無限の魔力
不定期投稿です
第三話:無限の魔力
ー五年後の朝ー
夢のマイホームが完成して必要最低限の生活を送っている。
毎日魚を取ってきたり猪を狩ったりして何とか食べ物も補えている。
そんな生活を続けてもうそろそろ五年になる。ある程度体も成長してきて自分でも思っていた美少年が美青年になっている(と思う)。ルウナは目に生気が宿ってきたが最近は俺への執着がすさまじい気がする。まあかなりの美人さんだから正直ご褒美でしかないけど。
「ルウナーそろそろ起きろー朝ごはんで来てるぞー」
なんか同棲カップルみたいでこの日常を楽しんでいる。残念ながらルウナが朝起きたら半裸で隣にいるなんてラッキーイベントは恋愛小説でもない限りありえないようだ。
「んー、、、あ!」
ルウナが階段を下りてバリエーション豊富な独特の寝起き言葉を言っている。
「おはよう!」
「おはよー」
そう言いながらふらふらとこっちに来て抱き着いてきた。
「おーよしよし。朝は口臭いからうがいと顔洗いをしてこいよ~」
「ん」
もうすでに日課になってしまっているので言葉遣いを意識するようなことはなくなった。
ー朝食後ー
「今日は私がカルマに魔法を教える日。」
「よく覚えてたな。てっきり完全に忘れているのかと」
「カルマは私の記憶力を完全に侮ってる。」
「すまんすまん、冗談☆」
前文にある通り今日はルウナに魔法を教えてもらう日だ。日常で風魔法は完全にマスターしたので。今日は火属性魔法を教えてもらうことになっている。
ー家から離れた草原ー
いつも練習は狩りをするときに見つけた広い草原で行っている。
「それじゃあ始める。」
「よろしくお願いしますッッ!」
「私とカルマの魔法はイメージができればこなせない魔法はないの。」
「ふむ。」
「つまり、体の魔力を燃え盛る火にイメージを変えて、その魔力を放つ。」
ルウナは毎回実演して教えてくれる。その度草原が禿げるんだが、、
「相変わらずえぐい火力してるなー」
「私よりカルマの方が日常で使う魔法とか攻撃で使う魔法とかに特化してる。」
「まあやるだけやってみよう」
「体の魔力を火にイメージして、、、」
体が熱い。この魔力を指先に集中させて、、飛ばすッ!
草原が消えた。飛ばした魔力は突き進むにつれ範囲を拡大して、向こうにある森まで消し炭にしていた。
「相変わらず魔力を放つことに関しては群を抜いてる。」
いつものことのように言ってくれる。
「でもこれは利用すればかなり役立ちそうだ」
風の魔法はある程度加減できるようになっているが、火の魔法は今のところどれだけ魔力を小さくしてもこの森の四分の一は燃やし尽くしてしまう。注意して練習しよう。
ここから数時間ルウナの鬼指導が始まった。
もう一度火属性魔法を放つ。
「強すぎる、もっと魔力を小さくして。」
言いながら指を鳴らし、大量の水で消火した後、無属性魔法で根元から一気に再生させていた。
何度も何度も繰り返して夕暮れにはマスターした。ルウナの指導は鬼だが、それ以上に成果を出させてくれる。
ー一年後ー
魔法の練習をしてすでに一年がたった、ルウナの鬼指導の甲斐あって、無属性魔法以外のほとんどをマスターしたできるようになった属性は【風、水、火、木、土】この五属性。やろうと思えばこの属性なら何でもできると思う。
「ありがとう。ルウナのおかげで五属性をマスターすることができた。」
「カルマは覚えが早いからすぐ私のできることをどんどんマスターしていった。」
そう言ってくれるが、なぜこんなすごい魔法をポンポン出せるほどの魔力があるのか最近気になりつつある。
「ルウナ、なんで俺らは最初からあんな膨大な魔力量があったんだ?」
「んー、、、、うん、そろそろ話してもいいかな。」
あえて言わなかったんだろうか?
「私はカルマと主従関係結んで牢獄から出たの。」
そこからか、長くなりそうだな
「でも、その時のカルマはまだ魂の状態。それに、あなたは魔力のない地球から生まれた存在。転生候補だったから神から魔力の種を命に植え付けられたの。どうやっても魔力量のつり合いが取れないから主従関係が逆になってしまう。カルマを主にするには同じ魂の状態になってカルマと同化する必要があった。そうして私はカルマと魂を同化させた。魂を同化させるということは私とカルマのすべてを共有することと同義。」
ルウナは堕天した不死神。魔力は命からできている。
「つまり、無限の命を持つルウナの魔力は無限。それを共有してるから俺の魔力も命も無限ってことか?」
「合格。」
正直恐ろしい。この世界は大陸を分けて様々な種族がいるらしい。そんな中魔力が無限にあるイレギュラー二人がその辺の大森林で暮らしているってんだから。
「ルウナ、俺たちは無限に魔力を持った化け物だ。それを認識した以上これからもし俺たちと他の人間とあっても魔力はできるだ、、、」
目の前に移っているルウナの顔が反転した。いや、俺が回っているのか?こんな誰もいない草原で無意識に回ることなんてあるんだな。あはは。
ルウナの顔がどんどん青ざめて憤怒の形相になっていくのが分かった。
どうしたんだルウナ。今までそんな顔したことなかったじゃないか。ん?声が出ない?本当にどうしてしちまったんだろ。
「ボスン」
見ているものがルウナの顔から草になった。体の感覚がない。動けない。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ルウナが喉が潰れる勢いで叫んでいた。
「うわあああああああああああああああああああああ」
出せる限りの魔力を出しまくりながら魔法を放ちまくっている丁寧に俺の頭にも保護魔法をかけてくれているようだ。無属性魔法が使えない俺でもわかる。とてつもなく分厚い保護魔法だ。
そんなことを考えていると。プツリと俺の意思が飛んだ。
どれほど眠っていただろう。目が覚めると体の感覚が戻っていた。体を起こすと目の前の惨状に絶句した。
もともと人であったであろう何かが、恐ろしい姿で寝そべっているのだから。平和な草原が俺の眠っている間に血の海に代わっているのだから。四肢が裂かれ、首ちょんぱされてる死体に、焼死体、窒息死、圧死、もう何だったのかわからないレベルにミンチにされた死体たち。その真ん中に生首を鷲掴みしているルウナがいた。血だらけにり生気のない目をして表情は絶望に染まっていた。白い美しい髪が今では赤く染まっている。
「ルウナ!!!」
そう言いながら駆け寄り抱き寄せた。冷たく絶望に染まった顔から生気が戻って顔を真っ赤にして泣き顔変わった。
「カルマ、カルマあああああああああああああああ」
そう叫ぶとスッと気を失ったように眠った。
ー次の日ー
一応グロ耐性があった俺は土魔法で大きな穴を掘って死体を埋めた。飛び散っていた大量の血は水魔法で洗い流して森に吸収させた。吸血鬼ならぬ吸血木だな。血まみれで倒れているルウナの体を水魔法と火魔法で作ったお湯を使って、正面から見ないよう気を付けながら血を洗い流した。大方終わったらルウナを抱いて家に戻った。(昨日の話)
短い間看病しているとルウナが目を覚ました。
正直俺はかなり疲れていて、ルウナが動いていないことにストレスを感じて若干うつ状態になってしまっていた。そのこともあって。
「ルウナ!」
名前を連呼しながら抱き着いていた。しばらくそうしているとルウナも顔を赤くして泣きながら抱き返してきた。かなりカオスな状態だったと思う。
落ち着いてから一回のリビングに戻って話を聞いた。
「ルウナ。まだルウナも困惑してると思ってるけど、昨日のことについて説明してほしい。」
「うん、、昨日カルマの話を聞いてるとき急にカルマの首が飛んだ。」
そういうとルウナは唇をかみながら苦悶の表情で語った。
「それを見たとき胸の奥から激しい怒りと居なくなっちゃうていう感情が入り混じって、カルマを殺そうとした後ろの人間たちを、、、よく覚えていないけど。冷静さを欠いて殺すことだけを考えてたと思う。死ぬことはないってわかってたけど、どうしても許せなかった。」
ルウナの握っている拳から血が滲んでいる。恐らく俺は何者かに命を狙われていて、首をはねられた。それを見たルウナが激情して勢いで殺しつくしていたということだろう。
「そうか、俺のために、、」
一番つらかったのはルウナだろうに。そうわかっていても今までずっと一緒にいたルウナが人を殺したという現実はつらかった。
ー三日後ー
馬に乗った兵士たちがぞろぞろと家までやってきた。
兵「ここに魔術を操る少女は居るかー!!!」
俺とルウナの家の前で騒がないでほしい。だが、今にも飛び出て殺してやろうといわんばかりに殺気立っているルウナを出すわけにもいかないのでここは俺が出よう。
そっと取っ手に手をかけて玄関のドアを開ける。そして少し威嚇すると兵士たちは腰を抜かした。
「なんだ」
そう問いかけてみると
「こ、、この神聖なる大森林にて、一人の少女がワルド王国国王直属騎士団たち数十名を皆殺しにしたと、、との情報が入った!!こ、、、これから貴様を拘束して王国に連行する!!」
どもりながら精一杯声を張り上げて忠告してくる。馬鹿なのか?少し威嚇した程度で腰を抜かすのに、俺を拘束して連行する?その直属なんちゃら騎士団より弱いという確信があるわけではないが。まあ今までほかの人間との交流がなかったわけだし。乗ってみるか。
「ルウナ」
玄関から二回にこもってるルウナを呼ぶ。一階に降りてきたルウナは警戒度をMAXにして兵士を見た途端風魔法で首をはねようとした。さすがにここで殺すのは交流する機会を自分からつぶすことになる。
飛んできた風魔法を同じく風魔法で相殺した。
「何で邪魔するの」
殺意に満ちた目を兵士たちに向けながら聞いてくる。
風魔法でルウナにだけ聞こえるように話す
「ここでこの兵士たちを殺せばこれからずっと交流ができないかもしれない。ここはいったん攻撃はやめよう。」
兵士たちから見ると完全に口パクだからすごく不思議そうな顔をしてる。
「わかった」
不服そうな顔で返事をして攻撃魔法を消した。
兵士たちを見て警告する。
「王国への連行は付き合ってもいい。だが、拘束はなしだ。破らなければおとなしくついて行ってやる。」
そう言って威嚇をやめる。ルウナの攻撃魔法とそれを相殺する俺の魔法を見て拘束は無理と判断したのか、それでいいと言いながら連行用の馬車の準備を始めた。
とりあえずルウナと外に出てこれからについて話そう。
「とりあえず人との交流の目途はたった。だけど、ついてからが問題だ。恐らく俺たちはついてすぐ何かしらの罰を受けるだろう。」
「多分」
「だが絶対にしちゃいけないことを決めよう。王国についても攻撃はしちゃいけない。俺たちはまだこの世界に来てほかの人間、種族と交流ができてない。俺たちを殺す術があったとしたら容赦なく使ってくるだろう。だから、こちらから攻撃しちゃだめだ。」
これからのことについて話そうと思っていたが種子が変わってしまった。まあこちらから攻撃しないと約束を取り付けられたから良しとしよう。
「準備ができた、乗れ」
兵士たちがそう言い、俺とルウナはお世話になったマイホームにお辞儀をして馬車に乗った。