2 聖女判定の石
日も暮れ始めた頃、孤児院のお手伝いをやっと終わらせた私とイルザは、聖女判定をしている教会まで来た。
「さすがに、夕方にもなればあまり人がいないね」
お昼に賑わっていた大通りから来たけど、もう町中を歩く人は疎らになっていた。夕飯時だし、みんな家に帰っているんだろう。
聖女判定をしている教会の前も、馬車はあるけど人はいない。
「早く中に入りましょう」
イルザが教会の扉に手を掛けゆっくり開く。
中は人の気配が無く、静まりかえっている。
「……こんばんはー」
……うん。声をかけてみたけど、やっぱり誰もいない。
「もう終わったのかな?」
隣のイルザを見ると、真っ直ぐ前を向いて何かに釘付けになっているようだった。
「イルザ?」
「……アレだわ」
イルザが見据える先を見ると、祭壇の前に置いてある台の上に、ガラスみたいな球体の石があった。
静かな教会の中を進み石の前まで来ると、遠くからはわからなかったけど、石の中には白い煙みたいなもやがある。
「変な石だね」
「綺麗な石よ」
イルザが石に手を伸ばす。
指先が触れ、両方の手のひら全体で触れる。
でも、石に変化は無い。
「……ダメね」
イルザは目を伏せ、肩を落とし、見て分かるくらい気落ちしてる。
「し、仕方ないよー、聖女様がその辺にホイホイいるわけないんだし!」
気落ちしているイルザを元気付けようと明るく言いながら、イルザの方を向いたまま聖女判定の石の横に立ち、石をぺちぺちと叩く。
「……え」
「え?」
イルザが驚いた様な顔をする。
「……光ってる」
イルザの視線の先に目をやると、私が触れている聖女判定の石が、春の陽だまりみたいな暖かい白い光を放っていた。
「えぇっ!?」
驚いて咄嗟に手を離したけど、聖女判定の石は変わらず光を放っている。
「な、なんで光ってんの……?」
まだ捜索隊の人達は誰も帰って来ない。
「……ニーナ。私がここで石を見てるから、誰か捜索隊の人を捜して来てくれない?」
「わかった!ちょっと待ってて」
イルザを教会の中に残し、慌てて外に飛び出す。
通りを見回すけど、捜索隊の服を来た人が全然見当たらない。
「もー!どこにいるんだよ!」
夕飯時だから食事にでも行ってるのかなぁ?
近くに捜索隊が宿泊するらしい宿屋があるから、そこを見に行った方がいいかな?
「――あ!いた!」
走って宿屋の近くまで行くと、宿屋の前に一人、馬車を先導していた黒い軍服の男の人を見つけた。
「すみませーん!捜索隊の人ー!」
大きな声を出して走りながら近づくと、ちょっとビクっとされた。申し訳ない。
「なんでしょうか?」
「あの……っ、聖女……判定の……っ」
「落ち着いて、息を整えてからでいいですよ。さぁ、深呼吸を繰り返して」
走って来たせいで、息が苦しい。
言われた通り深呼吸を何度か繰り返すと、なんとか普通に喋れる様になった。
「聖女判定の石が光りました!」
「え?」
イルザと教会に行き、私が聖女判定の石に触れたら光ったけど、教会の中にも周りにも誰もいなかったのでここまで捜しに来た事を告げる。
「では、確認をしに教会に戻ろうか」
「はい」