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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・イースト地区編

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/// 51.ダンジョンマスター

もう少しで第一章完結です。感想お待ちしております。

昨日は五連戦にかなりの苦戦をしいられたアンジェ。ステータスは知力がSへと上がり遂にオールS以上というラビも聞いたことがないというステータスになっていた。


それでも聖女という非戦闘職が故か、危ない戦いが続いていたので対策を考える必要があった。


本来聖女というジョブであれば、聖都の教会に祭り上げられ人々から高いお布施を頂いて、難病などを治す神様のような扱いで何不自由なく暮らすというのが一般的な、特殊なジョブである。そんなアンジェであるが、もちろんそんな対人スキルを求められる仕事は到底無理な話し。それゆえにソロ冒険者をやっているのだ。


そして考えてみればアンジェは今まで回復ポーションなどは一切使っていないことに今更ながら気が付いた。思い立ったが吉日。終わりが見えてきたこのタイミングでポーションの大量買い占めを行った。体力を回復する回復ポーション、魔力を回復する魔力ポーション、そしてすべてが回復する特攻ポーションをあるだけ買い込んでいく。


他の人の迷惑にならないかとラビに聞いたが「調合スキル持ちの人が『全部売れた』なんで聞いたら、次の日には鼻息荒く倍以上を納品するでしょ」ということだった。他にも全て使ってしまった帰還の札も補充した。


これも昨晩聞いたのだが、帰還の札はたとえボス部屋であっても帰還することができるのだと聞いた。やはりあのエリアは特別なのだと再確認した。


とりあえずは準備OKとダンジョンへ足を運ぶこととなった。



◆イーストダンジョン・50階層 / 魔窟


アンジェは50階層のボス前待機部屋へポータルで転移した。


昨日、このポータルを戻る前、次の階層に進むための階段ではなく、ボス部屋へと続いているであろう大きな扉があったことは横目で確認していた。40階層のボス部屋以来のちゃんとしたボス戦である。


手をかざし開いた扉を抜ける。そして広い部屋に出ると扉はゆっくりと閉じていく。それを合図に薄暗いその部屋の中央に魔方陣が光る。


そして出現するのはまたもドラゴン。鑑定リングの結果は『神竜』、キュルのお仲間になるのかな?一瞬そう思ったが、横を見るとキュルも強い目を向けやる気満々であった。


それを肯定するように先手はキュルの真空刃であった。適度に竜気を籠められたその攻撃は、神竜の片翼で払われる。その動作を見てアンジェは隠密と神速で背後へ回り込み首への一撃を繰り出すが、それは寸前で弾かれる。


神竜は首をひねってこちらに赤い目を向け覗いていた。


認識されると障壁を張られるタイプと思い、なんとか隙をつく方向性で考える。神竜から視線を外さずバックステップで距離を取る。こちらに気を取られた神竜の側面にキュルの真空刃が当たると、嫌そうに片翼で払うような動作をした後、少しだけ空に飛ぶ。


このナイスなタイミングで行われるキュルの援護射撃は、もう慣れ親しんだコンビネーションである。アンジェもすぐに反応して逆の側面近くに移動して、少しだけ魔力をこめて(みずち)を叩きつけてみた。そしてその思惑は成功し、大回復一回程度の魔力を吸い込んで、刀身が鞭のようにわずかに伸びた攻撃となり、神竜の腰のあたりに傷を付ける。


あの全力攻撃とは違う少しだけ魔力が込められた攻撃。とっさに行ってみたのだが中々の攻撃となった。


すぐにこちらに向き直った神竜は口を開けて広範囲の光のブレスを飛ばす。それを神速で抜け出すが、その強烈な熱に肌がじりじりと焼き、そして痛みを伴った。大回復を駆けながら体勢を整えるが、そこに鋭い鉤爪を向けて高速で飛来するが、それを転がって避けるアンジェ。


アンジェの横を通りすぎていく神竜に、バチバチと紫の竜気を伴ったキュルの攻撃が追いかけ、神竜の背中に直撃した。


「ギャオン」と悲鳴を上げ、怒りに満ちた表情でキュルにロックオンした神竜であったが、そこにアンジェの大きな魔力を捧げた(みずち)の攻撃が叩き込まれる。かろうじて片翼を閉じ結界のようなものが張られたため、その攻撃は反らされる。


それでも守った方の翼には焼けただれたような跡がついていた。魔力ポーションを飲み干すとじわじわと魔力が回復してくるのがなんとなく分かった。これならすぐにでも全力で動くことも可能だと感じる程度には回復していた。


キュルには回復ポーションを与えると元気な鳴き声をあげ天井高くに飛び上がる。そして上空から真空刃で連続攻撃を飛ばしていく。一部は障壁にはじかれるがそれなりに被弾しているようで、バタバタと両翼を動かしてはキュルを睨みつけていた。


そのまま背後まで移動するアンジェは、(みずち)に魔力をこめながら攻撃を繰り出した。明らかに攻撃力の上がったその一撃一撃が神竜の体に傷を付けてゆく。アンジェの方を気にしながらしっぽや小規模なブレスでけん制するが、キュルからの真空刃も気になってしまうようだった。


次第にその攻撃が大人しくなってきた神竜に、次々とダメージを蓄積していくアンジェ。もうここまで来たら安心とばかりにその首へ深く突き立てるチャンスをうかがっていた。そしてそれが油断になったのかは分からないが、次の瞬間アンジェはその部屋の壁に全身を強く打ち付けていた。


追い詰められた神竜。その奥の手とも言える全方向への強烈な衝撃波のような攻撃。危険察知が大きく反応するが、身構える暇すらなかったその一撃に、アンジェは壁に激突した衝撃もあり吐血していた。


大回復を使うが中々ふらつきが治らない。特攻ポーションを飲み干すと少しだけ楽になってきた。それでも動かない足に力を入れながら、キュルの方も確認する。


キュルの方も同じように吹き飛ばされたのか、奥の方でぐったりとしているようだった。気づけば目の前には傷つきながらもこちらに向かってきた神竜が、大きく口を開け息を吸い込んでいた。


動けそうにないアンジェは防御態勢(ガード)を発動させながら、その攻撃を受け止める決意をした。


そして攻撃を繰り出す瞬間の神竜を、側面から大きな何かが激突した。


一瞬何が起きたのか分からなかったが、よく見るとそれはキュルであった。正確に言うと、50cmほどだった体が倍ぐらいに大きくなったキュルが、神竜につかみかかり抑え込んでいる姿を眺めていた。


まだ力を残している神竜はバタバタとその拘束を抜け出すように両翼でキュルを叩く。そしてキュルの肩口を噛みつきという神竜の攻撃に、キュルの「ギッ」という悲鳴が聞こえた。


そして一旦距離を取って離れたキュルを睨みつけるその神竜は「(ほう)けてる場合じゃない!」と意識を取り戻したアンジェの最大出力の(みずち)の一撃により、その首をズバンと切り落とされる結末となった。


ハアハアと息をするアンジェの元にふよふよと飛んで戻ってくるキュル。そして神竜の体を収納にしまうとその大きくなったキュルを抱きしめるアンジェ。


改めて確認すると、その顔は大きくなった体に似合う精悍さが出てきている。「おっきく、強くなったんだね」そう言って頭を撫でると「キュルキュルー」と嬉しそうに鳴くのでやっぱりキュルはキュルだね。と思ったアンジェだが、この大きさはちょっと不便と思ってしまう。


「おっきすぎると困る、かな?」そう言って苦笑いすると小首を傾げたキュルが、目をぎゅっと(つぶ)り「ん~~~」と唸るとしゅっるしゅると音を立てるようにその体は元の大きさまで戻ってしまった。


またも驚きで無言になってしまうアンジェの顔に抱き着くキュルを、引きはがしながら胸に抱き、暫くの間その部屋でキュルを撫でまわして心の回復を図るアンジェだった。


そして目下の問題は、その出口と思われる扉の前に君臨する豪華な宝箱である。当然開ける。開けるには開けるんだけど・・・と煮え切らない考えに蓋をして、恐る恐る宝箱を指でチョンとついてみた。


神々しい光を放ちながらゆっくりと開いていく宝箱。中にはネックレスが一つ入っていた。


「うん。わかってた」そうアンジェが呟いたのは、そのネックレスがアンジェを襲い勝手に首元に装着された後だった。


「はあ・・・キュル、帰ろうか・・・」


ため息とともに吐き出された言葉にキュルも小さく鳴いて返事をする。二人はその出口をすり抜ける。そこには、いつものボス部屋後の小さな待機室ではなく、それなりの広さを持つ部屋の一室であった。部屋の中には中央の台座に丸い大きな球が置いてある以外何もなかった。


ポータルすらない部屋。それはもうその台座の上の玉を持ち上げるしかないのか・・・仕方なくその球を持ち上げる。それは全体的に透けた黄色で中には紫色の何かがバチバチと動いている。


その玉を持ち上げた数秒後、床には魔方陣が光り輝き、二人の目の前は歪んでいく。まるでポータルを使った時のように。その後アンジェとキュルは案の定、入口付近のポータルへと転移させられたと認識した。


胸に抱えた玉を見て、入り口にいる受付担当の係員が声をあげる。


「それは!り、竜玉!竜玉出ました!踏破者!踏破者出ましたー!!!」

「えっ?ほんとだ!アンジェリカ様だ!」

「すげー!さすが聖女様!」


大声で叫ぶその係員と他の係員や周りの冒険者も騒ぎ立てることにびくっとする。これが竜玉というアイテムで踏破者の証なのだと気が付いた。


「私は急ぎ報告に出る!」と一人の係員が街へ向かって走っていった。


アンジェは恥ずかしさに耐えきれず全速力でキュルと共に帰還した。



◆イーストギルド1階


ちり~~ん♪


ギルドに戻ったアンジェはいつものベルを鳴らす。カウンターに可愛いメモとギルドカードを置いて柱の横に待機した。


『50階層で竜玉っていうの出た。

 なんか騒ぎになったので部屋にいるね。


      後はよろしくね。ラビお姉ちゃん』


カウンターにいるラビは、その手紙を読むあまりの衝撃に思考が止まってしまうが、なんとか柱の影にいるアンジェを見つけ、ぎこちない笑顔を向けた。アンジェも顔を赤くしながら苦笑いをすると、そのまま二階へと消えていった。


ラビが部屋にやってくるのは、ギルド長エルザに報告をしてからであり、10分程度の時間を有した。



◇◆◇ ステータス ◇◆◇

アンジェリカ 14才

レベル9 / 力 S+ / 体 S / 速 S+3 / 知 S / 魔 S / 運 S+2

ジョブ 聖女

パッシブスキル 肉体強化 危険察知 絶対☆聖域(サンクチュアリ)

アクティブスキル 隠密 次元収納 大回復 防御態勢(ガード) 神速 聖浄の炎(ホーリーフレイム)

装備 神刀・(みずち)(女神の祝福) / 星切(ほしきり) / 聖者の衣(女神の祝福) / 生命の首輪(女神の祝福) / 罠感知の指輪 / 鑑定リング / 竜撃の指輪 / 火竜の杖

加護 女神ウィローズの加護

使役 キュル(神聖竜)

装備 竜撃の爪(ドラゴニッククロー)+2 / 神徒の魔力輪(フォロワーリング)(女神の加護)



◆神界


「終わったのね・・・アンジェの戦いが一つ終わりを告げる・・・感動的だわ・・・」


そう言いながら、ベットから体を起こすと、指先に溜まってきた神力をほとばしらせる。キュルが大きくなった時にはさすがの変態も驚いていたが、今回もなにやら仕込んでいる様子であった。


「ふふふ・・・似合うわ。私はアンジェに首ったけ!よし!そろそろ仕事するかな!忙しくなりそうよ!」


何やらやる気を見せた変態駄女神ウィローズは「ふふふん♪」と鼻歌を歌いながら腰をふりふりして踊り出すと、その自室の空間出口前に立つと「あ¨あ¨あ¨っん¨ん¨うん!」とおっさん臭漂う咳ばらいをしながら喉の調子と身だしなみを整える。


そして従者たちに素敵なスマイルを振りまいて、その信仰心を高める作業に入るのであった。


そして平和は守られた。


お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

現在毎日更新でがんばります!

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!


そんな方はブクマや下の☆を押していただけるうれしいです!

もちろんコメントやレビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。


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