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誰もが愛を求めている  作者: 天邪鬼(あまじゃき)
第3章  双生と哀獣の戦場
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第3章8話  結界内部




 開戦の狼煙は、結界が割れる音だった。


 大きな音共に、黒い触手が蠢く。

 その巨大さに、見るものは驚きを隠せない。


 あれならば、結界を破壊することも可能かもしれない。


 その触手は、いったいどこからであろうか。

 その根本を確認する。


 「さぁ、この黄金都市を沈めようか。」


 そう叫ぶ男がいる。

 彼の名前は『戦争』マギア。


 この国の、この世界の敵たる『七つの厄災』の一翼である。


 「いけ、ギザ。あの城を沈めろ。」


 破られた結界内に、手のつけられぬ獣が放たれた。

 『暴獣』はまっすぐ黄金都市の中央に聳え立つ黄金の宮殿に走る。


 こちらが攻め込まれている。

 そしてそれは、こちらが攻め込むという作戦の瓦解を意味する。


 誰もが一瞬立ち止まる中、ある男は迅速に動き出した。


 走り出す獣の前に、同じかそれ以上の速さで走る男がいた。

 獣は速さを緩めないし、男もまた、緩めない。


 「やっぱり早いなァ!エナリオス!!」


 「害獣が、刺し殺してやる。」


 正面衝突する直前、二人の間に何かが落下する。

 それは形を持たぬ何かであった。


 「・・・バビロンか。」


 その一瞬をつかれ、ギザの突破を許してしまう。

 厄介な鳥を仕留めなくてはいけない、そして、この目の前の『厄災』を通してはいけない。


 二人を相手取るならば、あの獣は後ろに任せる。

 その判断を瞬時にできるエナリオスは流石であるが、背後の戦力は既に削られていた。


 城から飛び出す人物が数人。


 作戦は続行不可。

 そう思っていたからこそ、エナリオスは背後に任せる判断をした。


 「・・・あの野郎。」


 それはエナリオスが城を飛び出す前に遡る。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 結界が割れる音と共に、エナリオスはすぐに動き出していた。


 それよりも先に動き出していた男が一人。

 名はエルドーラ。世界最強と肩を並べる男。


 「ダスカロイ、全員集めろ。」


 すぐそばにいた『魔導王』ダスカロイ=フィラウティアが指を鳴らした瞬間、結界内の各地に散らばっていた実力者は集合させられる。


 ストラトス、キノニア、エピスの教師3名に、イロアス、ミューズ、リア、アストラ、フェウゴ、カンピアのアナトリカ王国騎士団が集結した。


 「ここにきた革命軍の実力者は3人だ。」


 「『暴獣』ギザ、『彗星』バビロン、そして『戦争』マギア。」


 「違う、あれはただの影に過ぎない。もう一人は息を潜めている巨人だ。」


 「・・・『虐像』か。そしてあれが影ならば本体はーー」


 「ダスカロイ、お前はメンバーを選抜して今すぐ革命軍本部へ迎え。ここはエナリオスに任せるんだ。」


 「わかった〜よ。君は?」


 「残念ながら、もう来てしまったようだ。俺はそっちにいく。お前たちは予定通り革命軍にだけ集中しろ。」


 そして一瞬のうちにエルドーラの姿は消えた。氷が砕け散るような音と共に。


 「さて、メンバーを選ばせてもらう。」




※※※※※※※※※※※※




 「さぁ、ぶっ殺してやらァ!!」


 エナリオスの猛威を突破し、まっすぐ愚直に宮殿へと向かう獣。

 彼の目的は、誰が見ても明白であった。


 「この結界内のすべての住民を皆殺しにすること。それがお前の目的だろ?」


 こいつの相手だけは譲れなかった。何を差し置いても、この獣の相手は、同じ獣として自らが務めなければならなかった。


 「・・・お前は本当に亜人の面汚しだァ。」


 「亜人のこれからのために、もう二度と差別が起こらぬようにするために、僕は君の憎しみをここで止めなければならない。」


 それが、同じ亜人としてここに立つ意味であった。

 ここに立たなければならない理由であった。


 「僕は騎士団としてではなく、ただの亜人として、ここに立つ。」


 「俺様は、全てを殺し尽くす。狼人族の積年の憎しみを晴らすために、この世界の人類を殺し尽くす。」


 亜人ミューズVS『暴獣』ギザ

 学校での戦いから再び、その幕は上がった。



 すまないイロアスくん、僕はここに残らなければならない。

 本当は君の隣に立っていたかった。

 それでも、僕はこの国でやらねばならないことがある。


 「君を必ず負かして見せる。ここで、君はその血に濡れた拳を降ろすんだ。」


 これはただの戦いではない。


 亜人の全ての未来を決めうるかもしれない、戦いである。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ヒミア=タブーの結界は、破られた。

 だがすぐに彼女は、再び結界を閉じた。


 一度張った結界を修復する。

 それは無駄な魔力の消費にほかならない。


 なぜならば、ヒミアには結界のほかにもやらなければならない。

 現在ヒミアは、結界を二重に張っている。


 一つは黄金都市を囲む大結界。

 もう一つは、この国のあらゆる貴族を格納している地下の結界。


 黄金都市が戦場になるかもしれないことを見据え、エルドーラはこの国の王に貴族を宮殿に格納するように願い出た。

 正確には、脅した。


 その意見には、王と宰相は反対してきたが、あのエナリオスが少し説得してくれた。

 それでも反対する二人にイラつきを抑えきれなかったエルドーラが王室を氷漬けにしようとし、王と宰相は渋々了承した。


 そのおかげで、現在黄金都市には一人たりとも住民がいない。

 王命という名目で、全ての貴族が宮殿の地下にいる。


 それの守護を、ヒミアは任された。

 故に、ヒミアは二つの結界を展開している。


 そして、破られたと同時に、侵入者の正確な数を把握していた。


 『暴獣』ギザ、『彗星』バビロン、『虐像』ロドス、そして肉体のない『戦争』マギア。

 総じて4体が結界内に侵入している。


 対してこちらの戦力はーー




※※※※※※※※※※※




 「これが最善であると信じさせてくれよみんな。」


 空を滑空し、みんなを浮かせている『魔導王』がみんなに向かってそう言った。

 あの時メンバーを選出し、数人を残し、『戦争』が待ち受けている革命軍本部へと向かう。


 空にいるメンバーは、『魔導王』ダスカロイ=フィラウティア、『炎鬼』ストラトス=アンドラガシマ、『翠老』エピス=ミュロン、『朱姫』リア、そしてイロアス。


 「君たちは一人一人が幹部と戦うことになる。そして、絶対に負けてはならない。君たちの敗北が、延いてはディコス王朝、さらには世界の敗北に繋がると思いなさい。」


 一行は、革命軍本部へと向かう。

 ディコス王朝、最後の戦いが始まった。




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