2(:D)┓ペコリンチョ
「貴様の愚行、全て把握済みだ!否定しても無駄だぞ!」
響き渡る声に、ロザリアは何も返事しない代わりに強い眼光をこちらに向けた。
そしてロザリアの代わりに
「…レオナルド様」
甘ったるい声が耳に浸透する。
なんだかフワフワして心地よい。
(…おい時子)
わたしは頭の中で先程の白猫を呼んだ。
すぐに、【な、何よ、もしかして時子ってわたしのことかしら?】と不服そうな声が頭に響く。
もしかしなくても、お前のことだよ時子。
いやそんなことよりも、
(お前…転送先間違えたな(¬_¬))
【うっ、し、仕方ないじゃない!時間は自在に扱えるけど、時空はちょっと苦手区域なの!】
必死の弁明が聞こえてきた。
いまわたしの目の前には屈強な男に後ろ腕掴まれて跪かされている美女がいる。
そう、お気づきの通り、わたしの意識は断罪されている側では無く、してる側へと転送されたようだ。
「ウィルス家の爵位と財産・領地を剥奪し国外追放、ロザリア・ウィルスは極刑とする」
「なっ!?」
ロザリアの目の色が怒りから狼狽へと変わる。
「お前は未来の王妃へ危害を加えたんだ。当然の処分だろ。今更後悔しても遅い」
(ちょっとちょっと時子!!)
【分かってるわ!戻るわよ!】
言うが早いか、すぐに意識は真っ白な空間へと戻された。
目の前の猫は心無しか項垂れているように見える。
(ちょっと困ったな時子、意識に潜り込めても操作は出来ないみたいだよ)
「…そのようね。でもどうにかしないと…ローズが殺されちゃうわ」
(時の精霊なら、時間を戻せばいいのでは?)
「…もう何度も戻したし、軌道修正も試みたわよ。それでも毎回同じルートを辿ってしまうの」
…………(¬_¬)
(…役立たず(¬¸¬)ボソ)
「仕方ないじゃない!だからあなたに頼ってるんでしょ!」
まぁ、時子の言いたいことは分からなくもない。
なんらかの強制力かなんか働いてるんでしょ、あーゆーのは。
暇さえあれば転生物の小説や漫画読んでるから、なんとなく理解できる。
…でも。
(なんか違う強制力が動いている気がしないでもないよ)
「え?どういうこと?」
(んー、あの後ろで悪どい顔してたのって誰?)
「あ、確かアイラって言ったかしら?平民だけど成績がいいからってローズと同じ学校に通えてるみたいね」
(平民…。だとしたらやっぱりおかしいと思う)
「だから、どういうことよ!」
(いや、)
わたし乗り移った時に見た、レオナルドの頭の中を思い出す。
(あの王子?の頭の中、アイラって子の思い出でいっぱいだったんだけど…)
「は?」
(…いや、平民にしては身なりが豪華すぎると言うか…)
「え、あの子そこそこ貧乏なはずよ」
(…思い出の中の幼い頃の彼女も可愛いドレス着てたし。所作も淑女?みたいだったよ)
「………」
(あと、思い出の中の彼女はレオナルドのこと“レオ”って呼んでたけど、あの場では“レオナルド様”だったのも引っかかる)
「…それって…」
時子が信じられないと首を振る。
見た目ふわっふわの白猫だからすんごく可愛い。
(…記憶が書き換えられてる可能性があるね)
「そ、そんなことって可能なのかしら」
いやいや、あなたは時間を自由自在にできるんでしょ。
それなら記憶の改ざんや、すり替えとかも有り得る話でしょ。
それに、コレ夢だし。
(あと、ロザリアへの思いなんだけど…)
「えぇ」
(頭の中ほとんど彼女への憎しみや嫌悪感で埋められてたの)
「…はぁ?なんなのアイツ」
時子は顔を顰める。
が、猫なのであまりよく分からない。
(でもね…、その負の感情で何か包んでるような…よく分からないけど、何かを隠してるようなそんな気がしたの)
「…つまり?」
つまり。
(レオナルドは洗脳されてると思う)