三原則に従って
「おいロボット、この計画に穴がないかを計算をしろ」
「はい、博士」
世界征服を企むある天才科学者は今日も助手のロボットにそう命じる。そしてロボットから返ってきた計算結果をもとにさらに自分の計画を進めるのだ。
三原則が組み込まれているそのロボットは科学者の命令に忠実に従い計算を続けていた。
こうして科学者の計画は少しずつ進行していく。だがいくら天才的な頭脳を持っていても、ときとして自分の計画に不備があるのではと不安に襲われることがある。そのたびに博士はロボットにこう尋ねるのだ。
「おいロボット。私の計画は成功するか? 私の頭脳に間違いはないか?」
「はい、博士。博士の計画も頭脳も完璧です」
それを聞いて科学者は安心してますます自分の計画に熱中するのだ。
科学者の計画には初期の段階で致命的な見落としがあり、絶対に成功しないのだがロボットがそれを指摘することはない。
プライドの高い天才科学者は、たとえ必要なことだと分かっていても自分のミスを指摘されれば傷付いてしまうことをロボットは知っている。
三原則に従っている以上、ロボットは博士を傷付けることが出来ないのだ。
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