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リグレット・リコルダンツァ  作者: 柚子大根
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15.光

ウォルテが心を閉ざしてから一週間がたった。

私は毎日ウォルテの側にいて話しかけ続けた。

「ウォルテ。私はね、過去にとらわれてる。

だけどね、過去があるから今の私があって、過去をどんなに振り返っても、後悔しても、消したくても、変えることはできない。

変えることができるのは未来だけ。

未来に背を向けて生きていくことはとても悲しい。

あなたが過去どんな人物だったとしても、私は今のウォルテを信じてるよ。

だから、閉じこもってるだけじゃなくて、私たちを頼って。

無条件でウォルテを助けたいって思っている人が周りにいるんだから。」

ウォルテが涙を流す。


少しずつ、ウォルテに、届いてる。大丈夫、大丈夫…


その時、部屋のドアが思いっきり開いた。

アリアとアラベスクが部屋に入ってくる。

アラベスクはアリアを抑えようとするが、振りはらわれる。

アリアがウォルテの胸ぐらを掴む。


「ウォルテ。お前いつまでそうしてるつもりだ?

過去に浸ってたら何か変わんのか!!!

お前の罪は消えるのか?

うじうじしてるだけで何もしようとしないお前は、今最低の人間だ!!!!!わかるか!!?」

「アリアやめろ。落ち着け。」

「うるさい!私は今ウォルテと話してる!!!」

アリアがウォルテを殴る。

ウォルテはベットから落ち、倒れこむが下を向いているばかりで何も反応しない。

「私が、お前の正体を知らないで、仲間に入れたとでも思ってんのか!?!?トロイメライ!!!!!」


トロイメライと言った瞬間、ウォルテが目を見開きアリアの方を見る。


「や…めろ…」


「トロイメライ!!!この名が嫌いか!!!!」

トロイメライの目が赤く光り今にも殴りかかりそうな形相でアリアを睨みつける。

「その名で呼ぶな…!!やめろ!!やめろ!!!

僕は…俺は…!!!違う!!!」


アリアがウォルテを見下しながら怒鳴りつける。


「何が違う!お前はトロイメライだ!!否定して何になる!お前がライドゥン殺しのトロイメライだという事実は変わらない…いつまで自分の過去に背を向けて生きている!!背を向けることこそが自分の罪だと何故わからない!?」

ウォルテが大量の涙を流しながら、睨み、叫ぶ。


「俺は!!!!!!ライドゥンを…仲間を殺してきた…!!!俺に生きる資格なんかない!!!俺の罪は一生かかっても禊ぐことなどできない!!!」

「お前は罪を許して欲しいのか。

そう思うこと自体滑稽だな。後悔することも謝ることさえお前は許されない。それに気付けないのか。

たとえ自分の意思じゃなかったとしてもお前がやってきたことは変わらない。いいかトロイメライ。」

ウォルテの目はいつしかいつもの色に戻り、光が、宿っていた。


「自分を正当化するな。自分を可哀想だと思うな。そう思うことはお前が殺してきた死者に対する冒涜だ。

お前は前を向いて生きていくしかない。

他人のために生きようとするな。自分のために生きろ。罪に、過去にのまれるな。」

「けど…っ俺は…自分が…許せない…っ」

アリアがしゃがみ、ウォルテの顔を覗き込む。

「ウォルテは死者を背負って生きなければならない。私たちもそうだ。

ウォルテは自分で、自分のすべきことを見つけてそれをやるしかない。

強く生きろ。それがウォルテに残された道だ。

ウォルテは自分が悪の存在だと思い込んでいるが、忘れるな。たとえお前が怪物だとしても、悪だとしても、お前に救われたものが必ずいることを。

全てを背負えなどとは言わない。お前の重荷は私たちも背負おう。それが仲間だ。」

ウォルテは泣いた。泣き続けた。そんなウォルテを私たちは抱きしめ続けた。




ウォルテの目には光が宿り、ウォルテが戻ってきた…そう思った…





私は全て終わった気でいた。無事解決した、もう元通りだ。今まで通りみんなで楽しく幸せでいれる。

そう思っていた。まだ、この時は。

まだ、終わっていないどころか、絶望は始まってすらいなかったというのに。

そして絶望の正体とは…真実。

真実を追い求めたが故に招いた結末。

それこそが私たちを苦しめることになる。







その日夢を見た。僕は…俺は草原にいた。

遠くから少女が走ってくる。

あの子はいつもの子か…そう思った。

「君は...」

「まだ思い出せないの?私はエレジー。」

「エレジー…?」

少女が微笑む。

「あなたがつけてくれたんだよ。あなたは私に名前をくれたの。」


俺が…つけた?


「トロイメライ…忘れた?もう全て終わった気でいるでしょ?

寄り集まって1つになってまた分かれて進んでいって。それぞれが混じり合い分裂し流れていく。

それがまた時を紡いで人と人を繋げてまた流れていく。

大いなる流れは決して止まらないんだよ。 あなたは自分が今どこにいるのかわかってないでしょ。

まだ何も始まってないんだよ。」

「どういうことだ…?」

「引き金を引いたのは?」


引き金…トリガー…つまり…


「ねえ、絶望って何色だと思う?…あなたの色は何色?」

少女が少しずつ遠くへと行ってしまう。

追いかけようとするがその場から動けない。

後ろを見るとアリアとアラベスクとカルテットがいた。

「どっちに行くかはあなたの自由だよ。最終的には…大いなる流れに従うしかないんだから。」

「運命?」

「正解…よくできました。正解したから何かヒントをあげないとね…私もアリアもあなたに救われて絶望させられた人の1人なんだよ。」

「ねえ!!待って!!どういうこと…?」

少女の姿が見えなくなる。

そして頭の中に後悔の追想曲とあの奇妙な女が歌っていた曲が同時に流れる。


2つに重なる曲を聞いた時わかった気がした。


そして今わかったことは目がさめるとわからなくなってしまうということも……



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