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【完結】内気な聖女アンジェリカは目立ちたくない  作者: 安ころもっち
エルザード帝国・イースト地区編
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27/74

/// 27.キュルと行く!深層体験

◆イーストダンジョン・31階層


アンジェは朝からキュルと一緒に30階層から潜っていた。


ちなみに、今日もテシテシとした朝を迎えたのだが、その際にキュルを両手で抱き上げ「めっ!」と怒ってみたのだが「キュル?」と小首を傾げる可愛い返答が返ってきた。分かったのか分からないのか微妙な返事ではあったが、うちの()、天才だし!分かって貰えただろうとひとまずは良しとした。ラビはすでに起きて隣にいなかった。


何度か遭遇したビックバイパーの群れは、キュルが居てくれるからと少しだけ心が強くなって耐えられた。そしてキュルが無双して倒していたので出番もまたなかった。


逆に古代スライムについては、キュルの攻撃は中々核をとらえることができずに苦戦するようで、そちらはアンジェがあっさりと無双していた。


いくらスライムの群れが多くなろうとも、アンジェがねっとりとしたスライム粘液に全身をまみれてしまうというお宝シーンはやってこないのである。


また、少し不安があった森林竜との戦いについても、出会い早々にあっさりと攻撃を仕掛けたキュルの真空の刃は通用するようで、共闘するとさらにあっさり倒すことができていた。狩り終わった後、キュルに「お仲間さんだったりしない?大丈夫?」と聞いてみたが「キュルルー!」と誇らしげに鳴くのできっと大丈夫なのだろう。



◆イーストダンジョン・40階層


その勢いのままに階層は進み、遂には40階層まで進んでいく。二人なので本当に進みが早い。


きっとこの二人であれば、もっと先へ進んでも大丈夫な気がする。自慢の(キュル)である。


この階層には大きな岩場エリアがあったので、そこに大量沸きしている森林竜を狩りつくす勢いで狩っていた。途中、岩場に住むのに森林竜って・・・と思ったが、隣接して森があり、そちらからもぞろぞろと森林樹が出てくるのが見えたため、こうやって行ったり来たりして生活をしているんだろうなと予想した。


森林竜の肉はうまいし金になる!とにかくお肉!とそう思って夢中で狩りまくっていたら、いつの間にかお昼を過ぎていた。


キュルにストップをかけて、安全な場所を確保しつつ少し遅めの昼食を収納から出して仲良く食べていた。


「ふぅ」


今日はギルドの食堂のサンドイッチではあるが、一番高いオーク肉のスペシャルサンドセットという2000エルザの肉とチーズと野菜がたっぷりの物をチョイスしていた。なんせ肉をいっぱいゲットしたからね。懐は温かい。大樹の家への寄付も、お肉は大歓迎というしなんか大丈夫。そんなことを考えていたアンジェ。


しかしそもそもがアンジェの口座にはすでに数百万エルザという貯蓄ができている。今後も増えるだろう。数千エルザなんてはした金ではあるのだが、そんなのはアンジェには関係のない事であった。なんにせよ美味しいは正義である。


そしてふと思いつき、試しに森林竜を1匹、収納から出して星切(ほしきり)でザシュザシュと解体してみる。


細切れにしたお肉をキュルに与えてみると、食べることは食べるのだが、あまり美味しそうには食べていなかった。ラビに聞いたのだが、以前のビッグバイパーもそうだが、加工肉にするさいは、やはり技術的なものもあるようで、素人が切り刻んたお肉はおいしくないという。


「キュルは美味しいのいっぱい食べてるからね・・・私が雑に切ったのなんか食べないか。もう美食家だね。さすがキュル」


なんてことをつぶやきながらキュルを撫で、疲れを癒していた。今日は森林竜のお肉をちゃんと加工してもらってみんなで食べよう。そう思いながらしばしの休憩を楽しんだ。それからこの階層のままひたすら狩っていたのだが、時間はすでに夕刻を過ぎていた。


「よし!」


40階層の大きく豪華な扉の前でアンジェは気合を入れていた。もう十分であろう。キュルと二人ならきっと大丈夫。そのボス部屋であろう扉に手を当てると、いつものようにゆっくりとそれは開いていった。


前に歩み出て扉が閉まるといつもの魔方陣が光る。


目の前にはゴツゴツとした大きな竜。多分これが洞窟竜と呼ばれる魔物であろう。横には森林竜が3匹。でもちょっと大きい?多分今まで出てきたものとは違う可能性が高いことが伺えた。


こちらが様子を見ていたからか、すぐには戦闘は始まらず互いを観察しているようだった。


そして初撃を加えたのは好奇心旺盛な我が()だった。


「きゅいーー!」と勇ましい鳴き声を上げながら森林竜に真空の刃を飛ばしながら室内を高速で飛び回っていた。「あれ?なんか速度も攻撃力を上がってない?」そんな疑問を感じるほど、先ほどまでの狩りとは違うキュルに驚いていた。


これはキュルに全部持っていかれてしまうのでは?とアンジェも慌てて参戦する。


キュルと呼吸を合わせて森林竜や、たまに洞窟竜にもけん制の攻撃を加えては離脱を繰り返していた。


森林竜たちも防戦一方ではなく、太い弦を何本も巧みに操り、まるでドリルのように鋭い弦先をひねるように回転させながらこちらを攻撃していく。なんとかかわすことはできるようでその弦をはじき返し、星切(ほしきり)の斬撃で傷を増やしていく。


そしてキュルの強烈な真空刃で1匹の森林竜は絶命した。


勝ち誇るようなキュルのドヤ顔の中、再び魔方陣が輝くと、新たな森林竜が補充されるのであった。


アンジェはやっぱりねーな表情で苦笑いしていたが、それを予想していなかったキュルは「くわー!」と初めて聞く鳴き声を上げバタバタしていた。まるで「ずるいー!」と叫びながら地団駄を踏んでいるように見えた。


「やっぱり真ん中のから倒しちゃおう!」


キュルにそう声をかけると、一声鳴いたキュルが高速で真ん中にいる洞窟竜に突っ込み、至近距離からの真空刃を叩きつけていた。


しかしその体は何かに守られ、その体に届く前にその刃はかき消されていた。そして次の瞬間には、お返しとばかりにキュルめがけていくつかのこぶし大の石がその体から発射され、それをかろうじて躱すキュルだったが、1つだけドスっと当たってしまい小さな体が飛ばされてしまった。


「キュル!」と叫びながらその間に入り、気持ちを落ち着かせながらなるべく冷静に追加の攻撃を叩き落していく。さらには森林竜からも次々と弦での攻撃が繰り返されていた。


アンジェはキュルが飛ばされた方へバックステップで警戒しながら近づき、そばによると中回復をかけ「大丈夫?」と声をかけた。


キュルは頭を縦に振って「きゅるる!」と大丈夫なことをアピールすると再び羽ばたき戦闘体勢になった。


「気を付けてね」と声をかけながら息を整えた後、神速で洞窟竜の横まで移動すると、横に一回転しながら全力で星切(ほしきり)を叩きつけた。先ほどのは魔法障壁のようなものだろうか、今度は何も抵抗がなくその体躯に攻撃が届く。


首筋へと繰り出されたその攻撃は、一瞬ガキリと固い感触があったが、そのままさらに深くえぐっていた。


そのまま一旦退避する。洞窟竜の首の右側には血がダクダクと流れる大きな傷ができていた。さすがの星切(ほしきり)。良い切れ味である。


追随する攻撃についてはキュルが真空刃で叩き返していた。


そして次の瞬間にはまた岩と弦の攻撃が繰り返されたが、今度はキュルが範囲の広い真空の刃を飛ばし、その攻撃を退けていた。その攻撃によりひるんだ洞窟竜に再び近づき、今度は左側の首を削る。


「ぐぐぅ!」と唸り声をあげる洞窟竜はそのまま頭を地面につけた。


次の瞬間には光と共に森林竜は残さず消えていく。


無事討伐完了?とは思ったが、まだ頭を地面に下ろしている洞窟竜はまだ生きている。だがとてもこちらを攻撃するような余裕はなさそうだ。そんな洞窟竜と目が合うと、「グゥ」と一鳴きして目を閉じた。


これは・・・討伐してもいいのかな?と思ったが無抵抗の状態では魔物と言えども抵抗があった。そのためのしばしの沈黙。


とは言え、このままでは次の階層に進むことはできない。帰還の札を使ったとしてもまたここで戦うことになるだろう。それならば・・・勇気をだして再度首筋に星切(ほしきり)を当てると「ぐるる」とさらに鳴くので、なんだかなーとやるせなさを感じながら手に力をこめた。


そして首深くに突き立てられた洞窟竜は、無事収納に吸い込まれた。


しばしキュルと勝利の喜びをかみしめたアンジェは、またも出現していた出口の扉の前に鎮座している豪華な宝箱を見てため息をつくのであった。



「開けない選択肢はないよね・・・」


そう呟きながらようやく決意を固めて近づくと、いつものようにふわりと開き、その宝箱の中には何やら青い宝石がついた細いブレスレットのような装備品に見えた。


次の瞬間にはおなじみの勝手に動きだしてアンジェに襲い掛かるという展開に、アンジェが目をつぶって耐える。そして次の瞬間には・・・「きゅ?きゅきゅぅー!」とキュルの絶叫が響いていた。


驚いて後ろを振り返るアンジェは、キュルのしっぽにそのブレスレットがぐるりと巻き付くように装着されており、それをフリフリ動かすしっぽで振り払おうと戸惑っていた我が()の姿を目撃するのであった。


「ああ・・・そっち?」


しばらく心を落ち着けたあと、何とも言えない違和感を感じて元気なく鳴くキュルと一緒に、ボス部屋の出口の扉をすり抜け、待機室から地上に戻り、ギルドのベルを鳴らす二人であった。



ラビの鑑定結果は神徒の魔力輪(フォロワーリング)(女神の加護)。守りの力が感じられるため、悪いものではないだろうとのことだったが、やはり着脱はキュルの意思によるもので可能だが、長時間外していることはできないようだった。


とはいえ、伝説級、もしくは神話級のアーティフェクトが連発する現状に、異世界チートなんだなーと感じるアンジェだった。


あと、3人で囲んだ森林竜肉のすき焼きは、ことのほかおいしかった。



◇◆◇ ステータス ◇◆◇

アンジェリカ 14才

レベル5 / 力 S / 体 S / 速 S / 知 B / 魔 D / 運 S

ジョブ 聖女

パッシブスキル 肉体強化 危険察知 絶対聖域(サンクチュアリ)

アクティブスキル 隠密 次元収納 中回復 防御態勢(ガード) 神速

装備 星切(ほしきり) / 聖者の衣(女神の祝福) / 罠感知の指輪

加護 女神ウィローズの加護

使役 キュル(神竜)

装備 竜撃の爪(ドラゴニッククロー) / 神徒の魔力輪(フォロワーリング)(女神の加護)



◆神界


「ぐふっ・・・ぐふふふっ!」


今日も変態な駄女神は涎と鼻血を滴らせて下界を覗いていた。


「ついに・・・ついに貯めてた神力を放出する日が来たわ!」


腰の動きがマックスフリフリの女神は、日ごろの業務で神力を節約していた分をすべて指先に籠める。


その指先からまばゆい光を放ち、下界へと消えていった。


その後は、普通に涎をたらしながらアフターファイブを満喫する女神。そして二人と一匹が眠りに入る。


「そろそろよさそうね!」


少しだけ仮眠を取った女神が何やらブツブツ言いながら腰をフリフリ動かすと・・・そのまま自分の空間に設置されている真っ白なベッドにうずくまるように突っ伏した。



◆イーストギルド二階・ラビの部屋


『やってまいりましたーーー!ぐふふふふふふ!』


そう声なき念波を発しているのは、本日ゲットした神徒の魔力輪(フォロワーリング)(女神の加護)から伸びた何かである。


細長いスライムのようにその体?を伸ばしその物体から分離したそれは、寝ているアンジェの体にしゅるしゅると巻き付いていくのであった。


『ほうっ!はぅぁ!癒えっス!ナイスグーー!おうほほほほ!!!』


アンジェ達には聞こえない声なき念波で大興奮の何か。


お分かりだろうか。貯めに貯めた神力をこめてキュルに贈った神徒の魔力輪(フォロワーリング)(女神の加護)には、分体とも言える女神の意思が宿っていた。


そしてそれは動き出し、欲望のままにアンジェをくまなく堪能するのであった。


夜はまだ続く。そして平和が保たれる。


ちなみに翌朝、神界の白き空間のベッドには大きく真っ赤な海と、所々に黄色い島が描かれていたのはまた別のお話。



お読みいただきありがとうございます。安ころもっちです。

現在毎日更新でがんばります!

期待してる! 早く続きを! 読んでやってもいいよ!


そんな方はブクマや下の☆を押していただけるうれしいです!

もちろんコメントやレビューなどもいただけると飛び上がって喜びます。


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