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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・帝都の英雄編

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/// 57.ラビお姉ちゃんとうふふ

夜も更新いたします。


のほほんと狩りに勤しむアンジェは今日も朝早くに目を覚ます。


「ラビお姉ちゃんがいない・・・」


まだ隣に温かみが残るものの、その姿はなかった。よってアンジェは手早く身支度を済ませる。収納から出した漆黒のローブ(隠)を羽織って部屋を出た。ローブのフードは施設内では一応被らないようにしていた。びっくりされても困るしね。

隣の執務室にもいなかったので、あとはどこに行けばいいのかな?そんなことを考えながら、まずは冒険者ギルドの方へ行ってみる。


「あらアンジェ様、今日は朝早いですね」


そう言ったのは真っ赤な髪が美しい、副ギルド長の一人、ハイビスカスだった。


「お、おはようございます。お姉ちゃんがいないので知りませんか?」

「あ、ラビ様ですね。食堂の方で何やら料理長と話をしてたのを先ほど見かけましたよ」

「ありがとう」


有力な目撃情報を手に入れたアンジェはハイビスカスにぺこりと頭を下げ、食堂まで急いだ。フードコートとは別に宿舎側にある食堂へ入ると、すでに子供たちが朝食を食べていた。

口々にアンジェちゃんだお姉ちゃんだと声を掛けられるので、頑張って「おはようございます」と声をかけていく。成長したものである。

そして厨房へとたどり着くとお目当てのラビを発見した。何やら料理長と話をしているので、邪魔をしないように入り口に隠れるように顔をのぞかせて待機していた。


「あ、アンジェちゃん?どうしたの。探しにきてくれたの?」

「うん。朝起きたらいなかったから・・・」


気づいてくれたラビの元に駆け寄って抱き着くアンジェは、顔をあげるとまるで捨てられた子犬のようにラビに甘えた声を出した。


「一言かけてから出ればよかったわね。ごめんねアンジェちゃん」


ぷるぷると横に顔をふり、お姉ちゃんは悪くないと主張する。ラビのやさしい言葉とやさしく撫でるラビの手がアンジェの心を安定させてくれる。


「ちょっと色々相談事があるからまた後でね。ダンジョンに行くなら今日は夕方6時ぐらいには帰ってきてね。ご飯用意しておくから、一緒にたべましょ」

「うん!・・・えへへ」


中々離れられないアンジェであったが、あまり長いしても迷惑になると思ったので、ダンジョンでお土産を狩ってこようとその場を後にした。料理長にも「おじゃましました」と頭を下げると「いってらっしゃいアンジェちゃん」と優しい声も頂いた。

ここの人達はみんな優しい。一人を除いて・・・あのギルド長は会うたびに嫌味を言われるので3日もしない内に全無視するようになっていた。その度に顔を真っ赤にする彼は、周りからも笑われていたが、アンジェはまったく興味がなかったので気にならなかった。


「今日はお姉ちゃんとご飯~」


ダンジョンへ向かうアンジェはご機嫌である。ご飯は毎日ラビと一緒なのだが、気分の問題であろう。キュルもつられて歌っていた。


今日はウェストダンジョン。獣系の多いこのダンジョンで黒毛バッファローは大量にストックしてある。多分一生分ぐらいはある。なのでこのダンジョンを制覇する勢いで潜ろうと思っていた。

まずは91階層から目指すは100階層のボス部屋。イースト地区のダンジョンと違ってここまでボス部屋はなかった。ここが初めてのボス。この階層のキングリザードとかハイウルフとかはかなり弱めだった。心配はないだろう。

そう思って扉に手をかざし、開いた扉から中へと進む。見慣れた魔方陣が浮かぶと、一体の・・・馬?あの世紀末覇者のなにがしが乗っていたであろう愛馬のような黒くてデカイ、馬だった。ちょっと感動。


そしてその馬、『ビッグワイルドホース』はブヒヒンと鳴くと地面に打ち付けた蹄から、衝撃波のようなものを放つのでするりと躱す。そして空中に飛んだアンジェに向かってタテガミからの毛針のようなものが飛んできた。

もちろんそんなものは火竜の杖で横なぎに燃やせば、後は簡単にその馬の首を落としていく。そもそもがこの程度の攻撃では【絶対☆聖域(サンクチュアリ)】を抜けることもない程度の攻撃と思われる。

あっけなく終わったボス戦に、まあこんなものかとその亡骸を収納していく。それよりも、とちょっとだけ出口の方へ緊張した目を向けてみるが、例の呪いの箱は出現しなかったことに安堵した。


「よし!次いこっか」


キュルに向かって声をかけると、二人一緒に出口の壁をすり抜けた。それからも順調に次への階段を見つけては下りていく。

120階層・・・一般の情報があるのはこの階層まで。その先の階層はほとんど情報がない。とりあえず、と他の冒険者がほとんど見かけなくなったその階層を時間いっぱい狩っていく。『火炎ゴリラ』に『牙飛び亀』、『爆発鼠』といった魔物のをドンドン回収していく。

爆発鼠は最終的には木っ端みじんとなってしまうので倒すだけ無駄ではあったのだが、そっとしておくには面倒なほど数がいた。ちょっと怖い。


そして時間は夕刻、そろそろいいかな?と121階層まで進み、すぐ近くのポータルの方へと足を進めるのだが、そのポータル付近には何名かの冒険者が休憩をしていたのかこちらに視線を向けていた。ちょっと怖くなったが、キョドりながらも軽く頭をさげて足早に戻るアンジェだった。


◆大樹の家・スイートルーム


ラビとの憩いの部屋に戻ったアンジェ。珍しいことにラビはまだ戻っていはいなかった。寂しさを胸に汗に濡れた体をシャワーで洗い流す。ワンタッチ着脱の女神装備は便利ではあるが、たまには別の地味な服に身を包みたいアンジェはため息をはいた。


少しの時間、身支度を終えたアンジェはベットの上でゴロゴロと暇を持て余す。そろそろラビが言っていた夕方6時になろうという時間。軽いノックの後にラビが入ってきた。もちろんアンジェは子犬のようにかけていってその暖かな腹筋に身をうずめる。


「ごねんねアンジェちゃん。待ってたのね」

「ううん。今シャワー浴びてスッキリしたところ」


気遣いのできるアンジェである。


「ふふふ、いい匂いね。可愛いわ」というラビの言葉にアンジェも上機嫌である。そしてラビにご飯を食べるというので連れだって外出した。


◆大樹の家・宿舎食堂


「「「「アンジェお姉ちゃん!お誕生日おめでとう!」」」」


子供たちの元気な声と大量の拍手で迎えられたアンジェ。恥ずかしさでラビの後ろでその背の匂いを嗅いで心を安らげる。


「ふふふ。アンジェちゃん、今日は2月14日よ。前に聞いたアンジェちゃんの誕生日。間違ってないわよね?」


一瞬時が止まったような気がした。そうだ。私がバレンタイン生まれというのは依然話したこと。もちろんこの世界にバレンタインデーなんてものはない。その時ラビは確かに「じゃあその時はお祝いしなくちゃね」と言っていた。

そうか、今日は私の誕生日だったのか。すっかり忘れてしまっていた自分。見れば食堂のテーブルには豪華な料理がたくさん並んでいる。こちらも見る子供たちも皆笑顔だ。恥ずかしくもあるが嬉しさの方が勝っていた。


「あ、ありがとうございます!嬉しいです!」


戸惑いながらも発したお礼に、子供たちも大きな歓声があがった。それからのことは正直あまり覚えていない。たっぷりの装飾がされている専用席に座らされると、隣にお姉ちゃんが座っていて、子供たちがこれ食べてとテーブルに次々持ってくる。

それをお姉ちゃんが私の口に運んでくるのでそれをふわふわしか気持ちの中で咀嚼する。美味しさと嬉しさが口の中に広がって、お姉ちゃんの笑顔で脳がとろけていく。


気がつい時には、私はいつもの部屋で、お姉ちゃんに包まれて眠っていた。麗しい寝顔のお姉ちゃん。顔をあげて見つめると、なんだかとってもいけないことをしているようで恥ずかしくなる。そしてまた眠気に任せてその腕の中で眠りについた。


アンジェリカ、異世界で15歳の誕生日を迎えた。

この誕生日でアンジェが心に刻んがもの・・・ラビお姉ちゃんは馬肉はちょっと苦手。覚えた。馬は殲滅、これ絶対!


◆神界


「誕生日、だと・・・」


変態駄女神ウィローズ、珍しく驚愕していた・・・もちろん愛しのアンジェのことである。誕生日は把握していた。しかし毎日の視姦プレーに熱中してすっかり失念してしまったのである。その心のうちはいかほどか。


「こんなことなら、100階層ボスで惜しみなく誕プレを送ればよかった・・・」


後悔先に立たずである。100階層のボスとはいってもアンジェにとっては通りすがりにポイっとであったので、さすがにここで女神装備を送るのはどうであろう。と自重したのだ。自重してしまったのだ。珍しく。

それがこんなことになるなんて・・・気づけばその変態は、いつもの血しぶきではなく、血涙を流しながら歯噛みして己の無力さを嘆いていた。


「一日すぎても・・・思いがあればセーフ・・・なわけはない!」


変態にも変態の仁義がある。遅れた誕プレなんぞ不敬以外の何物でもない。来年こそはかならず!そう心に刻んで時を待つ。そんな決意が握りすぎて血がダバダバと溢れる拳からもうかがえる。


ああ願わくばこの変態に鉄槌を・・・

お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

現在毎日更新でがんばります!

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!


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