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【完結】Camellia~紅の吸血鬼が紡ぐ物語~  作者: 八十浦カイリ
第五章 人魚はそうして目を閉じた
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第五章 3 そういうお話は苦手だった 

人魚の伝説。それは、吸血鬼と同じくらい、あるいはそれ以上にあちこちに集まっているらしい。

わたしも、子供の頃にひとつだけ聞いたことがある。

人間に恋をした人魚の話。

しかし、その話は、最後は海で住む人魚と陸に住む人魚では共に暮らすことができなくて、泣く泣く別れるという結末で終わった。

人間とそうでない生き物とのロマンスは、大抵が悲しい結末で終わってしまう。だから、元々はこういうお話がどうしても苦手だった。

そして、それは今もあまり変わらない。

だって、それを意識してしまうと、いずれはわたしとリアさんにも、そういった別れが来るんじゃないかって、思ってしまうから。


でも、リアさんが言ったのはそういう類のお伽話ではなかった。

何せ、人魚の目撃談だというのだから。

普通の人なら、何かの勘違いだと思う。でも、今のわたしにはそれがそういうものには見えなかった。

「……この雑誌。一年前のものだから、もしかしたら同じ場所に人魚がいるかもしれない」

雑誌の発行は2019年9月。インタビューをしたのがその少し前と考えると、ほぼちょうど一年前と考えて良さそう。

パラパラと雑誌をめくる。すぐに言われていたページを見つけることができた。

そこに載っていたインタビューでは、釣りに来ていた男の人が人魚を直接見たという話が載っていた。

『後ろ姿だけだが、確かに見たんだ。下半身が魚みたいになってる女性だった』

『見間違いじゃない。あれは確かに人魚だった。とてもきれいだった。二度会いたいと思ってそこに何度も行ったが、一度しか会えなかった』

『だが誰に話しても本当だとは思ってもらえないんだ』

というものだった。

「……あとでリリスと六月さんにも話して意見を聞きましょう」

「そうだね、わたしたちだけじゃ判断するのも難しいし……そうだ、どこで見たかみたいな話ってわかる?」

「流石にそこまではわからないわね…もっと別の目撃談があればいいのだけど」

「そっかぁ……とりあえず、二人にも話してみるね」


そうして、今一度わたしたちは集まって情報を整理することになった。

聞いた話によると、リリスさんはほとんど情報を集められなかったらしく、真魚ちゃんは普段の寝不足からうっかり眠ってしまったんだそうだ。

「ほんと全然役立たずですみません…」

「寝不足だったんでしょ?仕方ないよ」

「図書館って静かじゃないですか?だからついつい眠くなってしまうんですよね……あとあの匂いも微妙に眠気を誘うといいますか」

気持ちはわかるかもしれない。

「わたくしの方も調べてみましたが、どうも信憑性の怪しい話ばかりでして。この方向性は間違いだったかもしれませんね」


「……いや。間違いではないかもしれないわよ」

「あら、リアにしては珍しいですね」

「少しだけ信憑性のある記述……雑誌のインタビューを見たから。芽衣にも見てもらったわ」

リリスさんが怪訝な眼差しでこちらを見る。

「あれは信じていないって顔だわ」

「うん、わたしも急に言われたら、あんまり信じられないかも……でも、今は藁にもすがる思いというか、ほとんど手がかりがない状態だから……」

そもそも、「人魚」が今の真魚ちゃんと関係あるのかどうかすらもわからない。自分で言ってみて考えたけれど、本当に何もわからない状態だった。

「なるほど、どのような内容だったのか簡潔にでもいいので、話してもらえませんか?」


「そうですか…あまり信じられるものではありませんが、もう少し突き詰めて調べてみてもいいかもしれませんね」

「あの、前提を聞きたいんですけど」

「はい」

「そもそも私って人魚なんですか?」

「伝承を見る限りその可能性は高そうです。ただ……わたくしは人魚というものの存在をこの目で見たことがないんです」

リリスさんですら見たことのない存在。だとすれば、更に探すのは難しそうだ。

「とはいえ、現状の特徴を見るとやはり魚類やそれに近い何かである可能性は高いわ。この近くで人魚が発見されたという場所はないのかしら」

「えーっと……差し出がましい提案なんですが」

真魚ちゃんがおそるおそる手を上げつつ、何か言おうとしている。

「スマホである程度調べてみることは出来ないんでしょうか」

…………あっ。

その発想は、なかった……!

リアさんやリリスさんも、そうすればよかった!いうのが顔から見えている。


「そうね、スマホ……リリスは使えるかしら。私は電話かメールくらいでしか使わないのだけど」

「わたくしもあまり……インターネットの類いは詳しくないのですよね」

ふたりとも、インターネットはどうやらダメらしい。意外すぎる弱点だった。

「咲坂さんはなんか使えないんですか?」

「わたしはえっと、主に好きな本とか出版社の新刊情報調べるくらいしか……」

そう、わたしもほとんどそういう分野には詳しくない。全くダメってわけじゃないんだけど、少なくとも戦力にはならない程度には、苦手だった。


「な、何とかわたしたちでも頑張ってみよっか!」

「私は戦力にならないから大人しくしておくわ」

「リアも手伝いなさいな、あなた程度でも流石に検索くらいは出来るでしょう」

こうして、ネットでの調査が始まることとなった。


一旦真魚ちゃんとは別れ、3人で水谷家に戻ってから、わたしたちはずっとインターネットでの調査に勤しんでいた。

と言っても、ほぼ電話とメールしか使っていないリアさんは一時間くらいで音を上げ、リリスさんも検索したいワードを全て使い尽くし、ほとんど打つ手なしという状況になった。

三人揃ってほとんど慣れない作業に、すっかり疲れはてたわたしてさたち。

「一度真魚ちゃんに報告をしないと……」

そう思っていたところ、あるインターネット掲示板が目に入る。怪しい噂話を収集しているサイトこ掲示板らしい。そこには……


この大海原町の近くで、人魚を見たという目撃者の話があった。

情報はさっきの雑誌と似たようなものだったものの、どうやら複数見たみたいで、中には男性の人魚もいたそうだ。


「見つけたかも……!」

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