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誰もが愛を求めている  作者: 天邪鬼(あまじゃき)
第1章  光が落ちた王国
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第1章19話 全貌




 永久凍土スクピディアが窓の外から見える。


 事件収束後、『聖女』と『灼熱』はすぐに島を飛び立っていった。残った受験生と騎士団は、そそくさと飛行船に乗り込み、島を後にした。


 「やぁやぁ、みんなよく頑張ったね。」


 エナの賞賛の言葉について、俺たちは本当によく頑張ったと思うと、その場にいた受験生の全員が思う。


 騎士団ですら立ち寄らない危険な島、永久凍土スクピディアでの試験開催。

 魔獣の生息する森での鬼ごっこ。

 S級犯罪組織の乱入。

 結界の破壊に、魔獣の進軍。

 『魔王』の襲来。


 「頑張ったどころの騒ぎじゃないですけど、エナ団長。」


 「まぁそう言うなよ、ほら、オルもゼモニコスも頑張ってたんだし。」


 『魔王』を押さえ込んでいたオル=パントミモスと、結界によって魔獣の進軍を狭めていたゼモニコス=ポルタの両者は、確かに今回の事件の貢献者である。だけど、


 「俺らまだ騎士ですらないんですけど。」


 「あぁ、そうだ。今回の合格者の発表をしないとね。」


 その何気ない言葉に、緊張が走った。今まで騒ぎ立てていた受験生も静まり返る。


 「では、これから合格者の発表を行うよ。さっき他の騎士団のものからも情報を聞いた。それも考慮しての合格者だよ。」


 その言葉は、この試験は、この事件ですらも考慮されていると言うことを意味する。つまり、魔獣の進軍を止めていたという捕まっていた受験生も、まだ合格の余地がある。


 「ではまず、魔獣の進軍を阻止し続け、常に最前線でその武功を示し続けた。アストラ=プロドシア、サン。おめでとう。」


 当然だと言わんばかりの表情を見せつけるアストラと、まるで無関心なサン。


 「次に、S級犯罪者の頭領を抑え込んだ、ミューズ=ロダ、フェウゴ=ヴァサニス、リア=プラグマ。おめでとう。」


 隣にいたミューズが喜びのガッツポーズをする。おめでとう、我が友よ。


 「そして、単騎でかの『魔王』に見事一撃を入れた勇敢な男、イロアス。おめでとう。」


 俺の名が呼ばれた。正直、受かると思っていたけど、やっぱり名前を呼ばれるのは嬉しいものだ。俺の肩に乗っているセアも、大きな拍手を俺に送ってくれている。


 隣にいるミューズも、嬉しそうに俺の背中をバンバン叩いてきた。


 そして、もう片方の隣で座っていた、リアも、少し嬉しそうな顔をしている。ハイタッチを試みたが、普通に断られた。


 騎士団合格。また夢の英雄に、一歩近づいたのだ。


 俺は、喜びを噛み締める。


 騎士団合格は確かに嬉しい。だが、騎士団はあくまで通過点だ。これから、より多くを救う。今回の『魔王』との戦いで自分の未熟さを知った。もっと、成長しなければ。


 「そして最後の一人だ。ここまでは試験中に僕に魔石を奪われなかったからまぁ当然として、問題は捕まったものたちだ。普通は不合格にするとこなんだけど、ちょっと目を引く奴がいたから合格に引き上げることにした。」


 他の受験生を見渡すと、みんな覚悟の決まった目をしていた。一人を除いて。


 「見事受験生をまとめ上げた、その統率力は見事だったよ。カンピア=ミルメクス、おめでとう。」


 その言葉に、カンピアは歓喜の涙を浮かべた。試験開始早々にエナに特攻し、捕まり、ほぼ不合格の状態からの、合格。見事なものであった。


 周囲の受験生は、拍手で称賛した。イロアスたちはミストフォロウと相対していて、その戦況はわからないが、きっと自分たちの元に魔獣が来なかったのは、彼らの尽力のおかげなのだろうと思った。


 その思いから、イロアスとミューズ、フェウゴにセアも拍手を送った。


 「以上合格者7名。騎士団の入団を認める。おめでとう、そしてありがとう。今回の事件での死傷者は0人だった。ここに第2師団団長として、感謝を。」


 そう言って、エナ=アソオスをはじめとした騎士団は頭を下げた。


 こうして、永久凍土スクピディアで起きた、一連の事件は幕を閉じた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 地獄の入団試験から1週間後。


 その1週間は、クルーダ叔母さんのもとでお世話になった。


 そして現在、以前門番に弾き返された王城内にいる。


 王座の前に、7人の正装した新入団員が、緊張に顔を強張らせて立っている。


 もちろんイロアスも正装をしている。クルーダ叔母さんの元に孤児院から送られてきた礼装を着ている。やはりスタイルがいいせいか、結構似合っている。


 その横には、同じく礼装している騎士団の団員が、剣を天に掲げて、その時を待ち侘びている。


 もう片方の横には、9人の謎の威圧がある人が座っている。その中の一人に、クルーダ叔母さんがいる。


 「なぁミューズ、お前の母ちゃん見にきてんぞ。」


 「何言ってるんだいイロアスくん、母さんは十大貴族の当主としてきてるだけだよ。本当は来たくないんだってさ。」


 確かに、クルーダ叔母さんの他に座っている人は皆老人すぎる。クルーダ叔母さんが若く見える。てか、十大貴族なのに9人しかいないけど、後一人は?


 そんな顔をしていると、隣のリアがため息をつきながら話す。


 「アタシのお爺ちゃんよ。まだ入ってきてないの。」


 なるほどね。


 そして無言の数分の後、玉座の横のドアが開く。


 俺はあまりの美しさに、声を失った。


 先頭に立つ、金髪の天使は、それは美しいドレスを身にまとい、悠然と、玉座に向かって歩く。そのあまりにの美しさは、みんな気を失ってしまうんじゃないかと思ってしまうほどであった。


 その天使の後に、7人の礼装を着た騎士が続く。


 天使は玉座に座り、イロアスを含む本試験の合格者たちの前に7人の騎士は威厳を持って立つ。


 「これより、アナトリカ王国騎士団入団の儀を始めます。」


 その天使の声と共に、イロアスの横に整列していた騎士は天に掲げた剣を降ろし、もう一方で座っていた9人の貴族の当主たちは立ち上がった。


 そして、目の前に立ち並ぶ中で見慣れた顔の男が語る。


 「僕、第2師団団長エナ=アソオスの名の下に、7人の騎士団入団を許可する。」


 「同じく、第2師団副団長オル=パントミモスの名の下に、7人の騎士団入団を許可するでござる。」


 金髪の天使は、語る。


 「それでは、7人の新団員のみな、目の前の騎士の顔を努忘れる事勿れ。」


 その言葉と共に、目の前の7人の騎士が口をひらく。まず初めに、黒に近い茶髪に銀の眼の男と、ベージュに白眼の女性が語る。


 「第1師団団長シロギ=アスティーノ。」


 「同じく第1師団副団長ソラクト=ナウスマクラー。」


 次に、青髪に紺碧の眼をした見慣れた男と、薄い茶髪に黄緑の眼をした独特の語尾の男が語る。


 「第2師団団長エナ=アソオス。」


 「同じく第2師団副団長オル=パントミモスでござる。」


 そして、その横にいる緑の髪の老人と、狼の耳を持つ亜人が語る。


 「第3師団団長フレスビューテ=マイムー。」


 「同じく第3師団副団長アゴリ。」


 最後に、リアとミテラ叔母さんと同じ真紅の髪を持つ老人が語る。


 「アナトリカ騎士団総長にして『七人の使徒』の一人、『灼熱』リオジラ=プラグマである。」


 その威風堂々とした立ち振る舞いと、そこ知れぬ魔力を間近に見て、こうなりたいと、そう願った。


 「現在騎士団の副長は別の任務に当たっていて席を外していますが、それを含めて以上8名が、この国の武の象徴です。そして、騎士団はこの国に尽くし、この世界を救わんとするもの。それは我が思想、我が願い、我が国の悲願である。その願いもつアナトリカ王国を千年に渡り統治し我が名は、セレフィア=ロス=アナトリカ。『七人の使徒』の一人にして、『聖女』の名を継ぎしものである。」


 その威光に満ちたあり方に、そのあまりの美しさに、惚れた。


 7年前、俺を救ってくれた天使は、この国そのものだった。何万といる国民をも見捨てないその姿勢は、俺がなりたい英雄そのものであった。


 この方に、付いていきたい。この方のためならば刃を振るえる。そう思った。そう思わせるだけの、何かがあった。


 「以上を持って、騎士団入団の式典を終了とする。お疲れ様!」


 その言葉を持って、騎士団は剣を再び天に掲げ、十大貴族は王女に一礼してその場を後にした。


 そして、7人の新団員も、その全てに一礼をして、玉座の間を後にした。


 そして、俺は声をかける。


 「リア、約束だ。」


 そそくさと帰ろうとする真紅の髪の女の子、リア=プラグマを呼び止める。


 「約束?」


 「スクピディアで交わした約束を果たす時だ。付いてきてくれ。」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 式典が終わった玉座の間にて、2人の『使徒』と、誰にも見えない精霊がそこにはいた。


 「今回の狙いは私だったわね。」


 精霊セアはそう語る。


 「エナの側にいたことが、()の存在を露見することなくこの事件が終息した要因です。」


 「エナの報告から精霊様がこの王都にいることは把握しました。そして、少年につけられた誘惑の匂いも、我がプラグマ家で除去することができました。それ故にミストフォロウは彼を見つけ出すのに時間がかかってしまった。しかし、精霊様をなぜ狙ったのか、疑問はそれに尽きます。」


 『灼熱』の老人はそう語る。もっともな質問であった。特にこの事件に密に関わった者からすれば、この事件の敵の狙いなど、あまりに唐突であった。


 なぜならば、彼らが求めているのは、予言の中にある『光の子』であるからだ。


 「『光の子』は女神テディアに関わるものであることは確定しています。だから精霊を求めた。女神テディアの眷属であり、精霊が姿を隠したと言われる時代に、その姿を晒したためです。」


 「『魔王』の紺碧の眼は、全てを見透かす権能を持っています。それで私の姿が7年前に露見してしまったと考えるのが妥当でしょうね。」


 「えぇ、でもあの時もあなたは私の側にいた。」


 その通りだ。7年前、レフォー孤児院に『魔王』が襲来した際、精霊セアは『聖女』と共に現れた。


 「そして今回、同じ紺碧の眼を持つエナのそばに敢えていた。」


 それが意味することは、


 「奴らは王国がこの精霊様を匿っていると、勘違いをしている。いや、勘違いさせることに成功した。それが今回のあなたたち二人の悪巧みの目的ですな?」


 そう結論づけた『灼熱』の解は、的を得ていた。


 イロアスがプラグマ家を訪れた際、セアはセレフィアの元を尋ねていた。イロアスが感じた『魔王』の気配、誘惑の甘い匂いをセアは十分に警戒していた。


 それ故、悪巧みを実行した。



 7年前、『魔王』は『聖女』と共に現れた精霊を見つけた。


 そして、王国が精霊を匿っていると仮定し、彼らは王国中の眼を使い、精霊を探した。それは、精霊が『光の子』を見つけるために、最も近い存在であると思ったためだ。


 そして見つけた。王都にて、エナ=アソオスと、7年前現場にいた少年イロアスと共にいた精霊を。


 そこで『魔王』は仮定が本当に正しいのかを精査する必要があった。この少年が2回も精霊を見つけた現場にいたのが偶然なのか、必然なのかを。


 その結果によっては、()()()()()が浮き出てくるからだ。


 故に突如として作戦は決行された。その事実を確かめるための作戦を。


 その作戦の最中で、同じ紺碧の眼を持つエナの側に、精霊を発見した。


 彼らは思うだろう。少年が居合わせたのは偶然で、王国が精霊を保護しているのだと。さらに『灼熱』と『聖女』が両方現れたことで、精霊が王国に保護されている重要なものであることを『魔王』は察した。


 本来精霊は見ることができない。それなのに、まるでその存在を知っているかのようにこの国の戦力がスクピディアに集中していた。


 国が精霊を保護している。


 『魔王』はそう確信した。



 だが、現実は違う。


 「精霊様、あなたと一緒にいるあの少年は何者ですか?」


 それは、『魔王』が今回の作戦で確かめたかったことであった。


 もしも、この国が精霊を保護していないならば、かの少年イロアスは、精霊と深い関わりがあるだろう。


 この精霊が姿を隠した時代に、その精霊がなぜいるのか。それは・・・


 「あの子は、『光の子』です。17年前、この国に落ちた光そのものです。」


 その衝撃の事実を知り得ていたのは、『聖女』のみであった。


 『光の子』の出現。


 それは、この国が、いや、この世界が、動き出すきっかけである。






 それら全てを知り得る或る男は、こう語る。


 「さぁ、第2部の序章が終わった。私も舞台に上がった。さぁ、見せておくれ、君が世界を救うまでの物語を。」




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