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第2話 ログインしたよ

 


 七月二四日、午前十時。


 LEOのサービス開始時間だ。さっそくログインしたわたしはキャラクターメイキングを簡単に済ませ、今は初期ログイン地点である中央神聖都市エルセーヌの大神殿前広場、その端の方にある木陰になったベンチに座っている。


「それにしてもすごい人……」


 夏休みの学生に、日曜朝の社会人。運営は、多くの人がログインできるであろうこの日を狙ってサービスを開始したのだろう。


 LEOの初期生産ロット十万本の内、どれくらいが来ているのだろうか、かなり広めに作られている広場が窮屈に見える。

 それでも、ログインした端から急いでどこかに走って行くプレイヤーが多く、広場が埋まることはない。


 ふと、そんなとき夏海からコールが入った。

 VR機と携帯端末のリンク機能を使った通話だ。VR使用中の人と外部の人で連絡を取るために付けられた機能で、安全性の確保のため、VR機を使用するにはこの機能を設定しなければならない。


『もしもしー、玲奈、今どこにいるの?』


「広場の端のベンチにいるよ」


『アバターの見た目は?』


「髪の色が銀で瞳の色が金、他はそのまま」


『おっけー! すぐ行くね!』


 そうして少し待っていると、長い金髪をポニーテールにした女の子が、それをぴょんぴょんと元気に揺らしながら駆け寄って来るのが見えた。


「えっと、玲奈……だよね?」


「そうだよ、こっちではエレーナ」


「良かった〜〜! あ、あたしはヒナタね!」


 ホッとしたような顔を見せる夏海、改めヒナタ。というか……


「……ヒナタって、そのままだね、名前」


「あー……色々考えたんだけどしっくりこなくてねー。そのまま付けるのは良くないけど、苗字なら大丈夫かなーって……」


 ジト目で指摘すると、ヒナタは目を泳がせながらそんなことを言ってきた。


 夏海のフルネームは『日向夏海ひなたなつみ』……そのままである。わたしも『秋月玲奈あきづきれな』でエレーナと安直なプレイヤーネームにしたから人のことはあまり言えないけど。


 見た目は、胸まである黒髪を銀髪にして瞳の色を金色にしただけのわたしと同じように、ヒナタも現実の見た目そのままで金髪碧眼にしただけだった。それでも、色彩が変わるだけでイメージもガラッと変わる。


 ヒナタは普段の黒髪よりもさらに活発的に見えるし、わたしもさぞ知的でクールな見た目になったことだろう。


 これなら、身バレの心配もほとんど無いだろう。多分。ヒナタの名前だけが心配。


「それより! スキルはどんな風にしたの?」


「……露骨に話逸らしたね。まぁいいけど、メイン武器は【本】で他には【占術】と【知力強化】だよ。ヒナタは?」


「あたしは、【剣】に【筋力強化】【敏捷強化】の三つ!!」


 ヒナタは、インベントリから初期装備の片手剣を取り出して、掲げながら意気揚々と教えてくれる。


「清々しいほどの脳筋だね」


「まぁ、あたしにはこれがあってるよ。エレーナは攻撃しつつ支援もできる後衛って感じなのかな?」


 わたしのスキル【本】は、装備している【本】カテゴリの武器に付随しているスキルを使えるようになるというスキルで、魔法職の基本的なスキルである【杖】と比べて魔法攻撃力補正は低めだけど、【火魔法】や【水魔法】のような所謂、属性魔法を持っていなくても攻撃魔法が使えるのが利点だ。


 例えば、【本】初期装備の〈火の書・初〉では【火魔法】のスキルを持っていなくても、【火魔法】の魔法を使用できる。

【杖】の場合は【杖】だけでは魔法を使うことができず、魔法を使うには各魔法スキルが必要だけど、その分【本】よりも魔法攻撃力が高くなる。と言った感じだ。


 【占術】は、主に味方のバフと敵のデバフができる支援スキルで使い勝手が良さそうだから選んだ。


【知力強化】は魔法攻撃力を上昇させる知力能力値に補正をかけるスキルだ。


「それじゃあ、お互いの確認も済んだし早速、外で戦ってみようか!」


 ベンチから勢いよく立ち上がってヒナタが言う。


「そうだね。えっと、最初は南門の外の草原がいいんだっけ」


「そうだよ! βテスターのあたしがいろいろ教えてあげる!」


 それは頼もしい。

 自信満々にわたしの手を引くヒナタを見て、苦笑しながらついて行く。


 ここから、新しい冒険が始まるんだ。

 きっと楽しいことは間違いない。







お読みいただきありがとうございます。

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