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第4話 お母さんじゃないよ

 


「ヒナタ、そろそろ一旦戻ろう」


【夢幻の森】でしばらく魔物と戦っていたら、いつの間にか午後1時になっていた。時間を忘れて遊びすぎた。


「あれ、もうこんな時間?」


 左手でウインドウを出して時間を確認したヒナタが思わず、といった感じで呟く。

 ヒナタもわたしと同じで時間を忘れるぐらい熱中していたみたい。


「新しいスキルも手に入ったし、お昼ご飯食べに一度ログアウトしよっか!」


 ヒナタは新しいスキルとして【弱点攻撃】というスキルを手に入れた。

 効果としては、敵の弱点部位に攻撃したときにダメージが増えるというシンプルな効果で、ウサギの首を攻撃し続けていた結果手に入ったようだ。


 珍しいスキルでは無いけど優秀なスキルで、他のスキルのレベルアップによる能力上昇もあって、今ではヒナタは一撃でウサギを倒せるようになっている。


 わたしの方は【環境破壊】とかいうスキルを手に入れた。

 効果は周囲のオブジェクトに攻撃したときのオブジェクトへのダメージを増加させる、というものだ。森の中でお構い無しに火の魔法を使い続けた結果である。

 反省している。ちょっとね。


「それじゃあ、一度ログアウトして二時くらいに今朝と同じ場所に集合でどう?」


「おっけー! じゃあ、また後でね!」


 そういって、ヒナタはポリゴンとなって消えていった。ログアウトしたのだろう。魔物が倒されるときと同じエフェクトなんだな、なんてことを考えながらわたしもウインドウを操作してログアウトした。



 ☆



 お昼ご飯を済ませて再びログインしたわたしは、最初にログインしたときと同じ中央神聖都市エルセーヌの中央広場にいた。


 LEOでは、ログインするときに前回ログアウトした地点か、倒されたときなどに復帰するリスポーン地点として設定されている地点のどちらかにログインできるようになっている。


 今回は集合地点が今朝と同じ場所なので、リスポーン地点として設定されている中央広場にログインした。


「まだ、少し時間がある……少し探索してみようかな」


 現在時刻一時四十分なので、集合時間まで後二十分ある。今朝はドタバタしていてすぐに街の外に行ってしまったので、この機会にいろいろ見て回ってもいいと思う。


 中央神聖都市エルセーヌは他の国に属さず永世中立を宣言している都市で、LEOの世界の中央に聳える世界樹を中心に広がっている街だ。


 世界樹の麓に大きな神殿があり、その周りに中央広場、中央広場から東西南北の四方に十字のように大きな街道が通っている。

 街道によって区切られた4つのブロックはそれぞれ、北東の商業区、南東の居住区、南西の田園区、北西の工業区、といった感じで大まかに分かれている。

 街道の先は、都市全体を囲むとても大きな城壁の城門に繋がっていて、外からの魔物の侵攻を防いでいる。


 ……みたいな話だったはず。実際に確認したわけではなく、前にヒナタからβテストでの話を聞いただけなので伝聞でしかない。


「まず、神殿かな」


 二十分で探索するとなると行けるのは中央広場の近くにある大神殿くらいになる。

 とりあえず大神殿に向かおうと歩き出した瞬間、身体に何かがぶつかったような衝撃を受けた。


 何が起こったのか、すぐにそちらの方に視線を向けると、十歳にも満たないような幼い少女が尻餅をついていた。白い髪に赤い瞳のその少女は、瞳に涙を溜め驚いたような顔でわたしの顔を見上げ固まっていたが、やがて思わずといった風に呟いた。


「……お母、さん……?」


「……へ?」


 今度はわたしが固まる番だった。



 ☆



 どうやら、少女──アルマは工業区に用があり、その道中でわたしにぶつかってしまったらしい。

 その際、わたしの姿がパッと見アルマの母親と似ていて思わず呟いてしまった、という話だった。

 しかし、ちゃんとよく見てみると似てるのは髪の色と瞳の色だけで、アルマはあの後すぐに我を取り戻し軽く話をした後、足早に工業区の方に去っていった。


 アルマの母親の話をするときの表情に影が差していたのが少し気になったけど、急いでいるようだったので引き止めるわけにもいかなかった。


「それにしても、アルマってNPCだよね? 最近のAIってすごいなあ」


 VRゲームの購入制限は十五歳以上であることなので、十歳にも満たないだろうアルマはNPCだということになる。アルマと話していた感じ、普通に現実の人間と話しているのとほとんど変わらない印象を受けた。


 わたしとヒナタはちょうど十五歳で、LEOが初めてのVRゲームだから知らなかったけど、NPCがこんなにリアルなら、VRゲームが世界的に大流行するのも頷けるよ。ゲームの臨場感がやっぱり違う。


「あと、十分。探索はまた今度にしようかな」


 アルマとの一幕があって時間は一時五十分。ヒナタとの集合時間まであと十分しかない。これなら、探索に行くよりもヒナタが来るのを待っていた方が良さそうだ。


 二十分だと時間があるように感じるけど、十分だと時間がないように感じる。不思議だね。

 そんなことを考えながら、中央広場のベンチに座る。今朝、ヒナタと合流したのと同じ場所だ。ここにいれば、ヒナタもログインしてすぐにわかるだろう。


「【本】に【占術】、【知力強化】【環境破壊】」


 空いた時間にスキルの確認をしてみることにした。

【占術】は支援魔法が使えるという触れ込みで取得したのに、初期から使えるのは【運気上昇】と【金運上昇】という魔法だけだった。

 それぞれ、読んで字の如くそのままの効果で、【運気上昇】の方は森でも効果が途切れないように小まめに使っていたけどあまり実感がない。【金運上昇】の方はドロップアイテムを売るときに使えばいいのかな。

【占術】による攻撃力や防御力の上昇みたいな支援魔法は、ある程度スキルが成長してから使えるようになるみたい。


「やっぱり、属性魔法を何か覚えるべきかな? 【本】で横着してたけど何かしら使えたほうがいいよね。絶対」


 新しい魔法書を買ってもいいけど、それだったら新しい属性魔法のスキルを覚えられるアイテム──スキルスクロールを買ったほうが良さそうだ。


 どちらにせよ、何か新しい攻撃手段は用意しなきゃいけない。【環境破壊】なんてスキルを取得できたが、森で火を放つのはさすがにもうやめたほうがいいと思う。


「とりあえず、ヒナタに相談しようかな」


 そうしよう。頼れる親友だ







お読みいただきありがとうございます。


以下、私が忘れないようにするためのメモです。


エレーナ

【本】【占術】【知力強化】【環境破壊】

ヒナタ

【剣】【筋力強化】【敏捷強化】【弱点攻撃】

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