うちのお嬢様は完璧令嬢☆
よろしくお願いします!
今回はお嬢様が主人公です!
語りはお嬢様付きの侍女です。
うちのお嬢様は完璧だ。
何をやらせても、完璧にこなす。
そんなお嬢様の事を逆に『人間味がない』とお父上であらせられる侯爵閣下はお嬢様に仮面をかぶせた。お嬢様が8才の時。以来というもの。お嬢様には求婚者は現れずにいる。
お嬢様はというと、仮面をかぶった状態にも関わらず、使用人に優しく、文武両道で見た目以外は完璧で過ごしてらっしゃいます。
この領地経営もお嬢様がしていますし、使用人の給与体制など細かなことまでお嬢様がしています。
侯爵閣下は社交をしているようです。その社交で出会った女性と最近再婚なさいました。コブツ…いえ、子連れの方です。ちなみにお嬢様のお母君はそれはそれは美しく、まさに良妻賢母でいらっしゃいました。お嬢様が3つになるかならないかで儚くもお亡くなりになりましたが。
その方もそれなりに美しいとは思いますが…私はお嬢様のお付きとして十年以上お嬢様の美貌を見ているわけで、どうしてもお嬢様と比較してしまうのです。
お嬢様だって就寝時と入浴時は仮面を外すのでお世話をしている私はお嬢様の素顔を成長と共に見ているのです。
それはまぁ、美しく。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花 という言葉はお嬢様のために存在するのではとさえ思ってしまいます。
武術も嗜んでいらっしゃるので、無駄な脂肪などがなく全身が引き締まり…しかし出るべきところはバッチリ出ているスーパーボディでいらっしゃるのです。
突然降ってわいたような、小娘くらい何とも思わないのです。
「こちらにはお姉さまがいるとお聞きしたわ」
小癪な!小娘が。マウントを取りに来たのかしら?
「私の事でしょうか?」
ああ、お嬢様は正直に小娘の前に出てしまった。
「仮面の下はさぞかし醜いのでしょうね?醜いから隠しているのでしょう?」
逆です。
「あらあら、セザンヌ。本当の事を言ってはいけませんよ?私がこの度あなたの義母になりました。この子は娘のセザンヌ。16才よ。確かあなたより年下だと旦那様から聞いているわ?」
小娘の名前はセザンヌというのか。まぁ、お嬢様の爪の垢でも煎じて飲ませたいくらい性格も悪いわね。
「私の名前はキーラ。お父様から聞いているかしら?まだ、仕事が残っているのでこの辺で失礼しますね。失礼しますわ」
お嬢様は多くの書類仕事の時間を割いて対面したというのに、あの態度!なんでしょう。
その日の夜お嬢様を含めた4人で夕食をとることになりました。
「お父様。私、この間通りのブティックで見かけたブローチが欲しいわ」
猫なで声でさっそくおねだりですか?呆れますね。
「おお、可愛い我が子よ。なんなら、そのブティックごと買おうか?」
「流石お父様!大好き!!」
多分好きなのは、お金でしょうね。
「あらあら、セザンヌ。侯爵様を困らせてはいけませんよ?」
「私は困ってなどいない。可愛い我が子の頼みだ。いくらでも聞こうじゃないか!」
お嬢様の頼みは聞かないでしょう?それに、この家(かなり大きい)の経理をしているのはお嬢様。買い物をするのはいいですけど、お金管理はお嬢様ですから。
お嬢様は無言ですけど、私は腸が煮えくり返って空焚き状態です。もうカラッカラ。
「そうだ、今度の社交会で二人ともデビュタントというのはどうだ?」
お嬢様は昨年デビュタントで然るべきなんですが?
「素敵です!流石お父様!!」
「それじゃあ、二人の採寸をしてドレスをオーダーしないと侯爵家の威信にかかわるな」
「お姉さまとお揃いなんて嫌よ。流行最先端のドレスでデビュタントするの!」
「ははは、セザンヌは夢がいっぱいだなぁ。それに比べてキーラは陰湿だなぁ」
誰のせいですか?仮面さえかぶっていなければ、求婚者殺到、いえ、王家の声がかかるかもしれない逸材なのに!!
「セザンヌはキーラと違って美人だから、皇太子様から声がかかったりしてなぁ?はははっ」
「まぁ。オホホ」
だ・か・ら、お嬢様の素顔を知りもしないでよくそんなことが言えると感心してしまう。お嬢様の方が美人。
あんなに夏場は蒸れるはずの仮面を被っているのに、肌がキレイ。最悪、汗で顔にアセモができるかもしれないのに・・・。
二人でデビュタント。本当にいいんだろうか?
デビュタントの用意。
セザンヌ様(敬称をつけなきゃならない)には超一流のドレスとアクセサリーが用意された。
お嬢様には、採寸したはずなのに、ちょっと大きめのドレスが用意された。しかも、ちょっとくすんでる・・・。逆にこんな生地どこで探したんだ?ってくらいのものだ。
「あー、キーラのドレスはキーラの母親のデビュタントの時に着たものだ」
それにしたって侯爵家なら、もっと大事に保管しているだろう?母君も侯爵家だったはず。そして、採寸したなら、サイズの調整をしているはず。
「まぁ、お母様と同じドレスでデビュタント出来るのね!光栄だわ!」
お嬢様は純粋だなー。悪意とか感じないんだろうか?
当日
「セザンヌ、最高だ。絶対に会場一輝いているはずだ!」
それだけアクセサリーつければ、アクセサリーで乱反射でしょうね…。
「ホホホ、キーラは?」
お嬢様、流石です。自分の手でサイズ調整をしたんですね?サイズがちょうどお嬢様に合っています。
「どこの誰がサイズ調整をしたのかわからないけど、私のセザンヌには敵わないわよ」
いいえ、お嬢様はアクセサリー不要なのです。その美貌で十分です。逆にアクセサリーが邪魔になります。
お嬢様は確かに仮面をかぶったまま、くすんだドレスを着ています。仮面をはずせば、くすんだドレスで丁度いいくらいの美貌がまさに顔を出すのです。ま、仮面をはずすことはないでしょうけど?
セザンヌ様(呼び捨てたい!)は侯爵閣下がエスコートして会場に入った。アクセサリーの乱反射で、非常に輝いていた(物理的に)。
お嬢様は誰にエスコートされることもなく一人で会場に入った。そのくすんだドレスとドレスにそぐわない所作で話題の人になった。
「侯爵家の長女らしい」
「なんで仮面?」
「醜い顔を隠してるんじゃ?」
等、かなりざわつかせた。セザンヌ(敬称付けないことにした)には気に食わなかったようで・・・
「キーラ姉さま、せっかくのデビュタントですもの。仮面をはずしては?」
「いいのかしら?仮面をつけていろというのはお父様からの指示よ?」
「セザンヌの言う通りだな。これも余興の一つだな。仮面をはずせ!どうせ見るに堪えない顔だろう?」
失礼な目が潰れるんじゃないかというほど、眩い美貌です。くすんだドレスで逆によかった。これで普通の真っ白なドレスだったら…と思うと。
「侯爵家の娘が仮面を外すらしいぞ」
など噂が光の速さで飛び交いました。
そして、お嬢様は仮面をはずしました。現れた美しい顔に侯爵閣下は手のひらを返しました。
「いやぁ、流石我が娘。美しく育つと思っていた。なにしろお前の母上は眩い美貌の持ち主だったからなぁ。はははっ」
「えっ、あれがお姉さまなの?醜さを隠すために仮面つけてるんじゃないの?」
それはあなた方が勝手に思い込んでいただけです。
そうして、侯爵家の長女は美貌の持ち主という噂が広まった。
もちろん陛下のお耳にも届いていたようで、侯爵家に『長女を連れて謁見の間に来るように』という文がとどけられた。
セザンヌ母は憤慨しましたよ。自分の子、セザンヌこそが王家に目をつけられると考えていたから。
侯爵閣下は急ぎ、キーラのドレスを仕立ててドレスアップした眩いばかりのキーラと共に登城した。
「陛下、こちらが我が侯爵家の長女でありますキーラでございます」
「私は侯爵家が長女、キーラにございます」
流石に陛下も驚きの美貌だったようです。
「キーラよ。年はいくつだ?」
「はい、先日デビュタントいたしまして17才になります」
「そうかそうか」
陛下は非常にご機嫌だった。
「デビュタントの話は聞いてるぞ。キーラほどの美貌の持ち主がなんで仮面をかぶっていたんだ?」
「それは、確か私が8才の時でしょうか?私が完璧なのを『人間味がない』と父が言い、仮面をかぶせたのです。以来というもの、ずっと仮面をかぶって生活をしておりました」
「ふむふむ。それで?」
「主に領地経営など内向きの経理などは私がしていました。父は社交。私は経理。と分担していました」
「おっ、おい!」
お嬢様にとってはそれが日常ですからね。悪いことだとは思わないのです。
「ほう、侯爵は娘任せで領地経営をしていなかったのか。職務怠慢だなー」
「恐れながら、陛下!このキーラは完璧でなんでもこなしてしまうのです!」
「だからといって、娘に一任していいものではない!侯爵家は伯爵に格下げだな。領地も没収。領地経営できない侯爵に領地は要らないだろう?」
「キーラよ、王宮の侍女をしてみないか?優秀だからすぐに侍女長になりそうだ」
お嬢様と同じ年頃の姫様がいらしたからそのお方付きの侍女です。
「有難いお言葉。それは面白そうですね。領地も減り、お父様がこれからは領地経営をしていくでしょうし、私は侍女として王宮に勤めるのが面白そうですね」
「うむ。私としては、即うちの息子と婚約をしてほしいくらい有能なのだが、そっちは隣国の姫との政略結婚があるからなぁ」
「まぁ、王族も大変なのですね。私にできる事ならばやります」
「では、城に君の部屋をつくり、そこから姫の場所に出仕して仕えてほしい。姫には同じ年頃の友人がいなくてなぁ。貴族は腹の探り合い。キーラなら娘付きの侍女を頼める」
「是非とも、職務を全うしたいと思います!」
「仕事と思わずに、気楽になー」
こうしてお嬢様は、素顔を晒して姫付きの侍女として仕える事となったのです。
「初めまして。私は侯爵家改め伯爵家長女のキーラと申します。本日付けで姫様の侍女となりました。よろしくお願いいたします!」
「まぁ、噂では聞いていたけど本当に美人さんね」
「恐れ入ります」
「侍女というより、私の話し相手をしてほしいの。お願い!」
「わかりました」
こうして素顔を晒して生活を続け、お嬢様には想い人という人が出来ました。ズバリ、姫の護衛騎士の方です。護衛騎士をしてらっしゃるので、家柄はとてもよく、レプトン侯爵家という古くは王家に多くの妃を輩出した家です。
目下お嬢様の悩みは、伯爵家(没落中)の娘の私が名門侯爵家の彼にはふさわしいのか否かです。
はたから見ると、美男美女です。
姫様も察しているようで、軽く後押しをしているようです。
「絶対リック(レプトン次期侯爵様)はキーラのこと好きよ」
「姫様、たとえそうだとしても身分差というものがあります」
はぁ。リック様の方からアプローチしてくれないものか?
ある日リック様は非番だったのでしょうか?騎士の格好ではない格好で、お嬢様をリック様の別荘へ招待しました。
「キーラ!返事はイエス一択よ!!」
と姫様も後押しし、お嬢様は後日リック様の別荘へと行くことになりました。
流石のお嬢様もまさかそこにレプトン侯爵・侯爵夫人までいるとは思っていなかったようです。
「あら、噂って当てにならないのね。ウワサよりもずっと美人じゃない?あ、私はリックの母よ」
「本当だ。リックもやるもんだなぁ。こんな美人捕まえて!あ、私はリックの父だ。よろしくな。末永く。できれば、『お義父様』とか呼ばれたい!」
「何を言ってるのよ。私も『お義母様』って呼ばれたいけど…」
「二人とも自己紹介が先だろう?キーラが驚くだろう?左が父で右が母」
「初めまして。私は伯爵家長女のキーラと申します。よろしくお願いします。リック、二人がいるの知らなかったんだけど?」
「え?二人っきりがよかった?」
「そういう意味じゃなくて」
お嬢様の頬は紅潮して、尚の事美人に。
「おうおう、私達がおじゃま虫だったか?」
「いえ、そういうわけではありません。突然説明もなく面会で面食らったと言いますか・・・」
「あら、この子私たちが別荘に来ること言ってなかったの?それはいけないわ。ごめんなさいね、気が利かない息子で」
「そういうわけで、我が家は君が家族になる事を大歓迎だ。今は騎士だけど必ず君を幸せにする。結婚してください!」
「なんだよ。まだ言ってなかったのか?息子よ。ヘタレだな」
「何言うの?あなただって私にプロポーズするのにかなり時間かかったじゃない。ヘタレなら血筋なのよ」
「外野が煩いなぁ。あの…キーラ結婚してください!」
「・・・嬉しくて。私で良ければ」
「良かったな、息子よ!」
「今日はうちのコックに特別料理でも作ってもらいましょうよ!」
そんなわけでお嬢様はレプトン侯爵家の一員になったのです。
「孫、みたいなぁ…」
完璧お嬢様の子供です。子供も完璧に違いありません!美男美女から生まれる子ですから、美形間違いなし!
王宮に戻り、姫様に報告するとはしたなく姫様が自分の事のように喜んでくれました。姫様は確実に政略結婚の駒になる事を自覚しているのでしょう。恋愛結婚のお嬢様のことが本当に嬉しかったようです。
レプトン侯爵の希望の通り孫は3人産まれました。男・男・女の順です。現在も妊娠中でお嬢様はリック様に愛されているようです。リック様ももうすぐ侯爵を継ぐようで、その勉強をしています。
お嬢様は完璧なので、完璧安産☆育児も完璧にこなすスーパーマザー☆侯爵夫人としても完璧でしょう!
余談ですが、お嬢様のいなくなった伯爵家(旧侯爵家)は領地経営も内政も上手くできずに没落していっています。得意なのが社交だけなので、生きていけないようです。このままいけば、平民になるかと…。
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