/// 60.ギルド改変・エルザ伝説
本日2回目です。
◆エルザード帝国・大樹の家・執務室
「どっこいしょっと」
広い部屋のソファーにどかりと座るはイースト地区のギルド長エルザである。
部屋の中には、アンジェ、ラビ、キュル、そして双子ちゃんがアンジェの膝の上に座っている。他に、副ギルド長であるカトリーヌを含む4名が、各々適当な椅子に座ったりして話を聞いていた。
「まずはあのバカはクビは決定事項。これ書面ね。カトリーヌ、あんたがギルド長やんなさい。今までと変わらないわ!むしろゴミムシがいなくなったのでやり易くなったでしょ!」
「はい。畏まりました」
新しいギルド長がエルザの一声で決まっていく。ギルド長を言い渡されたカトリーヌは満面の笑みである。
書面に目を向けると、そこには現帝王、エルリエキ16世であるエルリエキ・バイゾー様の署名がしてあった。なにこれ怖い。そんな思いを感じている中、話は進む。
「英雄連合については今のところ何もできないわ!でも公式で抗議を入れたから、暫くはちょっかい出さないでしょ。ラビ、何かあったら直電してね。私がなんとかするわ!」
「はいはい。分かりましたよ。エルザちゃん」
「な、なによラビ!その呼び方、やめてよ!」
「いえ、もう私のギルド長ではなくなったので・・・」
「私は永遠にあんたのギルド長よ!覚えておきなさい!まったく・・・」
少し照れながら答えるエルザに「ふふふ」と笑うラビをみて、アンジェは「尊い」と小さくつぶやいた。
結局、エルザはその後フードコートに突撃して大量の食糧をお腹に流し込んだ後、帰り際に爆弾発言を残していく。
「アンジェ!その双子ちゃん・・・あんたが育てなさい!パーティでも組んで、一流の冒険者に仕立て上げるのよ!やらないとラビはこっちに戻すから!」
「えっ・・・えっ???」
そしてエルザは帰っていった。ワイバーンの背にのって・・・
◆ ◆ ◆
その夜、部屋でラビと夕食を楽しむアンジェ。しかし頭は双子ちゃんのことが離れない。確かになついてはいる。アンジェ自身も慣れてきている部分はある。でも私が双子ちゃんを育てる?そんなことができるのだろうか・・・
「アンジェちゃん。まずはご飯、たべちゃおっか」
「う、うん・・・」
「大丈夫よ・・・双子ちゃんもすごく懐いてるし・・・アンジェちゃんも、ちゃんと成長しているわ」
そういって優しく撫でてくれるラビの手を温もりを感じ、お姉ちゃんが言うなら大丈夫!と少しだけ勇気が湧いたアンジェであった。
そして話はエルザのことへと移っていく。
「お姉ちゃん。エルザさんってあんなに強かったの?」
「そ、そうね・・・私も初めてみたんだけど、エルザちゃんってハーフエルフで魔力も多いから長寿なのよ・・・以前も言ったけど、私も詳しくは知らないんだけどね。鑑定では年齢は見えないんだけどね、レベルは6なのよ・・・でもあの動きでしょ・・・何らかの偽証魔道具は装備してのは確実なのよね・・・」
結局はあまり情報は得られなかった。あの目にとらえられない動きと、まったく力が入っていない腕で床にめり込んだアホの頭・・・どう考えても私より強い・・・そして陛下の勅命を取り付ける権力・・・あまり首を突っ込まない方が良い事だけは分かった。
「あっ、それとこれ・・・また呪われた・・・」
「あらあら・・・これは、力の指輪ね。またすごい加護が籠ってるのね・・・力が倍化してもおかしくないほどの・・・良かったじゃない!これならどんなドラゴンが出てきても一撃よ」
「うー」
そんなこんなで夜は更ける。明日からは双子ちゃんの育成だ。できるかなではない。やるんだ!そんな思いを胸に、最高級肉布団に縋り付き眠りについた。
◇◆◇ ステータス ◇◆◇
アンジェリカ 14才
レベル9 / 力 S+1 / 体 S / 速 S+3 / 知 S / 魔 S+ / 運 S+2
ジョブ 聖女
パッシブスキル【肉体強化】【危険察知】【絶対☆聖域】
アクティブスキル【隠密】【次元収納】【大回復】【防御態勢】【神速】【聖浄の炎】【範囲回復】
装備 神刀・蛟(女神の祝福) / 星切 / 聖者の衣(女神の祝福) / 生命の首輪(女神の祝福) / 漆黒のローブ(隠) / 罠感知の指輪 / 鑑定リング / 竜撃の指輪 / 力の指輪(女神の約束) / 火竜の杖+1
加護 女神ウィローズの加護
使役 キュル(神聖竜)
装備 竜撃の爪+2 / 氷撃の爪 / 神徒の魔力輪(女神の加護)
◆サウスダンジョン・20階層
アンジェは、ゴブリンなどの亜人系が多いサウスダンジョンに来ていた。
部屋の角にはルビリアとローライトの二人がびくびくと震えながらキュルに守られている。その二人の指には、アンジェとお揃いの指輪がはめられている。
アンジェは普段からソロプレーのため知らなかったのだが、ギルドではパーティ申請をすると共有リングというものを貸してくれる。これを着けると互いの経験値が分散されて供給されるという代物である。なにこれ便利。
以前、ラビと一緒に狩りをした際には、ラビの方が遠慮をしてその話はしなかったようだ。アンジェのレベルであれば、一方的に恩恵を受けるのはラビの方である。
しかし今回はそんなことは考慮しない。双子ちゃんを育て上げるのであればダンジョンで養殖プレーは欠かせない。本当であれば200階層ぐらいに行ってアンジェが無双したらすぐに上がるのでは・・・と思ったのだがそれは絶対ダメとラビに止められた。
急激な能力値アップは負担がかかるとのことでゆっくりと上げていくのが望ましいとか。なので互いの体調を確認しながら行うよう注意を受けていた。もちろんそれは双子ちゃんにも伝えてあるので、気分が悪くなったらすぐに伝えるようにと念を押した。
「それじゃあ、ちょっと行ってくるね」
そう言うとアンジェは奥の方まで行ってしまった。不安で泣きたくなっていた双子ちゃんだが、そこはキュルが可愛く歌い出したのでなんとか気持ちを保っていられたようだ。そして数分立つと、アンジェが戻ってきた。ゴブリンを50体ほど引き連れて・・・
「ひっ!」
「お、お姉ちゃん!お姉ちゃん!わーーん!」
すでに姉のルビリアは気絶している。ローライトは泣き出していた。カオス。とりあえずはとせき止めていたゴブリンを10体ほど倒す。すると二人の「ひっ」という声と共にルビリアは気絶から覚醒。涙目である。ローライトもまた涙目ではあるが、泣き声は止まったようである。
能力値アップによる負荷であった。
「大丈夫?まだいける?」
そう言いながら、通路でゴブリンをせき止める。
「だ、大丈夫です!ひっ!」
「わ、私もー!ひぃぃ!」
ギャーギャーとうるさいゴブリンの鳴き声に反応してしまう双子ちゃん。そしてさらに20体のゴブリンを切り刻む。
「ひっ!」
「ふぃ!」
どうしても急激な能力値アップの慣れない不快感にまた悲鳴をあげる双子ちゃん。そんなことを繰り返し、次第に驚きが少なくなった双子ちゃんは、お昼に食堂に戻ると美味しい食事に笑顔を見せていた。まだ6歳。意外と強者なのでは?と思ってしまう。
午後からは他のみんなと混じってお勉強。また明日ね。と手を振ってくれる双子ちゃんはやっぱり可愛い。そんな感じで少しずつ階層を進めていくこの三人は、2週間もしない内に100階層へと進むのであった。
◆神界
「双子ちゃんもいいよねー!可愛いよねー!でもねー!母性全開のアンジェが一番だよー!」
駄目な大人の見本である変態駄女神ウィローズは今日も全力である。
双子ちゃんの育成に頑張るアンジェの姿を、激しい腰の前後運動で応援しているのだ。
少しだけ気がかりなのが、例の指輪の件で『ライフはゼロよ!』となってしまった『アンジェ専用☆神力バッテリー』である。
毎日寝る前にはせっせと気力を神力に変えて補充するのだが、はたして今日はその気力が残っているのだろうか・・・
それは女神にしか分からないだろう・・・
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