2 お化け射的
「不審者ですか?」
「葵です。お化け屋をしています。よろしく」
お兄さんはちょっと変わっていた。
ぼくも変わっているほうだと思うけど、空想遊びは6年生にもなってやっているのははずかしいことだと思うから、一人でこっそりやるくらいの気持ちはもっていた。
それを葵君はおもしろいと言う。
それより、なにより、お化け屋ってなんだろう。
葵君はポケットからキラキラ光る白い石を出した。
「おれは、お化けをつかまえて、お化けをほしい人に売る仕事をしているんだ。だから、いろんなお化けを持っているよ」
白い石から、ヒトダマみたいな白い光が1、2、3、4…7つも出てきた。
フワフワ浮かんでいて、ちょっとこわい。
「見てて」
葵君が右手の人さし指と親指だけをのばして、指てっぽうを作った。
葵君は、その指てっぽうをヒトダマに向けた。
「バーン!」
葵君が、指てっぽうをうった。
ヒトダマは、はじけて消えた。
ぼくは、びっくりたまげた。
葵君は得意そうにわらった。
「このお化けは、遊び好きなんだ。やってみる?」
やってみたい。
ものすごくやってみたい。
でも、少しこわい。
もじもじしていたら、葵君がもう一回、指てっぽうをうった。
「バーン!ふっ」
ヒトダマがもうひとつ、はじけて消えた。
葵君はかっこよく、指てっぽうの人さし指に息を吹きかけた。
葵君が楽しそうにわらいながら言った。
「残り5つ。先に3つ、当てたら勝ち」
すぐに葵君は指てっぽうをかまえた。
つられてぼくもかまえた。
気がついたら、ぼくは夢中になって、ヒトダマをねらいうちしていた。
ものすごく、おもしろかった。
目がさめた。
朝だった。
自分のベッドにいた。
あれ。おかしいな。
そうか。夢か。おかしいはずだ。
今日の夢はおもしろかったな、また見たいなと思った。
「今日はどっちが勝つと思う?」
びっくりした。
葵君だ。
木曜日、ドッジボールの練習が終わって、一人で遊んでいたら、葵君がまた出てきた。
「葵君って、本当にいるんだ」
「さあ、どうかな。雪雄の夢かもしれないよ」
葵君は、ネコみたいな目をキラキラさせてわらった。
葵君が持つ白い石から、ヒトダマがたくさん出てきた。
「さあ、遊ぼう!」
「うん!」
ぼくはまた夢中になって、たくさんはしゃいだ。