はじまりの出会い(2)
窓の外を見ると、もう日が沈んでいる。今から外に出ても凍え死ぬかもな。
「わかりました。その話受けますよ。」
ダウビンさんは立ち上がって俺の手を握って大きく縦に振った。
「ありがとうヤマト!!心から感謝する!世界トップの異能者も招待されてるって噂だから会えるかもしれないぞ〜?」
「世界トップ?」
「お前、そんなことも知らないのか?」
この世界のトップ…審判が言ってた仲間割れしてる奴の中の1人か?
「世界トップの異能を持つ、異能者グループの中のリーダーだ。名前は確か…ハユンだったっけな?」
ハユン…、世界トップなら破滅をとめるカギになるかもしれない。
「パーティーは明日ですよね?俺、服も持ってないので何か貸して貰えませんか?」
「俺が昔着てたスーツがある。それ着ていけ。それと風呂も沸かしてあるから入れ。」
「ありがとうございます。では先にお風呂いただきますね。」
「はぁぁ...」
今日は疲れたな。浴槽に入るとお湯が揺れ、水位が上がった。温かいお湯に浸かりながら疲れを流す。
それにしても明日って...急すぎないか?本当にぽっと出の俺なんかが行っても大丈夫なのかな?異能者が集まるパーティーって、きっとすごい大きなパーティーだよな。そんなの死ぬ前は参加したことなんかないし、すごく緊張するな。
さっきダウビンさんが言ってたハユンってやつ、そいつに近づくことが出来れば世界を動かすカギになるかもしれない。明日は探りを入れてみよう。
「ダウビンさん、お風呂上がりました。」
「さっき案内した部屋掃除しておいたから、好きに使ってくれ。」
「ありがとうございます。ダウビンさんはまだお仕事ですか?手伝いますよ。」
「ありがとな。でも大丈夫だ、もう片付けだけだから。」
「そうですか?じゃあ先に寝ますね。おやすみなさい。」
ダウビンさんはすごいな、こんな夜遅くまで一人でお店回して。俺なんて言われたことをそのままやるだけだったもんな。過去のことを少し思い出し、感傷に浸る。
パチンッと頬を両手で叩いた。だめだだめだ!今はとにかく休んで明日に備えよう!
「もう、終わったことなんだから...」
布団に蹲りながら眠りについた。
「おーい!起きろヤマト!」
ゆっくりと目を開けるとダウビンさんが俺の顔を覗き込んでいた。
「うーん...もう朝ですか...?」
「そうだぞー楽しい楽しいパーティーの日だ!さぁ、準備するぞ!」
ダウビンさんは耳元でパチパチと手を叩いた。
「うるさいな...」
「ほら、これだ!これ着ていけ!」
ダウビンさんはタンスの奥にしまってあった、埃被った大きな箱を取り出した。中には深いネイビーのスーツがシワひとつない綺麗な状態でしまわれていた。
「ダウビンさんは俺より身長高いですけど、サイズ合いますかね?」
「このスーツは俺が高校生の頃着てたもんだ。俺は高校生の頃、身長はお前と同じくらいだったから大丈夫だろ。もし合わなかったら裾上してやるよ。」
そう言ってスーツを取り出し、広げた。確かにサイズは大丈夫そうだ。ていうかダウビンさん裾上できるのか、結構女子力高いんだな。
「とりあえずこれ一旦着てみろ。」
俺はスーツをもって脱衣所へ入った。