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誰もが愛を求めている  作者: 天邪鬼(あまじゃき)
第3章  双生と哀獣の戦場
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第3章24話 魔獣戦線




 革命軍本部を北に、大きな砂丘がある。

 この砂丘を境に、熾烈な戦いが始まっていた。


 ここを喰い止めることに、人員は割けられない。


 そう言って、砂漠の茶色を埋め尽くす黒い軍勢と戦っている男がいる。


 『炎鬼』ストラトス=アンドラガシマは、一切その魔獣戦線を下げることをしなかった。


 延々と続く黒い獣たちを、青い炎で更に黒く炭とする。戦い続けて数十分、だが、たったの1匹も砂丘を超えることはできていなかった。


 「やるじゃん。」


 ストラトスの後ろには、微動だにせずただ立ち尽くしてたまに指を振るだけの男がいる。


 「このまま耐え続ければ勝ちだぞ。」


 「黙れ、手伝え。」


 「手伝ってるだろ。」


 やや戦線が危ないと感じた時だけ、ストラトスとは真逆の力で黒い獣の軍勢を止める。

 『冠冷』エルドーラは、ただそれだけをしていた。


 「お前の力なら、この魔獣たちを氷漬けにすること簡単だろう。」


 「残念ながら今の俺は2分の1の力なんだ。期待しないでくれ。」


 南方から攻めてきたノートス帝国を抑えるために、北方の魔獣の軍勢を抑えるために、北と南から来る革命軍以外の全てを抑えるために、エルドーラは力を半分にするしか無かった。


 その力で、『厄災』や『使徒』と渡り合える実力を持つ2人を相手取らなければならない。


 余計な力を使う訳にはいかなかった。


 「・・・来たか。」


 魔獣の軍勢の奥から、どす黒い魔力が湧いて出る。

 それが何者なのか、そんなことは誰もが知っている。


 この世全ての魔獣の王ーー『魔王』サタナ=クシファ。


 「おやおやぁ、これはこれはぁ。」


 始まって数十分、ようやく相見える。

 ディコス王朝に手を出す外部の敵。


 「全く、中央の奴らはこいつだけは野放しにしやがって。『使徒』が3人もいるのに。」


 「無理無理ぃ、『原罪』ちゃんの権能は特殊だから無理だよぉ。」


 「まぁいいか、じゃあ始めようか。『聖女』の命により、革命軍以外の全てを相手取らせてもらう。」


 「俺としてももうアナトリカとか関わりたくないんだけどぉ、特に君とはぁ。」


 向かい合い、笑い合う。

 その隙間に、ストラトスが割って入ることは出来なかった。


 「だけど、今の君なら勝てそうだぁ。」


 目の前から来る殺意。それは今まで何度も戦場にでてきたストラトスでさえ、足をやや下げざるを得ないほどのもの。


 「おい『炎鬼』。手伝え、お前の力は絶対に必要だ。」


 だが、足を下げている場合では無い。

 世界最強に頼られたからでは無い。この場を任せた友の声に応えるために。


 「・・・我輩の炎で、溶けるなよ。」


 「誰にモノ言ってんだ。」


 後に語られる。

 この戦場は、地獄の業火よりも熱く、地獄の冷気よりも遥かに凍えるような、そんな場所だったと。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 北方の砂丘の奥で、炎と氷と獣がぶつかる。

 そんな音も聞こえないほど、2人の老人はガラにもなく動き続ける。


 身体は年老いた。だが魔法は洗練された。

 そして因縁は、熟した。


 1000年間埋め続けられた植物たちは、砂の中で繁栄を続けた。それがたった今目を覚ます。


 伸び続ける植物、成長を繰り返し、もはや動く怪物と化す。

 ピュロンが指を振るだけで、生物のように滑らかに動き目の前の敵を葬ろうとする。


 「仕事は終わった。後はもう、お前を葬るだけだ。」


 遂に、エピス=ピュロンが因縁と向き合う。

 目の前の見知った老人と向き合う。


 まるで指揮棒を振るうように、軽く、しなやかに、指を振る。

 まるで演者のように、1000年砂漠に眠っていた植物は踊り出す。因縁の地から解放されることを喜ぶように、力強く、元気よく。


 それを見る観客は、怒りをもって応える。

 目の前の相手を見ずに、因縁よりも仕事を優先したこの老害を、ただ憎み殺すために。


 雷が鳴り響く。本来、雨雲とは縁遠い砂漠に鳴り響くことの無い音。

 この音が鳴れば、ここに住むものたちは理解する。


 『墓守』が、激怒しているのだと。


 幾つもの閃光が、植物を焼きながらエピスに向かって放たれる。しかし、植物を操るために大量に流している水が、雷を吸い続け彼に届く頃には弱く弱くなっていく。


 「これが、1000年継いできた因縁の怒りか?」


 「黙れ、マウソロスの血は、怒りとともに受け継がれてきた。貴様らピュロンのように、因縁を放置することなど有り得ぬわ!!」


 「・・・先祖の気持ちを知らぬのは、お主のようだな。」


 「誰よりも先祖を想っている!!貴様が我らを語るな!!」


 「因縁に決着をつけようと思えば着けれる。だが、わたちたちがそれを成ちてこなかった理由は1つ。」


 引き上げた墓を見て、ピュロンは思うのだ。


 「・・・だが、その理由も解決しよう。わたちたちよりも深き因縁を持つ者たちによって。」


 「我らよりも深き因縁など、今ここには無い!!」


 「曲げられた信念を戻すため、都合の良い先祖の傀儡となってやろう。今こそ、ピュロンに受け継がれた因縁に決着をつける。じゃが、貴様に邪魔だてはさせん。」


 マウソロスとピュロンの因縁。

 それは、1000年の時を経て、別々の道へと進んでしまった。


 ーーーもはや、彼らの因縁は交えることはない。




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