表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰もが愛を求めている  作者: 天邪鬼(あまじゃき)
第3章  双生と哀獣の戦場
78/139

第3章21話 砂漠の墓場




 ディコス王朝の北方に位置する大砂漠。

 ここまで広い砂漠であるが、この場所には名前がない。


 〇〇砂漠なんて呼び名があればいいのだが、そのように呼ばれることは、千年間一度もなかった。

 何せここはーーー




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 「こうちて真面に言葉を交わすのは実に何年ぶりじゃろうか。」


 「知ったことでは無いわ、この外道め。」


 他愛ない雑談の始まりは、明確な敵意と殺意によって終わった。


 もはや一切の言葉を交わすことなどないと、はっきりとそう告げられた。

 一般的にはもはや老後を楽しむだけの二人の老人は、決してそんな楽などできやしない人生を送っていた。


 「まさかこの年で殺し合いをすることになろうとはな。」


 「儂からすれば、待ちに待った瞬間じゃ。ようやく、ようやく、この()()()()()()()で因縁に決着が着く。」


 「おかちな事を言う。ここは忘れられた砂漠じゃと言うのに。」


 「黙れ黙れ黙れ黙れ!!貴様らが!!この地を忘れさせようと砂漠に埋めたのだ!!」


 「わたちはそんな因縁に生きてはおらん。千年前の因縁を現代に持ち込むな。」


 『翠老』エピス=ピュロンの言葉は、嘘だ。


 「ーーーだが、老い先短いこの命でそこに決着が着くのなら喜んで殺ち合おうか。」


 彼の不気味な笑顔は、この地で何が起きたかを物語ることは無い。因縁には思っていない、しかし、そのしがらみから解放されたいと、真に願う顔。

 ようやく、役目を果たすことが出来る顔をしていた。


 「わたちの代で、全てが終わる予感がした。彼の校長が来た時から、その予感がした。」


 「『暴獣』、『彗星』、『紫電』、『幻霧』。入れ替わりの激しい幹部の中で、儂が待ちに待った個の力を持つものたち。因縁が終わる予感がした。」


 互いにこの瞬間が、生きているうちに必ず来るとそう思っていた。

 墓場の侵入者など、どうでも良い。そこには主君がいるから。そんなことよりも、今目の前にいる因縁にケリを。


 「雷の白糸」

 「翠翠舞踏」


 雨雲1つない砂漠の大地に、雷が落ちることなどない。もし落ちたとしたら、それは『墓守』ハリカル=マウソロスの怒りだと。

 一つ一つの雷が、鋭い槍のように上から落ちる。その全てが心の臓を目掛けて。


 だが、因縁はそう簡単には決着はつかない。

 ()()()()()()()()()()()()と思っているのだろうか。


 延々と続く砂漠に、緑が湧き出る。

 それは長く押さえつけられたかのように、成長速度を増し、雷の一つ一つを受け止める。


 『翠老』エピスの原理不明の植物を操る魔法。


 その原理を知るものはいない。故に彼は恐れられるーーーはずであった。

 革命軍に、彼を恐れるものはいない。勿論純粋な強さという面に置いては革命軍も一目を置いていた。だが、彼を相手取るのが『墓守』である限り、エピスに自由になる術などなかった。


 因縁ははるか昔から。

 それは『戦争』が生まれた時から。


 「植物が成長する上で最も重要なものは、水じゃ。貴様はそれを操っているに過ぎない。」


 長く長く、ピュロン家とマウソロス家は戦ってきた。その多くは砂漠化の戦いであったが、対峙する時もある。


 「貴様の魔法の原理は、儂の先祖が既に明かしている。」


 雷鳴が轟く。

 植物を焼き焦がすよりも、断裂を優先し、植物は斬られ斬られ、やがてその雷はエピスまでーー




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ーーー千年前。


 それは世界戦争の終結後、王都に結界がはられる前。


 当時のディコス王朝は、ほとんどが王家の連なる家系しか無かった。

 それは当然であろう。外には魔獣が彷徨き、外から来る人間もいない。


 王都の中で子孫を繁栄し続けるしか無かったのだ。


 世界を巻き込む戦争が終わり、魔獣の数は減り、ディコス王朝の周囲は住みやすい土地へと変化していった。


 外に興味を持つ王家の人間も少なくない。

 マウソロス家とピュロン家は、そんな数少ない王家であった。


 2つの家系は、王朝を離れ、王都から離れた北の砂漠に村を作った。

 前途多難ではあったが、彼らは成し遂げた。


 マウソロス家の土魔法と、ピュロン家の水魔法によって。


 村へ進行する砂漠化は、土魔法によってはねられ、ピュロン家の水魔法によって緑化が進んだ。

 やがてその村には、外から来るものが往来し、在住するものも増えた。


 その村は、大きな発展こそなかったが、生きるのに困らないほどの生活基盤を手に入れたのだった。

 王朝もこの村を認め、発展を許した。出て行きはしたが、王家に連なるもの達が成したこと、無下にするにもいなかったのか。兎にも角にも、この村は認められた。


 だが、選択の時が来る、


 村が発展して100年以上の時が過ぎ、その時は訪れた。


 「ごめんください。」


 知らない声がした。女性の知らない声。

 この村のほとんどを把握しているピュロン家とマウソロス家は、何事かと思い声の方に向かう。


 「どうかしましたか。」


 「助けてください!坊ちゃんを、どうか助けて!!」


 そこには、ボロボロな1人の女性と、眠った少年が抱かれていた。


 訳ありだ。


 一目見て、ピュロン家の長とマウソロス家の長はそう思った。

 理解した。彼らを助けるか否か、それが村の命運を決めるかもしれないと。


 彼らが来たのが、2つの家系の運命を大きく分けた。因縁の始まりは、ここからだったのだ。


 ピュロン家の長は、首を横に振りこちらを見た。

 それもそうだ。2人の髪色は、王都では有り得ぬ髪色をしていた。


 今の黄金都市に、金髪以外はいない。

 あるとすれば、結界の外にはじき出された者たち。訳アリのものたち。


 だが、マウソロス家は首を横には振らなかった。


 「こちらへ。」


 簡潔にただ一言。

 喜びの表情に満ちた女性と少年は、嬉々として村に入った。


 そして、ピュロン家は思うのだ。

 この村を、守らなければ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ