竜族
第五話:竜族
ルウナが作ったリンゴを大量に実らせる樹と、水の枯渇問題を解決して、農作物、家畜の繁殖が安定してきた。そして今俺は!NEWマイホームで悠々自適に暮らしている!きれいなトイレに広い浴槽!リビングはお洒落に装飾され、キッチンは冷蔵庫、洗面台がついていて、ベッドは羽毛でふかふか!一気に生活水準が上がった俺の気分もとても上がっている。もともとインドアな俺にとってずっとここにいたいとすら思える。
ちょうど今は綺麗な洗面台で新しい自分の顔面を眺めている。しばらくそうしているとルウナが起きてきた。二階建てで、上をベッドルームとクローゼットにして、服も気を利かせて大量にあるはずなんだが、何というか今日はやけに薄着だ。前の家では白いワンピースを着ていたのに。それでも十分薄着か。
「おはよう」
「、、、プイッ」
朝から機嫌が悪いのは珍しいな。いつもなら抱き着いてくるはずなんだけど。
「どうかしたか?もしかして俺寝てる間にどこか変な所でも触ったか!?そうだったらすまん!!」
そう言って全力で頭を床にこすりつけた。
「違う。三日前にここに来てからずっと構ってくれてなかったから。構ってくれるようにこんな格好までしてずっとすりすりしてたのに。全然かまってくれなかったから。」
目を凝らすと透けて見えてしまいそうな服装で頬を膨らませている。
頭を上げると下に何も履いてないのが分かった。誘惑に抜け目がないっ!なんて恐ろしい子っ!
「分かった!分かったからまず服を着よう!今度埋め合わせする!」
「今度?」
「いや!ぜひ今日!今日行きましょう!」
「絶対だよ?」
「はい!」
返事をすると二階に着替えをしにいった。
「グツグツグツ」
スープを作っていることをすっかり忘れてた。
「そろそろどうかな?」
昨日神樹を作ってNEWマイホームに飛んでくると家の前にこの辺のご近所さんたちがいろんな食べ物をくれた。それを夕飯にして、今日はそのあまりものと、米でリゾットを作ろうと考えている。なぜ異世界はここまで俺の元居た世界と食べ物が似ていたり単位が同じだったりするんだろうか。まあそっちの方がいろいろとやりやすいから助かっているが。
朝食を作り終えたタイミングでルウナがいつものワンピースとは違うゆったりとした部屋着を着て降りてきた。
「お、新しい服じゃん、部屋着っぽいけどめっちゃ似合ってる。」
正直に言ってみた。
「!、、、ありがとう。」
ルウナが笑顔になった。可愛いな。
ー朝食後ー
朝食を食べ終えて、俺もクローゼットから服を取り出して着替えた。自分の趣味に合ってるものはないが、品質がよさげな服を着て、部屋着から着替えているルウナをリビングで待っていた。
「にしても、ルウナと初めて会った時からもう六年経つなあ。時間の流れは速いもんだ。」
今までずっと一人だったのかルウナは俺への執着がすごい。今俺が生きていられるのはルウナのおかげだ。今日は街の探検も兼ねたショッピングをしよう。ルウナをないがしろにしていた分今日はたくさん楽しんでもらおう。
準備が早めに終わった終わった俺はルウナの準備が終わる前に、王城に向かった。
魔力球で飛んでいこうと思っているが、ルウナの保護魔法がないから風圧で恐らく死ぬ。生き返るけど。
初めての試みだが、風魔法で風圧をうまいこと躱して飛んでみよう。
風属性に変換した魔力球を足につけて、極限まで集中して飛翔する。
「やば、、」
思った以上に圧がすごい。風魔法でよけているからかろうじて体の原形はとどめている。
「これはもうちょい速度を落とした方がよさそうだな」
考えているうちに王城のリークのいる王室の窓の前についた。小窓をコンコンと二回ノックした。すると閉まっていたカーテンが開き、兵士がそこに唖然としながら立っていた。風魔法で窓越しに開けてくれというと。案外すんなり入れてくれた。もう俺についてリークが公表したんだろう。
「リークは居るか?」
「王は今就寝中でございます。」
「そうか、案内してくれないか?」
兵士が歩き出し、リークの寝室まで案内してくれた。
二回ノックをして。
「救世主カルマ様がお見えになっております!」
救世主て、すげえ痛いんだけど。
「入れ」
返事が聞こえると兵士が無駄にでかい扉を開けた。
「おはようリーク。今朝はよく眠れたかい?」
「お陰様で。」
かなりお疲れのようだ。昨日おいてったからか?
「早速本題なんだが、この国の通貨を数年分ぐらいくれないか?」
「分かった。おい、そこのメイド、この者に数年分の金を用意してやってくれ。」
「承知いたしました」
そう言って侍女が寝室から出ていった
「一番最初からそんな金を使って何をするつもりだ?」
「買い物だ。」
「そうか、彼女にプレゼントか。」
「間違ってはないな。」
そう言って寝室の窓から城の門前に降りた。すでに兵士が大きな袋数十個を荷台に乗せて待機していた。
「これがその金か?」
「はっ!荷台に積んであるものは全て金貨になります。気を付けてお持ちください。それとも、ほかの兵士たちを派遣して家まで運ぶということもできますが。いかがなりますか?」
「大丈夫だ。」
風魔法で袋を包んで持ち上げた。
「これが救世主様のお力の一端、、、」
「それじゃあ俺は帰るから。」
魔力球を足につけて飛んだ。若干速度を落として飛ぶと風魔法が間に合うな。
家のドアを開けて玄関に入ると綺麗にメイクをして、とてもお洒落な服装をして待っているルウナがいた。
「ルウナ?そのメイクって自分でやったのか?」
「カルマがお城に行ってるのを外で待ってたら近所のおばさんがメイクしてくれた。」
ナイス!近所のおばさん!
「どう?」
「すごく、、、綺麗、、です。」
俺はこんな綺麗な子と相思相愛なのか、、、イイね!!超イイね!!
袋にパンパンに入っている金貨を数十枚取り出して木魔法で作った財布に入れた。
「じゃあ行くか。」
「うん。」
道に沿ってしばらく歩いていると屋台を出してる大通りについた。入っていくと道行く人たちの視線が一気に集まった。救世主様だ!とか素晴らしいお顔立ちだわ。とか隣にいる方は神樹を作った方じゃないか!とか美しいわあ。とかそういうそういう褒め言葉が飛び交っている。変な虫が湧いたら殺さない程度に痛めつけておこう。
「あれ食べたい。」
ルウナが指さす方向にあった屋台は長蛇の列を作っているハンバーガーの店だった。見たことのない字だが、なぜか読める。
「げ、めっちゃ並んでんじゃん。」
ルウナがあからさまに落ち込んだ。
「で、でも俺も食べてみたいなあ。あのハンバーガー。」
顔色をうかがいながら言ってみる。急に明るくなった。最初のころと比べて表情が豊かになったもんだ。
「並ぶかあ。」
屋台に近づいていくと並んでる人たちが救世主様だ!と騒いでいる。
「ここに並びたいんですけど入り組んでてどこが最後尾かわからなくて、よければ教えてくれませんか?」
接客をしていた屋台の人に聞いてみると最前列にいたおじさんがしゃべりだした。
「並ぶだなんてとんでもない!どうぞお先に注文してくだされ!」
おじさんが前を譲ってくれた。これはいいおじさんだ。
「じゃあお言葉に甘えて。」
「このチーズバーガーを一つと、、ん?」
メニュー表の右上にでかでかと『神樹バーガー』と書いてあった。
「これは何ですか?」
「救世主様が作ってくれた神樹の果実を使ったハンバーガーだよ!うちの名物で今じゃそれを出してから商売繁盛!まさに神の恵みだな!」
少し気になる。
「そうですか、じゃあその神樹バーガーに変えます。ルウナはどれがいい?」
「フィッシュバーガー。」
「あいよ!ちょっと待っとけ!」
手際の良さが見て取れる。これは期待できそう。
「待たせたな!これ、フィッシュバーガーと神樹バーガーだ銅貨四枚いただくぞっ」
「すみません、今手持ちが金貨しかないんです。」
「金貨!!!??」
「はい、もしかして足りませんか?」
「いや、金貨って言ったら一枚で豪邸が建てられる代物じゃねえか、、、」
「え?」
リークの野郎、数年分って言ったのを数千年分って勘違いしたのか?
「お釣りは俺の今ある金で銅貨手を打ってくれ!」
「あ、はい。いいですよ。」
屋台の外に出てきて銅貨二千枚と銀貨三枚を渡してくれた。重たい。
「て、ええええええええええええええええ。もしかして、救世主様かい!!?」
「あ、はい。」
驚かれすぎて語彙が尽きた。
「今まで気づいていませんでした。無礼をお許しください!」
「あ、はい。」
「なんて心が広いんだ!みんな!この救世主様は聖人様だ!」
「あ、はい。えっと、それじゃあ。」
「ぜひまた来てください!」
屋台のおじさんが深々と頭を下げて見送ってくれた。
「金貨一枚でそこまでの価値が、、、」
「カルマ、お金持ち?」
「今のところは。」
その辺のベンチに座ると人が集まってきて食べにくいから、人目に付きずらい誰かの家の屋根でハンバーガーを食べている。
「あーんっ」
ルウナが俺の食べたところにかじりついてきた。
「あ、食べたかったのか、ごめん気づいてなかった。」
「ん」
ルウナが自分のハンバーガーをこっちに向けてきた。食べろってことか。
「あーん」
森で暮らしてる時の魚と比べて油ものっていて食べ応えのある魚のフライは自分の神樹バーガーより圧倒的にうまく感じた。ルウナで補正がかかってるのか?
ハンバーガーを食べ終えると、この国の外に張り巡らせていた風に強力な魔力が引っ掛かった。
「ルウナ、なんかいるな。」
「うん。結構な数」
想定だと数百から数千ってところ。人間ではないことは明らかだ。魔力が強い。
「街に被害が出ないよう結界魔法を張っておこう」
ルウナが屋根から降りて地面に刻印をした。そこに設置型の魔力球を吸収させる。すさまじい強度の結界が生成された。
リークが風魔法でゆっくりと飛んできた。
「町中にこんな簡単に国王が出てきちゃっていいのか?」
「それよりだ、なんだこの結界は?」
「国の外に強い魔力を持った何かがいる。被害が出ないように張った」
「強い魔力の反応?、、、!!」
「心当たりがあるのか?」
「竜族たちだろう。隣の大陸の種族だ。迎撃できるか?」
「殺していいのか?」
「いや、できるなら殺さないでくれ。話を聞いておきたい。私は住民たちを城内に避難させる」
「いや、必要ない。俺とルウナを人間の尺度ではかろうとするな。」
「そうか、君たちのことだ信用しよう。結界のことだけ説明しておく。」
「それじゃ。」
魔力球で魔力の反応があるところに出た。
「確かに竜族だな。ん?」
「我々も微力ながら加勢いたしますぞ!」
数百人の兵士たちが列をなしている。
「いらない。」
風魔法で声を拡声させてルウナが兵士たちに言う。
「ちょっと鍛えた程度の人間には何もできない。死ぬだけ。」
今まで努力してきたであろう兵士たちのすべてをルウナが否定し、兵士たちは憤りを隠せていなかった。
「すまんな、今回は俺とルウナに譲れ、もう数年もしたら俺たちはここを出ていく。その時までに今より強くなってこの国を守れ。」
自分でも痛々しいと感じているが、ちょっと言ってみたかったりもする。
兵士たちが引いていくのを確認すると、遠くてよくわからなかった竜族の姿が見えるようになった。
そして数千体の竜たち、先頭には竜と同じような角を生やした少女と少年がいる。この少年と少女は後ろの竜たちとは魔力の桁が違う。数千体の竜たちとその少年と少女が俺とルウナの前で止まった。
「誰?」
少女が聞いてきた。
「誰か知りたいならまず自分から名乗るってのが筋なんじゃないか?」
そう言いながら喉に魔力を込めて空気を思いっきり振動させた。
後ろの竜たちはこれに怯んだのか後ずさった。
「すごいな、これで大概のやつは怯むぞ?」
少女と少年は微動だにしていない。
「、、私の名前はケツァルコアトル。竜人」
「僕の名前は、クリス。同じく竜人」
「俺の名前はカルマ、」
「私はルウナ。」
「これで自己紹介は終わりでいいか?お前たちがどうしようと勝手だが、こちらに危害を加えようというのなら容赦はしない。」
「攻撃するつもりはない。攻撃すれば私たちは確実に負ける。」
力量を理解してるってことか?
「何でそう思う?」
「あなたは魔力が強すぎて竜眼でも魔力を図れない。」
竜眼?魔力を図るものか?
「敵意がないかどうかはまだ信じられない。そこの竜とお前たちは拘束されてもらう。」
「構わない」
そうして腕を差し出してきた少女と少年の両腕を土魔法で固めた。
「無理やり外そうとすれば手がなくなる。無駄な抵抗はするな。」
「分かった」
少女が目配せすると竜たちがおとなしくなり、拘束させてもらった。竜たちはさすがにでかいし多いので国に入れると街が壊れてしまうのでここで待機させておこう。
少女と少年だけを王国に連れて入り、門をくぐると住民たちが称賛の声を浴びせてきた。住民が道を開けだしたと思うと、開いた道からリークが出てきた。
「その少年と少女は誰だ?」
「竜たちを統率していた子たちだ。危害を加えるつもりはないらしいが、一応拘束させてもらった。他の竜たちは外に拘束して待機させてる。」
「城に入って話を聞こう。」
ー王城ー
「君たちはどういう経緯でここに来た?」
「私とクルトは竜の大陸から迫害を受けて追い出された。だから頼れる竜族はもういなかったから、この人間の国に助けを求めた。一緒に来てくれた子達は普通の竜とは違うっていう理由で迫害を一緒に受けてた子達。」
「私とクルトは生まれた時から、人間と近い姿をしていて、ほかの竜の何百倍の魔力を持ってて、忌子として扱われてきた。」
「お願いします。どうか私たちを助けてください。」
少女が頭を下げて懇願してきた。
「助けてやりたい気持ちはやまやまなんだが、どこに暮らすつもりだ?ここは人間の国。数千の竜が暮らせる場所はないぞ。」
無情だがそれもまた事実だ。、、そうだ。
「リーク、家は魔法で作れると言っていたな?」
「ああ、そうだが。」
「では、それと同じ要領で竜の国も作ってしまえばいいんじゃないか?」
「できるのか?」
「当たり前だ。やり方さえわかればの話だが。」
「面白そうだ。もちろん作り方は教えよう」
曖昧になってきたカルマとルウナの年齢と身長ですが、年齢は十三。身長はカルマが172㎝ルウナが159㎝です。