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「千秋さんは、意外と正義感は強いみたいですねー」

 翌日。あれからは特に何もなく朝を迎えた千秋は、ぼやけた頭のまま窓を開けようとした。

 時間はまだまだ五時半。でも基本的に千秋はこの時間帯に起きるので何の問題も無い。問題があるとすれば地球に帰った時生活リズムが崩れている可能性だけだ。

「…………。……あれ」

 ガシャガシャ、と何度か開けようとしてみるも、一ミリたりとも開こうとはしなかった。

「そういえば……」

『お前の場合、寝ぼけたまま窓でも開けて日を浴びようとするだろ。とりあえず開かないようにしとくぞ』

 本当に開けようとしていた。窓自体は防弾仕様らしいので、狙撃自体は多分大丈夫だ、とも言っていたが、狙撃銃とやらがどのくらいの威力か知らない千秋は窓から飛び退いていた。

 日を浴びるのはとりあえず諦め、洗面器に向かう。頭が活性化する、とかテレビで見てから、中学二年までしなかった朝すぐの歯磨きを終え、洗顔用の石けんはないらしいので、仕方なく水だけで顔も洗い終える。

 帰ったら顔洗っとこ、と適当に考えながら、着替えを始め──ようとしたが。

「……そういえば私、学校の制服以外無かった……」

 今はセシアの寝間着を借りている(町長が借してくれた。丁度洗濯して干されていたらしい。町長邸は無傷なので、洗濯物も無傷だった)。服もセシアのを借りれば良いのかもしれないが……。

「み、ミニスカメイド……」

 なんとなくイメージされる、お金持ちの家にいるようなメイド服ではない。ロングスカートではなく、制服のスカートよりも短そうなミニスカートで、ブラウスは何故か肩が出ているというものだ。普通に考えれば可愛いのだろうが、着る人によっては恥ずかしいものかもしれない。

「……はぁ。制服着よ」

 と、言う訳で、昨日と同じ服を着るはめになった。

 ……他の服も持っているかも、という可能性には至らない千秋だった。


 着替え終えた千秋は、ドアを開けて廊下に出た。

「あぁ、美薙月さん。おはようございます」

 と、なんとなく見覚えのある男性が階段を上がって来た。

「町長の執事です。夕食の際にお料理をお持ちした」

「あ、あー、そうでした。えっと、おはようございます」

 執事はにこり、と笑うと、突然難しい顔になってジロジロと見出した。思わず後ずさる。

「えっと……な、何か?」

「あ、いえ。昨日と同じ服な気がして」

「えっと、はい。着替えとかなかったので仕様がなく……」

「なんと。それはいけません。着替えの服ならお貸ししますよ? まだメイド達も二、三人残っていますし」

「えぇ!? で、でもミニスカメイドはちょっと……」

「普通の服もありますが」

「え、そうなんですか!?」

「はい。休みの日は旅行等に行くこともあるようなので」

 ……よく考えてみれば普通あるよね……、とようやく至った答えだった。

「えと、じゃあお願いします」

「かしこまりました。では、どうぞこちらへ」


 執事が二階にある部屋の前に立つと、とんとん、とノックをした。

「失礼、だれかいますか?」

 すると、中から女性の声が返ってくる。執事が用件を伝えると、きぃ、とドアが開いた。

「ささ、どうぞ。私は少々離れた辺りに下りますので」

「は、はぁ」

(別に普通に廊下にいれば良いんじゃ……)

 千秋は中にいたメイドに連れられて中に入る。

 普通に更衣室のようで、ロッカーがずらりと並んでいる。ただ気になることといえば、更衣室の奥に置かれた大きめのカーテンで囲われた場所がある。

 メイドは楽しそうにその中へと後ろから押して来た。その後ろから、もともといたメイドが二人ついてくる。

 少しばかり不安を覚えながらも、カーテンの中に入る。

「うわぁ……」

「凄いでしょう?」

 そこには大量の服があった。ミニスカメイドはもちろん、チャイナ服やらナース服やら。普通の服もあるが、ぶっちゃけコスプレだらけだった。

「じゃ、おねーさん達がコーディネートしてあげるねー」

「え? いや、自分で……」

「良いの良いの♪ ささ、服は脱いじゃってねー。選択しておいてあげるから」

「え? え? い、いやだから──んにゃ! ちょ、ぬ、脱ぐなら自分で脱ぎますから……うにゃあ!? 服脱ぐのにそんなところ触る必要な……って、いつの間にか下着だけ……な、なんですかそのおもちゃを見つけたような笑みは……って、普通に持ってるのコスプレばっかりじゃないですか!! うひゃあ!? ちょ、ちょっと!?」

「んー♪ あなたスタイル良いわねぇ。まだ一五だっけ? 羨ましいわぁ」

「でもこれだけ可愛かったらこれ全部似合いますねー。でも朝食まで時間もないし……これとこれとこれだけでも!」

「あとこれは絶対着せてあげなきゃね! あ、逃げちゃダメ! 逃げると……私の百合っ娘としての本能が目覚めちゃうよ〜? いろんなもの奪っちゃうよ〜?」

「そーやくん助けてええええええええええぇぇぇぇぇ!! うにゃあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」


 ちなみに、千秋の叫びは届かなかった。 


      *  *  *


 窓から差し込む光が、今更のように目を突いてくる。気がつけば朝になっていたことに少々嫌気がさす。

 蒼夜は徹夜明けだった。SGSとの通信を試みるため、スフィーリアの異世界間座標を元に異世界間通信術式を作っていたのだ。蒼夜の魔法属性『水』には異空間通信魔法がない。おかげで新式魔法の魔法陣を書かなければならず──。

「ふぅ……さすがに朝までかかるとは思わなかったな」

〈まぁ、本当ならもっと簡単なものもありますが、異世界間干渉を長時間する場合、術式はややこしい物でないとなかなか出来ませんから。さて、あとはちょっとした仕上げだけです〉

「分かってるよ……。ったく、一睡もせずに山賊共と戦わなきゃいけねぇのか。学生には辛い話だな」

〈その前に、一人で多数を倒そうというのがまず辛い話ですね。数多の主人公達でさえ、一人二人の仲間がいたというのに〉

「主人公じゃないから仕様がねぇ。さて……こっちが気をつけるとしたら、連中のボスとあのマフィアっぽいオッさん。それとあの魔力滅殺(デストロイヤ)、くらいか」

〈魔力滅殺については発動時間さえ与えなければどうにかなります。他に何かあったとしても同じ。やはり第一に気をつけるべきはボスとあの男ですね。ボスは力量が不明ですし、あの男はそれなりの力を持っているようですし〉

「……状況によったら、アレ(・・)を使わなきゃかもな……」

〈一応対人使用は緊急事以外禁じられていますが?〉

「だから状況によれば、って言っただろ」

 蒼夜は手元に置いておいたカップに口を付け、コーヒーを一口飲む。特別甘くした訳でも、ブラックのままな訳でもない味が舌を通り過ぎる。別にコーヒーが好きな訳ではないが、途中で寝ないための策だった。

 ふと時計を見ると、そろそろ短針が七に指そうとしている頃だった。

「そろそろ朝飯か。一応術式も完成したし、そろそろ行くかな」

〈そうですね。あ、そうそう〉

 シルディックはうふふ、と気持ち悪い笑いをこぼしながら、

〈今日の千秋さんには気をつけた方が良いかもしれませんね〉

「なんだ急に」

〈いえ別に。ちょっとした可能性を示しただけですよ。ささ、行きましょう行きましょう。わし腹へってしもて仕様があらへんでー〉

「意味分かんねー奴。そしてなんだそのエセ関西弁……」

 ドアを開け、廊下に出る。部屋が大きい故に少ない三階なので、すぐ目の前にある階段を下りていき、事前に教えられていたリビングへと向かう。

 キィ、と音を立ててドアが開く。

 リビング、というにはかなり広い部屋の中には町長が一人いた。

「あぁ、SGSの。おはようございます」

「町長ですか。……って、どうしたんです?」

 町長の頬やら首やらを、包帯や湿布が覆っていた。

 あぁ、これですか? と、苦笑しながら、

「私も昨日町人達に襲われてしまいましてね……。なんとか執事達に助けていただいたのですが……いや、面目ない。町の長でありながら、町の人々の敵視されるとは」

 も、ということは、蒼夜達も襲われたことを知っているようだ。まぁ町長の部屋は蒼夜達の部屋の下の階だし、物音、ついでに自分も襲われたとあれば分からないことではない。

「えっと、なんかすいません……」

「いえいえ、あなた方のせいではありませんよ。それどころかお客様に手を挙げさせるなど、町長として失格です。申し訳ありません」

 立ち上がり、深々と頭を下げる。思わず慌てた。

「い、いやいやいや! 頭を上げてください、こっちは全然気にしてないですから!」

「しかし……」

「あ、頭を下げるよりも、これからのことを考えないとですよ。それに、謝る謝らないのことで言えば町の人達がするべきですから」

「……そうですね。はい。朝食中にでも話しましょうか。まだ女の子の方が来てませんから」

「分かりました。……それにしてもアイツ、まだ寝てんのか?」

「はは、女の子の準備は色々と時間がかかるみたいですよ?」



 ……現在七時四五分。蒼夜がリビングに来てから四〇分ほど経つと、千秋がようやくやって来た。

「千秋遅いぞ。一応まだ料理は来てないけ、ど……」

〈ほほぅ、可愛いですね〉

 千秋は昨日来ていたような服は着ていなかった。

 袖にフリル状になっている白いブラウスを着て、胸元には黒いリボン。黒い、肩ひもがフリル状になったジャンパースカート、当然のようにスカートにまであしらわれたフリルが、千秋が歩くたびに揺れる。スカートの下からは、海とかで焼こうとしたこと無いんじゃないかと思うほどに白い足が真っすぐに伸びていた。

 長い髪は首辺りで黒いリボンでまとめられ、フリル同様尻尾のように揺れている。

「ご、ごごごごごごごめん……」

「あ、あぁ……」

 耳まで真っ赤にした千秋は、俯きながら席につく。蒼夜は蒼夜で、頬を赤くしながら千秋から目が離れない。

 リビングのドアから、ニヤニヤしたメイド三人と、ちょっと赤くなった執事が入ってくる。料理の乗ったお盆を手に持ちながら、テーブルに歩いていく。

 町長が微笑みながら、

「へぇ、可愛いですね。あの三人に?」

 小さく頷く。

 すると、ちょうど町長の目の前に朝食を置いていたメイドの一人が、

「千秋ちゃん何でも似合うから迷いましたよー。こんな大変な時にちょっとアレですけど、楽しんじゃいました着せ替え♪」

「私達と同じミニスカメイドも似合ってたけど、死○だ世界○線、だっけ? の制服も似合ってたわよねー」

「私はやっぱり男装が……あんな男の子になら、百合な私でも恋しても良いですねぇ……。いや、いっそのこと私も男になって薔薇とか……ムフフ」

「アレレぇ? 私よりも千秋ちゃんの方が良いのかなぁ?」

「何言ってるんですか。私には貴女が一番に決まってますよ?」

「はぁ……はいはい、イチャつくなら部屋でやりなさいよねー。ほらほら、町長達が目のやり場困るような濃過ぎるキスとかするならもっと部屋に行きなさいよ。私も目のやり場に困るのよ? それ」

「ぷはぁ……あ、ごめんなさいごめんなさい」

「ん……ふぅ、いいお味でした♪」

 そう言いながらメイド二人は本当にどこかに行ってしまった。言われた通り本当に部屋でイチャつくつもりなのだろうか。

 町長はあはは……と苦笑いしながら、

「すいませんね、本当に……。いつもあの二人がいる時は、私もよく目のやり場に困ってまして」

「クビとかにはしないんですか……」

「まぁ、恋愛は自由ですからね。あれくらいじゃクビには出来ません」

 蒼夜はため息をついた。

「まぁ、何はともあれだ。いただきます」

『いただきます』 



「さて、どうしようか」

 朝食を食べ始めて一〇分ほど続いた他愛のない話を、蒼夜は終わらせた。

「どうするって……」

「まずは……人質を解放する、といった方向の方が良いのではないでしょうか。私が言うのもなんですが、その方があなた方も動きやすくなると思いますし」

 と、蒼夜が口を開こうとすると、

「でも一人で潜入する、っていうのは絶対ダメだよ?」

 一瞬キョトンとした。

「って、じゃあどうすんだよ?」

「潜入するなら私も行く。戦えないって言っても、空気制御(エアリアル)は使えるもん。幼稚園からの力だし、極限状態じゃなければ暴走させずに扱える。私だって自分の身くらい守れるよ?」

「あ、あのなぁ……」

 どうも多少なりとも吹っ切ったらしい千秋は、やけに生き生きとしていた。まぁ、彼女自身にはそんな自覚は無いようだが。

(シルディックが言ってた気をつけろ、ってのはこれか?)

 それにしても、町人に突然襲われても反応出来ずにいた千秋が、山賊達に対して同じようなことにならないと言えるのだろうか。いや、少なくとも蒼夜からすれば絶対言えない。そもそも千秋に潜入任務など出来るのか。

「蒼夜君、でしたか。私の人生経験からして、君みたいなタイプでは絶対に彼女を言い負かせられませんし、彼女みたいな娘は、絶対に今の言葉を貫き通しますよ?」

「うぐっ……」

 うんうん、と千秋は頷いている。

「で、でも。その空気制御とやらが使えるとしてもだ。魔法が使えない奴を連れてく訳には……」

「ちなみに。我々も山賊共の隠れ家は知りませんよ?」

「んなっ!?」

「調べる機会もチャンスもありませんでしたからねぇ」

 ちょっとばかり町長が策士に見えて来た蒼夜だった。

「じゃあどうすんだよ……」

「今日山賊達が来ると思います。その時にでも、掴まるなり逆にボコボコにして場所を吐かせるなりすれば良いのではないですか?」

「しかし、監視されている可能性があるのに返り討ちは……」

「いえ、その心配はありません。連中の数はそれほどのものでもないですからね。我々が勝てないのは連中に魔法があるから、という言い訳が立ってしまうくらいには」

 町長は一間開けて続ける。

「山賊共は知らないでしょうが、この町には半径三百キロ内のラインズに体する視線を感知する巨大な魔法陣のようなものが地下にありまして。ほぼ毎回ここに来る際は見張りなどいません。先日、あなた方を捜しに来た連中の時も見張りはありませんでした」

「なるほど……」

 確かに現代の魔法にもそう言ったものは存在している。新式魔法は当然、古式魔法だと属性にもよるが、『風』や『感』などがある。

 魔法陣というのだから、新式魔法に近いものなのだろう。感知範囲が三〇〇キロというと、相当巨大な魔法陣があるに違いない。さすがは遺跡だらけの世界、といったところか。

「でも返り討ちにするにしても、確実に返り討たないとですね……。それに時間がかかり過ぎてもマズいな。いくら数が少ないからって、誰も隠れ家に残さないなんてことはさすがに無いでしょうから。少なくともボスは。あとは尋問と……場所にもよるけど、隠れ家まで行く時間か。……相当忙しいことになりそうだ」

 隠れ家まで行き、助けるのが遅れれば確実に人質達に害が及ぶ。それがどんなものであれ、避けなければならない。

 千秋は朝食を食べ終えると、ふぅ、と一息ついた。

「ところで……山賊さん達が来るまではどうするの?」

「ん、どうするか……。入り口付近で待ち伏せとかしても良いけど、町でもまわる……はダメか。昨日のこともあるしな」

〈なら、この邸で待っていても良いのでは? ウォーター・スライドもあることですし、連中が来た時に現場に行くのは十分早いと思いますが。視線感知の術式があるそうですし、確実に間に合うと思いますよ〉

「私は全く構いませんよ。どうぞごゆっくり」

 蒼夜はしばらく考え込み、

「じゃあ……ちょっとばかしのんびりさせていただきます」


      *  *  *


 二人はそれぞれの部屋で歯を磨き終えると、二人とも千秋の部屋でベッドに座っていた。

「へぇ……そいつは大変だったな……」

「うん……あのメイドさん達すっごい強引で……抵抗しようにも抵抗出来ずにいろんな服着せられた……」

 蒼夜には言っていないが、ぶっちゃけ二、三回ほど貞操の危機に陥った。さすがにその時はまだ勝機を保っていた二人もしくは一人が止めてくれたが、止めてくれなければどうなっていたか……と考えるともの凄く恐い。

 そういえば、蒼夜のことを彼氏だ恋人だと勘違いしていたようだが、勢いに流されて否定することも出来なかった。肯定も出来なかったが。

「それにしても……」

 蒼夜は千秋をちらりと見る。

 はっきり言って可愛い。可愛過ぎる。服が変わっただけで美少女が更に美少女になった。これでもっと出会い方が良ければ一目惚れしていたかもしれない、と思うほどに。

 さすがにもう慣れたのか、それとも忘れているだけなのか、千秋はもう平然とその姿で歩き回っている。まぁ邸内だから、というのもあるかもしれないが。

 蒼夜の視線に気付いたのか、「どうしたの?」と、首を傾げて来た。

 ふぁさり、と流れる髪から何だか良い匂いが流れて来ている気がした。

「い、いや……なんでもない」

「? そういえば、蒼夜君それ昨日と同じ服?」

「あ、ああ。着替え持ってなかったからな……出来れば着替えたかったけど、どうせ今日帰るんだし良いかって思って」

「ふぅん……でもやっぱり汚れてるね、土とかで」

「そりゃ、戦ったり倒れたり遺跡行ったりしたからな。汚れるさ」

「……蒼夜君も執事さんに服借りたら?」

「いいよ、別に。なんか面倒だし」

「私と違って執事さんのなんだから別に危険は無いと思うけどなぁ……」

「そういう問題じゃねーの。可能性の問題なの」

「可能性?」


 ──いや、だってあのメイド三連星なら普通に着替え中とかで乱入して来そうだし……。


 ……想像したら寒気がした。

「と、とにかく。俺はこのままでいいから」

「……つまんないの」

 千秋が不満そうな顔をしたが、蒼夜は無視しておく。

 ……数秒、二人は何も話さずただボーッとしていた。

 すると、蒼夜はそういえば、と話をきりだした。

「さっき言ってた空気制御、ってどういう原理なんだ?」

「え?」

「いや、最初見た時一応、シルディックからトライデント視点で見たことを聞いたんだけど、よく分かんなくって……あ」

 しまった、と蒼夜は思った。

 千秋は自分の力、空気制御に対してトラウマを持っている。何があったかなんて蒼夜には当然分からないが、彼女には辛いことのはずだ。それが直接そのことに触れている訳ではなくても。

 そんなことを気にしているのを知ってか知らずか、千秋は首を傾げながら、

「? 蒼夜君?」

「え、あ、いや、言いたくないならいいから……」

「別に言いたくないなんて言ってないけど……どうしたの?」

 蒼夜の顔を覗き込む彼女の表情は、ちょっと心配が滲むだけだった。特に何かを気にしているような感じは無い。

「いや、だってお前、空気制御のことで気にしてたみたいだし……」

〈暗い顔されると気にしちゃうってことです〉

「お前はいちいち余計なこと言うなっ!」

「あははははっ!!」

「? 千秋、どうした?」

「だ、だって……! あははははっ!」

 どうも押さえ様の無い笑いがこみ上げて来たらしい千秋は、腹を押さえながら、ベッドで悶えていた。

 対する蒼夜は何が何だか分からず頭の上に?をうかべるばかりで、「まさかとうとう頭が壊れたのか!?」と本気で心配している。

 しばらくして、ようやく落ち着いて来た千秋は、ベッドから起き上がる。頬は紅潮し、ちょっと涙目になっているが、まだ口元はつり上がっている。

 千秋は、まだ肩で息をしながら、

「ご、ごめんごめん。だって、今更過ぎてつい、ね」

「今更って……」

「だって昨日いろいろ言って来たくせに、今更気にするとかさ。なんか蒼夜君らしくないとなーって。まぁ、今までのイメージから言ってるんだけど」

「今までのイメージってなんだよ」

「クール気取ってる無意識なカッコ付け」

「んなっ!?」

〈かなり的を射ていますね〉


「でも、優しい」


「!?」

 蒼夜は今顔が赤い自信があった。

「なんでもかんでも自分で背負おうとして、なんだか生き急いでる男の子。人を立ち直らせようと思えば、悪役を全面的に引き受けるし、誰かを守ろうと思えば、その人が戦える力を持っていても戦わせずに一人で突っ込んでいく。悪く言えば無謀だよね」

 千秋は恥ずかしげも無く淡々と続ける。

「だから今回だって一人で潜入するとか言うし、相手のトラウマを思いきり(えぐ)りながらも、なんだかんだで優しくなる。克服させようとする。一種のお人好しだよねー」

〈だから今更でも気にするんでしょうが、でもその精神を完璧に貫くならそこまで気にしないはず〉

「そうそう。だからちょっと中途半端」

「お前らなぁ……好き勝手言いやがって」

 そう言いながらも蒼夜の口元は緩んでいた。半ば呆れて、半ば嬉しいようなこの気持ちはなんなのか。

「まぁいいや。で、空気制御(エアリアル)のことだっけ?」

「いいのかよ……。あぁ。教えてくれるなら教えてくれ」

「うん。……って言っても、私もちょっとしか分からないんだけど……」

 空気制御。

 魔力を空気に干渉させ、融合。言ってみれば自分の身体の一部みたいな物にし、自由自在に操る力。

 力の発動時に術式の鎖が術者の周りに存在していない上に、具現力も使用されていないことから、魔法とは全く違うものとされている。

 その前に大前提として、魔力というのは異空間に干渉する力である。つまり本来ならば現実空間に干渉するはずが無いのだ。だが空気制御を使用する場合、何故か魔力は空気に、現実空間に干渉している。それが一番の謎だ。

 以前空気制御について調べた医者や科学者は、空気制御使用者の魔力は、何かを通して現実空間に干渉出来るように変換している、使用者の魔力は他の人々物とは根本から異なる、など様々な説をあげているようだ。

 話を戻そう。

 空気制御によって、使用者、つまり千秋の魔力が干渉した空気はエメラルドグリーンに輝く風となり、千秋の思いのままとなるとされている。

 あくまで現状の情報からで言える話だが、力の暴走時のような鋭い刃にする事も出来れば、分厚い空気の壁を作ることも出来る。下手すれば真空すら作ることが出来るかもしれない。

 極論を言えば、空気さえあれば千秋には最強の矛と盾がある、ということになるのだ。

「ふぅん。とにかく、ばらまかれた千秋の魔力が空気と融合して、それがあの緑色の風になる、と」

「まぁ、分かる範囲で言えばそんな感じ」

〈それにしても、確かに魔導戦士の中には特殊な力を持った人もいますが、自然の中の物を操るといった物は聞いたことがありませんね〉

 基本的に言われる異能持ちというのは、ある種の超能力のような物だ。「動物と会話が出来る」や、「透視が出来る」などを言う。

 しかし、世界を管理している”世紀の歯車”のデータベースには、自然を操る、つまり千秋の「風を操る」や、火を操る雷を操るという異能は存在しない。そもそも魔法で操っているのだ、そんな異能が存在する必要は無いといえばない。

「その辺りの詮索はよそうぜ。今やったって仕様がないことだし、専門家が解き明かしきれなかったんだ、俺達が考えても分かることじゃねーよ」

〈それもそうですね〉

「今は山賊さんと黒龍のこと、だね」

 ふぅ、と千秋は一息つく。長々と喋ったら喉が渇いた。立ち上がり冷蔵庫の中の麦茶(遺跡世界でも冷蔵庫くらいある)を口に含む。冷たい麦茶が喉を通り潤してくれる感覚が、なんとなく気持ちいい。

「ん?」

 蒼夜がドアの方に視線を向ける。

 部屋の外からどたどたと、誰かが走る音がする。

 蒼夜は一瞬身構えたが、ドアを開けて入って来たのはさっきの執事だった。


「視線感知の魔法陣が反応しました。ラインズに山賊達が来ます!」


      *  *  *


 千秋と蒼夜は、ウォーター・スライドで入り口付近まで行く。ただし、家の陰に隠れるところにだが。

 入り口付近には、山賊達が約一〇人ほどいた。さらに彼らが囲む中心に、ライオンが五匹くらい入りそうな檻が置かれていた。もちろん、その中には人質が数人入れられている。

「昨日話した二人を連れてくればこの連中はもちろん、まだ我らのアジトに閉じ込めている連中も帰してやる! さぁ、さっさと連れてこい!!」

 町人達は、何人か走り出していった。おそらく町長の家にでも向かったのだろう。

 自分でもよく分からないが、不思議と落ち着いていられる千秋は、蒼夜に視線だけを向け、

「(蒼夜君、どうする?)」

「(なんとかして人質を解放、あの連中を倒して隠れ家の場所を吐かせるに決まってるだろ)」

「(人質の人達はどうやって?)」

「(弱いウォーター・スライドをあの檻にかけて、町の連中側に檻を滑らせる。その時に檻も壊せばいい。山賊共は楽勝だろ。見たところあのオッさんもいないみたいだしな)」

 視線を戻すと、山賊達は人質に悪い笑みを浮かべながら話しかけていたり、イライラしているのか足で地面をせわしなく叩いたり、魔法陣の書いてある紙を弄んでいたりと、誰一人同じことをしないで時間をつぶしている。

 それから三〇秒ほど経つと、さっきから地面を足で叩いていた男がため息をつき、「おい、まだなのか!」と、苛立った声をあげた。

 それを合図にしたかのように、

「こ、こら待ちなさい!」

 そんな女性の声が聞こえた。すると、タタタタタタ、と小さい走る音がいくつも聞こえて来た。

 がしっ、と六人の子供達が、声をあげた男の足にしがみついた。

「(オイオイ、マジかよ……)」

 そう漏らす蒼夜と、周りにいる大人達の気持ちを知ってか知らずか、子供達は「セシアねえちゃんをかえして!」「セシアねえちゃんかえせよ!!」「おねえちゃんを返してください!」「かってにおれたちのセシアねえちゃんとってくなよぉ!」「セシアさんをかえせ!」「セシアおねえちゃんをかえしてよぅ」と、何度も何度も言い続けた。

 セシア。町長の家のメイドさん。小さい頃に両親を亡くしてしまい町長に引き取られたらしい女性。

 ありがちな設定だ。だが、このスフィーリアという世界はありがちな設定だらけなのだ。そんな女性が子供に好かれていてもおかしくはない。

「(あ……!)」

 山賊の男は鬱陶(うっとう)しそうにその子供達を蹴り跳ばした。

「邪魔なんだよ、さっさとどっか行け」

「うるさい! セシアねえちゃんをかえせ!」「そうだそうだ!」「いったぁい」「だいじょーぶ?」「このやろう、やったなぁっ!」「いたいじゃないですかっ」

 ご両親の声だろうか、静止の声が飛び交う中、その子供達は躊躇(ためら)いも無く再び山賊の足にしがみつき、噛み付いたり蹴ったりしだした。

 山賊の男は「ちっ」、と舌打ちすると、もう一度その子供達を今度は思いきり蹴り跳ばす。子供達が一〇メートルほど飛んで転がった。それを見ながら男は懐から一枚、手くらいの大きさの紙を取り出した。

「(な……! アイツ!)」

「ウゼぇんだよ!」 

 コオォォォ、とその紙に赤い粒子が集まっていく。その赤い粒子は、オレンジ色に輝く火の玉へと姿を成していった。

 この赤い粒子は火の自然力である。アレックスのモーニングスターに刻まれた術式などは、総合的な(火だろうが水だろうが関係なく)自然力を扱うが、こうした火を操るなら火の自然力だけを扱うのだ。

 全く状況を理解していない子供達だったが、自分たちが危険だということは理解したのか、悲鳴を上げ始めた。だが逃げ出さない。足が固まっているかのように動かない。逃げ出せないのだ。

 ドォォォン!! と、爆音がラインズの町に響いた。

 大人達の悲鳴が上がる。山賊達の使う新式魔法の魔法陣には、非殺傷設定を施していないことをしっているのだ。

「ったく、無駄な魔法使っちまったぜ」

「ははっ、バカだなぁお前。子供なんか適当に脅しゃあ逃げてくってのによ」

「面倒だったんだよ、あーあ、もったいねぇ。またコピーすっかなぁ」

 などと話している山賊達の目の前の煙が晴れた。というより、

「(くそっ……! アイツらぁ……!! って、あれ? 千秋? おい、どこに──)」


 煙が吹き飛ばされた。


 ブワァッ!! と自分たちの目の前から吹きよせた突風が、山賊達の身体を浮かして後方に大きく吹き飛ばす。「ぐえっ!?」と情けない声を漏らしながらちょうどそこにあった気に激突した。山賊達は地面を転がりながら痛みに耐える。

 蒼夜は思わず頭を抱えた。

 こんなことが出来るのはさっきまで目の前にいた奴しかいないし、見覚えのある容姿をしている奴が今子供達の前にいる。  

「何を……何をしてるんですか!!」

 栗色より少し薄いくらいの、腰まである長髪。美少女としか言いようの無い整った顔立ちと、エメラルドのように輝く碧眼。

 さっきまで蒼夜と共に物陰に隠れていた少女、美薙月千秋(みなつきちあき)だった。



(……………………。………………。…………。……あれ? 私何してるんだろ?)

 これが俗にいう身体が勝手に動いた、というやつなのか。何か考えるより先に、脊髄反射のごとく身体がいつの間にかここまで来ていた。

 良く言えば勇気がある。悪く言えばただの考え無し、バカである。

「何だお前は!?」

「ん? オイ、この女……」 

「あぁ……間違いねぇ。アレックスさんの言ってた女だ」

 山賊達は各々の獲物を取り出す。相変わらず一人一人の持つ武器は違う。

「おい女」

「は、はいっ!?」

「もう一人、男がいたはずだ。そいつはどうした」

 つまりは蒼夜のことか。

「い、今はここにはいません!」

「じゃあどこに行った」

「えっと、は、白銀の遺跡!」

「白銀の遺跡だぁ〜? なんでんなとこ行くんだよ?」

「こ、黒龍が出た、って言うから調査に……」

「黒龍ぅ? ぶっはははははははははは!! 何を言い出すかと思えば、伝説上の生き物調べに女を置いていったのか? こりゃ傑作!」

「まぁどうでもいいだろ。女は出来る限り無傷で、男は何してもいいってことは、優先順位はこの女の方が高いってことだ。男の方は別にどうでもいいのかもしれないぜ?」

「んじゃ、とっとと捕まえて帰ろーぜー。早く可愛い娘達に囲まれたいー」

 山賊達はゆっくりとこちらに近づいてくる。

 対して千秋は、スカートにしがみついてくる子供達のせいで動けない。

「…………」

 ゆっくりと、子供たちの手をどける。顔だけ子供たちに向けて、にこりと笑顔を向け、再び山賊たちに戻す。

 ……なんだかムカついて来た。

 昔感じていたような感情が心の奥からこみ上げてくる。

 当てはめるなら、後ろの子供達がいじめられてる子たちで、目の前の山賊たちがいじめっ子、といったところだろうか。

 そう、思ったら。さっきと同様に身体が勝手に動いた。

(魔力を思う場所に散布し空気に干渉させ、自分の思う通りに!)

 腕を思いきり振るった。それだけで風は飛ぶ。

 ブワァッ!! と突風が再び何人かの山賊たちを襲う。それだけで、まるでそちらに重力が働いているかのように身体が押し出された。

「くっ……このクソアマぁッ!! 逃げるなら今のうちだぜ!?」

「そんな負け惜しみで私が逃げるわけないでしょうが! 私は貴方たちみたいな人質を取らないと優位に立ってる気になれない人がいっちばん! いっちばん嫌いなんだからぁッ!!」

 風を手に集め、竹刀の形にする。キッ、と山賊の一人を睨みながら中段の構えをとった。剣道は部活の助っ人でやったことがある。

「こいつ、調子乗ってんじゃねぇぞコラぁ!!」

「ッ!!」

 カットラスを持った山賊が千秋に向かって走り出すと同時、思いきり踏み込んだ千秋が風の竹刀を思いきり振るう。反応出来なかった山賊は思いきり面をくらい、その場に倒れた。

「チッ……仕方ない、無傷で捕らえるのは断念する! あれをやるぞ!」

 山賊の誰かがそう叫ぶと、まだ残っている一〇人ほどの山賊たちの内七人が、自分たちの持つ武器を掲げた。剣身、刀身、穂先などの表面に、薄い紫色の文字が浮かぶ。部隊型術式だ。

 掲げられた武器の中心で、淡く紫色に光る粒子が集まり球体を成していく。

 残った三人は発動までの時間稼ぎのようで、千秋に向かって来た。

(そ、蒼夜君はどうして何もしてくれないの!?)

 敵の攻撃を付け焼き刃の太刀筋で弾きながら、さっきまで自分のいた建物の影を思い出す。

 いや、来ない理由は大体分かっている。人質解放のタイミングでも計っているのだろう。今七人は部隊型術式を構築中で動けないし、残りの三人は時間稼ぎのために千秋とチャンバラ中だ。あと少し耐えれば蒼夜が人質を解放し、倒してくれるはず。

「あぁもう! 面面メーン!!」

 バシバシバシ! と三人の頭を思いきり殴る。更に、痛さのあまり怯んだ三人の胴に一撃。殴ると同時に突風を起こして吹き飛ばした。入り口の壁に三人とも思いきり衝突し、気絶する。

 ハッとして残った七人の山賊たちの方を見た。掲げられた武器の中心では、変わらず粒子が集まり球体になっていく。さっき見たときはバスケットボール程度だったのが、今ではバランスボールほどの大きさになっている。自然力で構成されたエネルギーの塊は、更に巨大化し、半径一メートルほどの球体と化した。

 山賊の一人が叫ぶ。

「一応非殺傷設定を急遽追加したが……当たれば痛いぞ! 食らえ! 集束魔鋼弾(マテリアル・バスター)!!》

 全員が掲げていた武器を千秋に向ける。それについていくように球体が千秋に向けられた。

 避けられない。

 それは間に合わないという意味と、後ろにはラインズの人々がいるという意味を持っている。

 ならば耐えるしかない。千秋は正面に魔力を集中し、時間が許す限り、なるべく大きく分厚いエメラルドグリーンの壁を造り出す。

 出来たのは精々千秋から五、六〇センチ程度をカバー出来る壁だった。

 ズドオオオオオオオオオン!! と、集束された自然力が放出された。まるでビームのような極太のそれは、千秋に向かって突っ込んでくる。

 魔力と自然力は、水と油のように混ざりあわない関係だ。まるで同極の磁石同士のように反発しあう。壁が自然力を受け止める瞬間、まるで突進してくる象を止めようとしているのではないかと思うほど強烈な衝撃が襲った。足が地面を滑って少し後ろに下がるが、壁はまだ健在だ。自然力が壁を(えぐ)り、壁が自然力を押し返す。そんな攻防戦が壁の向こうで行われている。

 千秋も千秋で大変だった。抉りとられていく壁を修復し、全体の維持に力をまわし、壁が負ける前に自分が押し負けないように頑張るという並列行動。

「くっ……!」

 と、視界の端で何かが飛び出した。

「オラあああああああああああああああ!!」

 黒髪の少年、蒼夜だ。

「何!?」

 山賊たちが驚愕の表情を浮かべる中、蒼夜は山賊たちの後ろをすり抜け、人質たちの入った檻に微弱なウォーター・スライドをかけた。スケートでもするように滑りながら、檻を思いきり蹴って町人側に滑らせる。

「蒼夜君!」

「ちょっと待ってろ! 今すぐ連中を!!」

「ちっ……出力を最大にする!!」

 山賊たちがそれぞれの武器の柄を軽くひねった。と同時に、刻まれている術式が更に光を増した。

 瞬間、ドン!! と、集束魔鋼弾威力も勢いも太さも倍加した。

 ホースから勢い良く出る水を何かにぶつけると、水が撒き散らされるように、集束魔鋼弾があらぬ方向へと飛んでいく。それらはラインズを囲む壁に、家々に、地面にと様々な物を抉っていく。

 「うおっ!?」と、蒼夜が自分の元に来た流れ弾を、後ろに飛び下がりながら避ける。

 が、千秋にはもうそれを気にするほどの余裕は無かった。

 さっきから壁の修復はまだ問題ない。壁の維持はギリギリだがまだ大丈夫だ。だが、ずるずると、足が後ろに滑っていく。壁を押さえている腕がきしんでくる。壁は大丈夫でも千秋(こっち)が大丈夫じゃなかった。

 だというのに、どうも神様というのは残酷らしい。

 一本の光が、千秋の後方に飛んでいった。それは弧を描くように地面へと向かって落ちていく。町人たちがいるというのに、だ。

 それを千秋は左手で風を飛ばし、弾道を無理矢理変えさせた。

 無意識、反射行動と言ってもいいくらいだった。

「バカっ、千秋!!」

 蒼夜のその声が引き金になったかのように、グン! と右手が肩が外れるかと思うほど引っ張られるように後ろに持っていかれた。と、同時に壁が壊れた。

 ブワァっ!! と、風が周りに撒き散らされる。

 目の前が淡い紫色に染まった。

「しま……っ!」


 千秋の身体は、淡い紫色の光に飲み込まれていった。






ふぅ……全開より早めの更新です。


かなりの長時間を使って修正しました。無かったシーンや、あったシーンも何かしら変わっていると思います。それが良い方に少しでも向いていれば良いな、と思います。


ご感想がありましたら、どうぞ、待ってます。

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