プロローグ
「人にはそれぞれ物語がある。
何を思い、何を知り、何を夢見て、何を愛するのか。
私はそれを見るのが好きなのさ。
人が紡ぐ物語を見るのが大好きなんだ。」
無限に続く平原に建つ白亜の巨塔から、世界を眺める白髪の男はそう語る。目先には平原が続くだけだが、彼には或る世界が見えている。
いくつもの物語が紡がれ、複雑に絡み合っている世界。
その世界では、総てを滅ぼす獣『厄災』と、崩壊を防ぐ抑止の『使徒』が奇妙にバランスを保っている。
もう何百年もの間、物語が止まってしまっているかのように、闇と光が均衡してしまった世界。
その世界を彼はこう表現する。
「 第一部 」
世界は物語の続きを、第二部の幕開けを待っている。
この停滞を崩す『主人公』を待っているのだ。
そして、その時は突然迎える。
その時をこの白亜の巨塔で待ち侘びた彼の表情が一変した。
彼はふと、笑ったのだ。
「待ち望んでましたよ、女神テディア。」
ーー『光』が落ちた。
たった今、彼が眺める或る世界に『光』が落ちた。それはまるで流星のように、天を流れ世界に落ちる。
突如として天に現れ、どこからやってきたのかその世界の者は知り得ない。
だが彼にはわかるのだ。
ついにきたのだ。世界が待ち望んでいた転換期が。
そして男は嬉しそうに詠う。
『 光の子、千年の時を駆けて現れん
6つの厄災はその光を求め、
契約の彼方より7つ目現れん
重なった魂はばらけ、
光の子は真実を知り、
8つ目の寵愛となりて鍵をもち、
厄災の箱開かれん
生命の母は顕現し、
千里の白銀は血に染まる
情愛は記憶の渦を抜け、
約束の騎士は目覚めん
闇は光を求め、
無償の愛がそれを救うだろう。 』
満足に詠った彼は塔を降りていく。
気乗りしないまま漠然と上がってしまった第一部とは違う。進んで自らその舞台に上がるために、彼は目先の或る世界に舞い降りる。
「特等席で見せておくれ。この物語の続きを、そしてその終幕を。」
『光』が、物語の幕を上げた。




