-この世界の広さ- 続き2
カートさんは案内を続け、時々またその交渉を繰り返した、今思うとカートさんがこの時先生を追い返していたら僕は先生に合えなかったという事だ、あぶない。
僕は畑仕事を続けていたが旅人が医者だと言う事を知り、自分の家に急いで向かった。帰るとカートさんと先生が丁度僕の家の前に来ていたところだった。
「こんにちは」
「こんにちは」
「お医者さんなんですか?」
「はい、医者をやっているジーマと言います。よろしくお願いします。ええとお母様はどこですか?」
はいこっちですと僕は答えて家の中に案内した。僕の母は2年ほど前から寝たきりの状態が続いていて、なんども村の外の街に行き診察を受けたが、原因不明と言われていた。熱を下げるための薬を処方してくれるだけで根本的な解決をしてもらえなかった。
母は眠りについていたが、ジーマ先生は母を診ると「ジールさんお母さんと二人きりにしてもらえないですか?」と言ってきた。
カートさんは先生の治療が知られてはいけない事と先生が信頼できる人間である事を僕に伝えた。
「もう一つ、お母さんにも目隠しをして見れない様にしてもいいですか?」
「え?」
僕は二つの問いにすぐに答えられなかった、患者にも見せない様な治療をするその人を信頼できないと感じた。カートさんは僕の顔を見ると「この人は信頼できるかも知れない」と言った。カートさんは昔からの知り合いで、色々な事を助けてもらっていて人としても信頼している。
僕は少しだけ悩んだが母の顔を見て答えた。