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死霊少女のほのぼの冒険記 〜ネクロマンサーとなった少女はVRゲームで最強です!〜  作者: リコリス
一章 大冒険! トレジャーハンティング!
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第2話 イベントが始まるよ!

 


 八月七日、十五時。


 わたしとヒナタはクルネを伴ってエルセーヌの中央広場に来ていた。

 イベントの準備はすでに万端で始まるのを今か今かと待ちわびる。


 周りには広場から溢れそうなほどたくさんのプレイヤーが集まっていて、少し前に遊びに行った遊園地を彷彿とさせるほど賑わっている。

 その人数はゲーム初日の朝を超えているのではないかと感じるほどだ。


 中央広場の端の方には大神殿の兵士がずらっと並んで囲んでいる。プレイヤーが集まることによるトラブル防止のために運営が駆り出したのだろう。またもや、運営の神権乱用である。お疲れ様です、兵士さん。


「すごいねー。これ全員イベント参加者か。遊園地みたい」


 その遊園地にはわたしの家族とヒナタの家族で一緒に遊びに行ったからか、ヒナタも同じようなことを思ったらしい。


「注意しておかないと逸れてしまいそうですね」


 クルネが不安げな声音でそう呟いた。視線の先にいるのはヒナタである。クルネの心配する気持ちもわかるけどヒナタならおそらく大丈夫だ。


 なぜなら、ヒナタはすでに遊園地で一度迷子になっていて、わたしとヒナタのお母さんに怒られた経験があるからだ。

 ヒナタは超元気で、楽観的で、自由でなんとなく心配になる性格だけど、一度犯した失敗を二度も繰り返すほど困った親友ではない。だから大丈夫。多分。


 そうこうしていると、宙空にウインドウが現れて見覚えのある男性が表示される。


「やあ、みなさんこんにちは。僕はLEOのプロデューサーをしている佐々木信也ささきしんやだ。これからイベントについて説明するよ」


 そう言って佐々木プロデューサーはフリップを取り出した。フリップには『大冒険! 古代遺跡に潜む謎 〜みんなでワイワイトレジャーハンティング!〜』と書いてある。

 …………もう少し良いイベント名は思いつかなかったのだろうか?


 見れば、周りのプレイヤーも軒並み唖然としていて、さっきまでザワザワと浮き足立っていた広場の雰囲気が静まり返っていた。

 説明を聞くために静かになったのかもしれないけど、なんとなくこれは違うと思った。


「それじゃあ、早速説明に入ろう。テーマはこれね」


 これ、と言いながらフリップを指差す佐々木プロデューサー。この雰囲気のまま続けるのだろうか? 結構天然な人なのかもしれない。

 わたしも切り替えて説明に耳を傾けることにする。あんまり気にしていても仕方ない。


「冒険とトレジャーハント、後はプレイヤー同士の交流かな。今回のイベントはLEOの最初のイベントだから、プレイヤーのみんなには仲良く協力してイベントに臨んでほしい」


 わたしはプレイヤー同士の交流は今まであまり意識していなかったので、これは良い機会なのかもしれない。未だにわたしのフレンド欄に並んでいる名前はヒナタとクルネだけなのだ。ぼっちでは無いけど少し寂しい。


「これからみんなが転送されるイベントエリアにはいくつもの謎と宝物が散らばっている。それをみんなで見つけて、解き明かしてほしいんだ。そうして、何か行動を起こせば報酬と交換できる冒険ポイントが手に入る。交換リストはすでに公開してあるから、冒険ポイントの使い道はじっくり考えてくれ」


 謎解きとトレジャーハンティング。今からでもすごくワクワクする。それに、今回は冒険ポイントで何としても手に入れたい報酬が一つある。がんばって冒険ポイントを集めなくては。


「さらに、最後に発生するラストクエストを達成することができれば、全てのプレイヤーに成功報酬として大量の冒険ポイントが付与される」


 つまり、争ったりはせずにちゃんと協力してね。ということなのだろう。

 宝探しだと、早い者勝ちでプレイヤー同士の取り合いになるかもしれない、と危惧していたけどこれなら大丈夫かもしれない。


「注意事項として、今回のイベントでは悪質なPK(プレイヤーキル)が確認されたプレイヤーはイベントエリアから退場となるので、そこは留意しておいてほしい」


 これもプレイヤー同士の協力をテーマとしている以上、当然の措置だと思う。わたしは今までPKと出会ったことがなかったけど、そういうプレイヤーがいるというのは聞いている。今回のイベントではその心配がないようで一安心だ。


「それと、今回のイベントはサーバーを二十個に分けて開催する。イベントの参加人数はおよそ八万人ほどとなっていて、全員を一つのサーバーにまとめてイベントを開催するのは難しいためだ」


 どうやら八万人もこの場にいるらしい。初期生産ロットが十万人なので、八割のプレイヤーが参加していることになる。すごい。


「だから、おおよそ四千人ずつにサーバーを分けさせてもらう。入るサーバーは完全にランダムだけど、パーティを組んでおけば同じサーバーに組み込まれるからそこは安心していい」


 四千人でも多く感じるけど、どうなんだろう?

 パーティの方はすでにヒナタとクルネと組んでいるから問題はない。


「イベントの最後に、各サーバーごとの冒険ポイントの合計が集計されて発表される。それに対して何か報酬があるわけではないけど、やる気は出るだろう?」


 そう言って佐々木プロデューサーはニヤリとした笑みを浮かべる。たしかにプレイヤー、ゲーマーという人種はそういうものが大好きだ。もちろんわたしも。


「さぁ、説明はこのくらいでいいだろう。他に気になることがあれば、GMコールでもしてくれれば答えられることは答えよう」


 佐々木プロデューサーはその言葉を最後に、手元のフリップをウインドウの画面外に投げ飛ばし、おもむろに立ち上がって続ける。


「これより、LEO第一回公式イベント『大冒険! 古代遺跡に潜む謎 〜みんなでワイワイトレジャーハンティング!〜』開催だ! 期間はゲーム内時間で一週間! お前ら! 良い冒険をしていってくれ! 以上!」


 佐々木プロデューサーの鼓舞に応えるように広場中から「おおおおおおお!!!!」と、大声の雄叫びが聞こえ出す。そのあまりの騒がしさには思わず耳を塞いでしまうほどだった。

 見れば、クルネも耳を塞いで縮こまっている。ヒナタは満面の笑みで一緒になって元気に声を上げていた。


 わたしは恥ずかしくて大きな声を上げることはできなかったので、小さく「おー!」と拳を掲げてみせることしかできなかったけど、この一体感はとても気持ちがいいものだった。


 ワクワクとした気持ちが抑えきれず、自然と頬が緩む。


 わたしはこれから始まる大冒険に思いを馳せながら転送の時間を待った。







お読みいただきありがとうございます。

ブクマ、評価などもありがとうございます。嬉しいです。

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