三人の危機
「もう少しだ!」
レオンが言った。
走っての移動ではあったが幸い、ゾンビも出現(背後から追われていたが)しなかった。
お陰で予定よりも早く到着することができそうであった。
≪今、向かってきているのは誰だ?≫
通信が入った。どうやら此方の姿が見えているようだ。
「此方、α。背後からゾンビがついて来ている。狙撃を要請する。」
≪P-05地点、了解した。≫
すると高所から銃弾がゾンビへと降り注ぎ、ゾンビは倒れていった。
流石のゾンビも銃弾の雨の前では屈した。自慢の再生能力に銃撃は競り勝ったようだ。
「よかった。こっちはまだ、侵攻されていないようだな!」
レオンが喜んだ。このときまでは俺も嬉しかった。無事に生き残れたことだし。
しかし、現実は甘くはなかった。
「よく、戻ってきた諸君。生き残っているのは君達だけさ。」
リーダー格の男が話しかけてきた。
確か・・・・名前はハートマン・・・・。
某軍曹ではないようだ。
そして、目を離す。由香里さんは別な男と話している。
知り合いなのか楽しそうに話している。
その時、事件は起こった。
一発の銃声が響いた。
「え?」
銃声の方向を見るとハートマンがレオンに拳銃を向けていた。
銃口からは一筋の煙が立ち昇っていた。
レオンは倒れていた。腹から血を出して。
「君達だったね。ニックを救出したのは」
俺と由香里さんに向かい話す。
一斉に銃口を向けられる。総一郎と由香里は手を頭のところまで上げた。
「何故だ?何故、あんたが?」
「それは君達のしったことではない。」
「そうか・・・目的はなんだ?」
「生き残ることさ・・・そのために手を組んだ」
「―――?一体、誰とだ?」
その時、ハートマンは倒れた。
「???」
何が起きたかは理解できなかったが、その後の行動は早かった。
総一郎は地面に伏せMP5SDを撃った。
由香里も近くの男の首にナイフを刺し、ホルスターから拳銃を奪い、射撃を始めた。
「今よ!ここになら装甲車も何台かあるはずよ!」
「了解!」
「奴ら、逃げるぞ!」
叫んだ奴を撃ち殺したが声は聞こえてしまったので他のやつが銃を撃ってきた。
しかし、そいつも撃たれて死んだ。
由香里が撃ったようだ。
「こっちだ!」
男が突然、陰から現れた。総一郎は敵だと思い、銃を向けたが違った。
「ニック?どうしてこんなところに・・・」
「よし、無事だな。こっちだ」
「何で、貴方がいるの?」
由香里がニックに問い詰めた。しかし、時間はないと一蹴される。
「急ぐぞ!奴らも本気で潰しに来るぞ!」
二人はニックに大人しく付いて行った。
駐車場に来て、使えそうな車を探していると黒いバンがやってきて、目の前で停まった。
「おい、乗れ」
見たことのない男が窓を開けて言った。
「乗れ、味方だ」
由香里と総一郎は大人しく、車に乗り込んだ。
中には日本人ではない女、男に日本人の男が乗っていた。
「こんにちは、僕はコードネーム、ブラック。よろしくね」
突然、日本人の男が話す。
「お前らは何だ?」
「んー、元テロリスト・・・・かな?」
「元・・・だと」
「ブラック、コイツを見ろ!やばいぞ・・・」
ニックが何かの資料のようなものをブラックという男に手渡した。
「・・・・っく、奴等め」
ブラックの目が鋭くなる。先ほどまでの軽い感じは一切ない。
「ジョン、急いで、北海道に向え」
「・・・・了解」
何だろう、この人からは葵のような気配を感じる。
「何があったの?・・・そして、何故、貴方が居たの?」
由香里がニックに問う。
「ああ、それはだな」
ニックの話によると彼はNPC内での裏切りに既に気がついていてそれについて調べるためにここまで来たらしい。
以前、誘拐されたときも裏切っているのを暴いたからであった。
――― 葵視点 ―――
「さぁ、行きましょ」
美月が玄関先で声を掛けてくる。
今日は葵、美月、篠崎で買い物に行く予定である。
何でも新しく服屋がオープンしたようなのでデパートへ行くのだ。
「とにかく、気をつけてね。」
「・・・・うん。」「勿論よ」「はい!」
とそれぞれが幸田の言葉に返事をした。
「「「いってきます!」」」
三人はそう言って出かけていった。
「楽しみだね!」「うん、ありがと!」
篠崎の元気がないので二人で外に連れて行こうとしてこの買い物に誘ったのであった。
バスに乗ってデパートへと向う。
「どういうのが売ってるかな?」
「・・・・チャイナ服?」葵が言った。
「コスプレじゃん!!」
「きゃははは!」
そのまま、三時間が過ぎた。
レストスペースなる休憩所のような所で飲み物を買って飲んでいた。
「次はどこに行こうか?」
美月が話す。
「ん~、じゃあ―――」「うわっ!何だ!?」
叫び声に篠崎の言葉は遮られた。
「何かしら?」
椅子から立ち上がって叫び声の方を凝視する。
そこには片腕から血を噴出している男が居た。よく見ると腕の血が出ている部分の先がない。
横には腕を持った男が持っている腕を食していた。
「こ、これは・・・・」
美月は凍りついた。葵も驚愕の表情を浮かべる。篠崎は顔が蒼白になって肩を震わせた。
「う、嘘でしょ!」
「・・・・・こっち!」
葵が二人を誘導する。
三人は気がついた。バイオハザードが悪夢が再び、始まったことを
すぐさま、非常口へと向ってデパートの外に出た。
店内だから気がつかなかったが外は既に地獄絵図となっていた。
「横沢・・・を呼びましょ」
「けど、召集されちゃうんじゃない?」
美月の提案を篠崎が一蹴する。
「・・・・アレ!」
葵の指差す先にはゾンビの群れが近づいて来ていた。
「走るわよ!舞、大丈夫?」
「うん、行こう」
ゾンビの群れから逃げるために走り出す。
「テロが起こるだと?」
「そうだ、北海道で再び、パンデモニックが発生する。」
ブラックが総一郎に言った。
「お前には北海道で見つけて貰いたい人物が居る。」
「それは・・・誰だ?」
「コイツだ・・・・」
ザカエフがPCの画面を此方に向けた。総一郎はその顔を覚えようと画面を凝視したが絶句した。
画面には今は亡き【森 純一】が映っていた。
「何故、森を・・・?」
「ん?知り合いか?」
「ああ、こいつは死んだ。間違えない。」
「なるほど・・・しかし、コイツは生きてる。そして、北海道でのテロの指揮者だ。」
そう言って、今度は資料を見せてくる。そこには森の顔がプリントされていた。
「しかし、お前等のことは信用できるかどうかは判断しかねる。」
総一郎は言った。
「信じてくれ・・・・。俺が保障する。」
ニックが言った。
「総一郎、行くの?」
「勿論です。本当か調べねばならん」
由香里の疑問に返事をする。
「よし、休んでいろ。大変な作戦になるぞ」
ブラックがそう言った。
「ああ・・・」
そう言って眠りに落ちた。
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