#13 Hope
考えた。僕はひたすらに考えた。でも無理でした。
色々本とかネットとかで調べたりもしたけれど、オカルティックで眉唾ものな情報ばかりで、余り有益と思えるような情報はなかった。
常識的に考えた結果、僕なんかに分かる訳がなかったんだ。僕にオカルト要素を多分に含んだトンデモ分野の知識は無いし、頭も大して良くない。
そりゃ不可能ですよね。考える前に気づくべきでした。一体誰だよ、したり顔で『考えなくちゃ答えは絶対に出ないままだから』とか言っていたヤツは。馬鹿じゃねぇの? 解決するだけの頭がなければ、前提条件から崩れるっつーの。
脳内で何処かの誰かさんを批判しているだけの楽しくないバスタイムを終えた僕はベランダに出て、麦茶を携え風呂上がりの一服。精一杯打ちのめされた敗北感と余りにも無意味な爽快感を背負っての行為。う~む、どうしたものか…。
隣の部屋からは電話をしているであろう三つ年上の姉の声が漏れてくる。
普段は出さないような甘い女の声。うえ、気持ち悪い。
察する所、大方電話の相手は彼氏だろう。だって、僕は姉からあのような媚びた声で話しかけられたことなんか無いし。生まれてこの方、覚えている限り皆無だし。
大体、数日前までの別れる別れないについて、大粒の涙と特大の日本酒を片手に阿鼻叫喚、大騒ぎした姿は何処に消えたのだ? 姉達の関係がどういう紆余曲折を経て、現在のアレに至ったのかは僕の知る所ではないし、殊更興味も無いけれど、どうやら上手く落とし所を見つけたのだろう。忌々しいことに。大変憎たらしいことに。
でも、それは僕達にとって一つの希望になる。
だってアルマゲドン的なカタストロフィを気取っていた姉達だって仲直りできたんだ、僕とアキの関係もきっとなんとかなるさ。
多少の傷跡は残るかも知れないし、ひょっとしたら完全には元通りにはならないかも知れないけれど、今よりはずっといい。
もっと言うならば、いずれ傷も傷みも含めた全ての跡は、悠久の時間の中に埋もれて削られて、いつの間にやら消えていくのだろう。楽天的かもしれないけど、多分そんなもんさ。祈りの様に不確かな楽観だけどさ。
それでも、そう願わざるを得ない。
灰皿に煙草を押し付けてから部屋に戻った。
もう寝よう。明日も明後日も僕は人生の中に居なくてはいけないのだから。