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白鷲偽鳥  作者: 掴式追雀
6/7

断頭死体殺人事件 発生・推理パート

この話から一気に謎解きに入ります。


前に述べた通り、僕の小説では事件が起きた場合

発生  推理  真相解明

の3ステップで進んでいきます。


なので推理にしか興味がない人は、サブタイトルを見て事件発生パートという

タグが付いている所からお読みください。


今回は最初なので謎が簡単になっています。

ので、事件発生・推理パートの両方を入れています、つまり次の話で真相が解明

する訳ですが、なるべくこちらから見てください。


ちなみにこの話で僕が好きなキャラクターの過去と現在を比較するので

余裕があればそちらにも注意して見てください。

それは今から2年程前、俺がそいつと会ったのは日が紅く染まり出した夕刻だった。



その日は珍しくやる事が無かったから椅子に寄りかかってのんびりコーヒーを飲んでいた。

そんな時に鳴り響くデスクの上の電話に俺は出た。

「はい、こちら二林~」




その5分後、俺は・・・いや、俺たちは飛び出すように署を出て、

そこから車で15分程のショッピングモールに駆けつけて行った。



そのモールは中央が大きな吹き抜けになっていて、円の内側が通路、外側に雑貨店や洋服屋などが

所狭しと並んでいる。

現場は5階建モ―ルの3階、お洒落な喫茶店だ。


いつもならここで野次馬根性の買い物客を退かすのだが、今日はそんな面倒事はしない。

何故かって? 誰も近よってこないからさ。


そりゃそうだよな、既に現場に到着した警官達でも見るのをためらっていやがる。

俺でさえ電話越しに聞いただけで気分が悪くなった。


誰だってこんな首が無い死体、見たくないんだからな。


血溜まりの床にそれを作った張本人が、一切動くことなく崩れ落ちていた。





俺は今まで数多くの殺人事件を担当してきた。

(理由については言う必要がないだろう)

その中には誰もが白旗を揚げる程の内容だってあった。

しかし目の前のこの首無しの遺体は常軌を逸していた。 それでも俺は逃げずに捜査を始める。




・死体は、店の入り口から一番遠い席の壁側に、もたれ掛かるように置かれていた。


・首は、被害者から5メートル離れた場所に落ちていた。

(恐れ多く見てみると髪は茶色に染め、化粧は厚く、今時の女子という感じだ。)


・目撃者の証言によると、首が飛んだ前後に被害者に近づいた人物はたった一人らしい。

(その人物というのが、さっきから2つ隣のテーブルで頭を抱えて椅子に座っている男性らしい。)


・検死によると、細い刃物か何かで首を一刀両断されたらしく、他の死因についてはほとんど可能性が無いらしい。


・被害者は細身で、首の直径は12㎝程。



これが今現在で分かる情報だ。

となるとやはり問題は、どうやって周りに気づかれず被害者の首を斬り落とせたのか、だ。

いくら細身の女性の首だからって一撃で斬り落とすなら、刃渡り20㎝以上の凶器と、かなりの力を

用するはずだ。

仮に斬り落とす事が可能でもそれを行った刃物を隠す暇と場所が無いのは調べなくてもわかる。



これだけじゃ情報が足りないな。

死体の状況は検察官に任せるとして俺は先程から小刻みに震えている男性に声をかけてみる事にした。


「すいません、よろしいですか? 私は捜査一課の二林という者です。事件当初の出来事を伺いたいのですが」

俺がそう声をかけると、男はようやく顔を上げ、泣き腫らした眼をこちらに向けた。


高級そうなズボンや鞄に腕時計、髪はさらっと解きほぐし、いかにも優秀そうな彼だが、顔の特徴は

薄く、先程見た彼女と比べると年は近くは無い筈だ。

「あぁ、今度は本当の警察官ですね、私にも何が起こったのかは分かりませんが、知っている限りの事は

話します。 だから私は違います、信じて下さい!」


女を失った事のショックと自分が疑われるかもしれないという焦りから、男性は鬼気迫る顔と圧力を

俺にかけ、握られた手からは汗と震えを伝わってくる。

「落ち着いてください。 私達はあなたを現状で疑う事はしません。 ただ貴方から事件の詳細を聞きたいだけです。」

現状に、と言った俺の言葉に不満の表情をもらしたが、男は素直にこちらの要求を受け入れた。



「私の名前は秋場翔あきば かける24歳、近くの

ジュエルショップで働いています。

彼女の名前は南香みなみ かおる、そこの短大に在籍している2年生です。」


端的な説明を元に要約すると、

二人は半年前から付き合っていて週1のペースで

会っていたのだと言う。

その中で彼女とは頻繁にこの店を訪れ、今日もいつものようにここで飲んでいたのだ。


事件が起こったのは、彼女と席に着いてから5分程後の事だった。

何気無い会話で盛り上がっていると、突然彼女の頭が彼女の体から離れたのだ。

その後は訳が解らず彼女に駆け寄ってみるが、

その時には既に彼女は息絶えていたのだと言う。


勿論全ての話を信じているわけでは無いが、

多数の目撃証言と彼の告白が一致していたので

俺は信憑性があると思っている。


「警部!」

そんな時にひとりの捜査官が俺に声をかけてきた。

「どうした、 何か見つけたか」

「これを」

そう言って俺に見せたのは、この店から吹き抜けまでと続く、血が細い何かで引きずられた様な数ヵ所の跡だった。

このショッピングモールは客が入りやすい雰囲気にしようとしてか、ここを含め全ての店でガラスのような通路と店の仕切りは撤去されている。


「何だ、これ」

「解りません。 それと遺体の情況を詳しく調べて見たのですが、どうやら被害者は首を向かって右下から左上へとつき上がって斬られたようです。」


「はぁ、右側から?」

椅子は通路から見たら平行になってあるので、当然

そこから見ると秋場と南は顔が半分ずつ見えるようになってある。

そして向かって右側からということは、南は左側の

首から斬られたことになる。


しかし彼女の左には、今彼女が倒れこんでいる壁しかなく、その幅は大体30㎝くらいだ。

そこから刃渡り20㎝以上の凶器で人の首をたった一撃で斬る事は可能なのか。


俺の腕が大体70㎝、そこから凶器の20㎝と余力を付けるための幅が10㎝程必要だろう。

合計すると1m、現実よりも70㎝もオーバーすることになる。


「おい、それは本当なんだろうな」

「はい、血痕の跡や首の肉の切断面から判断したので間違いありません」

「そうか」

その顔は酷く青ざめていて、よほど程苦労したのだろう。

「わかった、ありがとう」

そう言ってその捜査官を休ませるが、俺の疑問は増すばかりだ。

犯人がどうやって被害者を死に追いやったのか、

検討もつかない。




そんな時だった。

いつの間にか隣にいた男が俺に声をかけたのは。






「お困りでしたら犯人教えますか?」





その澄みきった声は俺の注意をひくのに十分だった。

そこにいたのは中学生ぐらいの若い男女だった。

私服姿の若い女子は男性の陰に隠れて、じっとこっちらを覗いているせいでよく見えない。

声をかけてきたパーカーの男子は今時の中学生にしては身長が低いが、それを感じさせないオーラを纏いつつ、鋭い目付きでこちらを見ていた。



それが後に「青十字探偵せいじゅうじたんてい」と云われる逸材とは、この時の誰も知らない。






/ / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /




俺の目的は田中君と共にこの探偵部に入部しているという残りの二人に会うことだった・・・筈だ。


誰もこんな高校の甘い青春を邪魔しようと、

ましてや見ることを目的とした人間はこの中に一人もいない。



・・・どうしてこうなった。










それは今から4時間ぐらい前のことだった。


午前中の授業が全て終わり、はいつものように彼女・・の席へと向かった。



「小春!」

振り向いた彼女の目は、普段のそれよりも和をかけて眠そうだった。


「ん~ごめんね。 外も中も静かだから寝ちゃってたよ」

ごしごしと未だに眠たそうな目を擦りながら僕の質問にゆっくり答える。

「はぁ、そんなことだろうと思ったよ。

確かに静かだったけどそんな感じじゃ直ぐに成績落ちるよ。」

只でさえ僕たちの学科は日本一と云われる位の難しさなのだ。 今成績が良くてもこれではいづれ落ちるかもしれない。


そんな僕の不安も彼女に伝わったらしく、

「む、それは大変だよ。 何とかしなきゃね。」

と、焦っているのかどうか分からない意気込みを語った。


「お昼どうする? 教室で食べる?」

「うーん、いや、外で食べる」

「じゃあどこで食べる?」

「どこでも良いよ、ただここで食べたくないだけだから。」

「何で?」

「う~んとね、・・・何だか嫌な予感がするから・・・かな」


よく分からない理由を口にした彼女に疑問を抱いたが、それは今に始まったことではないので、取り敢えずリクエスト通りに外の、彼女でも安心して食べられる静かな池の縁で昼食を食べた。

(後にスポーツ科の同級生が教室に訪ねて来たらしく、理由についてはわかった)


放課後になり、僕と小春は探偵部の部室棟に向かった。 それが今から15分前。


午後の授業では僕の言ったことを素直に聞き入れ、

必至にノートに黒板の文字を写していた。そのせいで?全ての時間が終わった時には既にふらふらで、今現在歩きながら睡魔と戦っているのだ。


「う~ん、おんぶ~」

そうせがんでくる小春だったが、部室棟まであとわずかなので頑張って歩くように言った。

(頬を膨らませて怒っていたが可愛いのでそのままにしておいた)


そうこうしている内に目的地まで辿り着き、鍵を開けて中に入った。

室内は特に荒らされた形跡もなく、あるのは椅子とテーブルに冷蔵庫。

あとは小春の私物のゲーム(TVもあるので据え置き機もある)に、彼女のためのベットや機械何かも

昨日の形のまんまだ。


そして入るなり小春をベットに寝かせるために

手を引こうとするが、引いた手は何の抵抗もなく僕に従うので、


トンッ



僕より少し小さい小春の体は僕に吸い寄せられ、

僕の胸に彼女の小顔が預けられる。


「こ、小春!?」

慌てて呼んでみるが、

「スー、スー」

聞こえるのは彼女の規則正しい寝息だけだった。


相当限界が近かったらしく、小春は部屋に入った瞬間立ちながら眠ってしまったらしい。


そんな彼女に呆れつつも愛おしい視線を送り、

胸にある天使のような寝顔を起こさないようにそっと抱きしめる。


「おやすみ、 小春ちゃん」




そんな時だった。


ガチャッ


ドアの開く音が聞こえた。


振り向くとそこにいたのは、


田中君、 二林さん、そして黒スーツの誰かが、

同じように驚いた顔でこちらを見ている姿だった。












俺は今どんな顔をしているだろう。


例えば、目の前にいるこの少年のように、口を

ポカーンと開き、驚いた表情でこの少年を見ているのだろうか?






「な、ななななななかいー!!! お、おま、星見ちゃんから離れろーー!!!!!」


田中君が悲鳴にも似た叫び声を上げ、怒った様子で

二人に駆け寄ろうとする。


「ま、まぁまぁ田中、少し落ち着けって」

詰め寄ろうとした田中君を警部が抑えた。

「落ちています!!」


いや、全然落ち着いてないだろう。

まず日本語が成り立ってないし。

そう思ったのでとりあえず俺は警部に加勢して田中君を止めに入る。


「た、田中君落ち着いてって。 これは誤解なんだよ」

なおも女の子を抱きしめたままで異を唱える少年だったが焼け石に水である。

「うるせー!! 問答無用でお前が全部悪い!!!」

怒りを向けられている少年は未だ女の子を抱きしめている。

そして何やら少女の耳を塞いでいるのが分かった。

どうやら少女は眠っていて、騒ぎで起きてしまわないように男の子は気を使っているようだ。


そんな気遣いに気付かず、田中君は尚も声を荒げる。

「お前はいつもいつも俺の目の前で・・・ 嫌味かー!!」

更に尖らせたよく分からない怒りの矛先を少年に向け、先程までより強い力で拘束を振りほどこうとする。

流石スポーツ科、2人の力を持ってしても押さえているのがやっとだ。



そんなときだった。


「む、ぐぅ」

「「「あ」」」

それまで沈黙を守っていた少女がようやく声を上げた、というより起きた。

と同時に俺以外の男も一斉に声を上げた。

え? 一体どうしたの?


少年から顔を出した少女は一言


「皆、うるさい」

「「「ハイ」」」


鶴の一声とはまさにこの事だ。 それまで騒がしかった室内は、本来の静けさを取り戻した。






/ / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /






鋭い目つきをした男子生徒が、見定めるような視線で俺と俺の部下を見回す。

何となく向けられたその視線に何となく居心地の悪さを感じた。

「あ、すみません」

俺の気持ちを感じ取ってか、素直に謝った。

「あ、いえ。良いですよ」

気迫に押されて思わず敬語になってしまった。

落ちつけ俺。 30歳以上の年齢差があるんだ、押されてどうする。

そう自分に言い聞かせて再び少年に意識を向ける。


「それでさっきの事なんだけど、犯人を知っているような口調だったけど・・・まさかそんな事ないよね?」

「いえ、分かりますよ」

さも当たり前のように淡々と答えているのに驚きを隠せなかった。

しかし同時に彼なら、という妙な説得感があった。



「あ、そうだ。自己紹介がまだでしたよね。」

「え?あ、あぁそうだね。」

こちらの事に気を配る訳でもなく、突然の自己紹介。

確かに彼らが何者なのかを知らず真相を聞かされても信用に欠けるので、その対応に従う。


「僕の名前は仲井誠、西光せいこう中学校に通っています。 ほら、小春も。」


そう言って仲井君はずっと後ろで隠れてばかりだった少女に声をかけた。

「すみません。元々人見知りな上にこんな事件に巻き込まれたものですから緊張しているんです。」

そう言いつつ、愛おしそうな顔で少女を前に出す。

何だ、こういう顔も出来るのか、と失礼な事を思いつつ、大丈夫ですと相づちを打った。


「星見小春です。 同じく西光中学校に通っています。 趣味はゲームとお散歩です。

・・・よろしくお願いします。」


この短い会話の間にも、え~と、と考える仕草が度々入るので言ってた通り人とのコミュニケーションは得意ではないようだ。

両耳に薄い緑色のイヤリングを付けて今時の中学生が憧れそうだが、校則には引っかからないのか。


二人とも男女で差が有るものの、比較的幼い顔立ちで、形もパーツも整っている。


仲井君は茶色い髪にサラッとした髪質で、それを短く揃えているのでどこか理知的だ。

星見君は制服ではなくワイシャツを着ているにも関わらず、夏だというのに長めのカーディガンを羽織っている。 暑くはないのか?

そして目を引くのが、白にピンクが少し混じった様な柔らかな髪である。 (髪は耳に覆う程のショートカット) 目はトロンと優しげに下がり、見た感じから天然である。


二人とも男女で差は有るも比較的幼い顔立ちで、形もパーツも整っている。

幼いが大人びた?という矛盾を抱えた仲井君と、

幼く可愛いという肯定的な星見君が一緒に街を出掛けたら、周りからは羨望の目で見られるだろう。



「俺は二林っていって警部をやっている。」

そんな二人の観察と自己紹介を終えた俺は事件の真相を聴いてみようとしたが、そんな自分にまったをかける。

馬鹿か俺は! なに一般の、しかも中学生に事件の真相を聞こうとしてんだ。 駄目に決まってんだろ!

そう、もし俺が彼等に事件のことを聞き、仮にそれで解決したとしてどうなる。

周りの民間人が避けているからって、この事がばれたら警察の威信に関わる。

「警察は役立たず」なんてレッテルが貼られたとしたら、間違いなく俺は辞めさせられる。

それだけじゃない。 

事件の解決に焦った犯人が、もしくは解決された犯人が逆恨みを起こしてこの少年少女に手をかけるかも

しれない。 それは一番させてはいけない問題だ。


ゆえに俺は仲井君の誘いに断ろうとするが、ある疑問が頭をよぎる。



「ねぇ君達、どうやって事件の理解をそこまで深めることが出来たのかな?」

そうなのだ。今現在この現場には警察や検察官が数多く配置され、一般人が混じり混む隙は無い。(俺は店の中に居て、彼等はその俺の横にいるが)


にも関わらず、この子達は事件の真相に至ったのだという。

一体どうやって



「あぁ、それなら普通に現場を見ていたからですよ。 警察官が配備される前からね」

・・・は?

「事件が起こってから最初に到着した警官が来るまでの時間はおよそ7分、これだけの時間があれば現場で起きた事の大体は掴めるし、あとは各所の妖しい所を回って証拠やら証言を集めれば、もう事件の真相は見えてくるものです」


今聞かされた事に疑問しか残らない。 だってそうだろう

警察がこれほど頭を抱える程の難事件にたった2人の学生が

たった七分で犯人の目星をつけ、そこからこの30分足らずで真相に至ったのだと言う。

信じろという方が難しい。


「まぁ信じられないのも無理は無いですよ。 所詮僕らは学生ですから。」

そう言っても子供扱いされた事を残念に思ったのか、仲井君はハアと溜息をついた。

星見君も声には出していなかったが頬をぷくーと膨らませて何か言いたげな目をしていた。


そんな時に今まで聴取を受けていた秋場さんがこちらに気が付いた。

「あれ、君達今まで何処に行ってたの?」

その言葉に俺は疑問を持った。

「秋場さん、もしかしてこの子達に事件のことを教えましたか?」

「え? えぇ、教えましたが何か問題ありましたか」

言いながら自分がいけない事をしたのに気付き慌てだす。


「すみません! 確かにこんな年端もいかない子供達に危ない事をさせるべきではなかったですよね。

ここは大人として彼等を止めるべきでした!」

「秋場さん、僕達もう高校受験を控える中3ですよ?これぐらいの事には首を突っ込んでも何も問題ありません」

「いや、問題あるよ! 俺が署長に怒られるし!」

仲井君の大きな誤解にツッコミを入れつつ今自分が危ない事をしている事を訴える。

(というか彼等中3なのか、受験は大丈夫なのか)


「む、ぅん」

「すみません二林さん、声のボリュームをもう少し抑えてくれますか?小春は五月蠅いのが苦手なんです」

「あ、あぁすまない」

何故謝ったのか釈然としなかったが話が進まないので素直に引き下がる。

まったく、最近の若者は常識がなってないな、という爺くさい文句は言ってやりたかったが。


「しかし秋場さん、僕達の事を警察の方に言って無かったんですか?」

「ん? あぁ直接的には言ってなかったかもしれないな」

そういえば俺が最初に秋場さんに尋ねた時に、「今度は」、なんてそれっぽいことを言っていたかもしれん。 こっちは事件の事で頭がいっぱいだったからそんな事に気が付きもしなかったが。



「そ、そんな事よりも誰が香を殺したのか、君達は分かったのか!」

切羽詰まるような表情で仲井君と星見君に詰め寄る秋場さんに2人は迷惑げだったが、それでもしっかりと頷いた。

その言葉に救われたかの様にすがる秋場さんだったが、

「ただし条件がある」

と制止した。


「何だい、条件っていうのは? 早く言ってくれ、僕にできるならすぐに解決するよ!」

「いえ、お願いしたいのは二林さんです」

「・・・言っておくが何もしないからね。 警察としては君達をこれ以上事件に巻き込みたくないんだ、 社会の安全を守るのは警察の仕事だから君達はお家に帰りなさい」

「そんな!」

秋場は焦ったように声を上げる。

「秋場さん、これは警察の威信に関わるんですよ。 それに彼等はかなり危険な事をした。

これ以上首を突っ込ませて何かあったら貴方、責任取れますか?」

「そ、それは・・・」

気持ちが沈んでいくのが分かる。 

が、やはりここは我々警察がやるしかないんだと自分に言い聞かせる。



「心配無いですよ。犯人が複数人ならそうですが、今回は単独犯なので解決すればそれで済みます」

そう言う彼だが、やはり気にかかる。

 -本当にそうなのか-

「ほら、警部さん! この子もそう言ってるんですし」

「い、いえそれだけが問題なのでは・・・」

正直に言ってどうしたら良いのか分からない。

このまま犯人の逮捕を延ばしたまま警察の威信をかけて真相の解明に努めていくのか。

それとも退職覚悟で目の前の事件を早期解決してもらうのか。

犯人が何の目的もない愉快犯なら、圧倒的に後者を優先すべきなのだろう。

そうは思っても決断が延期になる訳でもなく、秋場は俺の対応に顔をしかめ始めた。

周りの部下や検察官もお手上げ状態のようで、先程から居座っている2人に興味を向けている者もいた。

正直に言ってこれは警察がどうにかできるレベルの事件じゃない。

それは分かっているのだが・・・



「ねえ警部さん、解らないならさ、自分がどうしたいのかで決めたら良いんじゃないかな」

それまでずっと仲井君の後ろで沈黙を続けていた見君が俺にそう言ってきた。

「え?」

「私がどっち付かずの2択を迫られた時さ、損得だけじゃなくて自分の心がどっちに向いてるかで決めるんだよね。だってそうやった方が絶対に後の自分が悩まない・・・と思うんだよね。

ほら、〇SUTAYAで気になったソフトを2種類見つけてどっちかしか買えない時にさ、自分の心が少しでも片方に傾いたら少し高くてもそっちを買っちゃうでしょ? それと同じだよ!

後でそれがクソゲーだって分かってもさ、やれた事には満足できるから良いんだよ」


途中から彼女がゲーマーだって事が分かったのを除けば、非常に納得力がある・・・ように思えた。

「小春の言う通り、考えた挙句最終的に決められないなら自分の良心に従うのが一番ですよ」

すっかり熱が入って前のめりになっている彼女を、頭をなでなでしてなだめながら彼が俺に言う。

「・・・」

「警部さんなら解るんじゃないかな、自分がどうするべきかっていうのをさ」

追い打ちとばかりに発せられた彼女の言葉に、俺はとうとう白旗を揚げた。


「わかったわかった、お前らに任せれば良いんだろ? だったら俺はもう止めねーよ」

友人に話すような荒っぽい口調。これは俺が認めたり、親しかったりする奴になるそれだ。つまり俺はこの時点で少なからず2人を認めた訳だ。

あーあ、丸く収められちまったな。

そう思いつつ、内心は何かスッキリとした気分だ。

たった1人の殺人犯を野放しにし、それを見逃したまま他の事件にあたる様な無責任な組織に居るぐらいなら、いっそ自分から退職してやる。それぐらいの覚悟が俺の刑事としての誇りに火を付けた。


「それで、俺にやって欲しい事ってのはなんだ? 

言っとくが金はやんねーぞ。中坊にそんな事をやらせる位なら時間かけても自分らでやるからな」

「お金は要りません。 ただ、南香さんの死体をここから退けて欲しいんです」

「それはどうしてだ?」

「小春は血の匂いが苦手なんです。その・・・鼻が良いから。 えっと・・・ダメですか」


弱気な仲井君を見たのはこの時が初めてだった。

すぐに訳を知る事になるが、その時の俺は大して気にはしなかった。


「いや、そういう事なら俺達としては問題無いんだが・・・」

俺は秋場さんの方をチラリと見た。こういう時は彼氏に許可を取るべきだろう。

「大丈夫ですよ警部さん、もう南には別れを告げましたから。 後は犯人さえ捕まえて貰えれば彼女も安らかに逝けるでしょうしね」

そう言って先程よりは血色が良くなってきた彼にお礼して、現場から南さんを出した。

捜査官達を説得するのに時間がかかると思っていたが、皆もはや事件を解決できない焦りと

首を切断された死体を長時間見た事による疲労で、すっかり参っていたらしく案外早くに終わった。

血が苦手だと言ってたので現場の血痕を入念に拭き、残り香も無いようにパトカーにあった防臭スプレーも大量に使った。




「さぁ終わったぞ、次はそっちの番だ。

最後の確認だが本当に解るんだよな、ここで間違ってたら俺が退職するだけで終わっちまう」

「むぅ、誠君はそんなツマラナイ嘘つかないよ。  安心して任せてよ。」


誇らしげにそう言った星見君。 恥かしさで顔を赤く染めながら彼女の頭をなでる仲井君。

そんな彼等を見ていると、本当にまだ学生なんだと思わされる。


「あのー、そろそろ真相を教えてもらって良いですか」

しびれを切らした秋場さんがそんな中に割って入る。

「そうですね、では始めますか」





<推理パート>






「真相を解明するにあたって僕と警察の捜査進行を比較したいので聞かせてください」

そんな彼の言葉と共に彼の推理劇は始まった。


「分かった、まずは被害者の説明からしよう」

仲井君に言われた通り、俺が今までの捜査の成果を上げて見るとこんな感じだ。




①死体は入口から一番遠い席の壁側にもたれ掛かっていた。


②被害者は大学2年生の女子で、左の壁側(死体がもたれ掛かっていた所)から右側の通路側の方向に突き  上げるかの様に切断され、落ちた首は死体から5メートルの所に落ちていた。


③首がはねられた時に間近で見ていた秋場さんの証言によると、着席から5分程でいきなり首が斬られ、

 その後被害者に駆け寄ったのも彼1人だけだった。


④検死の結果、被害者は細い刃物か何かで一刀両断されたらしく他の死因については可能性がないらしい。


⑤被害者は細身で首の直径は12㎝程。

 これを一発で切断するには最低20㎝の刃渡りと80㎝のスペースが必要だが、実際の幅は30㎝であるため

 彼女の首の切断はかなり難しい。




そして新たに捜査上に挙がった証拠もあった。

被害者の右後ろ(南さんから見て左が壁で右がモールの通路なので通路と彼女の間よりも少し背中側)に太い柱が立っているのだが、その足元に何か細い物で傷つけられたかの様な深い切れ込みが生じていた。


警察にはそれが関係あるのか分からなかった。  しかし、

「その切れ込みは、彼女が殺された時に付いた傷と見て間違いないでしょう」

彼は顎に手をあてて斜め下を見ながら考えを述べている。

その姿は、誰がこの事件の探偵役であるかを否応なしに理解出来る程、場の雰囲気を従えていた。


「何でそう言い切れるんだ? その傷は確かに新しかったが、事件とは無関係かもしれないんだぞ」

彼の推理がいかがなものかと興味が有ったし、疑問はなるべく減らしたいので気になることは積極的に聞いて見る。

「いえ、あの傷は間違いなく事件と深く関係しています」

「だから何でそう言い切れるのか聞いてるんだ」

「小春がそう言ってるからですよ」



「は?」

「え?」

俺と秋場さんと、周りの関係者全員がわからない、という顔をした。

怪奇の目を向けられている星見君は我関せずといった態度で眠くなってきた目を擦っている。


「なぜ小春がそこまで分かるのかという質問は今は面倒くさいので省略しますが、とにかくあの傷が事件に関係しているのは間違いないので頭に抑えておいてください」

そう言って強引に話を収束させ、新たな証拠として加えた。



⑥被害者の右後ろにある太い柱(南さんから見て左が壁で右がモールの通路なので通路と彼女の間よりも少 し背中側)の足元に、何か細い物で傷つけられたかの様な深い切れ込み。


そして

⑦捜査中に見つけた死体からモール中央の吹き抜けへと続く、細長い何かを引きずった跡。


「とまあ、これが俺達が捜査中に見つけた証拠の全てだ」

確認の合図として頷いた仲井君はそこから10程考えた後で、

「分かりました、では最初に僕が話すのはまだ警察が見つけていない、あるいは

既に見ているけど証拠として扱っていないものの提示、ですね」


その発言に動揺の声を上げたのは警察だった。

「ちょ、ちょっと待てよ仲井君。 これらの他にもまだ何かあるってのか?」

「えぇ、まだ足りてません。 なのでこれから残った証拠を挙げていきます」


鋭い眼光でこちらを見る仲井君からは確かな確証があるようだ。


「そうですね・・・では初めにこれについて説明しましょうか」

そう言って彼がポケットから取り出したのは、金色に光る硬い何かだ。


「・・・それは何かな」 秋場さんが分からないといった表情でそれを見る。


「・・・」すっ

彼の問いには答えず、仲井君は人差し指である1点を指した。

その場所というのが、南香さんがもたれ掛かっていた壁だった。

「あそこにこれと同じ物があります」

彼に言われ近づいて見てみると膝くらいの高さに確かに血で紅いが、拭いてみると彼が持っていたのと同じ金色の物体があった。

半円の形をしているが、何かで斬られたような跡が断面から見てとれる。

で、その欠けていたものが

「今僕が持っているこの物体です」

「・・・証拠品を勝手に持っていかれると困るんだが」

俺は呆れた声で文句を垂れた。

「持って行ったのは謝ります。 でも警察がこれを持っていたとしても役に立たないと思ったので僕が預かりました。 事実、その壁にある突起は犯人が意図したものなのかは分かりませんが、南さんの死体の後ろに隠されていましたので見つけられないと思いました。

そして仮にあなた方がこれを発見できてもただのゴミだと扱われそうでしたから僕が持って行った・・・に繋がる訳です」


「み、見つけたらちゃんと証拠品として扱うぞ」

中学生にボロクソ言われたのにこれぐらいしか言い返す事が出来なかった。

現に俺を含め誰一人として死体の後ろを調べようともしなかった。そこからあの物体を見つけたとして俺達が事件に結び付けられるかどうかでいえば無理だろう。

「ちなみにこれはショッピングモール1階のホールに落ちていましたが見つけられるんですか?」

うん、無理だね。

俺を含めた全員が完全に論破された。

「まぁこれを見つける事が出来たのも、例の如く小春のお陰なんですけどね」

再び注目を浴びた星見君は、恥かしいのか顔を伏せているが・・・動かない




「あ、すみません。 寝ちゃいました」

寝た! え、寝てるの! 立ったまま!?

「よっこらせ」

こっちの驚きなんてどこ吹く風といった感じで

立ったまま寝てる星見君を、屈みながらの姿勢のまま慣れた動作で背中に背負い、そのまま立ちあがって

(小柄な割に力はそれなりにある)いつもの落ち着いた表情・・・ではなく顔が血色の良い赤になって困った表情で話しかける。

「小っちゃい頃からいつもこうで。 体質的なあれだから直せっていう強要も出来ないんです。

小学校までは良かったんですけど中学校になると流石に周りの目が気になって・・・あとカーディガンを羽織ってるせいで分かりずらいんですが、この子、その・・・結構発育も良くてむ、胸が背中にあたるんですよ」


コイツ、なんてリア充なんだ。

言い訳しながら顔を真っ赤に染める彼を見たら、非彼女持ちの十代男子からは憎悪と殺意の籠った感情が注がれるだろう。

新たな殺人のタネを振りまいた瞬間に立ち会った俺達は、その後しばらく誰も何も言えず目の前の

幸せイベントに付き合わされた。





「話が横道に逸れましたが、要は小春が見つけてくれたこの物体も事件に深く関わりがあるんです」


暫くして仲井君の顔も通常に戻り(完璧ではないが)、再び彼の推理が始まった。


という訳でこのことも推理の鍵になりますから覚えてくださいね。


⑧ショッピングモール一階のホールに落ちていた金色の物体。これは被害者の後ろの壁にあった突起の一部 でかなりの厚さ。 高さは人の膝ほど。



「それと二林さん」

「ん、何だ?」

「店員さんに彼女の事は聞いたんですか?彼女はここの常連だったみたいですから何かしらの情報が得られる筈なんですが」

「あぁ、その事か。 いや、実はやってなかったんだ。 

何しろ被害者があんな状態だったから皆気分が悪くなってそっちに手いっぱいだったからな。

後でやろうと思っていたら君と会ったんだよ」

それっぽい言い訳をして非難を逃れる。


「そうじゃないかと思いました。」

「ここでその事について触れるって事は」

「えぇ、そうです」

この短いやり取りの間で自分の失態に気付かされた。


「で、どんな内容だったんだ?」 

「そうですね・・・まとめると

『彼女は週3のペースでこの店を訪れ、毎日同じ席に座っていた。しかし連れて来る男は毎日違っていて、最後は必ずその男達に奢らせていた』、らしいです」

「そんな!」

悲観の声を挙げたのはそれまで黙っていた元彼氏の秋場さんだった。

「残念ながら事実です。 これについては今日事件が起きた時に働いていた店員さん全員が話してくれた事なので間違いないです」

「そんな」

おそらくだが彼女はこの店のお代の他にも付き合っていた彼氏達になにかしら貢いで貰ったに違いない。

それは彼女の身に付けていた遺品からも推測できる。

力なく落とした肩に同情の目を向けるしかなかった、どうやら彼は悪い女に惚れてしまったようだ。


しかしこれで動機については分かりそうだ。

恐らく南香さんと今、又は以前付き合っていた彼氏の中の誰かが彼女の男癖に不満を持ち、犯行に至ったのだろう。警察を何十年とやっていれば大体犯人の心情ぐらいは分かってくるもんだ。

動機としてはよくある事だし、それについては後で犯人について伺えば分かる事だろう。

とにかく今は秋場さんを慰め、解決を催促させるしか俺にできる事は無かった。


⑨南香は秋場の他に多くの男と付き合い、全員に貢いで貰っていた。

 この店に週3のペースで通い、座る席は毎日決まっていた。


「さて、次は・・・」

「ま、まだあるのか!?」

彼から足りていない証拠の数々を上げられるたびに警察の無力さを思い知らされる。

「ハイ、と言ってもこれから述べるのは証拠や証言と云うよりもこのモールの特徴についてです」

「このモールの特徴?」

「時間が無いので巻いていきます。 お腹空きましたし早く小春を下ろさないと僕の体力と精神が持ちません」

ここだけ聞くと子供(とリア充)なんだな、と何度目かの再認識、いつの間にか今感じていた劣等感も

何処かへ行ってしまった。 本当にすごい子供達だ。



「話を戻します。まだ足りない証拠その1ですが、

『それはここにある全ての店に仕切りが無い』、という事です」

「ん?それが事件に関係あるのか」

「ハイ、この特徴があったからこそ犯人は南香さん殺害に成功したのです」

益々意味が分からなくなってきた。 どうやってここから被害者を殺害したのか。


⑩この店を含む全ての店舗に仕切りが無い。


「次で最後です」


ん?

「今最後って言った?」

「ハイ、次が最後です」

ようやくこの証拠集めに終わりが見えた。

それでもまだ謎は終わらない。むしろ始まってもいない、ここからだ、気を引き締めろ!

そう自分に言い聞かせた


「それで最後の証拠ってのは何だ?」

「こっちに来てください」

そう言って彼は店の外に出た。 そして

「あそこです」

先程と同じように人差し指である一点を示した。


一階に落ちていたあの金色の物体が関係しているのだから、今度の手掛かりも同じ階にある筈。

そんな俺の予想とは正反対な方向にその綺麗な指は向けられていた。

そう、モール5階に、だ。



「えぇ!5階!」

意表を突いた解答に口火を切ったのは秋場さんだった。

「そうです、正確には5階にある釣り竿専門店にですが」

「釣り竿専門店?」

確かに指しているのはそれっぽい雰囲気の店だが。


ショッピングモール1階に落ちていた店のインテリアに、 3階の事件現場、 5階の釣り竿専門店

階も共通点も合わないこの3ヶ所をどのように真相へと結びつけるのか、

これからが仲井誠の真骨頂だ。



最後の証拠

⑪5階の釣り竿専門店








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「改めまして僕が探偵部所属の仲井誠、進学科2年生です」


その青年は田中君とは何もかもが正反対に思えた。

髪は原(茶)色を保ったままのサラリと柔らかいストレート、見た感じは草食系だが目は頼もしげで、しっかりとこちらを見据えている。

田中君がモテようとして色々施しているのに対し、

仲井君は顔と心がしっかりとしているから男女共に慕われていそうだ。



「そしてここで寝ているのが同じく進学科2年生の星見小春です」


仲井君が彼女専用に設けられたベッドに座り、そこで寝ている(先程の騒動の後、仲井君が怒る彼女を沈めて寝かせた)少女の紹介をした。

髪は白にピンクを混ぜたような柔らかく肩にかかる長さの桃色だ。 (染めてはいないようだから何かの病気だろうか) 肌も美しい白だ。


(先程の騒動の後、田中君は星見さんからお口チャックとお近づき禁止の刑を受け、今は黙って仲井君を恨みの籠った目で凝視していた)


田中君と仲井君が正反対という印象を受けたのに対し、

仲井君と星見さんからは似たような印象を受ける。


例えば、2人は高校生なのに中学2、3年生に間違えられても仕方ないくらいの童顔だ。

その上、顔のパーツや輪郭も非常に整っている。



そして両者、

俺達がさっきまで見ていた希望ヶ丘高校の制服とは違う物を着用していた。


少し前に警部からここの事について聞いていたし、実際に赤と青、両方の制服を着用しているところも見てきた、しかし二人のそれは明らかに違うのだ。


もう少し分かり易く例えて言うと、

普通の?学生は男子が黒の上下に青(赤)のネクタイ、

女子も黒の上下に短めのスカートを着用していて胸に青(赤)いリボンを結んでいた。



対して男子の仲井君は

上下共に濃い紺色で、襟の折が深く羽織るタイプの上着に蒼いネクタイ、縦に線が入ったズボン。

女子の星見さんは

仲井君と配色が同じだが、一つ止めのボタンと細い線が入った上着、青と黒のチェック柄で丈の短いスカート。


二人ともオーダーメイドなのか、これが同じ学校の制服とは思えないお洒落なデザインで、それを着こなす彼等は流石だろう。

サイズも彼らに合っている様なので、星見さんが非常に良いスタイルなのが服の上からでも分かる。





「とまあ、これで希望ヶ丘高校探偵部の全員が揃った・・・と言いたいところだが」

警部はすっかり熟睡している星見さんをチラリとみてから

「伝えたい事は全員が見ている前で話すとするか」

と言っているが、

「警部、自体は一刻を争います。 星見さんを除いた彼等だけでも話しておくべきです」

俺は今すべき事をハッキリと言ってその案を否定した。


前にも述べた通り、俺は彼らに頼るつもりは無い。

いくら希望ヶ丘高校の進学科だからって、事件の事に関しては素人同然だ。

何も出来るはず無い。

ーそう、思ってた。


「まぁまぁ鈴木、そんなに焦っても俺達じゃ何もできないぞ」

珍しく後ろ向きなその発言に苛立ちを覚えた。

「何故そう言い切れるんです? あんなの猟奇的な事を除けば唯の殺人事件でしょうに」

「本当にそうなのか?」

「・・・どういうことですか」


全く意見が合わない、ここまでくると警部の言葉に謎しかない。

「今回の事件、お前はどう思ってる」

「どうって言われても」

質問の内容がざっくり過ぎて、何も言えない。

「質問が悪かったな、言い方を

『今回の事件、このまま終われると思うか』に変えよう」






さっきから2人だけで話を進めていくのでこちらは空気になってしまった。


とりあえず状況を推測すると、どうやら警察に厄介事が入り込んだようだ。 まあ、二林さんがわざわざここに来たんだからそんな事は誰(田中君)でも分かる。

でも鈴木さんは僕等に頼むのを快く思っていないようだ。 それはある意味で正解なのかもしれない、理由は前の警部と同じようなものだろう。


-だからこそー


「二林さん、その事件僕らに協力させて下さい」

その事件に尽くすべきだと思う。


「おおそうか、引き受けてくれるか!」

僕の言葉に歓喜の声を上げた二林さんとは対象に

「い、いやですから警部」

鈴木さんは尚も首を縦に振らない。


「お力になれるかどうかは分かりません、ただ僕たちは仮にも探偵部です。目先の事件に背けながら活動を持続していく気はありません。

ですから、僕達にも協力させてください、お願いします!」

目をしっかり見つめて懇願する。

 「!」

すると何かを気付いたように彼の表情が変わった。 そして、


「・・・分かったよ、好きにすればいいさ。 ただ危ないと判断したらすぐに現場から身を引いて貰うからね」

「!」

若干文句は有り気だが、それでもハッキリと言ってくれた。


「ありがとうございます!」

精一杯の感謝を込めて大きな声で礼・・・だが

 


「グフッ!!!」 ギュウウゥゥゥ

 

突然後ろから何か巻き付き、背中と胸を強く絞め付けられた。

そういえばここはベッドの横、僕は2人と話すためにそれを背にしていた。

そして先程の懇願と激励でこの部室棟全体に声が通った・・・という事は


恐る恐る後ろを振り返ってみると



「むうぅぅぅぅぅ~~~~~」ギュウゥゥゥ


ものッすごい怒りの剣幕とふくれっ面で僕を見上げる小春がいた。 

ア、アカン


「誠君、う~る~さ~い~~!」

そう言って更にきつく拘束する。 

うっすらと香る甘い匂いと背中のやたら柔らかい感触に心拍数は最高潮ゥゥーー~~!!?!


「こここ小春ーーー!!? 待った! 色々とまずいから!!」

僕の心のスタミナもだし、


「ッッッ!!」ギリギリギリギリギリギリ・・・

お口チャックの刑のお陰で直接の被害は受けていないものの、田中君の殺気だけはバチバチと燃え上がっている。


 前「ッッッ!!!」ギリギリギリ

後ろ「うゥゥ~!」ギュウゥゥ

 

前は地獄、後ろは天国。 これ、なんだろ・・・?



幸せと怯えを感じながら僕らは束の間の一時を過ごす。

どうでしたか!? 一万字を軽く超えたこの話は、僕の理想としていたお気に入りキャラの全体像を書くことを目標としていたので自分としては楽しく書けました。


ちなみにこの2人が原作の誰をモデルにしていたか分かりますか?

小春ちゃんの方は知っている人ならすぐに分かると思います。

誠君は名前がそのままですね、

著作権に引っかからない程度に頑張って書きます(笑)


それにしてもミステリーって難しいですね! 現場の情景を分かってもらうために試行錯誤を繰り返していたら時間があっという間に過ぎていきました。

これで簡単な方だったらこの後の本編はどうなるんだろう・・・ちゃんと最後まで書けるか不安になってきます(・_・;)


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