4 どこにも行けない
ぼくは家に帰った。
頭がいたくなった。
頭がガンガンいたむから、何もしないでベッドの中で丸くなった。
寒かった。
ぴゅうぴゅう風の吹く公園で平気で遊んでいたのに。
毛布もかけているのに、寒かった。
火曜日の朝、頭はガンガンいたいままで、熱もあった。
学校を休んだ。
お母さんは、ぼくがカゼをひくと少しやさしくなる。
「ごめんね、今日はお仕事休めないの。できるだけ早く帰るから。苦しくなったらお母さんの携帯に電話してね」
お母さんは、ぼくのごはんを準備して仕事に行った。
ぼくがカゼをひいて学校を休むときは、だいたいいつもこんな感じだ。
苦しくなると、ぼくはがまんできなくて、何回もお母さんの携帯に電話をかける。
10回に1回はお母さんが出る。
もうちょっとがんばってねと言われる。
でも今日は、学校を休むことになってベッドに入ったら、スーッと体が楽になった。
だから、お母さんに1回しか電話しなくてすんだ。
水曜日も木曜日も同じだった。
頭がガンガンした。朝になると熱が上がった。
学校に行きたくなかった。
だって、「あいつ幼稚園児みたいな遊びをしてるんだぜ」って言われたり、へんな目で見られたりするのが、とてもこわかったから。
そんなこわいことになるなら、目立たなくてだれにも気づいてもらえないほうがいい。
「夜には熱が下がるのに、朝には熱が上がる。もしかして、気持ち的なことかしら」
お母さんがチラッと言った。
ぼくはドキッとした。
時計を見て、お母さんは、あわてて仕事に行った。
その日、お母さんは家に帰って来てから学校の先生と電話していた。
夜、お父さんとお母さんで何か話していた。
ぼくはこわかった。
ベッドの中にいた。
頭がいたかった。
家を追い出されたら、本当に行くところがなくなる。
学校には行きたくない。
でも、そのことをお父さんとお母さんと話をするのもイヤだった。
魔王が来て、世界が終わってくれたらいいのに。