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誰もが愛を求めている  作者: 天邪鬼(あまじゃき)
第2章  魔法学校フィラウティア
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第2章3話  調停機関メディウム




 アナトリカ王国騎士団新団員の7名と、1匹の精霊。


 彼らが目指す先は、アナトリカ王国の西にある大国『ディコス王朝』にあると言われている、魔法学校フィラウティア。


 さて、どうやって西に行くのか気になるところだろう。


 この世界の話を少ししよう。


 この世界は、中心に小さな大陸があり、その大陸を囲むように海がある。


 さらにその海の外側を大陸が円を描くように囲っている。


 アナトリカ王国は、外側を囲んでいる大陸の東に位置し、今回の目的であるディコス王朝は真逆の西に位置する。


 東から西には、4つのルートがある。


 1つ目と2つ目は、純粋に南を通って行くか、北を通って行くか。しかし、南には『厄災』が治める大国『ノートス帝国』が存在し、北には同じく『厄災』が治める大国『魔宗教国ヴォリオス』がある。


 ここを通って行くことはあり得ない。


 3つ目のルートとして、海を渡るルートがある。


 しかしこれもお勧めはできない。


 その理由は、


 「海には神獣がいるとされている。水の属性を持ち合わせていないと、人間は水の中では無力。船での移動など、海の神獣が生み出す魔獣によって破壊される。この世界で海を渡る方法などない。あの神獣をどうにかしない限りはな。」


 行きの道、馬車に揺られながらシロギが丁寧に説明をしてくれている。それを聞かないと殺すかの勢いで、後ろからソラクトさんの殺意が飛んでいる。


 「4つ目のルートで行くんですね。」


 「4つ目は空を移動するルートだ。飛行船を使って移動する。しかし、これもお勧めはできない。」


 「なぜですか?」


 「空にも神獣がいる。そして、それはノートス帝国が手懐けているのだ。」


 海と空にいる神獣。これによって、海と空のルートは防がれている。


 「・・・え?どうやって行くんですか?」


 「・・・」


 ・・・なんで黙るんですか?シロギ団長?


 「・・・ふっ。冗談だ。」


 この人冗談とか言うタイプだったんだ。かわいいなこの人。


 そうか、アストラとサンは、ソラクトさんを本気で怖がっているんだな。そう思い、恐る恐るソラクトさんの方を見る。


 ソラクトは、頬を赤らめて、シロギ団長のことだけをまっすぐ見つめていた。


 ・・・この人も、案外かわいいな。


 「好きなんだね。」


 セアが耳打ちしてきた。デリカシーないなこいつは。そんなこと口にしないの。ミューズとリアがセアの言葉に少し笑ってしまう。


 リアもスクピディアにてその姿を目撃している。故にセアの姿・声がわかるのだ。


 「西に行く方法は確かに4つだが、今回の目的地は魔法学校だ。」


 言っている意味がよくわからなかった。その魔法学校は西にあるんじゃないんですか?そう思っていた。


 「魔法学校は確かにディコス王朝にある。しかし、その具体的な場所は世界の誰にも知られていない。ゆえに、たとえ何かの偶然で西のディコス王朝に辿り着いても、魔法学校にたどり着けるかは保証されない。」


 つまり、初めから目的地はディコス王朝ではなかった。


 「魔法学校に行く方法はたった一つだ。リア嬢、君ならわかるのではないか?」


 顔をわずかに顰めるリアは、しばらくして一つの答えを導く。


 「転移魔法ですか。」


 「その通りだ。さすがは転移を得意とするプラグマ家だ。魔法学校行きの転移魔法陣がある。それに乗ることで行くことができるが、この世界においてその魔法陣がある場所はたった2つだ。」


 2つの魔法陣のみが、魔法学校フィラウティアに行くことができる。超がつくほどの厳重管理。なるほど、魔法学校の位置が特定されない理由がわかった。


 なんで、特定されないようにしてるんだろうか。


 当然のようにわく疑問は、千年間も謎にされたので皆の頭からは消え去っていた。


 「どこにあるのですか?」


 もう一つわく当然の疑問を、ミューズが問いかける。


 「一つはディコス王朝にある。だが先ほど話したように、我々にはディコス王朝に行く手段がない。だからもう一つの方を使う。」


 「もう一つはどこに?」


 「この世界の中心、世界調停機関メディウムだ。」


 メディウム。その名に聞き覚えがある。確か・・・


 「かつて世界が2分された時の、女神テディアのいた国の名前ね。」


 聖界メディウム。千年前の大戦で女神テディアを信仰した国。『七人の使徒』が発足した大国。


 「世界調停機関とは、千年前の大戦が終わった時、聖界メディウムが『厄災』から世界を守るために作ったとされている。その機関のトップは、『使徒』様が勤めているが、我々は会うことはないだろう。目的は調停期間の内部じゃないからな。」


 「い、一個聞いていいですか?」


 恐る恐る手を挙げるフェウゴに、シロギは厳粛に質問に答える用意をした。


 「そ、そこも海に囲まれているのに、ど、どうやって行くんですか?」


 「いい質問だ、これはいかに十大貴族とは言えど、その当主と、騎士団の師団長クラスにしか知らされない事項だからな。ただ、騎士団に入れば、その行き方だけは伝授できる。」


 その瞬間、何かいい匂いがしてくる。甘くて、甘くて、いい匂い・・・


 「転移魔法だ。君たちは2回魔法陣に乗ってもらうが、生憎一つ目の魔法陣は超特記事項なのでな。君たちは眠ってもらう。」


 甘くて、脳がとろける・・・あぁ、眠い。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 「起きんかいっ!さっさと起きんかいっ!この間抜けどもっ!」


 キーキーうるさい声。いつも起こしてくれるセアの声とは違う・・・なんだ、この声。めっちゃうざい。


 「おいいいいっ!起きろおおおっ!」


 「やかましいわ!!」


 耳に響く鬱陶しい声に、思わず飛び起きた。目を覚ますとそこは、魔法陣の上で、全く知らない場所。ありえないほどの大きな扉が、みんなを迎えた。


 「なんだここ?てか、なんだこのちっちゃい・・・え?大人?」


 ここがどこなのかわからない状況。普通なら、この場所を推察しようとするが、それよりも不思議なものがあった。


 先ほどからやかましい騒音を撒き散らし、イロアスの周辺で寝ているフェウゴやカンピア、ミューズを起こそうとしているこの複数の「小さな大人」としか言いようのない、わずか1メートルほどの生物。


 「彼らは小人族よ。亜人とも言い換え難い、人間から派生した二つの亜種のうちの一つよ。」


 イロアスよりも先に起きていたリアが、軽く説明をしてくれる。


 「全員起きたな。じゃあ頼む。」


 騒音によって見事全員深い眠りから覚めたが、シロギがすぐに小人族に何かを頼み込む。


 「ちっ!めんどくせぇが、議長の頼みは俺たちは断れないからなっ!ついてこいやっ、異国人どもっ!」


 本当にやかましい小人族とやらは、でかいでかい門を素通りし、その奥にある塔に案内した。


 セアがその扉の前で少し立ち止まった。そして何事もなかったかのようにイロアスの肩に止まった。


 奥にある塔は、目の前を案内している小人族が大量に働いていて、何やら資料作りなど、本当に真面目に仕事をしていた。


 その塔の地下に案内され、その地下に大きな門があった。先ほど素通りした門ほどではないが、これもまた大きい。


 その門の前に、二人の人間が立っていた。いや、人間ではない。「大きすぎる大人」って言った方がいいのだろうか。


 「リア、さっき小人族って言ったよな。」


 「えぇ。」


 「これは、大人族か?」


 「惜しいわね、巨人族よ。さっき話していた二つの亜種とは、小人族と巨人族のことよ。」


 その身長は悠に5メートルを超える。二人の巨人族は、それぞれ巨大な戦鎚を持ち、門を守っているように見える。


 「客人だな。議長から話は聞いている。通るがいい。」


 巨人族が、大きな扉に手を当てる。ただそれだけで、巨大なもんが一人でに動き、開く。


 その門の先のは、巨大な魔法陣があった。


 「さて諸君、その魔法陣こそが、魔法学校フィラウティアに通じている。ここで、君たちの留学の目的を厳粛に共有しようか。」


 シロギが、団長として、話し始める。


 「今回の目的は、魔法を学ぶこと。君たちの魔法はまだ未熟だ。それは、君たちが魔法について詳しく知らないからだ。今回の留学を通して、何よりも魔法を学べ。そして、君たちは半年は必ず留学してもらう。魔法学校は半年に一度、成績が公開される。そこで、総合Aランクを取ってこい。」


 「もし取れなかったら?」


 「もう半年、留学してもらう。それでもAランクを取れなかったら、強制帰還の後、罰を受けてもらう。厳粛にな。」


 その最後の不敵な笑いが、罰の重さを物語っていた。


 「では行ってこい。あぁ、帰りの迎えは俺じゃなくて副隊長が行くことになっている。お前たちはまだ会ったことがないから、楽しみにするといい。」


 その言葉を最後に、魔法陣が発動した。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 次に目に映った光景は、もう何度目の扉だろうか。


 「転移成功か?」


 「ようこそ、魔法学校フィラウティアへ。」


 扉とは反対方向から、一人の年季の入った女性が歓迎の言葉を発す。 


 「校長室へ案内します。ついてきなさい。」


 シロギのような厳粛な態度で、テキパキと動く。7人の新入生はその早すぎる動きについていき、案内されるがままに歩く。


 長い廊下を歩きた先には、巨大な空間が広がっていた。


 「すげぇ・・・!」


 それが、7人の抱いた感想なのだろう。吹き抜けの巨大なホールが俺たちを迎えた。そのホールは5階建てで、階ごとにいくつもの扉がある。


 構造自体は簡単なものだが、階ごとをつなぐ階段は、螺旋階段であったり、転移魔法陣であったり、動く植物であったりする。

 壁にはいくつもの絵画が飾られており、また、天井には星空が写っている。


 「今、昼だよな?」


 「魔法ね、それも宇宙を映し出す強力な魔法。」


 7人の新入生がその全てに見惚れていると、早く来いと言わんとする年季の入った女性が顔を顰めている。


 そして、案内されるがままに、ホール最奥にある鉄扉に案内される。そして、その頑強な鉄扉は、年季の入った女性が手をかざすだけで開かれる。


 そして、その内部には魔法陣があった。


 「校長室の位置を悟られないためのものです。我々教師ですらその位置を把握していません。さぁ、乗りなさい。」


 本日3度目の転移を行う。その転移した先に、これぞ魔法使いだろうと言わんばかりの、とんがり帽子を被った、白く長い髭を生やした、厳格な老人がそこには居た。


 「では、失礼致します。」


 その後、3分ほどだろうか。この厳ついお爺さんに睨まれ続け、無言の時が過ぎていく。


 そして、その老人はようやく口を開くのだ。


 「やっぱこの格好は失敗だったな〜。」


 「は?」

 「はい?」

 「あ?」


 みな見事に、疑問符を投げかける。今日一日、シロギ団長の返事以外で口を開かなかったアストラですら、その意味のわからない状況に、口を開いた。


 疑問符を投げかけられた厳格な老人は、煙と共に姿を変える。


 長い髭などなく、顔に皺なんてない。


 とんがり帽子すらも演出で、長い長い水色の髪が、腰まで届いている。眼はなんとも特殊なのだろう。見る角度によって色が変わるのだ。


 その七色の瞳を持つ、若い魔法使いは、すぐに一礼をし、名乗った。


 「ようこそ〜!我が魔法学校フィラウティアへ〜!ぼっくの名前はダスカロイ=フィラウティア、現魔法学校校長にして、『七人の使徒』の一人、『魔導王』の名を継ぎしものさ。」


 その愉快な魔法使いは、七人の新入生を歓迎する。


 そして、それがきっかけで、新たな物語が幕をあける。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 そこは、ディコス王朝の北にある荒野。


 名などとうに捨てられた荒野。名前だけではない、なにものからも捨てられた荒野。


 その砂塵吹き荒れる荒野に、捨てられた教会があった。


 もう、誰も祈るものなどいない教会に、一人の女性が入る。


 その女性は、教会の地下を悠々と歩く。その地下で、何百といる同士が待っていた。


 その同士を束ねるものだろうか。教会が保有していた神が描かれた絵画の下、座して待つ男がいた。その男の前に、彼女は跪く。


 「侵入成功致しました。」


 「・・・もうすぐだ。各員準備せよ。この900年続く戦争の輪を広げる準備を。」


 その一言で、同士が全員跪く。


 その男は、闇に満ちた魔力を持ち、暗き瞳を持っていた。


 『厄災』が一翼、『戦争』が動き出す。




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