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第8話 二日目だよ

 


 無事、森を出たわたしたちは突然後方から発生した熱波と、辺りを激しく照らす光を感じて、慌てて振り返る。

 そこには、森の中、わたしたちが巨鳥を木の下敷きにしたあたりから天に昇る炎の柱があった。


「なに、あれ」


「わかんない……もしかして巨鳥なの?」


 開いた口が塞がらない、とばかり驚愕した様子のヒナタにわたしの推察を話す。


 あの辺りは間違いなく、巨鳥がいた場所だ。突然森の中からあんな炎が発生するわけないし、自然と考えられるのはあの巨鳥が何かをしたのではないか? という推察だけど、間違っているとも思えない。


 しばらくして、炎が収まったと思ったらさっきまで戦っていた巨鳥が森の中から現れて、森から更に南東の方に飛び立って行くのが見えた。巨鳥の目指す方向には山脈が見える。巨鳥はその山脈のどこかを根城にしているのだろう。


「……手加減してもらってたのかな」


 思わずそう呟く。

 もし、戦闘中にあの炎を使用されていたらきっと為す術もなくやられていたと思う。

 思い返して見れば、あれだけ強かった巨鳥が頑なに爪での攻撃しかしてこなかったのは不自然だ。


 ふと、思い立って巨鳥の羽根をインベントリから取り出し、その詳細を確認する。


「【不死鳥の羽根】、不死鳥ソル・ミラの羽根。死者の魂を呼び戻す力を持つ……」


「……不死鳥……手加減してもらってたみたいだね」


 不死鳥でソル──どこかの国の言葉でたしか太陽。ミラの意味は知らないけど、名前からして過ごそうな魔物だ。

 不死鳥ソル・ミラの目的はわからないけど、間違いなく手加減してもらっていた。その事実に冷や汗が流れる。


「でもまぁ、勝ちは勝ちだよ! 次は倒そう!」


「……うん、そうだね。その通りだ。次はちゃんと勝とう」


 ヒナタの言葉にわたしは気合いを入れ直した。そもそも、手加減されていたとはいえ今回は負けていない。結果から見れば、間違いなくわたしたちの勝ちだ。

 次もまた勝てばいい。今勝てなくても、わたしたちもこれから強くなるんだから。


 わたしたちは、決意を新たにして南東に飛ぶソル・ミラの背中を見送った。

 もっと強くなって、いつか絶対倒してやる!



 ☆



 街へ戻ってきた頃にはすでに日が落ちて、時間は夜の七時を回っていた。

 不死鳥ソル・ミラ戦での疲労もあって今日はここまで、ということでまた明日も朝から遊ぶ約束をしてログアウトした。


 部屋から出て、リビングに行くと姉さんがテレビを点けてアニメを見ていた。そのアニメは、今からもう何十年も前に流行っていたアニメで、願いを叶える秘宝を集めるために主人公が世界を冒険するという話だ。


 姉さんはこういった少し昔のアニメや漫画が好きでよく見ていて、わたしも姉さんの影響でたまに見るのでこういうものは結構好きだ。


「姉さん、遅くなっちゃったけどご飯作るよ。オムライスでいい?」


「いいよー。お願いねー」


「うん、すぐできるからちょっと待ってて」


 そう言い残してキッチンに向かう。二十分ぐらいでオムライスを作り終え、姉さんを呼んで一緒に食べる。


 秋月家のキッチンはダイニングとキッチンが一つになっているダイニングキッチンなので、ご飯を食べるときはここで食べる。


 オムライスの卵の上には、ケチャップで絵を描いた。今日はウサギの絵だ。〈夢幻兎の腕輪〉と〈蜃気楼の腕輪〉に彫られていたウサギのマークをイメージして描いた。渾身の自信作だ。


「これ、ネコ? かわいいねー」


「ウサギだよっ!」


 なんで間違えるの。ちゃんとウサギじゃん。

 姉さんも夏海も、昔からわたしの絵を見ると変な感想をする。きっと、あんまり真剣に見ていないのだろう。ウサギとネコを間違えるなんてありえない。


 不満を漏らしながら、オムライスにスプーンを入れる。

 うん。ちゃんと美味しい。今日のオムライスは良くできた。


 見れば、わたしのウサギをネコと間違えた失礼な姉さんも黙々と食べ進めている。姉さんは何かに集中するときは、静かになる癖がある。今回のオムライスは姉さんの反応から見ても上出来だったのだとわかる。

 自分の作った料理を人に美味しそうに食べてもらえるのは嬉しい。自然と頬が緩むのを感じた。


「ごちそうさまでした」


「ごちそうさまー」


「姉さん、洗い物お願い。わたしはお風呂に入ってくるね」


「おっけー」


 日曜日なのに急な仕事があって今日はまだ、お母さんとお父さんは家に帰ってきていない。

 作り置きしておいた、お母さんとお父さんの分のオムライスにラップをかけて、洗い物は姉さんに任せてわたしはお風呂に向かう。

 姉さんはわたしがLEOで遊んでいる間にすでにお風呂に入っていたらしい。


 お風呂から出て、リビングで姉さんとさっきのアニメの続きを見ていると玄関の方からガチャリと鍵を開ける音が聞こえてきた。


「ただいま」


「ただいまー」


 お母さんとお父さんが帰ってきてリビングに顔を出してきた。


「おかえり」


「おかえりー」


 わたしと姉さんは挨拶を返して、夜ご飯のオムライスが作ってあることを伝えると、二人は「ありがとう」と言ってダイニングキッチンの方に向かった。


 きっと今日は仕事で疲れていたのだろう。いつもならお父さんは先にお風呂に入り、お母さんはリビングに残ってしばらくわたしたちと話をしながらお父さんがお風呂から上がるのを待ち、それから二人揃って夜ご飯を食べる。


 特に今日は、いつも夏海と同じぐらい元気なお母さんが静かだ。よっぽど忙しかったのかもしれない。


 しばらくして二人はリビングに戻ってきて、お母さんは開口一番にこう言った。


「れなちゃん、オムライス美味しかったわ! ネコの絵もすごく可愛かった!」


 ウサギだよっ!!!!



 ☆



 七月二五日。

 LEOのサービス開始二日目の朝、今日は月曜日なのもあって昨日ほど多くのプレイヤーは見かけない。

 昨日と同じ中央広場で合流したわたしとヒナタは、今日したいことを話し合った。


 その結果、今日は装備を整えるためにヒナタの知り合いの生産職の人に会いに行くことになった。明らかに高ランクのアイテムである【不死鳥の羽根】が装備の素材として使えるかどうかはともかく、ミラージュ・ラビットの素材を使って何か良い装備が作れないか尋ねに行くのだ。


 わたしたちは未だに初期装備だから早めに装備を変えたいという気持ちもあった。

 今は、ヒナタが件の生産職の人にコールして予定が空いているかを確認している。


「連絡したら、すぐに来ても大丈夫だって! こっちだよ!」


 ヒナタに手を引かれて歩き始める。

 LEOが始まってまだ二日目だけど、今日はどんなことが起こるのか。どんな冒険が待っているのか。

 楽しみだ。







お読みいただきありがとうございます。

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