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死霊少女のほのぼの冒険記 〜ネクロマンサーとなった少女はVRゲームで最強です!〜  作者: リコリス
一章 大冒険! トレジャーハンティング!
23/26

第1話 約束だよ



「ヒナタ! イベントは一緒にやろう!」


 八月六日。


 明日、八月七日より開催されるLEO第一回公式イベントを明日に控えた今日。わたしはヒナタが待ち合わせの時間にログインして来るなり開口一番にそう言った。


「えっと……どうしたの急に?」


 ヒナタが突然のわたしの言葉に目を点にして驚く。


「最近ヒナタ、LEOで全然わたしと遊んでくれないじゃん」


 思わず、棘がある口調が出てしまった。

 でもそれも仕方がない。わたしをLEOに誘ったのはヒナタなのに、最近はずっとヒナタに放置されて一人寂しくLEOをプレイしているのだ。


【旧エルセーヌ地下墓地】から始まって、ロボス・ウルフというエルセーヌの西側の街に行く道中のボスも他にも色々、全部わたしは一人で倒したのだ。


 LEOを始める前は「あたしが玲奈を守る!」みたいなことを言ってたくせに、今わたしのことを守っているのは主にゾンビである。


 そろそろ一緒に冒険したいと思うのも無理のないことだと思う。


「あー……それは、ごめん!」


 ヒナタが本当に申し訳なさそうな表情で手を合わせて謝ってくる。

 わたしだって別に心の底から怒っているわけではないし、こんな風に真面目に謝られると少し困る。

 それに、謝ってほしいのではなく一緒にゲームをしたいだけなのだ。


「謝る必要はないから。それで、一緒にできるの?」


 また、無意識に言葉に棘が出てしまう。今のわたしはハリネズミか何かだろうか?

 ヒナタがわたしと一緒にゲームを遊んでくれない理由もちゃんと分かっている。わたしの【死霊術】を使った戦い方がパーティプレイに向いていないのだ。ハッキリと言ってしまうと、わたしはパーティを組む必要がない。


 それでもヒナタと一緒にゲームがしたいのだから仕方ない。


「それはもちろん! もともと、イベントはエレーナと一緒にやるつもりだったよ!」


 その言葉を聞いてわたしは、ホッと安堵のため息を漏らした。本気でヒナタに忘れ去られていたのではないかと少し心配になっていたのだ。良かった。


「約束だからね」


「わかってるよ!」



 ☆



 あの後、わたしとヒナタはエルセーヌの商業区にあるお店を訪ねていた。


「ここか〜、【クルネのお店】」


 ヒナタがお店の看板を見ながらそう言った。

 なんと、クルネがちょっと前にお店を購入していたらしい。

 お店の名前はそのまま【クルネのお店】。以前にクルネはネーミングセンスが無いと言っていたので、変に捻った名前はつけたくなかったのだと思う。


 外観はそれほど大きなお店ではないけど、見窄らしいというわけではなく小ぢんまりとした雰囲気のお店だ。


 お店の表にはショーケースの中に入った鎧や剣、服などがサンプルとして並んでいる。他のお店と比べて、やっぱりクルネの装備はデザインが良い。


 今日は、明日のイベントに備えてヒナタが注文していたという新しい軽鎧を受け取りに来た。


 わたしの方は【錬金術】のスキルを獲得した記念にリーナさんから新しい装備をもらっていたので、今回は見送った。

 ゴスロリのワンピースで、見た目が可愛らしくて性能もすごくいい。リーナさんが言うには修業中の錬金術士は師に贈られた服を着るのが習わしとなっているらしく、それに則ってリーナさんがわたしのために【錬金術】でこの服を作ってくれたのだ。


 なんで【錬金術】で服が作れるのか、疑問に思って聞いてみたら「できるものはできるのよ」とのこと。深く考えるだけ無駄だとわかった。


 ちなみにゴスロリなのはリーナさんの趣味らしい。リーナさんも普段から中世の貴族が着ていそうなドレスを身に付けているので納得である。


 思い返せばアルマも割とフリフリな服を着ていることが多い。最初の頃はLEOの中のNPCはこんな感じの服を着るんだなー、なんて思っていたけど今となってはそれが少数派だったのだと気づいている。

 こっちもやはりリーナさんの趣味なのだろう。かわいいから良い趣味だと思う。


 そんなことを考えている間にヒナタはさっさとお店の中に入って行ってしまったので、わたしも慌てて後を追う。


「いらっしゃいませ。ヒナタさんと……エレーナさんですよね?」


 お店の中に入ったわたしたちをカウンターに座っていたクルネがそう言って迎えてくれる。

 クルネがわたしに対して変な反応を示したのは服装とわたしの左目が原因だと思う。


 わたしの今の左目の瞳はハイライトの無い濁った赤色をしていて、以前の綺麗な金色が見る影もない。右目は普通に金色なのでオッドアイと呼ばれるような色彩になっている。


 何でこうなったかと言うと、多分〈死霊の宝珠〉が原因だと思う。というのも、わたしの左目がこうなったと判明したのが〈死霊の宝珠〉を装備した次の日で、しかも色が同じ濁った赤色。そして、確かに装備しているのにどこにも見当たらない〈死霊の宝珠〉。

 つまり、行方不明になっていた〈死霊の宝珠〉はわたしの左目に装備されていたのだ。怖いね。


 わたし自身はこの左目に関しては結構気に入っている。ハイライトがないのがヒナタにヤンデレみたいで怖いとか言われたけど、わたしはヤンデレじゃないしオッドアイというのは客観的に見てかっこいい。


「久しぶりクルネ。エレーナであってるよ」


「そうですよね、お久しぶりです」


 そう言って微笑みを浮かべるクルネ。

 相変わらず見た目は少女なのに大人っぽい所作だ。


「おはよう、クルネ! 装備はもうできてる?」


 ヒナタが待ちきれないといった感じでクルネに訪ねる。

 クルネはヒナタのその様子に苦笑しながら、インベントリから白い軽鎧を取り出した。


「デザインは今ヒナタさんが装備しているものとほとんど同じで、少し重くなった程度なので違和感無く使えると思います。着てみてください」


 クルネがそう言ってヒナタに軽鎧を差し出し、ヒナタはそれをすぐに装備して軽く身体を動かし始めた。


「うん! いい感じだよ。ありがとう!」


 そう言ったヒナタの表情はとても嬉しそうだ。

 その様子にクルネも顔を綻ばせている。

 自分の作った装備が気に入られて嬉しいのだろう。わたしも料理で家族に美味しいと言ってもらえると嬉しくなる。それと似たような気持ちなのかな?


「そうだ! よかったらクルネもあたしたちと一緒にイベントに参加しない?」


 ヒナタが良いことを思いついた、とばかりにいきなりそんなことを言い出した。突然の誘いにクルネは少し困惑している様子だけど、わたしもその案はいいと思う。


「クルネさえ良ければわたしも一緒に参加したいな。生産職のクルネがいれば頼りになると思うし……どうかな?」


 わたしの言葉にクルネは少し悩むような素振りを見せたが、やがて首を縦に振って了承してくれた。


「お二人が良ければ、是非ご一緒させてください」


「やった! よろしく、クルネ!」


「よろしくね、クルネ」


「こちらこそよろしくお願いします、ヒナタさん、エレーナさん」


 そう言って微笑むクルネの表情はいつにも増して柔らかく感じた。







お読みいただきありがとうございます。

ブクマ、評価などもありがとうございます。


以下、主に私自身のためのメモです。覚えなくても話は読めるように書いています。


エレーナ

セットスキル

【死霊術】【錬金術】【水魔法】【闇魔法】【占星術】【統率】【指揮】【知力強化】【魔力強化】【魔力操作】

控えスキル

【環境破壊】【魔力集中】【奇策】

▷【占術】>【占星術】

▷【集中】>【魔力集中】

【錬金術】の修行により【魔力操作】と【魔力集中】を習得。

【死霊術】の副次的効果として【統率】【指揮】獲得

【魔力強化】は初心者ダンジョンのスクロール。【知力強化】のMP版

【魔力操作】は消費MP量の削減

【魔力集中】は待機中のMP回復効率の向上

【統率】は配下の能力値上昇

【指揮】はパーティメンバーの能力値上昇

〈火の書・初〉〈見習い錬金少女の服〉〈エレーナさんのローブ〉〈夢幻兎の腕輪〉〈死霊の宝珠〉


ヒナタ

セットスキル

【剣】【槍】【弓】【斧】【盾】【筋力強化】【敏捷強化】【器用強化】【弱点強撃】【軽業】

控えスキル

【挑発】

▷【弱点攻撃】>【弱点強撃】

各種武器スキルは使っているうちに獲得

【器用強化】は初心者ダンジョンのスクロール

【軽業】は敏捷補正

【リキリアの大量の武器】〈ヒナタさんの軽鎧その2〉〈蜃気楼の腕輪〉


クルネ

セットスキル

【鍛治】【細工】【木工】【裁縫】【調薬】【商人】【器用強化】【修理】【隠密】【投擲】

〈試作品投げナイフ〉〈クルネの服〉〈クルネの外套〉〈クルネの指輪〉〈クルネの耳飾り〉


プレイヤー・NPCメイドの装備は作った人が名付けしています。

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