二つの始まり
「はぁ、結局あいつ等帰っちまったな・・・」
マイケルの部下のケイザーが森の死骸をオスプレイの中に運びながら呟いた。
「もしかして、あのジャパニーズレディを狙ってたのか?」
同僚の男が森を共に運びながら聞いた。
「そうだよ、ユカリだっけ?彼女は美人だったね」
「フ、わかってない奴らだ。あいつはやばいぞ・・・・・・」
「やばいって、美しさがか?」
口を挟んで来たマイケルにケイザーが言った。
「違うな。前、あいつに言い寄った奴がどうなったか知らないようだから教えてやろう。言い寄った男の大事な玉を蹴って潰したんだぜ。」
「うぉー、手を出さなくて良かったぜ・・・治療したときに手を出しそうになったぜ」
衛生兵として連れてこさせられた男が言った。
「ま、あいつはジャパニーズではないんだがな・・・」
「それってどういうことですか?」
ケイザーが聞くとマイケルが口に指を当て、シーっと黙らせた。
「そっちの方に何かいるな・・・」
マイケルがM9を抜いて、呟いた。その目線は工事の大型機具の方を向いている。
その時、隊員が倒れた。
刹那であった。
マイケルは背後で倒れる音がしたので振り向いたがその光景に驚いた。
「貴様は・・・!?」
銃を向けた先には一人の男が立っていた。
その男は無表情で腕を振るってマイケルの胸を貫いた。
「がはっ・・・クソやろう・・・」
マイケルは引き金を引いた。
銃口は男の胴体の中心を向いていた。その銃弾が発射されても男は動じることなくマイケルの身体を調べ始めた。
そして、マイケルのポケットからワクチンを回収して、踏み潰した。
男は森の死体にライターを取り出して、燃やし始めた。
暫くしてから森の死骸が燃えきったことを確認すると男は満足げに歩きだした。
時は森が死んでより数刻。
「んー、聞えるか?エルフ」
「なんとか…」
無線を通してブラックに返事をするエルフ。
左腕を包帯でグルグル巻きにしている。
結局、生き残って(相手は全滅させて)血みどろの服装で歩いていた。
現在地は本州より移動して北海道。例のパンデモニックの起った町。
森たちのことについて調べるために潜入した。
この街にはゾンビが蔓延している。
しかも、他の生物兵器も多数、開放されてこの町にいるようだ。
自衛隊も感染の拡大を防ぐために街を囲むように防衛線を引いている。
米国からの情報で町の中の研究所に『ウイルス』のデータやらがあるという情報が入っていたので空爆とかも出来ずにいた。
「そこには奴らの情報があるはずだ。絶対に見つけろ」
「了解…」
エルフは答えると無線を切って行動を開始した。
「ワクチンが届いてない?どういうことだ!?」
総一郎が山の中の住処でニックと通信をしていた。
原理はよくわからないが恐らくレトロな物を使って、ニックと会話中だ。
ニックは総一郎たちをペイブロウで送った後に補給を済ませると『アイギス』本部へと帰ってしまった。
そんな中に報告された情報が二つ。
ワクチンが海兵隊を通じて研究機関に渡されて研究及び製造が行われていないという情報。
抗ウイルス剤が日本国内に流れたという情報だ。
マイケル達に確かに渡したはずであった。
がしかし、ワクチンは届いていない。
これはマイケル達が裏切ったのだと総一郎は考えたがマイケル達とは連絡がつかない。
当然っちゃ当然だが。
とりあえず、総一郎は後者の方の調査に行くことに決めた。
「由香里さん、俺が調査に行って来ます。」
「アンタ一人で?」
総一郎はええと短く答えた。
「俺のことは適当にごまかしといてください」
そう言って、出てきて現在地は東京。
北海道は一つの街だけに感染を食い止めることが出来た。
お陰で政府も未だに北海道で活動を続けている。
中国の方の軍の方は全戦力で北海道の混乱時に攻めてきたのだが電磁パルスでほぼ全滅した。
生き残った奴らも逃げ帰って行った奴も居れば残りは『アイギス』の送ってきた軍で大体殲滅させられた奴も居る。
話は東京に戻るが東京は現在、ヤクザの方々が蔓延る街となっているようである。
彼らが海外から運んだ装備でゾンビから東京の街の一部を守り、そこで生活をしているようだ。
街には独自の貨幣も作られていて諭吉さんは役に立たないようだ。(現在、北海道でも使用不可)
武器は拳銃、USP拳銃(マガジン二本)を腰に。隠し銃を沢山持ってきた。
例えば懐中時計に銃を仕込んだもの。(1発)、ペンの中に仕込んだもの(2発)、ベルト、M1906拳銃2丁。ファイティングナイフ、フラッシュライト、タバコにジッポだ。
仮に戦闘とかになってもヤーさんから弾丸は確保できると踏んでいた。最近の方はいい銃を持っていると聞くからね。うらやまし・・・ゲフンゲフンけしからんな。
とりあえず見た目は一般の人である。
ユOクロの灰色のTシャツにベージュの長ズボンを穿いて黒のサラリーマンが着そうなコートを着た一般的?な服装だ。
そこには懐かしい感じの町並みがあった。
ヤクザなどはあまり表立ってはいないようだ。
―――とりあえず、話を聞くか・・・・・・
そして、キャッチをしている青年に総一郎は声を掛けようとした。