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107 海南島上陸作戦 2

海南島に上陸を果たした聡史たちが暴れ始めます。その結果・・・・・・ 


誤字のご指摘ありがとうございました。

 中華大陸連合の海軍基地を急襲した聡史たちは・・・・・・



 小隊単位で集結しつつある敵の守備隊を司令の小銃から放たれた魔法弾が薙ぎ払っていく。至近に着弾しただけでも生じる爆発によって即死する威力があるだけに、相手としては堪ったものではないだろう。接近を図ろうとする小隊がまとめて掃討されていくのを見て俺たちに近付く者は誰もいなくなった。



「腰抜けの連中しかいないようだな。こちらから踏み込むぞ。原則として捕虜は必要ない。蹂躙の時間の始まりだ!」


 おいおい、司令官さん! 発想がヤバ過ぎるぞ! 捕虜はいらないって、無抵抗の人間も皆殺しですか? まあ一応守備隊なんだから抵抗はしてくると思うけど・・・・・・


 俺と司令がスコップと小銃を構えて素早く前進すると、建物の陰や土嚢を積み上げて構築した陣地から発砲してくる兵の一群がある。



「楢崎訓練生、私があの陣地を潰すから、貴官はあの建物の周辺にいる戦力を任せるぞ」


「了解しました」


 俺はスコップを片手にその建物に向かって駆け出していく。建物周辺に展開する守備隊が手にする合計10丁の小銃が向かってくる俺に対して弾丸を豪雨のように叩き付けるが、魔力のバリアによって悉く撥ね返されて力なく地面に落ちていく。



「相手は化け物だ! 銃が効かないならロケット弾を準備しろ!」


 守備隊は今度はカールグスタフを俺に向けてくる。確か八王子の中華大陸連合が拠点として武器を隠匿していた倉庫にも同型があったよな。こうして正規軍が装備しているということはドイツは本格的に国ぐるみで武器を中華大陸連合に流していた可能性が高くなる。あの国もヨーロッパから離れた場所だからといって好き勝手にやってくれたもんだ。おかげでこちらは大迷惑を被っているんだからな。


 2発の対戦車ロケット弾が炎を吹きながら俺に向かって飛んでくる。普通の人間の目には速過ぎて軌道などわからないうちに着弾しているだろうけど、俺の目にははっきりと2発の飛翔体が飛んでくる様子が映っているぞ。でも敢えて退避や防御はしない。スコップを手に走ったままでロケット弾を受け止めてやろうじゃないか。



 ズドーン!


 もちろん魔力の壁が俺の体を守っているおかげで影響はゼロだ。爆発の閃光と煙に注意を向けていた守備兵はその煙の中から走って出現した俺に気づくのが一瞬遅れている。それはそうだろうな。どこの世界にロケット弾の直撃を受けて平然と走っている人間がいるんだよ。俺だって東富士演習場で戦車砲やロケット弾の的にされるまでは信じていなかったぞ。ああ、これは俺の魔力の壁の強度を測定するのが目的で入隊した直後に実施されたんだよ。本当にいい迷惑だったな。そしてその結果は測定不能というものだった。戦術核兵器が直撃しても耐えられそうだという結論を測定に立ち会った技官たちが出したという逸話が残っている。


 さてこのような事情からロケット弾すらあっさりと撥ね返した俺は一気にダッシュして建物に接近していく。中華大陸連合の兵士個人に恨みはないけど、これが戦争というものだからどうか諦めてくれ。スコップを真横に薙ぐと呆然として突っ立っている兵士の首が飛んでいく。剣先を研磨してあるから切れ味が抜群だな。ドサッと言う音を立てて倒れた最初に兵士に構わずに俺は次々にその場にいる小隊の残りの連中に襲い掛かる。スコップだけで対処しているのは面倒なので、奪った小銃を残った敵兵に構わず乱射する。ある者は至近距離から頭を吹き飛ばされて、ある者は胸や首を撃ち抜かれて倒れていく。


 こうして僅か1分で建物周辺に展開していた兵士を制圧した俺は司令の姿を探す。おやまあ、その姿はずいぶん先に進んでいるな。相変わらず魔力銃を乱射しながら即席の陣地に布陣する守備隊を積み上げてある土嚢ごと爆発させているよ。俺が圧倒的な防御力で敵の抵抗を撥ね返しているのに対して、司令は高い攻撃力と俊敏な動きで敵を文字通り蹂躙している。陣地に篭って心許ない抵抗をしている守備隊はどこから襲撃されるのかすらわからない状態だろうな。心から気の毒に思っていますよ。(棒)



「楢崎訓練生、このまま貴官は建物の内部の掃討に掛かってくれ。私も手早く外を片付けてから他の建物に取り掛かる」


「了解しました」


 こうして俺はスコップ片手に手近な建物の内部に侵入していくのだった。








 日本の帰還者が上陸を果たした同じ頃のアメリカ軍は・・・・・・



 日本の国防軍が僅か3人の帰還者を上陸させて作戦を開始しているのに対して、アメリカ軍はオーソドックスな上陸作戦を敢行していた。作戦の初期段階では衛星が捉えたデータを元に中華大陸連合が築いた海岸沿いの拠点にトマホークミサイルを100発単位で撃ち込んでから、FA-18ホーネットによる空爆と続き、念入りに上陸地点を耕してから今まで出番を待っていた海兵隊の強襲揚陸艦が沖合いに接近する。


 米軍の強襲揚陸艦〔ワスプ〕を旗艦とする第3海兵遠征軍は海南島の最南端にある三亜市から北東に30キロの地点にある日月湾に上陸を予定している。さらにその北東70キロにある鴻家湾には〔エセックス〕を旗艦とする第1海兵遠征軍が上陸する手筈となっている。





 そしてワスプの飛行甲板にはこれから発進しようというオスプレイに搭乗したアメリカの帰還者3人が話をしているところだった。



「マギー、報告によるとどうやら日本軍は我々より先に帰還者を上陸させたようだな」


「ダン、日本の帰還者ならば3人で十分と政府が判断した結果よ。私もその意見には賛成するわ」


「君の日本の帰還者に関する報告とあの大空に現れた謎の怪物をあっさりと倒した映像を付き合わせると、僕も君の意見に同意するしかないな。それよりもなんでステーツは日本のような手法を採らないんだ?」


「あなたにはまともな頭脳がついているのかしら? 考えてもみなさい。魔力を使用した複合銃が完成したとは言っても、私たちが保有する魔力では1000発しか発射できないのよ。1分間に120発だから連続で使用可能な時間は10分に満たないわ」


「確かに高性能な銃だけど1発につき魔力を200も持っていかれるから、調子に乗って連射はできないか」


「あなたは試射の時に魔力切れを起こしたのを忘れているの?」


「いや、覚えているよ。さすがにあんな目に遭うのは2度とご免だな」


「それが結論よ! 私たちの能力だけでこの島を占領するのは難しいとペンタゴンが判断した結果よ」


「マギーの話を聞いたらカイザーは機嫌が悪くなりそうだな」


「あの男が別の艦に配属されていてよかったわ。本当に何を考えているのかわからないんだから! それになんだかあの男からは危険な香りが漂うのよね」


「危険な香り? 僕は特に何も感じないけど」


「あなたは色々と鈍過ぎるのよ! よくそれで異世界を生き抜いてこれたわね」


「逆にあまり物事を深く考えないから生き抜いてこれたんだと思っているよ。現代社会と同じように気を遣っていたら胃に穴が開くだろうな」


「あなたがバカな証拠ね。まあそれでも帰還者としての能力はトップクラスなんだから色々ともったいないわね」


「ダンが残念だというマギーの意見には俺も同意するぞ。こいつの無神経振りにはほとほと呆れているからな」


「リック! なんでお前まで!」


「ダン、諦めて自分がバカで鈍感だということを自覚しなさい」


 こんな会話をしていると機内アナウンスが入ってくるわね。何かしら? そろそろ発進するのかも知れないわね。



「機長から帰還者部隊に連絡します。当機の発進許可は午後になりそうです。一旦艦内に戻って待機してください」


 なによ! せっかくこうして気持ちを張り詰めていたのにまた緊張を緩めないといけないの! もっと段取りよくやってもらえないかしら。仕方なしに出撃準備を解除して私たちは一旦船室に戻っていくのでした。


 







 中華大陸連合、三亜航空基地では・・・・・・



「庚指令官! 海岸沿いに急遽構築した防御陣地がミサイル攻撃を受けて崩壊寸前です!」


「やはりアメリカ軍が上陸を企てているのか。敵の上陸軍はどの程度の数と予想されている?」


「海兵隊2個艦隊が南シナ海に展開されていますから、最低でも3万近い数字に上ると思われます。装甲車両も相当な数を準備している筈です」


「沿岸の防衛を放棄して市街地に篭るゲリラ戦に移行するしかないな。速やかに各基地に通達せよ」


 庚指令官の考えはこの状況では最も生き残る確率が高い方法を選択していると言えよう。海岸から上陸して押し寄せてくる3万近いアメリカ軍に対抗するには島内に存在する陸上戦力1万2千では明らかに不足していた。今から海岸に増援を送っても米軍のミサイル攻撃によっていたずらに死傷者を増やすばかりだ。上陸を許すことにはこの際目を瞑って、防御力が高い市街地に篭ってゲリラ的に応戦しながら、本土から援軍が到着するまで耐えるという戦術はこの場合は理に適っていると言えよう。



「庚指令官、三亜軍港から緊急連絡です! 何者かに急襲されて応戦中! 圧倒的な攻撃を受けて守備隊が全滅寸前です!」


「なんだと! 敵軍が一体何処から入り込んだというのか! まさか手薄だった北部海岸に少数で回りこんだのか!」


「少数ならば背後から秘かに上陸した可能性はあります。軍港が少人数に圧倒されているということは敵は帰還者を上陸させた可能性が考えられます」


「それは大いに在りうるな。軍港は敵の手に落ちたと諦めるしかないとして、現在この航空基地の守備状況はどうなっている?」


「現在約500人の守備隊が防衛に当たっています」


「至急増援をするんだ! 陸上戦力をここに掻き集めろ! 海昌区陸上基地の半数にここを守らせて、残りを三亜市内に集結させるんだ。市内のどこかに拠点を作るように命じろ」


「了解しました」


 こうして海南島南部を守備する中華大陸連合は海岸線の防衛を放棄して、三亜航空基地と市内の守備に全力を注ぐ隊形に移行していく。北部も同様に海口飛行場と島内で最大の人口を擁する海口市に立て篭もる布陣へと変更がなされていった。


 









 再びワスプの艦内では・・・・・・


 なによ! 私が緊張を解いて昼食を取っている時に急に出撃命令が下るなんて、もっと人の都合を考えてほしいわね! オスプレイの発進許可は午後の予定じゃなかったの!


 不機嫌な表情で装備を整えてから飛行甲板へと向かうわ。甲板に出るハッチが開くとすでに輸送ヘリが海兵隊員を満載して離発着を繰り返しているわね。ピストン輸送で上陸要員を運んでいるのね。さて、いつまでも不機嫌ではいられないし、考えを切り替えて私も乗り込みましょうか。



「マギー、ずいぶんゆっくりしていたんだな」


「リック、ちょうど昼食の最中だったのよ。タイミングが最悪だわ!」


「さっき機長からアナウンスがあったよ。どうやら敵の守備隊は我々の上陸を水際で阻止するのを諦めたらしい。全軍が市内と飛行場を防衛する形態に移行しているそうだ」


 ああ、なるほどね。敵がいなくなったからさっさと上陸を済ませて、準備が整わないうちに市内を目指しましょうということだったのね。座席に着くと私が搭乗したオスプレイは誘導に従って発進ポイントに進んでいくわね。どうやら私待ちだったようね。でも悪いとは思っていないわよ! どうせなら昼食くらい全部食べさせなさいよ!


 離陸したオスプレイは水平飛行に移行してスムーズに空を駆けていくわね。眼下にはワスプよりも更に前方の海域に進出したドッグ型揚陸艦から吐き出される夥しい上陸用舟艇が海原に航跡を引きながら海岸を目指しているわね。これだけの大規模な揚陸作戦なんて海兵隊の歴史でもそうそうはないんじゃないかしら。私自身あまり軍の歴史はよく知らないけど、こうして実際に目にすると壮大な上陸作戦に映るのよ。



「一足先に上陸した部隊がヘリの着陸箇所の設営を終えたそうだ。彼らの仕事が早かったおかげで気の毒なマギーは昼食中に呼び出されたんだよ」


「ダン、あなたから気の毒がられると私が本気で落ち込むから止めてくれないかしら」


 私はアイテムボックスからスニッカーズを取り出して噛り付いているわ。チョコレートをコーティングしたキャラメルバーは腹持ちがいいから軍用のレーションにも入っているのよ。



「我々が上陸するまで約30分だって。敵の航空機がごく少数迎撃に飛び出してきたらしいけど、あっという間に空母の艦載機に取り囲まれて撃墜されたよ。おかげで空はこうして安全が確保されているんだ」


「リック、あなたまでダンの楽観主義に感染してしまったのかしら? 合衆国帰還者の間に楽観主義がパンデミックするようだったら私は上層部に報告する義務があるわね」


「あくまでも情報源はこの機の機長だからね。レーダーには敵の機影はないという事実を伝えただけさ。僕だってこれから困難な戦いが待ち受けていると自覚しているよ」


「リック、そこはノープロブレムと言うべきだろう。せっかくマギーが振ったんだから乗らないと損をするぞ!」


「ダン、私は冗談を言った記憶がないんですけど! あなたの頭を魔法銃で撃ち抜いていいかしら? 中身の構造がどうなっているのか調べたいから」


「マギーは相変わらず怖い性格をしているな。俺はご免被るから2人で決闘してくれ」


「俺もリックに同意するからマギーが1人でやってほしいな」


「まあ、親愛なるダンは私に無条件で頭を差し出すということなのね」


「なんでそう受け取るのか理由がわからねぇぇぇぇぇぇl!」


 こんなくだらない会話をしているうちにオスプレイの高度が下がってくるわね。どうやら着陸地点が近いようね。


 


「さあここから先は本物の戦場だ! 気を引き締めろよ!」


 私とダンはリックに無言で頷きながら垂直に下降していく機体が着陸するのを待つのでした。



本格的に上陸を開始したアメリカ軍も参加して、海南島はミサイルと砲弾が飛び交う戦場に・・・・・・ 次回の投稿は週末の予定です。


たくさんのブックマークありがとうございました。それから評価と感想をお寄せいただいたありがとうございます。どんな感想でも大喜びで拝見させていただきますので、どしどしお寄せください!

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