(:D)┓ペコリンチョ
「…今この場で婚約を破棄する」
「…っ!」
煌びやかな卒業パーティ会場の中心で、怒気を孕んだイケメンの前に彼の従者の手で強制的に跪からせる綺麗に着飾った美しい女性。
それを目の前にしてわたしの心は最高潮に興奮していた。
(ハァ━━━━(^q^)━━━━ン!!)
(断罪イベきたぁ!ハァ━━━━(^q^)━━━━ン!!)
(令嬢ざまぁ!)
これは実際に起きてることでもゲームの中でのことではない。
転生などとそんな大それたことでもない。
目の前に広がるこの寸劇?は、わたしのただの夢である。
そう、眠っている時に見るアレだ。
日頃転生物とかを読み漁っているせいか、この手の夢はしょっちゅう見ている。
いやはや、お恥ずかしい。
(ヒロインは誰やソワソワ((・ω・)))
(令嬢が綺麗系ならヒロインは可愛い系かしらソワソワ((・ω・)))
そう思いイケメンの斜め後ろに怯えたように控えている小柄な女の子に目をむけるけど、逆光なのかわたしの想像力が足りないせいか…よく見えない。
ただなんとなくだけど口元が緩んでいるような気もしなくもない。
もう少しよく見たいと目を凝らした…、それと同時に頭の中で声が響いてくる。
ー助けて…。
弱々しいそれはどこから聞こえてくるのか。
あたりを見回してみても、みんなの視線は目の前で繰り広げられている断罪ショーにある。
1人首を捻っていると、今度はしっかりと耳に届いた。
「助けなさい!」
怒ったように勝気な声が。
(…??わたしに言ってんの?)
「あなた以外誰がいるの?」
(キョロキョロ(・ω・ = ・ω・))
「キョロキョロしない!」
その怒号と同時に視界がサッと変わり、あたり一面真っ白と化した。
(╭(°A°`)╮?!?!)
「お願いよ、ローズを救って!」
(どこから声が!?(゜ロ゜;三;゜ロ゜))
「ここよ。ここ」
声に引きずられるままに足元へと視線をやると、そこには毛がフサフサの白い猫が鎮座していた。
「なにマヌケな顔してるのよ、わたしは時の精霊よ」
(いやいや、ニャンコちゃんでしょ。可愛いじゃねぇか)
「精霊よ!擬態化した姿がコレなのよ!」
(あ、はい。了解しました)
猫の必要の口パクにとりあえず精霊だと理解しました。
…まぁ夢だし、なんでもありだな。うん。
(ところで、助けるって何?あの断罪されてた令嬢を助けるの?)
「そう!ローズ!!ウィルス侯爵家のロザリア・ウィルスを助けて欲しいの!!」
(…。うん。なんとなく分かってたけど、どうやって?)
「あなたバカなの?それが分かってたら自分でなんとかするわよ」
(!??!?╭(°A°`)╮り、理不尽╭(°A°`)╮)
「とりあえず、あの子に意識転送するから、なんとかしてちょうだい!」
(!?い、いや、ちょっとまって!まだ心の準備がっ)
必死の抗いも虚しく、そのまま意識が吸い込まれていった。