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燼滅のプロメテウス  作者: 漣リラ


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4話 次元の違い

 刃金率いるA級部隊が突撃していく。

そんな中、俺たちは自身の任務を推敲しようと動き出していた。


「……民間人の捜索を開始する。怜は広域索敵、順は俺の援護だ。二人とも、絶対に前に出るなよ」


 俺の指示に、二人は無言で頷いた。

 刃金の言葉は気に食わないが、命令は命令だ。それに、今の俺たちにA級の戦闘に割って入る資格がないのも事実だった。


 俺たちは埠頭の倉庫群へと足を向け、生存者の捜索を開始した。だが、耳に絶えず流れ込んでくる金属音と衝撃波が、否応なく俺の意識を戦闘の中心へと引き戻す。


 A級部隊の戦闘は、俺たちが普段行っているそれとは、何もかもが違っていた。


「――行けェ!『万鈞の鉄槌ばんきんのてっつい』!!」


 刃金の咆哮が、埠頭に響き渡る。

 彼の周囲を浮遊していた夥しい数の鉄骨やコンテナの残骸が、一つの巨大な鉄の津波と化し、50メートル級の虚獣へと向かう。質量そのものが暴力。並の虚獣であれば、その一撃で圧殺できる。


 だが、今回は違う。

 その巨躯の周囲を渦巻いていた浮遊物――瓦礫や船舶――が、まるで意思を持ったかのように、鉄の津波を迎撃する。轟音。金属と金属が激突し、火花が夜の闇を焦がす。


「チッ、小賢しい!」


 刃金の舌打ちと同時に、彼の部下である二人の能力者が左右に展開した。


「合わせろ、ミカ!」

「言われなくても!」


 一人は、両手にエネルギーの刃を形成した強化兵ブースター。もう一人は、指先から不可視の衝撃波を放つ念動者サイカー。二人の息の合った連携攻撃が、虚獣の防壁を突破し、その巨躯へと叩き込まれる。


 ズンと地響きの後、虚獣の巨体が僅かに揺らぐ。

 好機。その一瞬を見逃すほど、A級部隊は甘くない。


「今だ! 奴を固定しろ!」


 刃金の背後から、残る二人の隊員が躍り出る。一人は広範囲に重力場を展開する能力者。もう一人は、対象の動きを麻痺させる音波を操る能力者だ。二つの能力が同時に発動し、虚獣の動きを物理的、神経的に拘束する。


 凄まじい連携。虚獣も流石に効いたのかうなだれている。

 攻撃、防御、妨害。それぞれが高いレベルで己の役割を理解し、実行している。B級だった頃の俺たちとは、練度も、個々の能力の出力も、次元が違う。


 これがA級。霊対室のエリートたちか。


『奏斗、ここ周辺に生体反応は無かったわ。それと、あの虚獣の骸粒子のゆらぎ……なんかおかしい。不活性というか……寝ている時の状態に近い。』


 怜からの報告が、俺の思考を中断させた。

 は? 休眠状態? あれだけ暴れておいてか?


 その時だった。

 A級部隊の波状攻撃を受け、うなだれたまま動きを封じられていたはずの虚獣。その顔が、ゆっくりと持ち上がった。


 虚獣は、A級隊員たちには目もくれず、遥か上空を見上げている。


 俺は、得体の知れない悪寒に突き動かされるように、夜空を見上げた。

 星明かりすらない、厚い雲に覆われた空。

 その雲の手前に、何か黒い点がある。


 あれは一体――


 俺は絶句した。

 そうだ。あれは、埠頭に積まれていたはずの、巨大なコンテナだ。それも、一つや二つではない。数十、いや、百を超える数が、雲の少し手前の高さまで浮かび上げられ滞空していたのだ。


 いつの間に?


 いや、最初からだ。暗すぎて全然気づけなかった。

 虚獣が埠頭で暴れていたのは、俺たちの意識を地上に釘付けにして油断させるため。本命は、この空にあったのだ。


「刃金隊長! 上だ! 上を見ろ!」


 俺は、インカムのマイクが裂けんばかりに叫んだ。

 だが、遅い。


「何?」


 刃金が、俺の声に気づき、訝しげに空を見上げた、その瞬間。

数百のコンテナが、一斉に落下を開始した。

念動力により加速されたそれらは鋼鉄の流星群となり、各隊員に対して降り注ぐ。


「ぐっ! 防御態勢! 全員、俺の元へ集まれ!」


 刃金は咄嗟に、自身の能力で鉄のドームを形成し、部下たちを守ろうとする。


 だが、もう遅かった。

 彼の防御範囲から、わずかに遅れた二人の隊員。先ほど虚獣に連携攻撃を仕掛けていた、強化兵と念動者の二人だ。


「しまっ――」

「きゃああああッ!」


 悲鳴は、轟音に掻き消された。


 二人の頭上、漆黒の影が急速に拡大する。

 巨大なコンテナが、彼らのいる地面へと突き刺さった。


 ズゥゥゥゥンッッッ!!!


 凄まじい衝撃が、埠頭全域を揺るがす。


 鉄のドームは幾つかのコンテナが突き刺さっているが、なんとか形を保っている。刃金を含め、中にいた三人は生きているだろう。


 問題は残りの二人だ。

しばらくして、土煙が晴れる。だが二人の隊員の姿は、どこにもない。

 二人が最後に居たであろう場所には、地面に深々と突き刺さり無惨にひしゃげたコンテナが、墓標のように聳え立っているだけだった。

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