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誰もが愛を求めている  作者: 天邪鬼(あまじゃき)
第3章  双生と哀獣の戦場
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第3章14話 王都の要




 その巨人は、様子を常に伺っていた。

 強いものと戦うことは避けてきた。だから、この王都に侵入した際には、『大将軍』から最も離れた場所にいた。決して強き者と戦ってはいけない。


 自分の楽しみに支障をきたしてしまうから。


 宮殿を守護するあのオカマも相手にしてはいけない。

 あれはなかなかの強者であるからだ。


 その嗅覚だけは、決して疑わない。この嗅覚こそが、自分が中央の外に出てもなお長く生きている証明なのだから。


 そしてその嗅覚が、確かに告げている。

 この宮殿の最下層に、必ず弱者の群れがある。


 「いい匂いだなぁ。」




※※※※※※※※※※※




 宮殿地下には、エルドーラとエナリオスの説得により、国王から黄金都市中に住んでいる貴族が集まっている。

 それを、ヒミアが結界によって守っている。


 ヒミアは既に結界が破られているのを承知している。

 だがそれを貴族に伝えてはいなかった。必ず混乱が起きるからだ。


 結界内の貴族は、こんな狭い場所にいることすら、不満に思っているようで、常に小言を挟んでいる。


 「なんで私がこんなところに・・・」

 「いつになったら出れるのかしら」

 「おい、何か飲み物を持って来い。」


 あぁ、なんとうるさい。

 せっかくこの国と関わらなくていいように学校の先生になったのに。


 「おい、そこのお前。一体いつになったら出られる!」

 「そうよ!早く出しなさい!」


 ため息が出る。

 どうして、このクズを守らなければならないのだろうか。


 「おい聞いているのか!」


 クズの言葉に耳を傾けてはいない。

 だが、この騒音の中、ヒミアの耳は確かに聞いた。


 「何かくる。」


 何かがこちらに近づいてくる足音。

 明らかな敵である。そしてそれは、危機的状況を意味する。

 戦闘力のかけらもない貴族と、奥で重傷を負って眠るについているギオーサとギュムズとセイレン。


 動けないという縛りによって結界を強固にしているヒミア。

 一体誰が戦えるというのか。


 「・・・君たちに頼るしかないね。敵が来ている。お願いできるかな。」


 結界の中で、彼らは確かにここに残ると宣言した。

 この戦争において最も重要な鍵であるヒミア先生を守るために。


 「任せるのである!!」

 「が、頑張ります。」


 同期が誰よりも頑張っているのだと、自分が誰よりもなんとかしなくてはいけないと、そう強い心を持って彼はここに立っている。

 カンピア=ミルメクスはそこにいた。

 その彼の親友とも呼べるフェウゴ=ヴァサニスも、隣に立っている。


 彼らが、結界の外に出てそこで待つ。

 その奥から、闇の中からぬるりと、巨たが姿を表す。


 「みいつけた!!」


 『虐像』が、ついに弱者を見つけてしまった瞬間であった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 『虐像』ロドスは、たった一つの命令を遂行すれば自由である。

 『戦争』マギアから与えられた命令は、結界の解除である。それはつまり、恐らく縛りによって増強させた結界の主を殺すことに他ならなく、その時結界の主は、必ず弱体化している状態にあるということ。


 故にロドスはその任を引き受けた。

 弱者を痛ぶれるのならば、それは最高の任務であるから。


 「いたなぁ、お前は前にも結界を張っていたな。我の任務はお前を殺すことだ。それさえすれば、この戦いでは我は自由だ。」


 ヒミアを見ながら、舐めるように背後の貴族たちを見る。

 弱者がいっぱいだ。それだけでーー


 「生きている時間がわくなぁ!!」


 その巨人から、その場にいる誰もが恐怖した。

 得体の知れないオーラを放つこの巨人が、まるで人の命をなんとも思っていなく、ただの自分の快楽を満たす道具としてしか見ない。その目が、怖い。


 先ほどからガチャガチャ騒いでいた貴族も青ざめた表情で一斉に静まった。

 数では圧倒的にあちらが上。だが、その気持ちの悪いオーラが、皆を恐怖させる。


 あのヒミアですら、冷汗を流すほどの気持ち悪さ。

 こいつに捕まってしまっては、タダでは済まない。


 「・・・いたぶっていいのは、その結界の外に出ているこの二人からだな?」


 誰もが恐怖し混乱する中、決してその勇気を潰されないように踏ん張っている男がいる。


 「誰にも指一本たりとも!!触れさせはしないのである!!」


 ここが、男を見せる時である。カンピア=ミルメクスよ。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 誰よりも勇敢に立つ男の背中を見ている。

 彼とは非常に長い付き合いではあるが、そんな背中は見たことがなかった。逃げることと狡いことに関しては彼は素晴らしい才能を持っている。

 だが、こんなに熱く燃えるカンピアを見るのは初めてだった。


 「フェウゴ!我輩と共に戦ってくれ!!」


 カンピアのためなら、戦ってもいい。

 フェウゴはずっと、そう思っている。


 「う、うん。も、もちろんだよ。」


 彼は本来ビビリであるが、今はもうそうではないのかも知れない。

 こんな巨人、いつもならビビり散らかして逃げているが、今は不思議と怖くはなかった。


 「お前は見たことがある。あの時の毒の小僧だな。貴様は、弱者ではない。」


 だが、強いわけでもない。

 ただの危険なやつだ。


 「貴様の魔法は強力だ。あまりにもな。その小ささで我輩が危険と認識したのだ。そして、主君には必ず任務を果たすように言われている。今回ばかりは、ふざけている余裕がない。」


 前回の学校を襲った時のように、強者から逃げ続けるような戦い方はしない。

 真正面から、力のみで踏み潰す。


 「燃えろ我が意志、我が本能よ。今こそ、弱者を痛ぶるための熱を持て!!」


 轟轟と燃え上がるその巨躯を、なんら恐れることはない。ただ、拳を握りしめて向かうだけだ。

 ただいつものように、前に進むだけ。


 「うおおおお!!カンピア=ミルメクスはここで一人前になる!!」


 土魔法で、拳を固めて殴りかかる。

 暑さなど感じはしない。そんなものに屈しない。


 だが、現実は非情である。

 目の前の巨体が振り下ろす拳は、何倍も何十倍も、大きく強かった。


 間一髪、フェウゴがカンピアを救い出す。

 あとちょっとでカンピアが粉々に砕け散るところであった。


 「・・・貴様やはり戦闘の才能がずば抜けているな。」


 「カ、カンピアくん、さ、下がってて。」


 カンピアを後ろに下がらせようとするが、彼は二度も結界に閉じこもることなど出来はしない。

 それを、フェウゴ=ヴァサニスという親友はわかっていない。


 「まだである!!」


 なぜだろう。彼は一体どうして、いつもとこんなにも違うのだろうか。

 一体いつから、こんなに熱心にーーー


 土魔法を、いくらでも繰り出す。だが、その形はロドスの炎魔法の熱によってあっけなく溶かされる。

 だが、それでも何度も土魔法の弾丸を発射する。


 「ムゥ、貴様は弱者なのだから後ろで待っておけ。あとで思う存分痛ぶってやろうぞ。」


 ロドスが弱者を痛ぶる癖があって良かったと、そう思った方が良いほどの実力差。

 今を生きているのは、ロドスに殺す気がないからだ。


 この場で颯爽と殺そうと思う相手なぞ、目の前のフェウゴ=ヴァサニスを置いて他に居ない。

 危険視しているものはただ一人なのである。


 「うおおおおおおお!!」


 「カ、カンピアくん!!も、もうやめて!!し、死んじゃうよ!」


 「フェウゴ!!何をしているのである!目の前の相手に集中するのである!」


 カンピアの覚醒が、この勝負の鍵を握るのである。




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