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「異能への恐怖」

 小さい頃。確か、まだ私が幼稚園生だった時の話。

 その時の私を知っている人は、今の私を見ると変わった、と言うかもしれない。自分でも言うのもなんだけど、ガキ大将みたいな感じだった。とはいえ、女の子や、気が弱い子たちをいじめるいじめっ子達を蹴散らしたりしてただけだけど。あとは大体普通に遊んでいただけ。お人形遊びとかもしていた気がする。

 そんな頃の。大体幼稚園年長さんくらいの時。

 いわゆる、挑戦状を受けた。

 今まで蹴散らしてきたいじめっ子達が、結託して私を倒そうというらしい。

 それだけなら面倒だし放っておいたかもしれないけど、どうも人質がいるらしい。幼稚園生なのに悪役じみたことをするものだ。しかし、人質がいるとなれば行かなければならない。知らない子だったとしても、巻き込んでしまったのだから。

 呼び出された河原に行くと、大体二〇人くらいの子達がいた。その中の一人が、前に出てきて、

『みなつきちあき!! いままでのうらみ、はらしてくれるッ!』

 なんて、今考えてみれば幼稚園生が言うようなことじゃないことを言い出した。

 対して私も、

『ふん! できるものならねっ!!』

 などと強気でいた。


 その時だけだったけれど。


『ファイヤー・ボール!』

 誰かがそう叫んだ。

 瞬間、目の前が爆発した。

 直撃はしなかったし、爆発もそんなに大規模なものじゃなかったから爆風も大きくない。でも、その時の私を吹き飛ばすには十二分なものだった。

 状況を理解するのに、三〇秒くらいかかった。誰かが魔法を使ったのだと判断するのに更に三〇秒くらいかかった。

 耳に入ってくるのは、いじめっ子達の笑い声と人質の子達の悲鳴。

 のろのろと立ち上がった私を、さらにもう一撃ファイヤー・ボールを撃ってくる。ただ使えるというだけでコントロールは無いらしく、頭の上を超えて背後で爆発した。

『あぅっ!!』

 小石だらけの河原はかなり痛かった。足とか腕がズキズキした。

 周りから近づいてくる足音が聞こえる。応戦しようと、立ち上がる。ダメージのためなのか、恐怖感があったのか。足が震えた。

『オラァッ!!』

 ドゴッ! と、お腹の辺りにいじめっ子のパンチが入った。それだけで一瞬意識が遠のいた。

 でも、相当負けず嫌いだったらしい私は、それに耐えて、殴ってきたいじめっ子を殴り返してやった。今の私じゃ絶対しなさそうなことだ。

 でも当然、その程度じゃ退かない。だって向こうには魔法があるのだから。

『おい、ないてるぜ?』

 気まずさも無く、ただそう言って笑われた。

 言われるまで気付かなかった。目の前が滲んで、頬の辺りに雫が流れ落ちていた。

『おらおら、いつものいせいはどうしたんだ?』

 満面の笑みで近づいてくる。

 恐かった。

 誰かに助けてほしかった。

 人質の子達はもう目をそらしている。

『さて、かくごしろよ。みなつきちあき』

 二〇人が、全員で私を囲んだ。

 胸の辺りが熱かった。

 これから起こることを想像して、この場から逃げたかった。

 ふわり、と風が流れる。


『いやああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』


 瞬間。

 私の周りを流れる風が二〇人のいじめっ子達を斬り裂いていった。

 私の周りから血が噴き出していった。

 斬り飛ばしていった訳じゃない。当然五体満足だ。後で聞いた話だと、発見が速くてちゃんと全員無事だったらしい。それほど傷が多かった訳でもなかったのが幸いしたみたい。


 その時からだった。

 私が持つ力のことを知ったのは。 

 『空気制御(エアリアル)』。簡単に言ってしまえば風を操る力。

 検査のときは大変だった。力自体はなんとなくの感じで使えたけど、力の加減が出来なかった。そもそも使わなくても勝手に漏れることも、その時はよくあった。

 おかげでいろんなものが斬り裂かれ、検査が終わるまでかなり時間がかかった。

 結果としては。魔法以外の何か、ということになった。どうも、魔力の変換はされていたけど、魔法使用時の術式が全く見つからなかった上、具現力による魔法具現化時の干渉がなかったらしい。

 具現力というのは、簡単に言えば魔法を具現化する力。難しく言うと、魔力変換によって異空間に形作られた魔法を、現実の空間に干渉し魔法を具現化させる力。

 次に術式。魔法を使う時というのは、目に見えないけど自分の周り(範囲指定の場合、範囲全体を囲むように)を文字が鎖のように包んでるらしい。それが術式。

 術式は、その魔法の詳細、みたいなものなんだとか。たとえば、ファイヤー・ボールの場合『魔法属性が火の使用者の魔力を変換し球状の炎を生成、具現力によって現実に具現化し、指定された位置に炎弾を放つ』っていう感じ。

 私の空気制御には、それが無いみたいで、魔法とは別のものと判断された(具現力を使わない魔法もあるにはあるけど、術式については変わらない)。


 理屈だけ聞いても、その時の私にはさっぱり分からなかった。

 ただ、私はその力が恐かった。

 空気制御自体は、その内使いこなせるようになるかもしれない。

 でも、魔法とは違う、ということだけで何故かもう恐かった。

 いつか、この力が再び誰かを傷つけてしまうような気がして。


 小学校になると、私は学校で浮いていた。

 テレビでやっているようないじめはない。精々誰も関わろうとしないだけ。


 中学校は、卒業した小学校から遠く遠く遠いところを受験した。それにあわせて家も引っ越し。


 そして今は──、









本当は3話にするつもりでしたけど、あえて2.5にしてみました。


ちょっとシリアスめ。

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