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落馬ってしたことある?めちゃくちゃ痛いよ?

「この先だ!」

横沢について出た先は交差点であった。

信号機が黒く、車が放置されていてフロントガラスには血がべっとりとくっ付いていた。

その先には確かに乗馬クラブがあった。大きな看板に馬のマークが書いてあった。




「不味い!」

このままでは追いつかれる。

別に車が走っていて渡れないわけでもないが直線状には何も障害物はなかった。

それではあの黒い化物を妨げるものはなく、追いつかれる。


「俺が止める!二人は先に!」

「了解!」「これを使え!」

由香里はフラググレネードを総一郎に投げ渡した。

それを受け取ると総一郎は由香里達から離れた。


「こっちだ!化物」

総一郎はMP5を単発で撃った。

―――ダメージはなくていい。こっちに注意を向けろや!


総一郎は乗馬クラブから離れた。

時間を稼ぐなら目標地点からは離れた方がいいと判断した。

道を曲がったところで総一郎はフラグのピンを抜いて置いた。

そのまま、走ると背後から爆発音と共にギャン!という音が聞こえた。

「引っ掛かったな!」

口に微笑を浮かべながら総一郎は走る。路上駐車された車を越え、化物の障害となるように走った。

そのとき、前方にはゾンビの群れが立っていた。

フラッシュバンを群れの中に投げ込む。

刹那、激しい光と音が辺りを覆うが総一郎は服や腕を使い、目を守った。


ゾンビたちがもがき出す。

光で目は潰され、音で耳が潰されたゾンビの攻撃を避けるなど造作でもないことだ。

総一郎はゾンビの群れの中を走って行く。

仮に噛まれても本物かどうかはわからないがワクチンの投与をしている。


総一郎は難なく群れの中を通り過ぎて行った。

そこに化物が爆破された後とは思えないほどのピンピンした様子で現れた。

ゾンビたちがフラフラしていると黒い化物の障害となったがゾンビたちも吹っ飛ばされたり踏み潰されたりしていた。

―――足止めにもならんな

宙を舞っているゾンビたちを一瞥しながらそう思った。


「はぁはぁ…」

息が荒い。流石に最近は動く方だとはいえ、ゲームの主人公でも何でもないので動けば疲れるのは当然だ。

「総一郎!」

二頭の馬が走ってきた。上には由香里と横沢がそれぞれに乗っていた。

由香里が手を伸ばす、しかし、掴めなかった。

背後から追って来た化物に突進され総一郎は道を転がった。


「っつ…やってくれるな」

それでも総一郎は怯まなかった。諦めずに近くにあった廃車に飛び乗る。そこから馬に飛び乗ろうと考えたのだ。

「由香里さん!こっちです!!!」

総一郎が叫ぶと由香里は此方に向かって馬を向けた。化物も此方に向かって走ってきた。そいつが跳ぶと同時に総一郎は馬に向かってとんだ。

由香里の腰を掴む形で落馬しそうだが何とか乗った。足の先が地面に引き摺られる。

―――落ちる!落ちる!

馬は車の数倍揺れる。まるで悪路を走っているかのように上下に揺れるのだ。

このまま、上がらずにいたら間違えなく落ちるだろう。

総一郎は幼少期に馬術を習っていたことがあるからわかる。落馬の恐ろしさを。

それは初めて見学に行ったときであった。

休憩スペースは練習の様子が見れる構造になっていた。そこで総一郎は一人の総一郎と同じ位の年齢の少年が駆け足の馬から落ちたのであった。

その後に救急車が来た。少年はそれに運ばれて行った。その後、インストラクターの人に話を聞いたのだがプロテクターを着けていたが腕から落ちたせいで折れてしまったようだ。




そして、今の総一郎はプロテクターを着けてもいない。


これは落ちたら痛いだろう。

しかも、化物が追ってきている。

落ちたら死ぬ。



「耐えろ!回収地点まであと少しだ!」

由香里が総一郎に向って叫んだ。

空にオスプレイが飛んでいるのが見えた。

「米軍…?」

「だろうな…」

横沢の疑問に総一郎は答えた。

どうやら彼は米軍が来て、助けてもらえると思っているようだ。


化物は速さでは互角かそれ以下なので捕まえられないと踏んだのか妨害をするようになってきた。

廃車や付近の木々を抜いては投げ飛ばしてきた。

馬はそれに怯えて、前足を上げた。

由香里と総一郎は馬から落されそうになったが何とか耐えた。総一郎はその馬の勢いを利用して由香里の後ろに上がった。

横を見ると横沢の馬が走っていたが上には騎手はいなかった。後ろの離れたところに倒れていた。


「由香里さん、代わって下さい!」

総一郎は由香里の肩を掴み、走る馬の上に立った。

そして、由香里を乗り越えて前に座った。由香里が総一郎の腰に手を回した。

「よく捕まっててください!」

馬をUターンさせて横沢の方へ向う。

由香里がMP5を撃つ。

化物の体に銃痕が刻まれていくがうっとおしそうな素振りをすると吼えた。

再び、馬は前足を上げるも総一郎は構わず、走らせた。

「横沢!コイツのことは任せて徒歩でオスプレイのほうへ行け!」

こうなったら味方かも分かっていないが撃退するためにはもっと強力な装備が必要だろう。

「任せろ」

横沢は右足を痛めていたようだったが負担を和らげるようにしながら走って行った。

「化物!こっちだ!」

化物はこちらに走ってきていて自分が投げた木々や廃車の所の手前まで来ていた。

それらの障害物を飛び越えようと化物が地を蹴った瞬間に由香里のMP5が再び火を吹いた。

それらの弾丸は化物の眉間に突き刺さった。

その攻撃に怯み、化物は着地に失敗した。そのまま、転がっている。

総一郎はその隙に横を通り過ぎ、障害物を飛び越えた。

二人も乗せているからムリだと思われたができたのでホッと胸を撫で下ろすも化物は先程よりも怒っているのは明らかであった。


「総一郎!右に曲れ!」


由香里が叫んだ総一郎が右に曲ろうとしたときに馬が飛んだ。

総一郎と由香里も宙を舞った。馬は転がり、二人は体中をコンクリートに打ち付けた。

「ゴポッ」

口から赤い液体が零れ落ちた。内臓に傷が付いたのだろうか。

かなりの負傷を負った様だ。これまでの戦闘の疲労も重なって動けない。


「ぐ、――・・・・・・ゆ、由香里さ…ん?」

首と目を動かせる範囲で辺りを見ると総一郎から少し離れた所に由香里が倒れていた。

上体を起こして、懐からUSP拳銃を取り出して化物に向けていた。

「そっちは無事そうには見えないな…」

「ゲホッ!に、逃げてください!」


由香里は鼻で笑って答えた。

「できたら逃げてるわよ。けど、アンタを置いてなんか逃げられないわね」

由香里は立ち上がった。そして、総一郎に微笑みかけるとUSP拳銃を化物に撃った。

銃声が響く。

「こっちだ!化物!」

由香里は化物を引き付けると走って行った。

化物はそれに釣られて走り出した。


―――動け!動くんだ!

倒れた状態で幾ら力んでも身体が動くことはなかった。

これでは拳銃を抜くことすらも叶わなかった。

「くそ……何とかしないと」

総一郎はギリギリと歯を鳴らした。

この間にも遠くから轟音が聞えてきた。

自然と目から涙が出てくる。


何も出来ないことに対して、悔しさが身に染みる。

そして、由香里は一人本州に残ることになった後からは親のように面倒を見てもらい、家族の様に思っていた。

そんな人を失うのは御免だ。

何の為に苦しい訓練をした?

何のために昔の仲間のいるこの地へとやって来た?


「こんなの『由香里さん特製地獄へご招待訓練』よりもきついか?」



「じゃ、コレ落したら罰ゲームね」

由香里はそう言って総一郎の構えるG22の銃口に乗せた。

「―――え?」

「だから、落したら罰ゲームね。それじゃ、頑張って~」

そういうと雑誌を手に近くのハンモックに寝転がった。



そのときの罰ゲームの内容を思い出す。

―――口に出すのもおぞましかったな…。

この苦しみと本当にどっちが苦か?

先ほどは動かなかった体に鞭を打って、立ち上がった。


総一郎は走り出した。

化物が由香里を追っていった方へと。

少し行ったところに由香里はいた。

どうやらそんなに持たなかったようだ。足から血を流して倒れていた。

化物は今にも食って掛かりそうな様子であった。


「待てぃ!」

総一郎は腹から大声を出した。

化物は此方に身体を向けた。

総一郎は化物は飛び掛ってくると身構えていたが化物は尻尾を振り回した。

すると尻尾から棘のような物が飛来してきた。由香里の足を貫いたものだ。


「ぐっ!」

その一つが右足を貫く。

瞬時にズボンが赤く染まった。

化物はその隙に寄って来るが総一郎はMP5をフルオートで放つ。

由香里も背後からUSP拳銃を撃っていた。

化物は怯んだ。

その時、腹の部分に赤い臓器のようなものが剥き出しになったのが見えた。


―――アレは弱点か?

都合良くあんな弱点ですといわんばかりのものが出てくるとはラッキーだと思う。

総一郎はMP5を投げ捨ててナイフを抜いた。

そして、走り出して赤い物目掛けて突き刺す。

しかし、化物もそう甘くはない。

化物は身を翻して避けた。


だが総一郎はそのまま化物の背後に回った。

そこで総一郎は身を落した。

そこで赤い部分が由香里の位置からもよく見えるようになった。

由香里のUSP拳銃のマズルフラッシュが輝くと化物は崩れるように倒れた。

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