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リグレット・リコルダンツァ  作者: 柚子大根
19/43

18.武器を持つこと

スカバナリア区を出てから3日。まだ僕たちは歩き続けていた。

と言ってもアリシアもいるから歩いてばかりではない。

休憩をしたり、闘いの練習をしたりしていた。

アリシアはあまり喋らず、謎に包まれている。



「ウォルテ!!!集中しろ!自分が素手の時に敵が素手だと思うな!素手でも武器を持った相手と戦えるようになれ!頭を使うんだ!」

ずっと素手で、武器を持った敵と戦う練習をしている。

この練習はかなり難しく、体力はもちろん、精神力もかなり消費する。

こういう時は真っ先に敵の武器を奪うのが先だ。だが、僕がアリアから武器を奪うなんてできるはずがなかった。

アリアは長い剣を持ち、それを自由自在に操る。

その攻撃を必死に避けてかわして受け流すので精一杯だ。

アリアが剣を止める。

「止めだ。わかった、やり方を変えよう。

私が手本を見せる。ウォルテが剣で私を攻撃してみな!」

アリアに剣を渡され、戸惑う。武器を持ってない相手に剣で斬りかかるなんて…そんな思いは瞬時に消した。あのアリアだ。本気でやらないと…

僕は剣を構える。アリアがゆっくりと僕の周りを回り始める。

剣の切っ先を下げたまま、アリアが一瞬動きを止めた時に瞬時に斬りかかる。

その攻撃をアリアはひょいっと交わす。

すぐにまた剣でつく。

その時。アリアがよけずに剣を右手で払い、左手で剣を持つ僕の手首を掴み、捻りあげる。

僕はあっという間に剣を落としてしまった。

唖然としている僕にアリアが微笑みかける。

「な、簡単だろ?」

「いやいやいやいやいや」

全く簡単じゃない。あのスピード。剣よりも早く動かなければならない。一瞬でも遅れれば串刺しだ。

ごくり、と唾を飲み込む。

「ほら。やってみろ!」

再び、アリアが剣を持つ。

その練習を繰り返し、息が上がったところで休憩にしようとアリアが言った。

僕はふと疑問を抱き、アリアに尋ねる。

「アリア…アリアは何で武器を使わないの?使えないわけじゃないんでしょ?」

「武器はまやかしに過ぎない。武器を自由自在に使うことが強さじゃないんだ。

武器は恐怖心の具現化だ。怖いから、武器を持つ。

でもいざという時は自分しかいない。そういう時に自分自身だけで戦えることが強さなんだ。

武器を使う者を否定しているわけじゃないが。

私が素手で戦うのはこういう理由だ。」

恐怖心の具現化…か…

「僕は…僕は強くなりたい。武器でも素手でも強くなって…それで…」

アリアが肩を叩く。

「ウォルテは筋がいいからな。今よりもっと強くなれる。実際剣の使い方は誰よりも上手いからな。

さっ、今日の練習はここまでだ。

アリシアの相手をしてやれ。」

ふとアリシアの方を見ると、こちらを寂しそうにじーっと見ていた。

アリシアはあまり喋らないが、感情が表情によくでる。

僕はアリシアと遊ぶためにアリシアのもとへ駆け寄った。



アリシアはとてもかわいい。クリッとしたピンクの目、肩にかからないくらいの髪、その髪はピンクで所々に水色が混ざっている。髪をちょこんと結んでいて、ピンクのワンピースを着ている。とても女の子らしい。でも、ほとんど喋ることはなく、黙っている。まだ謎に包まれたままだ。どうしたら仲良くなれるだろうか。

「アリシア、お菓子は好き?」

そう聞くと、アリシアは目を輝かせ、頷く。

…可愛いな…

カバンからクッキーを取り出し、アリシアにあげると、アリシアは夢中でクッキーを食べる。とても美味しそうに食べるアリシアを見て僕はとても幸せな気分になった。まるで妹ができたような。クッキーを食べ終わるとアリシアは、

「…ありがと」

とお礼を言い照れたように目を背けた。

「アリシアはお母さんはいないの?」

長い沈黙の後、ポツリと答える。

「……いない…お姉ちゃんがいる」

お姉ちゃん…か。

「お姉ちゃんはどこにいるの?アリシアがここにいること知ってるの?」

「…………お姉ちゃんは…大きくてキラキラした街にいるの…あたしがここにいるの、お姉ちゃんは…知ら…ない…」

アリシアはうつむきながら答える。

キラキラした街…?訳あり…か…

僕はアリシアの頭を撫で、

「そっか!じゃあ僕にできることがあったらなんでも言ってね!」

アリシアがハッとしたようにこっちを見て、かすかに笑う。

「ウォルテ…お兄ちゃん…」

アリシアの笑顔を初めて見たがやっぱり笑顔の方が可愛かった。この心を閉ざしている少女に僕は何をできるのか。少しずつ縮まる距離が愛おしく思えた。

「仲良くやってるなー!」

アリアがにかっと笑い、アリシアの隣に座る。アリシアはそんなアリアをじーっと訝しげに見つめる。警戒したのかと思ったが、アリシアはすぐに目を逸らした。

「アリシア。キラキラした街っていうのは、シュレインか?」

アリシアがハッとしたようにアリアを見たが、すぐに首をかしげる。

「…わかんない…」

「そうか…このまま私たちについてきていいのか?」

「うん…一緒に行く」

「ははっ…そうか、じゃあ楽しみにしてな…次の街にはアリシアが好きそうなものがあるからな」

アリアはそう言うと意味深にウィンクをした。


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