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誰もが愛を求めている  作者: 天邪鬼(あまじゃき)
第2章  魔法学校フィラウティア
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第2章10話 実技の3日目




 17:14、地下一階の体育館。

 魔法実技の訓練最中。


 この授業を履修しているのは、イロアス、ミューズ、リア、サン、フェウゴ、カンピア、アストラの7名全員である。


 この授業は、数分の間結界内で1対1を行う。その組み合わせは教師が設定するが、今回はアナトリカ王国からの短期留学生とディコス王朝から招待を受けている生徒との組み合わせであった。


 俺は知らなかった。ディコス王朝と亜人には、アナトリカより深い深い溝があることを。


 結界に打ち付けられ血を流し倒れるディコス王朝の生徒と、教師によって床に押さえつけられたミューズが、目の前に打ち付けられた光景だった。




※※※※※※※※※※※※




 16:10、地下一階の体育館。


 ここで、本日最後の授業である、魔法実技が行われる。


 この授業だけは、アナトリカ王国からの七人の留学生が全員参加する。それは、相談したわけでも示し合わせたわけでもない。ただ純粋に、各々の思考の果てに、各々がこの授業を選んだ。


 イロアスがこの授業を取った理由はただ一つ。


 「俺の力は、どこまで通じるのか気になるな。」


 その力は、もちろん7人にどこまで通じるのかという意味でもある。しかし、もう一方で、


 「他国でもどこまで通じるかな。」


 この授業は、さっきの歴史学とは打って変わって大人数が参加している。ディコス王朝から招待された貴族の子が。


 その貴族の数人がこちらを見て笑っている。その貴族には見覚えがある。確か、1日目にリアと喧嘩していた貴族だ。


 リアはその貴族にガンを飛ばしている。・・・怖い。


 「はぁーはっは!!騒がしいぞ小僧ども!!口より筋肉を動かせ!!」


 「ギュムズ、うるさいよ。」


 入り口から二人の男女が悠々と歩いてきた。一人は背格好の高いダンディな髭を生やした男。もう一人は眼鏡をかけた紫の髪を持つ猫背の女性。


 「さぁ、静まれ!!そして集合だ!!この『戦車』ギュムズ=ナシオンの元へ来るがいい!!」


 ディコス王朝の貴族は嬉々としてギュムズという男の元に集まる。


 「有名な人なのか?知ってる?ミューズ。」


 「いや、だけどディコス王朝では有名なんだろうね。」


 ゆっくり歩きながらギュムズの元へ向かうアナトリカ王国の七人の留学生を見て、貴族が怒鳴る。


 「おい、モタモタするな貴様ら。早くギュムズ将の元へこい。」


 「はぁーはっは!!少年、ここではギュムズ教授だ!!それにアナトリカではやはり我輩の美談は届いていないか!!」


 「届いてるわけないでしょうに。君たち、授業の説明をするから早くきなさいよ。」


 メガネの女性教授がギュムズを制止しながらイロアスたちを急かす。

 そしてみな集まったタイミングでギュムズが説明を始める。


 「ようこそ!!我輩の魔法実技の授業へ!!この授業は学んだことを実践する場である!!座学で習っても、イメージはできても、実際に使えなければ意味はない!!」


 「この授業は一対一が基本だよ。たまに団体戦もやるけど。僕はヒミア=タブー。この授業の補助と、錬成学、属性適応学土を担当しているよ。」


 「説明ありがとう、だけどそれは我輩の仕事だ!!取られてしまったな!!はぁーはっは!!」


 「じゃあ早速だ・・・と言いたいが、せっかくアナトリカの留学生が来てるんだ。アナトリカvsディコスが見たいんじゃないか?」


 周囲がざわめき始める。


 「はぁーはっは!!良いか?アナトリカの!!」


 そのにやけヅラのギュムズ教授に、イロアスは笑って返した。


 「いい顔だ、少年!!では、早速始めようか!!」


 その言葉と共に、ヒミア教授が体育館の環境を闘技場に変え、その闘技場に結界を張った。その結界は、ゼモニコスほどの制度ではないが、上質な結界であった。


 「僕の結界に入ってね。一応僕もこの学校の教師なんだ、それなりの実力は保証されているから、結界内では思う存分暴れていいよ。」


 舞台は整った。


 気になる対戦順は、ギュムズがクジを作りイロアスたちがそれを引く。ディコス王朝用にもクジを作り、今回はアナトリカ王国に合わせて7名の代表者を決めた。そして番号順に闘技場に上がるスタイルをとった。


 「まず初めに!!1番は舞台に上がれ!!」


 イロアスが引いた番号は3番。1番は・・・


 「アタシの剣技を、今一度目に刻みなさい。イロアス。」


 アナトリカ王国最強の家系プラグマ家が一人娘ーーリア=プラグマは、腰にささったレイピアを抜いた。その刃には、親愛なる母の名が刻まれている。


 「はぁーはっは!!闘技場に上がるがいいさ、童ども!!審判は我輩が務める!!・・・ちなみに、武器の使用は不可だ。」


 ・・・リアは恥ずかしそうに剣をしまった。


 アナトリカ王国からはこの赤面の女の子が出場するが、向こうは一体誰が舞台へ上がるのか。


 「ほぉ、こちらはお前か!!セイレン!!面白い試合が見れそうだ!!」


 「はい、最善を尽くします、ギュムズ教授。」


 透き通るような青い髪に、水色の瞳。清廉潔白とは、この子のためにあると言わんばかりの美しさ。


 一方は真紅の髪に、もう一方は青い髪。相反する力を持つことは明々白々。


 「これは面白い試合が見れそうだよ。片や世界に名を轟かす『灼熱』の娘。片やディコス王朝最強の『大将軍』の娘。僕も気合を入れて結界を維持しようか。」


 ヒミアがより強固に結界を張る。その結界の中には2人の闘技者と1人の審判。


 「制限時間は10分だ!!そして、命を奪うことを我輩は許さない!!危険と判断したら我輩が止める!!良いな!!」


 「「はい。」」


 声を揃えて2人の美女は、不敵に笑ったように見えた。


 「リア=プラグマ。」

 「セイレン=スニオン。」


 「「いざ!!」」


 炎と水の魔法の大衝突。それによる水蒸気の爆発。蒸発した水が霧となって結界を満たす。その霧の中、動く影が二つ。イロアスはしっかりと目に刻んでいた。


 水滴が銃のように放たれる。それを炎の華の壁が蒸発させる。逆に炎の弾丸がセイレンに向かって放たれる。


 はてしない攻防の末、決着はつかず。時間がそれを止めた。


 「素晴らしい攻防であった!!武器があれば少しは違った結果が出たかもしれぬが、戦場においては常に万全で戦えるとは限らぬ。気を引き締めるが良い!!いつ戦場に放り出されるかは誰にもわからぬからな!!」


 素晴らしい攻防であった。だが、おそらく制限時間がなかったらリアが勝っていただろう。

 息を切らすセイレンと、息切れ一つないリア。それがその予想を立てた。


 「さぁ、次の試合に移ろうか。2番の子は結界内に入ってよ。」


 黙して闘技場に歩みを進めるは、荒くれ者アストラ=プロドシア。


 悠々と結界内に入り、ただ黙して敵を待つ。そして、相対する敵を見、審判の始まりの合図とともに、決着はついた。


 プロドシア家とは、裏切りの一族であり、武を誇る家系。その家系相伝の力は、雷である。


 その雷鳴が轟いた時、全ての決着はついていた。


 闘技場には、焼けこげた一本の直線の先にたつアストラと、地面に突っ伏したディコス王朝の貴族の生徒。そして、追撃を許さぬようにアストラの目の前にはギュムズが立っていた。


 「属性適応学の時から、才に溢れた生徒であると思っていたが、ここまでとはな!!だが、我輩がここに立っていなかったら、お主はどうしていたかな?」


 リア、イロアス、ミューズは3人ともアストラの動きを目で追えていた。だが、ここにいる生徒誰一人として、ギュムズの姿を目で追えた者はいなかった。


 それは、同じ雷を扱うアストラでさえも。


 「別に、もしもの時の話なんかしても意味はないだろぉがよ。」


 自分より格上の男を目の前に、わずかに強がることしかできない。だが、闘争心だけを目に宿したまま。


 「・・・確かにな。では結界から出るがいい!!次の試合に移ろうか!!」


 2回の試合が終わった。3番手は、


 「俺の出番だな!試したいことがあるんだ!」


 炎と水の魔法を習得し、その力の扱い方を学んでいる。まずは他国とも力比べ。


 「イロアスくん、これは試合だからね?」


 「試合といっても授業だ。やりたいことをやるだけさ。」


 「あんたらしいわね。まぁ、頑張ってきなさい。」


 「ありがとう、リア。」


 炎魔法は、孤児院で鍛え上げた。他ならぬ炎魔法の名家プラグマの出身であるミテラ叔母さんから。では水魔法は?

 そう、この力は永久凍土スクピディアで突如発現した。


 属性適応学で、水属性の効能を見出した。


 「では闘技場に上がるがいい!!両者の検討を祈る!!」


 炎魔法は使わない。水魔法だけで、この試合を制す。


 その開始の合図だけが、早く実力を試したいという興奮を抑えた。


 相手のディコス王朝の貴族は、風魔法の使い手のようだ。武器の使用は禁じられているが、魔法による武器の創造は許可されている。手刀に風を纏わせ、切れ味を何倍にも増している。


 「近接戦、最高にもってこいだ!」


 炎魔法を縛り、水魔法のみでこの試合という名の授業に挑んでいるイロアスからすれば、近接戦がしたかったのだ。


 炎魔法は、修行のおかげで遠・中・近距離のどれにも対応できる。しかし、水魔法はスクピディアでの発現以降の数週間程度の修行しかしていない。


 ミューズとアゲラダとの実践を踏まえた上での修行で、水魔法の基礎的な力を学んだ。そして、昨日の属性適応学で『波』といういいヒントを得た。


 戦いの全ての場所を、波で捉える。


 「おいおい、アイツァ、目瞑ってやしねぇか?」


 「何してんのよ・・・!」


 「イロアスくん・・・!?」


 それは侮辱ではない。お前には、瞳はいらないという侮辱ではない。


 それを感じ取っているのは、アナトリカ王国の生徒と、フィラウティアの教員のみであった。


 「何のつもりだ!!」

 「ふざけているのか!!」

 「侮辱するなよ!!」


 口々にヤジを飛ばすディコス王朝の貴族を、今まさに相対する貴族を無視して、イロアスは目を閉ざした。


 あぁ、よくわかる。


 怒りに身を任せて、イロアスを斬りにかかる目の前の相手を、イロアスは易々とかわした。次々と斬りにかかるが、それら全てをわずかな動きでかわしてみせた。


 「一体何が起きているんだ・・・!なぜかわせる!!」


 目を閉じているイロアスを捉えきれない試合の相手は、感情を表に出した時点で負けていた。


 「ミューズの見様見真似だけど・・・!!水砲(ブルー・ストレート)


 その感触は確かに、鳩尾をぶち当てている。


 「勝負あったな!!まさかこの実技の授業すらも、属性適応学の続きにしてしまうとはな!!面白い少年だ!!さぁ、4番手、上がってこい!!このボルテージを下げるなよ!!」


 アストラ、イロアスがディコス王朝から圧倒的な2勝をもぎ取っている。その時点で、二つの国の間にある力の差は大きいと考えられている。


 この波に果たしてこの男は乗れるのだろうか。


 入団試験で唯一魔石を取られ、開始15分で退場した男。そう、カンピア=ミルメクスは。


 


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