猫愛の月
掲載日:2026/04/04
「月が綺麗だね」
彼がベットに腰掛けながらそう言った。
窓から煌々と流れ込む月光が、彼の顔を照らす。
ワタシだけが知る、彼だ。
彼は純粋な瞳で月を眺め、普段は奥底に閉まって見れない、穏やかさや静けさを出している。
不思議だ。
まるで人間という動物を見ていないようで。
今の彼は社会や俗物とは全く無縁の世界にいる。
ワタシも彼も、月に充てられたのだろう。
「ツキのカイブツ?それともかぐやヒメ?」
「?」
「いや、なんでもないわよ」
なで声を出す私に、彼は不思議そうな顔を向けると、ゆっくりと腕を伸ばしてくる。
背筋を立てていたワタシは、腕の動きと合わせるように香箱座りになり、彼の柔らかな指を額で受け入れる。
あぁ、人に戻っちゃった。
月は雲に隠れ、彼を照らすものは無くなった。




