風呂場の奇跡
2つ目です
内容には前よりかなり自信がありますので、最後までお付き合いよろしくお願いします!
―湯船に浸かりながらぼんやりと考える
―とても空虚な気分だ、楽しみな事も無ければ毎日の生きる糧になるようなものも無い
―勿論楽しいことが一切無い訳では無いが、それは一過性のもので終わった途端急に虚しくなり、そしてまた空虚の湯船へと体も心も沈んでいく
―空虚な気分でこれから生き続けて私は良いのだろうか、どうしようも無いことなのかもしれないが
最早考えるのも辞めて、ぼーっと壁に取り付けられた縦長の大きな鏡を眺めている
その時ふと鏡の隣の棚にある風呂掃除用の洗剤が目に入った
「カビ用…もしこれを飲めば」
そこまで言って言うのを辞めた
そしてまた虚無へと戻り湯船へと沈没するように沈む
ゆっくり、ゆっくりと
―なんて心地よいのだろう…息はできないが体が融けて消えていくような錯覚すら覚えた…
その時突然にどこからか聞き慣れないが、何故か聞いていて心が落ち着くような声が聞こえてくる
『君は何を求める』
湯船の中で息苦しくなりながらも融けている私に、湯の中で聞こえるはずもないのにどこからか聞こえてくる声が問いかける
じっくり考えていては溺れてしまいそうだが、その時の私の求めているものは一つだけだった
「生きる理由が常にある幸せな人生、私が欲しいのはただそれだけ」
私は、そう心の中で返事の言葉を浮かべながら、流石に息が続かなくなり体も浮き上がらせる
すると不思議でいて何故か落ち着く、どこから聞こえてくるのかすら分からない正体不明の声は続ける
『なるほど…
丁度君にピッタリなものがあるんだ』
―そう聞こえた時にはいつの間にか私は手に白いリボルバーを握っていた
私は本物のリボルバーなど見た事がない
しかし一目見てこれが本物であり、それでいて余りの綺麗なフォルムに神々しさすら感じた
謎の声が続ける
『そろそろのぼせてしまっているだろう、正常な判断が出来なくなってしまってはいけないから今から簡潔に言うよ
その"体のみ"を殺す弾丸を自らに撃ち込み、全ての管理者である私…つまり君たちが言うところの"神"の祝福を受け並行世界で君が望んだ通りに生きてみないかい?』
私は余りに突然な事に身体が固まる、最早謎の声に驚いてしまわないどころか謎の声としか認識できない程度になっていたから私は既にのぼせていた(風呂のせいなのか現実のせいなのか)のかもしれない、何故かその時このチャンスを逃してはいけないという思いが強く込み上げてきた
―私は直ぐに首を縦に振った
『随分決断を下すのが早いんだね、最近は人の命の価値も上がってきていて、みんな簡単には手放さないものだからもっと迷うかと思っていたよ
だが、全くもってそれは悪い事ではない価値は違えど重さは同じだ、君の自分の命を手放す事への思いが時代よりかなり遅れていただけさ
さぁ、引き金を引きたまえ"少女"よ!
起きた時には君の望んだ通りの世界が目の前に広がっている!』
―私は引き金に指をかけ銃口を頭に突きつけ…
―そして、命あるものが最期の時に経験するという死を体で喰らった
次回並行世界編です!
予定では3話構成のつもりです!




