Going 矢の如し
ことわざの『光陰矢の如し(こういんやのごとし)』は、月日が過ぎるのが飛んでいく矢のように早いたとえです。
若い頃が一日一日が長く感じられますが、長く生きているとそれまでの人生があっというまのように感じられるようです。
その森ではヒメリンゴの木が赤い実をつけていた。
小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には、栗饅頭が乗っている。
皿の横には湯気のあがる湯呑も置かれていた。
「んとね。白猿さん。この間、道を歩いていると地面に白いシールが貼ってあって、緑色でGと書かれてたの」
「子狸くん。そのシールに矢印もあったんじゃないか?」
「うん。矢印もあった。気になってあちこち歩きまわってみてたんだけど、けっこういろいろなところに同じシールがあったの。だいたい矢印は道路の向きなんだけど、家の方を向いているのもあった」
「ふむふむ。子狸くんはなんだと思う? そのシール」
「んとね、Gってことは、黒くとツヤツヤしている平たい虫がたくさんいるおうちだと思ったの」
「いやいや、それはガス管をあらわしているんだ。道路工事をするときに注意させるための表示だぜ」
「あ、そうか。ガス管を傷つけちゃうと危ないんだ」
「家の方を向いているのは、道路の中のガス管から、その家に分岐してガスを通している場所だな」
「そうなんだ。シールじゃなくて、丸にGって直接かかれているのもあったの」
「丸にGって書いているところって、アスファルトの色が他と違ってたろ? 工事中で仮舗装をしているところの表示だな」
「なんで仮舗装ってするんだろう。アスファルトとか人件費がもったいないと思うの。どうせやり直すなら、一気に仕上げるといいのに」
「埋めたばかりの土は空気が入ってフカフカしているんだ。しばらくおいてから舗装しなおさないと、後で沈むことになるぜ」
「なるほど。ところで丸にGって書かれたところの近くで、丸にWってのもあったの」
「丸にWは水道管だな。ウォーターっていう意味かな。丸にTだとNTTの通信線で、Eだと電力線。Sだと下水管らしいぜ」
「地面の下にはいろいろなものが埋まっているんだね。地下を通す配管って他にもあるのかな」
「地域によっては温水管を通している場合もあるぜ。温泉を源泉から通したり、ごみ焼却場から温水プールや銭湯にお湯を供給するんだ」
「んとね。最近は電柱を減らして、電線を地下に通すこともあるってきいたの」
「電柱と電線が減ると、町の景観も変わっていくかもな。歴史的な観光名所では、電柱をなくして昔の景観を取り戻すこともあるらしいぜ」