!



「司令、休憩がてら食事を取るのはどうですか?」


「西川訓練生、いい提案だ。腹を満たす時間を惜しんでいてはまともな戦闘など出来ないからな」


 こうして俺たちはビルの屋上で敵の陸上部隊が移動する様子を観察しながら食事を開始する。時刻は1400を回っているからかなり遅めの昼食だな。美鈴がテーブルを準備して、ひと時の戦いを忘れる時間が流れる。


 こうして至極のんびりとした昼食が終わって食後のお茶を飲んでいると、双眼鏡を覗いている司令が言葉を発する。



「どうやらあの建物を陸上部隊の拠点にするつもりのようだな」


「ホテルのような建物ですね」


 俺の双眼鏡に映るのは海辺に建てられたまさにビーチリゾートというキャッチコピーが適切なホテルだった。敷地は周囲10キロ近い広大な面積に真っ白な砂浜やヤシの木の並木道が続いている。3棟の高層の宿泊棟が所在しているので、何千人もの兵士だろうが寝泊りは可能だろう。ホテルなのにその場にいるのは兵士ばかりで観光客の姿が全くないのはなんだか奇妙に映るな。



「おあつらえ向きのロケーションだ。敵の全部隊が移動を終えたら攻撃を敢行するぞ」


 司令官がニヤリと笑っているよ。危ない笑い方だな、一体どうするつもりなんだろう? 嫌な予感しかしないぞ!


 やがて移動を終えた3000人程の部隊は広大な駐車場に整列してこれから市内に散っていく準備に掛かるようだ。中には先陣を切って戦闘車両に乗って移動を開始する小隊の姿もちらほらと見掛けられるな。



「楢崎訓練生、いいタイミングだからあのホテルに向けて魔力バズーカを発射しろ」


「ええっ! 司令、いきなり魔力バズーカですか!」


 これはさすがに驚いたよ! 確かに市街地からは距離があって被害はホテルの敷地の中で収まりそうだけど、それにしてもあの魔力バズーカの威力を向けられたら全滅間違いなしだぞ。本当にいいんだろうか?



「聞こえなかったか? 魔力バズーカを撃て!」


「了解しました」


 今度は有無を言わせぬ口調での命令が下った。俺はアイテムボックスから魔力バズーカを取り出してリゾートホテルに向かって照準を合わせる。拡大された照準機のレンズには何も知らずに整列して命令を待っている兵士の姿が映っている。だがこれはもう後には引けない戦争なんだ。どうか勘弁してくれよ。


 俺は3棟並んでいる宿泊棟の真ん中にある建物に照準を合わせて魔力バズーカの引き金を引く。その瞬間僅か直径60ミリの砲口からは考えられない超高出力のエネルギー波が、死と破壊の衝動を届けようと飛び出していく。



 ズドドドカーーーン!


 着弾した瞬間、対閃光バイザー越しでもはっきりと理解できる強烈な光が発生した。そして遅れて大音響が耳に襲い掛かってくる。このビルは着弾地点から20キロ以上離れているにも拘らずだ。そして天を突くようにきのこ雲が沸き起こる。まるでその場で核爆発が起きたかのような信じ難い規模の爆発だった。


 煙が晴れてリゾートホテルを観察すると、直撃を受けた宿泊棟は影も形もなくなって、その両側にあった建物は半分が抉り取られたように損壊し今にも全体が崩落しそうになっている。やや離れた駐車場に整列していた兵士たちの姿は何処にも見当たらず、爆風で相当な距離まで吹き飛ばされたようだ。沖大東島で実施した試射の時もその破壊力はヤバいと思ったが、こうして実戦で使用してみると殊更その感が強くなってくる。



「これで敵の陸上戦力をある程度は排除できたな。楢崎訓練生、初めて見るが魔力バズーカの威力には私も満足しているぞ」


「さすがに遣り過ぎという気もしますが」


「気にするな。これが戦争というものだ。中華大陸連合の核兵器が日本に着弾したらこれ以上の悲劇が起きる。それを阻止するのが我々に課された使命だからな」


「了解しました」


 まあ遣ってしまったものは仕方がないか。この程度の破壊なら異世界で散々仕出かしているからな。それに今回犠牲になったのは戦闘員が大半だろうしこの程度では俺の心は痛まない。もしかして異世界での経験で俺の心は麻痺しているのかもしれないな。破壊神なんて厄介な称号のおかげでこうも破壊を振りまくと、いい加減精神的に免疫が出来てくるとでも考えておこうか。 



 こうしてビルの屋上を後にして次なる目標の三亜航空基地へと向かう俺たちであった。




次なる目標に転進していく主人公たち、襲撃を仕掛ようとする航空基地では意外な展開が・・・・・・ 次回の投稿は明日を予定しています。どうぞお楽しみに!


たくさんのブックマークありがとうございました。引き続き応援してください!

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