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妖精とお買い物

 ダンジョン向けアイテム総合店『ポラリス』は今日も盛況だった。


 一階は二百平方メートル程度の広さで所々に人の集まりが見えた。恐らく人気商品や消耗品だろう。高額品の入ったショーケースは入り口付近からエスカレーター周りのメインの通りを中心に配置されている。


 ひやかし……将来のための下見には何度も来たことがあるが、購入目的は二回目だ。


 入口のセキュリティゲートを潜った瞬間、熱気が伝わってきた気がする。多分気のせいだが。


 ちなみにシィルは気配遮断のスキルを使っているらしく注意して見ないと存在に気が付かない。そして知らない人がもし気付いても電脳妖精としか思わないだろう。


「お兄ちゃんは二階で武器選んでね。私はシィルと三階で防具選ぶから」


 ポラリス店内に一緒に入った瞬間、別行動を告げられた。


「え? ちょっ、なんで?」


 俺も服を選びたい。むしろ服が選びたい。シィルに似合う服を一緒に選べると思ってたのに。できれば露出度の高い服で。


 可愛い+エロス=最強


 シィルはどちらでも良いといった感じでリンの肩の上に座って笑顔を浮かべていた。防具=服を買うという事自体が嬉しいようだ。


「んー。じゃあ、お兄ちゃん、例えばこれとこれだったら、どっちが良いと思う?」


 リンは入ってすぐのショーケースの中から二つの人形を指さした。


「ふむ……」


 片方は布地は青を基調としたくるぶし丈のロングスカートのツーピースで上着は胸部や関節部分が金属で補強されている。スカートも鎖状の金属が縫い込まれているのが見て取れる。


 もう片方は白いパレオ付きのチューブトップ水着を銀色の光沢のある金属で補強したような見た目でさらにマント付き。ちなみにパレオは膝丈だ。


 値段は不思議なことに後者の方が三倍する。金属が高いのだろうか?


 一度シィルに視線を移してから、もう一度じっくりともうそ……吟味する。これは簡単だ。


「こっちだな」


 白い水着を着た少し扇情的なポーズを決めている人形を指さす。自信有りだ。


 シィルの表情が若干ひきつっているような気がするが多分気のせいだ。


「じゃ、そういうことで」


「え?」


「シィル、行きましょう」


「はい♪」


 リンは話は終わったとばかりにシィルを連れて行ってしまった。シィルもこちらを振り向くことは無かった。


「解せぬ……」


 どう考えてもこっちだよなぁ、とショーケースをしばらく眺めていると携帯端末が鳴った。


『シィルの身長は十七センチだから、七から八号の武器を選ぶこと』


 そこには連絡事項が一行表示されていた。ちょうど俺の十分の一か。


「うーん」


 今一納得できず、後ろ髪を引かれる思いを引きずりながら武器フロアである二階へと向かった。




 二階は一階に比べて三分の二ほどの売り場面積だった。人は一階に比べてまばら。所々にショーケースの中を見て真剣に検討している姿が見える。


 エスカレーターを挟んで百八十センチほどの高さのショーケースが四列ずつ並び、最奥がカウンターとなっていた。カウンターの奥は在庫置き場的な倉庫だろう。


 ショーケースの中にはある程度余裕を持たせたスペースどりで武器を構えたマネキン代わりの人形達が並べられていた。


 前回お世話になった廉価品を並べているコーナーは狭く、エスカレーターとカウンターの間に雑多な棚が見えるだけだった。


「さてと」


 天井から釣り下がっている看板から目当てのコーナーを探す。前回機動人形用の買い物をしたときは腕の可動域や値段的な問題で廉価品コーナーの剣と盾を選ぶしかなかったが今回は違う。ある程度長く使えるようしっかりと選べる。


 短剣・長剣・両手剣・片手半剣・刀……やっぱ剣系統は大人気なんだな。コーナーの広さから売れ筋だという事が分かる。あんなに細かく分類する必要はあるのか?


 盾・拳・弓・杖……槍っと、あったあった。その他コーナーに纏められてなくてよかった。前回来た時も意外だったが、盾も武器フロアで分類されている。


 少し気になってその他コーナーのショーケースの前を通ると、斧や鞭やトンファーを装備した人形が並んでいた。展示してあるってことは売れてるんだろうなぁ。実用性はあるのだろうか?


「何かお探しですか?」


 近づいてきた店員さんに大丈夫ですと返して槍コーナーへ向かった。なんというか、シィルの為に買う最初の一本は自分だけで決めたかった。


「ここか」


 槍だけでショーケース五つ。値札を気にしつつ端から目を通す。


 高いよ……


 とりあえず贅沢にスペースを使っている奥の二つのショーケースは選択肢から外した。値段的に。


 さて、じっくりと吟味するか……




『もう買った?』


 リンからのメッセージが届くまで吟味を続けていた。


「……うーむ」


 最終的に二つまで絞り込んだ。もう少しで決まるとメッセージを返して最後の選択に入る。


 片方は真っすぐなオーソドックスな槍。ゴシック調の服を着た赤髪の人形が刃先を斜め下にに構えていた。


 柄は金属製。さらに太刀打や石突の部分を別の金属で覆うように補強している。穂はまっすぐな素槍。


 もう一つは穂以外の作りは一緒だが、穂が俗に言う片鎌槍。


 真っ赤なドレスを着た金髪の人形が斜め上に突き出していた。


 探索者学校で軽く習ったのは前者。値段が高いのは後者で二割増しくらい。人形も後者の方が可愛い。いや、別に人形はセットではないが。


「よし、すいまーん」


 店員を呼び八号サイズの在庫を確認してから購入の意思を伝えた。割りばしサイズの槍がなんとお値段五万円。たっかいわぁ。


 支払いを済ませた頃には『四階』という二文字だけのメッセージが端末に届いていた。

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